エルフの里国の建国
大槍を持つ者は半死状態であったが、なんとかズル、ズルと邪竜の下より這い出した。
死に至っていないのはエルフとして持つ血の強さか。
ごろんと寝転がり、上を見上げる。
暗闇の中、僅かに邪竜の輪郭が頭上に有る事が判る。
邪竜の動きは無い。しかし、微かながら邪竜の弱弱しい鼓動が地面を伝い届く。
大槍を持つ者は思いに耽った。
「あの者はまだ、この中に残るか。」
「邪竜との最終決戦と位置付けた戦いの中、何故二度も我の前に立ったのか。」
「何故、死を賭した禁術を繰り返し出した。」
「結果として我は守られ、邪竜の胸を大槍は貫いた。」
「あの禁術が無かったなら、この結果は生み出され無かったろう。」
「しかし、おまえが『残る者』となる可能性を秘めていたやも知れんのに。」
「我は守られた、、、あなたによって、、、。」
いつしか、大槍を持つ者は禁術を用いて、邪竜の中に入った者に対して、語り掛けていた。
「そなたに、再び会いたい」
と。
大槍を持つ者の目から涙がこぼれた。
その後、幾度も幾日も語り掛けた。
生が繋がっているとは言え、大槍を持つ者が他に出来る事は無い。
このまま死を待つのみ。
邪竜の鼓動が止まるか、我の生が先に潰えるのか。
カラーン、カランカラン、、、。
ある日、邪竜の牙が一本落ちた。
次の日は二本
次に角が落ち
鱗が落ち、体毛が落ち
翼が落ちた。
邪竜から離れた部位は時が経つと消えて行った。
尾が外れ、邪竜の体躯も少しづつだが縮んで行っている気がする。
あの『邪竜の槍』も消えてしまっていた。
邪竜の姿は縮み、その形も原型を留めてない程に。
やがて邪竜の身体は光を放つ楕円の塊となってしまった。
それはまるで、何かの卵のようであった。
その卵の光が収まると入れ替わるように、あの、ヒトの術者が現れた。
生まれ出たように、丸まって眠っている。
大槍を持つ者は片腕を失っていたが、ヒトの術者を抱え地上を目指した。
天井の土を掘り、岩を落とし、手を血だらけにして。
地上まで這い上がった。
邪竜を封印した真上には建物が建てられていた。
邪竜への封印結界を強固とする目的の為に。
地上は眩しかった。
目が開けられない。余りにもの眩しさで体がふらつき倒れそうになった。
誰かに体を支えられた。
彼ら二人を支える手は増えて行った。
大槍を持つ者と蘇生されたヒトの術者はいつの間にか多くのエルフ、少なくなったヒト達に囲まれ、抱えられた。
大槍を持つ者はヒトの術者を娶り、初代王の玉座に着いた。
『エルフの里国』が建国された。
「ここまでで良かろう、これが我が父王より伝え聞いたエルフの歴史ぞ」
花の王、ユーカナーサリーは一息付いた。
この話しが正しければ、私が感じるエルフの無表情さ、感情を表さない態度と一致する。
しかし、我々人間と同じく、何故ヒトは誕生したのだろう?どうやって?
それとこの世界にも文明文化、科学技術の発展があった。
だがそれらを手放すなんて、到底信じられない!
今の私に当てはめれば、電気、ガス、水道、道路、、、に代表されるインフラの整備、飛行機、鉄道、自動車・バイク、、、それらを止める?壊す?、お笑い番組を観るテレビも無い、インターネット、通信、ラジオ、、、旅行、趣味といった娯楽、、、無くす?捨てる!!
一時的に使用を中止するのでは無く『止める』『無くす』、、、『消す』。
我々人間がその命や将来、未来が掛かったてとして、果たして同じ事が出来るのであろうか?
答えは『否』だ。
人間では無理だ。戦争や争い、いざこざは地球上のどこかで常に起こっている。
形や状況が違っても、過去の悲劇や惨劇、惨事を繰り返している。
人間とはそういうモノだ。
『渦』が現れたら、攻撃するだろう。
その攻撃が効かず、無駄足になっても、やはり攻撃を続けるだろう。
そして核兵器を使うだろう。
それも人間。
「文献も記録も残しておらん。じゃが我らエルフの中、遺伝として受け継がれておる」
私とリーザは花の王の後継者では無い。
女王様はいつの日か、再び誰かに話す日が来るのだろう。
「邪竜が封印されたのが今いるこの場所じゃ」
暗くて空間全体が良く見えないが、邪竜が横たわっていた、、、その巨大さが伝わって来る。
「そして、エルフの里国が始まったのもこの場所じゃ」
人間でありながら、エルフにとって神聖な場所にいるのか、、、。
トキヒコは複雑な心境だった。




