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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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邪竜、エルフの誕生

『渦』が消え『邪竜』が産まれた。

巨大で禍々しい姿。

 この世界において異義となる存在『邪竜』。それが産まれ出た起源であり根源、要因となるべき理由、、、


『渦』は多くのモノを呑み込んだ。

 その中には多くの『ヒトの思い』があった。

 ヒトの思い、、、それは、渦へと巻き込まれる際に思い描いたモノ。

 恐怖、苦しみ、未練、哀しみ、理不尽さ、怒り、戸惑い、憐れみ、諦め、絶望、、、多くの“負の感情”。

 多くの負の感情は集まり、結合され、形創られた。


 その形、、、宗教的な意味合いの無い世界で、皆が持ち、忌み嫌っていた姿。

 悪さをした子を諭す時に使われた『悪さをすれば、邪竜に連れていかれてしまうよ』、、、邪竜を表す絵も無ければ形も無い。

 だが、皆は抱えていた。潜在意識の中で、忌み嫌うモノとして。

 それが形創られてしまった。



荒々しく飛び回り、ヒトを襲い喰らった。

しかし、多くのモノを手放したヒトは新たに対峙する事となった邪竜に対して打つ手は無い。

邪竜は『渦』と同じかそれ以上に破壊しヒトを喰らった。

『渦』は多くのモノを飲み込み過ぎていた。

『渦』が飲み込んだ多くのヒトの『思い』は消えなかった。

恐怖、苦しみ、悔しさ、悲しみ、憎しみ、絶望、、、。

『渦』に溜め込まれたそれらのヒトの思いは消える事が無く、やがて凝縮され邪竜という形となってこの世に産まれた落ちた。


僅かに残されたヒトは災害に匹敵する邪竜から逃げ回るしか無かった。

しかしヒトは再び立ち上がる、邪竜を倒すと。

勇敢なる者が立ち上がり邪竜を迎え打つ為に対峙した。

しかし多くの者はその姿を目にし、もしくは邪竜に睨まれた途端に恐怖心に支配され身動きも取れないまま、邪竜に喰われた。


「恐怖心を消せないものか?」

ヒトの新たな研究が始まる。

ヒトに術を練り込んだ。

何度も、何度も、、、。

しかし『恐怖心』だけを消す事は叶わず、対策出来た事は感情の全てを消す事であった。

エルフの基と成る者が生まれた瞬間でもあった。


ヒトは再び邪竜と対峙する。

対峙した者達は邪竜の恐ろしさ、伝わる恐怖を克服したかに見えた。

だがしかし感情を消し、兵器となった者達は使い者にならなかった。

邪竜と対峙した時に支配される恐怖心を感じ無くても、そもそも邪竜を倒すべき意義(仲間が喰われた悔しさ、自分達の存続や存在が危機に晒されている恐怖、守るべき者へ対する愛情等)も欠落してしまっていた。

やはり邪竜に喰われた。


やがて「感情を抑え勇敢に戦える」戦士達が誕生した。

戦士達は「エルフ」と名付けられた。

エルフの誕生である。

エルフ達は原始的ではあるものの、斧、槍、弓、剣をそれぞれ持ち、果敢に邪竜へ立ち向かった。

だが、余りにも膨大な力を持つ邪竜にはそれでも歯が立たなかった。

硬質たる肉体を持つ邪竜の体に僅かな傷を付ける程度であった。


しかし残されたヒト、新たな生を得たエルフ達は生まれ持っている『術』の鍛錬にも事欠かさなかった。

エルフ達は邪竜に対峙し続ける。

やがて、武器と『術』との連携を生み出し、少しづつではあるものの、邪竜の翼の羽根毛の1枚ながら落とし、鱗を1枚落とし、身を少しだけ削った。

エルフ達は戦い、疲れ傷付き逃げる。

繰り返し、繰り返し、、、。

ヒトとエルフが次に対峙した時、邪竜の傷はすっかり癒えてしまっている。

邪竜は不死であった。

打つ手は無いのか。


「我々の持つ武器では到底歯が立たない」

「奴を倒すべき決定打を知る由も無く、我々の数だけがイタズラに削られて行く」

「何か、何か手立ては無いものか、、、」

ヒトとエルフ、苦悩の日々は続いた。

「邪竜は速く強く、硬い。知能も有る。合わせて自身の肉体を再生する能力も合わせ持つ。正に無敵だ」

「目に見えぬ攻めも有る。奴も術を持つようだ」

「あ奴は、不死だ」

対策は立たない。

邪竜に怯えて逃げ惑う暮らしが続く。


「奴自身の肉体で自身が攻められれば、如何になる?」

一人のエルフが投げ掛けた。

「試してみる価値はあるやもな。だが如何にして」

「我らも武具と術との連携を得、僅かながらだが奴の肉体を削るとこまで至った。それらを集められぬか?」

邪竜に対する新たな策が始まる。


邪竜を削る。

邪竜本体から離れた部分や肉片は時が経つと消滅してしまう。

消える前に術でもって回収する作業が戦闘中に行われた。

犠牲者を出しながら、邪竜に悟られぬように。

何度も何度も戦い、日々は流れた。

またしても永き時間が流れた。

そしてついに、邪竜の破片を集め、術で練り上げた20尺(約6メートル)の極太く強固な『邪竜の槍』が出来上がった。


槍は邪竜を感じるような禍々しさを備え、見ると恐怖する者もいた。

しかし同時にこの槍は、ヒトのエルフの希望となった。

ただ、本当にこの槍が邪竜に通用するのか?根拠はない。

誰も口に出さなかった。

誰にも分からなかった。

それを願い信じてすがるしかなかった。

ヒトもエルフも疲弊していた。


「誰がこの槍を邪竜に突き刺すのか」

20尺もの大槍。おいそれと誰でもが扱える代物では無い。

邪竜にしても対峙する度に、常に肉体を再生、蘇生して現れる。

意思や知識も持ち合わせている為、槍を見たならば警戒もするだろう。

邪竜に隙は無い。

「我が」

一人のエルフが立ち上がった。


彼は幾度も邪竜との戦いを続け、死をくぐり抜けた戦士の一人。

他のエルフより身体が一回り大きかったが、感情の調整には『失敗した者』であった。

戦士達の誰よりも邪竜を恐れ、邪竜に怒り、仲間の死を悲しむ、激しく熱い者であった。

「我の死を掛け邪竜に挑もう。そして皆の生を勝ち取る」

彼とペアとなった術を繰り出す者は最後に残った『ヒトの術者』であった。

こうして邪竜との『最後の戦い』と位置づけられた戦いが始まった。


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