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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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トキヒコ 引っ越しを考える

駅前商店街、トキヒコとリーザは不動産屋から出る。

トキヒコの顔は冴えない。


リーザと暮らし出し、今のアパートを手狭に感じ出した。

そもそも自分ひとりだけ、一人暮らしを前提に住みだしたから。


結婚などその気も無く、相手も無く、縁も無く、希望や想像すらしてなかった。

『別世界の人種の行事』ぐらいの考えであった。


現在の状況に不満は無いが、なんとなく、なんとなくだが夫婦で暮らす環境では無いなぁと、漠然に思った。

確かにこの2階立て8戸のアパートには夫婦や家族で暮らしている人も居る。2組居る。


でもいつか彼らもここを出て行くだろう。

私はこのタイミングかな?と思った。漠然とだが。




今はLDKに加え別に四畳半の一部屋付き、ユニットバス式だがお風呂も有る。一人暮らしをするには、豪華仕様。


このアパートの先程の2組はどう暮らしている?


今探しているのは、風呂とトイレが別室のモノ。やはり二人暮らしとなるとココは別にしたい。


風呂とトイレが別々だと、洗面所兼脱衣場も有る為、ある程度のスペースが見込め洗濯機も置き易いだろう。


部屋数は今のまま、多く無くて良いのだが、駅までの距離を考えると家賃が、お値段が上がってしまう。

今よりも駅が遠くなるのは致し方ないか。


まるっと利用駅と言うか、別の土地も考えたが、現在のリーザと駅前商店街の人達との関係性は無視出来ない。


次に移った場所でリーザがエルフだという事が受け入れられるとは限らない。まあ、尋常な事ではないからな。

エルフをひた隠しにして暮らして行かなければなと考えると、今以上、相当窮屈な暮らしを強いられるだろう。


それは私たち二人にとって良い事なのか悪い事なのか。


「あらリーザさん!、、、そのダンナこんにちは」

『そのダンナ』って。

「こんにちは、パン屋さんの奥さん」

リーザは明るい。


「どうしたんだい、あんた冴えない顔して?まあ、いつもか」

冴えない顔ですよ、放っといて下さい。


「ええ、今の住まいが手狭に感じたんで引っ越しを考えてました」

「え?あんた達、ここを出て行くのかい!?」

パン屋さん驚いてる?


「いえ、余り遠くは考えていないんですが、もう少し広い所にしようと思うと、家賃がですね」

「あたしん家おいでよ、2階の息子をおっぽり出すからさ。家賃無し!」

家賃無しは魅力的ですが、それは受け入れられません。


「ご配慮ありがとうございます」

お礼だけ言った。


「なんだい、あたしが不動産屋に掛け合って、そこの家賃半額にしてやるよ!」

いえいえいえいえ、止めましょう。


「リーザさんがココを出て行く事になったら、容赦しないよ!」

誰を容赦しないんですか?私を?




帰宅後。

不動産物件を見たのは久し振りだが、なんか疲れた。


家賃に加え、経費に引っ越し代、ココを出る時に現状維持の条件の修繕費も掛かるかも知れない。

(あ、天井の一部が破れてるや)


そういえば、リーザってエルフの里国ではどんな所に住んでどんな生活をしていたんだろう?

「リーザ、向こう(エルフの里国)ではどんな家に住んでたの?」

聞いた事も無かった。


「はい、我が王が備えて下さりました家屋がございます」

「今も?」

「はい。王宮のすぐ隣になります。今度機会がある時に是非、お立ち寄り下さい」

すごく興味が湧いた。


「リーザがどんな生活を送って来ていたかを感じられれば、今後の私たちが生活するのにプラスになると思う」

引っ越し、部屋選びが私の都合だけと気付いた。


「リーザが私と暮らし、今までと違う事により変な不自由を作りたく無いからなぁ」

エルフの実生活、、、そう言えば、全く知らないわ。


「もうだいぶ経って今更だけど。もし引っ越すのなら、参考になるかも知れないし」

興味が出て来た反面、何か怖い。


イメージだと『原始的な』生活を送っているとの事だが、王宮はしっかりとした石造りの建物だった。『女王の間』『女王の私室』も装飾品で飾られていた。


イメージだけで、情報を殆んど得てない私の先入観がおかしいかもな。


「行きましょう、私の住居へ」

「うん」

どうやって?



リーザが目を閉じ何やら念じている。

エルフの里国の王、花の王と『念話』を行なってるとの事。


「はい、我が王の許可を頂きました」

リーザがニコリとした。


私がエルフの里国に行き、リーザの部屋(住まい、王様が備えた家屋)を訪問する許可を取ってもらった。


「例え我が王が許可を下されなくても、行っちゃいますがね」

いやいや、王様の許可って絶対的なモノじゃ無いの?

王様の許可を無視しちゃったら、誰がリーザを諌められるの?


「何か持って行く物有る?注意点とか」

リーザはう〜んと言いながら、私の全身を見回した。


「電子機器類はヤメましょう。時計もですね」

「後、金属類も出来るだけ避けた方がいいかも知れません」

私はベルトを外し、財布(小銭やチャック)は引き出しの中へ、眼鏡、、、はポケットに入れた。


「良いんじゃないかな」

準備が整った事をリーザに伝えた。

靴を履き、狭い玄関口にリーザと向かい合って立つ。


リーザとの距離が近いので、思わずキスした。

照れるリーザ、可愛い。

「実はですね」

リーザが言う。


「今までは私自身の一人で『繋ぎ・越える』術を使いましたが、私以外が加わる、二人同時に繋いで越える移動を行うのは初めてなんです」

ふむふむ。


「だからですね、ちょっぴりですが不安も有ります」

リーザが不安だなんて珍しい。

、、、はっ!そんだけ危険って事!?


「何かあったら、、、空間での迷子とか、体と心の分離とか、、、ですが、心配はご無用です」

え、え、迷子?分離って?

心配になって来た。


「我が王がなんとかして下さりますから」

え?え?王様?

でも珍しい、確定されない行動になるのに、リーザに迷いが無い。

エルフって、結果が予想しずらい事や、不確定要素の事柄には考察に時間を掛ける。

(“時間を掛ける”と言っても、私達人間からすれば、即答に近く感じちゃう時も有るけど)

でも不確定要素には、戸惑いを見せ、それこそ一歩目を躊躇しがちである。


「それでは、トキヒコさん、両手を出して下さい」

狭い玄関口で二人で向き合ったまま、リーザは私の手を取った。


「目をつぶりましょう」

私が目をつぶった瞬間に例の『ゾクッ』とする感覚が来た。

すぐさま『ストン』と、何処かに到着、着地でもした感覚があった。


目を開く。


目の前には笑顔のリーザ(玄関口と一緒だ)。

でも背景が違う。白い土壁の部屋の中だ。

「ようこそ我が家へ、トキヒコさん!」


リーザの家に着いたようだ。



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