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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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ロウとの対決

「『渦』はもうほとんど育った。このまま、明日にでもこの世界に放せば、全てを飲み込みながら成長を続けるだろう」


 渦、、、破壊の権化、邪竜の基となったモノ。そんなモノをこの世界に放ったら人間は為す術もなく滅ぶだろう。成長するブラックホールみたいなモノだ。

「それが神と名乗る者が行う事か?そんな事が許されるのか?」

 ロウに悪気は無い。人間ではないからな。


 ロウは人間社会に来る事となって、『悪』を知ったのだろう、、、悪、エルフの里国には無い概念だ。だからロウの中で『悪』は理解出来ていない。消化されないままに彼の中に留まってしまった感情の一部。だからロウは悪意も持た無い。

 そんな中で、ロウはエルフでも無く、自分の事を神と名乗ってる、、、ただただその自分を神として登場すべきステージを作る。それぐらいの考えなんだろう。


「私は『神』であるからな。誰の許しも必要としない」

 女王様、ユーカナーサリーの正夢が実現されるのに、やはり猶予は無かったって事だ。

 まさしくエルフの女王の見る夢は神託だな。感心している場合ではないのだが。


「どうだろう?2~3日ぐらいで地球上を喰い尽くせるかな」

 その後ロウは『渦』を止められるのか?

 いや、止められずに暴走するから、エルフの世界にも『渦』が現れるのではないのか。

 神か、、、不完全だな。

 私に出来る事は無いのか、為すすべは無いのか。


「はっ」

 そうだ、指輪だ!


 私は思考にバリアを張り、ロウに語りかけた。

「なあ神様、ちょっと見てもらいたい物があるんだが」

 こちらの声が届かないのか、ロウは興味を示さない。

「神様ってさ、何でも知ってるんだろ?」

 とにかく話し続ける。それしか出来ない。


「先日ちょっと面白そうな、確かに価値が有る物を手に入れたんだが、どうしてもその価値が見分けられなくて」

 かろうじて、ロウの視線は感じる。

 この場、この空間には我々二人しか存在しないからな。


「人間では理解出来ない物なのかも。もしもコレが神器の類いなら、神様であるあなたであれば判断が可能かな?と思って」

 ロウは何も言わない。

「わたしもあの『渦』とか言うモノに飲み込まれてしまうんだろ?どうやら私の人生もここまでのようだから、最期にこの疑問は解決しておきたい。冥土の土産ってやつかな」

 ようやくロウの顔がこちらに向いた。『冥土の土産』に関心が行ったのかな?


「もしくは『死んでも死にきれん』ってやつさ」

  私はそっとザーララの指輪を外した。

「コレなんだけど」

 そう言うなり、ロウに向かってボールをパスするように指輪をアンダーパスで投げた。

「落とさないでくれよ」

 と付け加える事を忘れなかった。

 あ、ヤバい、ちょっと短かったか!

 ロウは体を屈ませながら指輪に向かって右腕を伸ばす。

(良し!)

 私は心の中でガッツポーズした。


 しかし、ロウは動きを止めた。

 宙を舞っていた指輪も彼を目の前にして止まっている。

 そしてロウが体を元の状態に起こすと、指輪もその動きに追随してゆっくりと上昇を始めた。


「これは?」

 指輪はロウの顎あたりの高さまで上昇し、ぴたりと空中で止まっている。

 ロウとの距離は30cmも有るか無いか。手を伸ばさずとも届く位置だ。

「コレは」

 再びロウが口開く。


「、、、ザーララ、、、か。」

 そう囁くと自分の目の前の空中に浮いている指輪に人差し指を向けた。

 ザーララの指輪は一瞬にして砂粒大に弾け、そして粉の様になり消えてしまった。

 失敗か。万事休すだ。


「さて人間、確かに面白い物を手に入れたようだな」

 ロウが喋りだす。

「何か懐かしい思いをしたぞ。如何にして入手したのか、その経緯はもはや問わん。消え逝く者には無駄だからな」

 トキヒコは、沈黙した。

「だがな、解答を示してやろう。あれは神器と思えば神器、ただの指輪と思えば指輪だ」

 何か抽象的な押し問答だな。

「なんかどっち付かずだなぁ。それではあの指輪の価値を判別したとは聞こえないなぞ。どっかの詐欺師、胡散臭い骨董品屋のオヤジレベルだ」

 ロウに睨まれた気がする。

「ちょっと失望したよ、神様」

 ロウの気が揺れ動きイライラしたのが空間から伝わる。

 ここは『ロウの中』って言っていたから、その気持も感情も、ダイレクトに伝わって来るのかなぁ。


 あー非常にマズイ状況を自ら作ったな。私って。

「人間、何か言い残す事は有るか?消える覚悟は出来ているようだからな」

 んー、言い残す事かぁ〜沢山有るのような無いのような。これではロウが指輪を評価した表現と変わらないなぁ。

、、、変わらない、、、ロウと同じ?なぜ?


「人間、なかなか面白いな。では私からも訊ねて良いかな?」

コクりと頷く。

「お前の信仰神は何ぞ?この国(日本)の場合は宗教か宗派か?何ぞ」

唐突だなぁ。いや、私無宗教。

「私が信じる神も、宗教も宗派も無い」

「ほう、無宗教者か、信仰心を持たぬか。お前に神は必要の無い存在と言うのか」

日本には信仰の自由ってのが有るのさ。

「お前は人間でありながら、神を否定するのか」

「否定って、、、そうなるのかな」

「ではか弱き人間、お前は何にすがる、何に救いを求める?」

何を求められている?どんな回答を望んでいる?さっぱりだ。

「そんな物は無い。神様が私に何をしてくれる?何を解決してくれる?」

 まあ、受験とか景品抽選とかで神頼みはした事あるけど。

「私は人間だ。自分の事は自分で解決しなくてはならない。だが人間は能力も低く非力な存在だから時には多くの人間の力を借り、そして力を合わせ生きるんだ」

「だからな、しいて言えばオレの(あれ?なんか『オレ』の方が勢い付くな)」

「オレの神はオレ自身の中にいる!」


「人間、やはりお前は面白い。お前の名は何と言う」

「スルガ トキヒコだ」

「そうかスルガトキヒコよ、そろそろ戯れもここまでで良い。別れの時を迎えよう。だがこれも何かの縁だ、我が『渦』の中に一番に入る誉を与えるぞ」

そんな誉れ、いらねーよ。

「そうだなロウ、お別れのようだ」

 ロウは自分の名を呼ばれ狼狽えた。

「エルフの先代王、お前の父に貰った名だ」

 ロウは狼狽える。

「ロウ!お前はエルフのロウであって神では無い。何故、神を名乗る、何故、神に成りたがる!」

「トキヒコ何故だ、何故たかだか、か弱き一人間が私の名を、、、」

おっザーララ、何か効果あったぞ。

ロウの狼狽えと共に空間全体が歪む。

「うぇっぷ、気持ち悪い」

 この空間はロウ自体、ロウの中身って言ってたな。

 ロウの意識、思考が歪んだのか、ココにいる私にも影響が出ている。

気持ち悪い。

 グルグルと目も回り出した。

 頭の中も、、、頭の中が渦を巻くように何かが入り込んで来た。

「こ、これは、、、」

 どうやらロウの意識、記憶?

 ロウが人間と接した、人間を愛した、、、記憶?

 ロウが人間社会にやって来た、、、神を学ぶ為、、、本当かは分からない。

 でもこの記憶は人間社会でロウが暮らした、人間と過ごした記憶だ。

 喜び、楽しみ、幸福感、、、感情が生まれ、そして大きな哀しみ、、、。

 、、、絶望からの変換。


「分かるぞロウ、お前の考えが」

何も分かって無いが。

「お前は二度、失敗したな(想像とハッタリだが)」

一度目はエルフの里国から出る、、、父王と比較しての劣等感。完璧主義者の自分を責めた、、、たぶんそんな理由。

もうひとつはこっちで何か有ったんだろう、たぶんな。幸福感からの絶望か、、、。

「それは外の者からすればお前自身に責任も原因も無いのだろう。だが、お前は自分を責めた」

なぜだかこの人間世界、そしてココにたどり着いた。

それまでロウはこの人間世界で何を見て、何を聞いたんだろう。どんな経験を積んだ?

ロウとの短い会話ではあったが、『神』という存在を知り、自身が神と成るべきそれを理解する為に世界中をさまよい、文献を漁り、経典を読み、人々の神に対する信仰を多く見た。

神を理解したならば、神がこの世界に存在しない事も理解しただろう。「神は人が作った」と本人も言っていた。

なのに、自分が『神』になるって。

「ロウ、あなたはこの人間世界に長く居過ぎたのかも知れない」

人間の影響力、伝染力かな?怖いな。

リーザの事を思わずにいられない。

エルフの里国を出て、9割以上は人間世界で暮らす。人間社会に浸かる必要は無い。悲しいが私が先に死ぬだろう。そうしたらエルフの里国に帰って欲しい。だから余り人間社会に浸からないで欲しい。

でもリーザはそれを望むのか?いずれにしても人間社会の影響を確実に受けて要るのだろう。

影響を受けさせてしまっている。

それとさくら。

同じく私の死後、あの子はどう、人間社会とエルフの世界、どちらに歩みを進めるのだろう。

どちらに進もうが、さくらに良い事ならどっちでも良い。

どっちでも良いだなんて、親として無責任かなぁ

あ~曖昧な日本人、、、どっち付かず、、、人間っぽい。

あれ?なんかと、、、さっき思った事と似てる。

あ、何か閃いた。

「まさか、ロウ、あなたは、人間になろうとしたのか?」

歪んだ空間で沈黙が続く。


ロウはいつの間にかうつむく体勢で漂っていた。

「、、、うるさい」

 囁いた。

当たり?図星?

「うるさい、、、うるさい!うるさいー!!」

今度ははっきりと口に出し、声も大きくなる。

ロウの叫びに合わせ、空間全体が激しく揺れる。

私は嵐の中の木の葉のように飛ばされ、流された。

「神と言った割には、いやに感情的だな」

(煽り過ぎたかな、時間稼ぎもここまでか)

しばらく激しい歪み、嵐は続いたが、叫び疲れたかのように動きが治まって来る。

そして再び、ロウの世界、静寂な空間が訪れた。


「そうか、、、先程の指輪といい、ザーララか」

あー、名前の効果は消えたな。

「やはり面白いな人間、トキヒコよ。少し趣向を変えよう」

ロウはすっかりと落ち着きを取り戻している。自分自身で感情をコントロールしたようだ。

神となる存在が感情をコントロールかよ。精進が足らんな。

「一時、お前は自分自身の中に神がいると言ったが、それではお前の中の神の力を見せてもらおう」

ロウの口元がいやらしく笑った気がする。

その表情に仕ぐさ、ホント人間っぽいぞ。





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