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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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エルフ王家の姉弟妹


「まあ良い、ユーカナーサリーよ話せ」

女王は見た夢、渦の事、夢の中で見た渦の中心にロウがいた事を話した。

「ふむ『渦』か、ロウがな。奴が何かをやらかすか」

ザーララは楽しそうだ。

「しかし姉様、我の見た夢を変える事は可能なのじゃろうか?」

エルフの王の見た夢は、神の信託のごとく正夢となる。

「んー、分かん無いわねぇ。トキヒコの頑張り次第かな。わたしも少しは協力するけど」

実際にザーララが出張ってしまえば、ロウを治める事が出来るのだろう。

しかしそうなると、ロウの元にある『渦』が起こすであろう惨事が比較にならない程、より大きな災いとなってしまうそうだ。

なんか、想像すら付かない程の恐ろしい破壊の力を持つ美女、、、。

よしんば、女王様やエルフが動いたとしても、地球上、人間社会では制約が掛り過ぎるとの事。

「ザーララさん、何故ロウは私たち、人間社会に居るんですか?」

そもそもの根本のような気がするのだが。

「ユーカナーサリーがそなたに話した続きを少し語ろう」


ザーララはユーカナーサリーの話しの続きを語ってくれた。

エルフの里国は『大槍を持つ者』によって建国された。

『渦』も『邪竜』もいない世界。まさに平和と呼べる日々が続いた。

時の流れの中でヒトは数を減らし、そのほとんどの民は『エルフ』に占められて行った。

初代王となった『大槍を持つ者』と最後のヒトの術者の間に子が生まれた。

女の子だ。初代姫さまだ。

姫は両親、エルフの民、皆から愛され、美しく育った。

姫はエルフ達と比べると、少し違っていた。

感情表現が豊かで喜怒哀楽も露わ《あらわ》だった。

それは『大槍を持つ者』は本来、感情調整に『失敗した者』であったし、最後のヒトの術者、、、見方を変えればヒトの負の感情から産まれ落ちた邪竜より再び蘇生した者、、、それらの両者の子であり、エルフ達とは違った。

姫は明るく美しく、皆に愛されるまま成人した。

初代王に見初められたエルフ~今の王家三兄弟の父~は、姫の生い立ちを理解した上で妻として娶り、玉座を引き継いだ。

初代王夫妻は旅立った。どこへ行くのかどこに向かったのか誰も知らない。


「まあ、ここまでで良いだろう」

「トキヒコ、わたしとユーカナーサリーの話しを聞いて、おまえの世界、人間界とエルフ世界との違いを何か感じた?分かったか?」

「え?」

しっかりと聞いていたつもりだったが。

現代社会?いやエルフも過去に科学技術の発展があった。

宇宙、宇宙か。人類は宇宙に行ったもんねー。

多種多様な人種、言語、文字の存在?

文化か?音楽・絵画・趣味・スポーツ、文化か。

なんだ?

「トキヒコ『神』だよ」

「あっ」

確かに、ヒト~エルフの歴史の中に神様は現れない、表現されなかった。

話しを端折ったとしても、神の下りや信仰が出てきてもおかしくなかったのでは?

『渦』と『邪竜』に絶望した『ヒト』も『エルフ』も神にすがって無い。

『神頼み』も『祈願』もしていない。

「エルフにはな、信仰的な神なる存在は無い。人間社会の独特な風習じゃな」

神様が風習って、、、外から見たら、そんなもんかもな。

「だからかな、神や信仰を持たないエルフ達にとっては、王宮に対して信仰的な思いを持つ」

「我らエルフの王家はな、エルフの民達の『最後の砦』にならなくてはならん」

「じゃがの、ロウでは無理じゃった」

女王の表情が暗い影を落とした。

「あヤツは自分を何かと父王と比べる。自分が劣っているといつも自分を責めておった」

信仰的な事を求められる立場になると考えると、そうなるのかもな。

「ユーカナーサリーは自由奔放。いつもバカみたいに走り周り、笑い、エルフの皆に好かれたわ。ロウは真似できなかった。そんなユーカサーサリーを妬んだのでは無く、自分には欠けている事と責めたのね」

「バカは余計じゃ」

「見るに見かねてね、人間社会にある『神』の概念を少し教えたの」

ザーララも人間社会を知っていた。見ていたのか。

「ロウは神なる信仰に傾倒して、やがて人間社会に学びに行った。わたし達からしたらエルフの社会、王家の務めというか気概から逃げたとしか思えないけどね」

う~ん、神様を学ぶか。まあ、一部の大学には神学科なんて学科もあるしな、内容は知らないけど。

「自分の中に父王を越える『完璧なエルフの王』像を作っちゃったのね。エルフの民達はそんなの求めてないのにね」

完全主義者。完璧主義者。本人は気づかなくても理想像に達していない自分を責める。こんなはずじゃ無い。もっと出来るはず。こんなの自分じゃ無い、、、否定ばっかり。それで自殺しちゃったと思われる人、知ってる。

「『何かあった時に寄り添う』王が求められている事を知って欲しかったのだけど、独りよがりで悩んでた。エルフの民達に「開いて」いれば自ずと分かったはずなのに」

「バカじゃ」

「ホント、バカの愚弟」



「では、ロウの居場所だね。ふむ」

ザーララは少し思いにふっけているようだ。

「ふぅ~、流石のわたしでも違う世界にいる相手を見つけるのは難しいか。それに向うも探されたく無いのであれば、幕を張ってるかもね」

『幕』とは魔術的な目隠しや気配隠し、姿隠しの類いだそうだ。

「姉様でも難しいとなると、、、」

地球全体を探す事なんて人間の力では不可能だ。ただただ持久戦と全面を探すローリングの手法か。

協力者、それも世界規模の協力者や組織がない中、どれだけその時間が掛るのか測れ無い。

「まあ多少のヒントは出せるわよ」

ヒント?

「ええと、ロウはあなたの住む国の中にいそうね」

私の国、日本。女王様が見た、感じた時からは移動してない?

でもたとえ日本国内で探す事になったとしても、私一人でなんとかなる面積、範囲を越してる。

『〇〇町内』とかだったら私でもなんとか、、、。

しかしロウが潜伏しているのが人が近付ける建物内とは限らないぞ。

『渦』を隠し持つ場も必要だし。

人目に触れず長い年月を過ごして来ているとなると、海中や地面の下も有り得るから捜索範囲が立体的、体積になったらそれ以上にお手上げだ。

「もっとヒントになるかもよ」

ザーララが続ける。

「あなたの国の一番深い所でぇ~」

ん?海峡

「一番深い所と一番高い所よ」

、、、一番高い所。

「富士山か!」



「トキヒコよ、コレを持て」

ザーララの目の前に何やら物質が集まり、凝縮されると、銀色の指輪が形作られた。

そしてその指輪に向かい右の人差し指を差し出す。

ザーララの指先から一滴の血が落ち、指輪の中に消えるように吸い込まれた。

指輪は空中をそのまま移動し、私の差し出した手の上に乗った。

「それをやろうぞ」

わ、指輪。どの指に?左の薬指は結婚指輪が有り、それ以外の指だな。

私は何となくだが、右の中指を選び、その指輪をはめた。

測ったようにピッタリと中指に収まった。

「コレは?」

「指環だよ、知らなかった?」

ザーララはクスクスとイタズラっぽく笑う。

「そうね、一種の『ロウ検知器』『ロウ回収器』みたいな物ね」

検知器?回収器?

「トキヒコがロウに会ったなら、その指環でロウに触れるか、触らせろ。何なら投げ付けても良いわよ」

「その指環が直接にロウに触れるとね、ロウは私の元に正に飛んで来る仕組みになってるの」

ふぅ~ん。

「さあ、覚悟と希望を持つ者よ、力を示せ!」

え~そんな力持ってません、


ザーララは大変友好的、協力的に手を差し伸べて下さった。

「わかってるわ。このままでは帰れないでしょう。ついて参れ」

「すまんな、ここからは我らだけじゃ」

私とベットで横になるリーザを残し、姉妹が扉の向こうへと消えるのを見送った。

二人は階段を登り、屋上に出た。

外はここに来た時とは様変わりし、素晴らしく青い空の広がる晴天であった。

二人が出た屋上には幾つかの岩や石の塊が乱雑に並んでいる。

女王、ユーカナーサリーはその中でもひと際目立つ滑らかな表面の岩にすがり付いた。

「母様、ごぶさたしております」

女王は滑らかな岩を抱きかかえながらわんわんと声を上げ泣いた。号泣した。

嗚咽しながら涙する妹の後ろ姿を見守っていた姉、ザーララは居たたまれなくなったのか、ユーカナーサリーの背中に声を掛けた。

「ユーカナーサリーよ」

姉は妹に優しく語り掛けた

「あねさま、、、」

泣き顔を隠しもせず、女王は姉の声に振り向いた

「それ、違うぞ。ダミーだよ」

「、、、殺す!」

新たな姉妹喧嘩が勃発した。



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