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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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リーザの料理教室

 リーザは手先が不器用である。

 それは、料理に関して。

 実は自分で食事の準備や料理自体ほとんどやった事が無いらしい。ほぼ皆無との事。

 エルフの食事については、狩猟や農耕の生活が中心の中、ほぼ我々人間とそう変わりないそうだ。よって野菜や肉料理が中心(海水の海は無い)。

 でも、食材や調味料、調理器具や調理方法は少し違うそうだ。


 味付けは、どちらかと言うと薄口で、塩とソース的な物を使用する。我々のように醤油や味噌、多種多様なスパイスを使ったりしないし、なんといってもマヨネーズが無い!

 どうも、生に近い状態の物を食する事も多いそうだ。

 川海老や川魚を生でバリバリと食べる事もあるそうだ。

 う~ん、ワイルド!

 そんなこんなだが、テレビを観たり飲食店に行った時に得た情報から、料理(調理)に興味を持って、果敢に挑戦したいと言って来た。


 いざ、ご飯を作る、料理をするとなると何からやるかなぁ。

 やはり『カレーライス』をスタートとする事が定番かな。自分自身で本格的(?)に料理を行った記憶は、林間学校やキャンプでのカレー作りだったし、私でも教えられる簡単料理で皆が好きな『カレーライス』にしよう。


 リーザは料理や調理の方法は多くの書籍を漁り、多くのテレビの料理番組を観ましたが、、、さて。

「リーザ、『辛い食べ物』は食べられる?」

 買い物に出掛けて、市販のカレールーを選ぶ時だ。

 甘口、中辛、辛口、、、大辛なんてのも有るからな。ちなみに私は中辛~辛口。

 辛いのも大丈夫だが、食べ物全体の味が辛いばっかりだと、ちょっとな。て感じ。

「そうですね、余り考えた事が有りませんし、辛さの程度を把握してませんし。」

 そりゃそうだ、まだのよ世界の味による辛さの経験が無いし、目安や感覚は違うからな。

 取り合えず『中辛』を選択した。


 まあ商品ラインナップやメーカーの違いから『辛さ』の程度は変わるけど、いつも私が選ぶ物とした。

「リーザ、このパッケージの裏を見てごらん」

 箱をひっくり返す。

「カレーライスの作り方、どんな材料を使うとか記載されているんだ」

「これは便利ですね。食材を選ぶ、購入する際に、迷ったり買い間違える事を減らす事につながります。お客さま目線と言うのですか、購入者に対して優しく導く手立てにもなってますね。」

 リーザ大袈裟。いや、リーザは本やテレビから既に学んでいて、知識として持っているのだろう。

 だけどそこは机上論かな?実際に色々と見てもらいたい。


「では材料を読んでみましょう」

「はい。牛肉、ジャガイモ、玉ねぎ、人参、、、調理に使用するその量やグラムに置き換えられた使用量に関しても、記載されてます!」

 リーザ大袈裟。でも、凄くいい!

「お料理、このカレーライスのレシピ一式が表されているとは、、、スゴイです!」

 リーザ大袈裟。感激屋さん。

「ではでは、食材を集めて回りましょう」

 ショッピングカートを押して、野菜コーナーに移動した。


「リーザ、そこにレシピは書いてありますが、私のカレーはその通りには作りません」

「ナゼです?あえて蛇の道を進まれるのですか?」

 いや『蛇の道』って、間違えではないけど、、、多くの言葉をすぐに覚えちゃったけど、使い方は追々だな。

「料理のレシピってお料理の基本だと思う。基本は何事でも大切。でもね、人それぞれ好みが違うから、食材や味についてもいっしょで、違いはあると思う。好き・嫌い、、、食べ物の嫌いは本来ダメなんだけど」

 リーザはいつも真剣に私の話しを聞いてくれる。が、真剣過ぎ!って時もある。多くある。


「私のカレーはちょっとだけ、レシピから外れる」

「やはり蛇の道を選ばれるんですね。」

 いやその蛇の道って

「カレーの中に入れる食材、それを少し自分好み、これを入れても美味しいなぁと思ったやつを入れるのさ」

「はい、それはトキヒコさん仕様になるのですね!楽しみです!」

 ジャガイモ、玉ねぎ、人参は少々。お肉は豚のバラ肉を多め。後はシメジを買い物カゴに入れた。

 ほうれん草とかブロッコリーとかの青菜を入れる事もあるが、今回はパス。

 福神漬けも忘れずに(ラッキョはなんか苦手)。



 帰宅後早々に、二人してキッチンに並んだ。

 リーザにはエプロンと三角巾を着けてもらった。何を身に着けても似合う。かわいい。

「ではリーザ、一緒に作りましょう」

「はい!」

 良い返事。ホント、リーザは素直でイイ子。

「先ずはジャガイモです。コレを細かく残った砂や土を落とすように洗って、皮を剥きます。合わせて芽も取ります」

 私はジャガイモを2つ洗い、ひとつをリーザに包丁と一緒に渡す。

「では皮を剥きます」

 リーザは嬉しそうに、ジャガイモに包丁を立てる。

 え?包丁を立てて、シュッシュッって、皮厚くね?

「リーザ、リーザ、ちょっと待った。もっと皮を薄く剥けない?」

 手本を見せる。

「皮の中身を食べるから、皮は薄く剥きたい。食べるトコが減っちゃうからね」

 まあ、皮を包丁で剥かず、タワシでゴシゴシやって皮を残す時も有るけど。

「そうてしたか。わたしは皮も頂くとばかりに。なるほど、トキヒコさんの言う通りです。改めましょう。」

 でもリーザの剥いた皮厚い。残されたジャガイモが小さい。

 今度、皮剥き用にピーラー買ってこなくっちゃな。


「え~次はこのジャガイモを切って分割します。大きい具が好きな人はコレを4分の1程度にしますが、私は6分の1か8分の1にします」

 半分に切ってそれぞれを4等分に、、、リーザ?

「こうですか!どうでしょう!」

 リーザが切ったジャガイモは、、、大きさバラバラ、、、。

 3分の1ぐらいのもあれば10分の1ぐらいになったちっさいヤツ。

 もっと数学的にちゃんと教えた方が理解が早かったかも。


 そんなこんなで、人参、玉ねぎと進んだ。小さな格闘だ。

 玉ねぎは涙を流しながらも戦に勝利したかのごとく、満足気な顔をした。


「先ずは油を敷いて、玉ねぎを炒めまーす」

 まだ玉ねぎの刺激が残る中、鍋をかき回す。

「私のレシピはね、一部の食材もそうだけど、その箱のレシピと違ってしっかりと炒めます。お肉にも塩コショウで少し下味を付けます」

 どんどん鍋に入れ、炒め、カレー作りが進む。

「ここからは、レシピを守ります。リーザ、水の量を読んで計量カップで測った分だけ水を入れて下さい」

「はい!」

リーザ!慎重過ぎる!適当だ適当、、、の感覚を持ってないからか。

計量カップで計った水をフルフルと震えなから、鍋まで7回入れた。

「ではカレールーを割って入れて、、、このルーを溶かしつつ、少し鍋全体を混ぜながら、このまま煮込みます」

 リーザ、額に汗してる。

「もう少しで出来るよ」

「いい匂いがしてます。して来ました。」

 ご飯は(三合)先に炊いていたので問題無い。

 後はカレーが煮込まれるのを待つばかり。


「リーザ、コンロの火を弱めます。ずっと強火だとせっかくのカレーが焦げちゃうからね」

「はい、注意点ですね。」

 ガスコンロに関しては、エルフの世界では使用していない物なので、当初は驚いていた。

 エルフ達も火を使うが、人間が昔行っていた火打ち石は存在し、また、鉱石が火を出す『火鉱石』という物が有るそうだ。

 この様に特殊で生活に使う鉱石は幾つか種類が有り、火ならば前出の『火鉱石』、灯りを取る為の『光鉱石』などが有ると。

 エルフはガス自体の使用は無い為に、ガスの特性や使用方法は教えた。リーザはその後独自に学習し、今や都市ガス、LPガスそれぞれの構成ガス成分から、産出国、輸送ルート、市場価格の推移に関しても知り得ている。

 リーザが短期間で得る知識の量に驚かさせられる。それと知識の範囲が広いと言うか、深い所まで。

 乾電池のメーカーを10社も覚える必要は有るの?!とか。


「箱裏のレシピに煮込み時間も書いてあるけど、大体、適当だな。ほら、こんな感じになるとOK、完成だよ」

 リーザが鍋を覗き込む。

 少し困惑気味の顔をしている。

「すごく食欲をそそられる美味しそうな匂いはしてますが、何かドロドロしていて、食べれますか?」

 確かにカレーを初めて見た人だったら、見た目は泥沼かヘドロだもんな。

 食欲をそそる香りに比べて、その見た目から”食欲が湧く”とは言い切れないけど。

 それに加え、どちらかと言うと歯ごたえの有る食事を好んでいるエルフにとっては、物足りなく見えるかな。

「さ~、どう思う?」

「失敗、、、ですか?」

「ははは、食べてからのお楽しみ」

  リーザは納得してない。


 もう少し、カレーの調理は続いた。

「味見はしません。これが市販品を使う利点でもあり、商品に対する信頼です」

 まぁいつも使っている製品だし、カレーだからな。慣れだな。

「良し、と」

 鍋の火を止め、盛り付けに移った。


 部屋中にカレーの匂いが漂っている。

 ご飯を盛って、カレーをかけて、福神漬けを忘れずに添える。

「ジャーン、リーザ完成です」

 リーザ、盛り付けられたカレーライスの見た目に半笑い?

「リーザ初のお料理です」

「確かに美味しそうないい匂いです。でも、ドロドロなんですね」

 まだ見た目で困惑しているな。

「さあ、食べましょう!スプーンを使います」

 コップに水も用意した。

「先ずはリーザ、食べてみて」

「私、、、からですか」

「はいはい、どーぞどーぞ」

 リーザはスプーンに一口分を乗せると、口の手前で止まっている。

 迷ってるリーザが可笑しい。

 私がカレーライスを初めて食べたのは何時だったのだろう。初めて見た時、どんな風に思ったのだろう。

 少なくとも、今のリーザとは違うんだろうな~。


「では、行きます!」

 リーザ、変に気合いが入った。目までつぶって、そこまで?

 パクっと一口。

 途端にリーザがの目を開く。

  顔が輝く。まさに輝く笑顔!

「辛っ、美味しいです!なんですかコレ、美味しいです!」

 リーザ、感激屋さん。


「カレーライス。リーザが作ったんだよ」

「私が、ですか?」

「そうだよ。意外と簡単だったでしょ」

「私がコレを、カレーライス、、、美味しいです!」

 リーザのスプーン、食が進む。

「沢山作ったからね、ゆっくり食べましょう」

「はい!」

 リーザすごく嬉しそう。



「リーザ、リーザ、食べ過ぎはいけません」

 お替り四杯目は多いだろ。

「でも美味しくて、です。」

「カレーはね、二日目も楽しみなんだ」

「?」

「食材が煮込まれると、味がまろやかになる。また今と少し違った感じを楽しめるよ」

「はい!」

「カレーライス以外にもパンに塗ってもいいし、カレーうどん!なんてアレンジも出来る」

 明日はどう食べよう。

「それに食べ過ぎるとですね、、、夜の営みに支障が出ます」

「夜の営み?ですか?」

 リーザは少し考えた後、頬を赤らめた。カレーの辛さからでは無いだろう。

 リーザは黙って頷いた。

 あー恥ずか嬉しい。





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