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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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花の王、ユーカナーサリー遊びに来る

 ちょっと散歩がてらにコンビニで飲み物などを買って帰宅した。


 現在の我が家は10年程前に郊外に小さな土地付きの中古住宅をなんとか(25年ローン、返済終わるの還暦過ぎだよ!)で購入し、移り住んでいる。


「女王様」

「ここでその呼び方は止めいよ」

 えー、コホン、

「ユーカナーサリーさん」

「“さん”も不用じゃ」

 改めて、

「ユーカナーサリー、今日はいかがしたのですか?」

 女王様は不定期だが頻繁に?我が家に来訪頂いている。

 元々は、人間とエルフとの混血児となる、さくらが成長するに当たり、人間とエルフ、生命体として持つ差異が、それぞれがさくらに及ぼす何かの影響が有るのか無いのか、、、その観察と調整をして頂いている。

 なお、さくらに渡ったエルフの持つ力が人間社会の生活において、悪戯に現れない様に“枷”を掛けて頂いている。その観測も合わせて。

 そしてその”枷“は、さくらが持つとされる”未知なる力“を抑える働きにもなっている。


 しかし決して、お一人で家の外へは出ない、、、外出される時は、常に私達の誰かと一緒に、、、2,3回ぐらいはあったか?


「これか、アイスじゃな。アイスが気になるのだな。さくらに買ってこさせた。」

「私の奢りだよ。お父さんの分も有るよ。」

 さくら〜ぁ、女王様に対して奢りって。せめて献上品ぐらいにしとけよ。

 『アイスクリーム』は女王様による、さくらへの観測と調整代、、、云わば診察費用相当なのであるが、今日はさくらが自ら払ったって事なのね。


『ユーカナーサリー』というのは、エルフの里国の王、花の王、女王様の名前である。


 この名で女王様の事をお呼び出来るのは、エルフ族の中でもリーザ唯一人だけである。

 また、女王様をこの名で呼べる場所も限られていて、王の私室内か王とリーザが二人きりの時だけ許される。

 エルフの里国では、相手を呼ぶ時は“呼称”で呼び合う場合が殆どで、本来持つ名前を外では余り使わない。変だ、私は慣れない。だけどそれは彼らの文化や習慣なので、、、なかなか合わせられないから、エルフ達には名前を聞いて、それで呼び掛ける事を許してもらう事が多い。

 そんで、教えてもらった名前を(何か言い難い、発音しづらい事が多々なので)少し略して呼んじゃう事が殆どで、、、まぁ、許してもらえてるかな。


 エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーの名前は、エルフの里国の民達に別段知らされてはいないみたい。女王様のお名前が『ユーカナーサリー』である事は知らされていないみたいだ。

 トップシークレット?なの?

 私もリーザと同じ条件の下で、お許しを頂いている。


そうだ、

「あ、王、、、ユーカナーサリー、先日さくらは熊やライオンより自分の方が強いって言っていたのですが」

「ふむ、ペロ」

アイス、私も食べよかなぁ。


「エルフって強いんですか?」

リーザが強いのは知っている。


  だけどエルフ全体として、ヒトよりどれぐらい格闘というか戦闘力というか、どれぐらいに強いんだろう。

  興味本位なのは否めないが、私も一男の子として『戦う』事には興味がある。

私は戦わないけどね。


「強い、強さとは色々とあるがの。貴公が知りたい強さは力技じゃな。」

こくり。

アイスくってる。


「我がエルフの里国、エルフの民の中には戦士と呼ぶに相応しい強靭な者が多くいるぞ」

こくり、ペロ。


リーザから『戦士』って言葉で聞いた事がある。

ペロ。


「因みにリーザも10の指に入るぞ」

おっと、アイス落としそうになった。

やっぱりリーザ、相当強いんだ。


「例えばじゃな、お主も知るこの世界で地上でもっとも大きく重いとされるアフリカゾウ、長鼻目ゾウ科のあ奴じゃ。10t近くあるぞ。あ奴と対峙しても負けぬ」

こくり、ペロ


「それとじゃな、北の氷の地区、北極圏だな。そこに生息する哺乳網食肉目クマ科クマ属のなホッキョクグマ。全身が白い体毛に覆われているように見えるからじゃがシロクマとも言うがの。奴らの5頭に囲まれても負けぬ」

こくり、ペロ


「どうじゃ、エルフは強き者じゃ」

「はい」


「なんじゃ、反応が薄いのぉ」

エルフは嘘をつかない。


でも女王様って本当にエルフか?感情表現豊か過ぎだし、耳もそれ程は尖ってない。フランク過ぎだろ。


「どれ、さくら。こちらへ」

さくらはヒザで立った状態で女王様のいるソファーにずるずると進んだ。

さくらぁ、女王様にそんな近付き方、失礼だぞ。お行儀悪いと言われても仕方ないぞ。


「手を」

女王様がそう言うと、さくらは右手を差し出した。

女王様はその手を上下に挟むような形で包み込み、ジッとさくらに目を向けた。


「やはり中々に強いな。魔力の方は相変わらず強力ぞ、こちらが火傷してしまうわ。体内の魔術経路も良い流れじゃ。その内誰ぞに教わるといい。」

「女王様が教えて下さるのではなくて」


 さくらが持つと言う魔力。人間社会では基本使用禁止にしているので女王ユーカナーサリーの”枷“によって抑えても頂いている。(緊急事態とかで、さくらが自身の力で解除する事は可能だそうだが)


「うむ、我とさくらでは魔力の波動、流るる鼓動、血色、性質、生み出す波紋に差異が多かろう。母なるリーザかそちの祖父母、いずれにせよ自身の血族にて繋がれて行くモノじゃ。」

 さくらには、その機会は果たして来るのだろうか。

 サクラが人間として、人間社会でその生を全うするのであれば『術』を身に着けても、使う機会は無いのかも知れない。


「いずれにせよ、我もさくらを導くぞ。先ずはリーザなり祖父母殿より教わってからじゃが、我はさくらに強烈な術の数々を伝えようぞ。楽しみぢゃな。」

 強烈な“術”って、何だ?

「はい女王様、強烈なヤツを沢山お願いします。」

 あー女王様、さくらをそんなに煽らないで。力も強力だと今言ったばかりなのに。無双の娘を持つ親にしたいのですか?

「楽しみじゃの~我らにて、世界を凌駕する力を持とうぞ!」

 


 花の王、女王ユーカナーサリーは我が家に来ると口が悪い。態度も少しだらしないと感じちゃう気がする。

「誰がじゃ」

 あー、ちょっと女王様に向けて開いちゃったか。


「女王様、ユーカナーサリー、我が家に来た時(人間界)では、頭の中を見るのは禁止です」

「あー許せ、癖じゃ癖。ついな」

 エルフは悪気も無いので逆に困る事も多々有る。


「それよりも、トキヒコ殿」

「はい」

「そろそろ我が里国に来て暮らさぬか?さくらも一緒ぞ。」

「ありがとうございます」

いつも聞いて下さるが、踏ん切りが付かない。


私はこの人間社会で生まれ育った。友達と呼べる相手は数少ないが、両親もまだ健在だ。

この人間社会で達成しなくては成らない目標や野望は特に無い。


今すぐこのまま、エルフの世界に飛び出したとしても、さほど未練も無いだろう。


私を人間社会に留める理由はさくらである。

さくらは人間とエルフとの混血児。そして人間社会で生まれ育った。

さくらは、人間としての生を全うするのか、エルフとして生きるのか、、、。


これは、さくらが生まれた時から抱える私の悩みであり疑問、心配事である。


しかしこの私の疑問が解決されるのは、実際にさくらが寿命としての『死』を迎える時なのかも知れない。

よって、私が知る、分かる、解決する事の無い事も分かる。分かっているつもりだ。でも、、、。


「さくらぁ~、お主だけでも来い。我が民達は皆お主を好いとるぞ、エルフ界のアイドルスタアじゃ」

「我の後継者と申す者もおるでな」

カッカッカッと女王様は笑う。


「アイドルかぁ」

お、さくら満更でも無い。


「でもね女王様、人気者ってそれだけ期待が大きい反面、上手く出来なかった時のバッシングも酷いの」

バッシングかぁ、エルフ界でもあり得る?


「なのに女王様はエルフ達みんなに好かれてるんでしょ、支持率100パーセントだもんね凄いわぁ!」

おっ、女王様も満更で無い。


「私も女王様好きよ」

と女王様に抱き付く。


さくらの『女王様好き』が『親戚のおばちゃん好き』に見えてしまうのは錯覚か。

「何ぞ言いたそうじゃな、トキヒコ殿」

「いえいえいえいえ」



あれ?女王様はさくらをエルフ世界で引き取ると、、、

女王様に聞きたい。さくらは将来人間としての人生を全うするのか。それともエルフとしての道を歩めるのか。寿命に絡む問題だ。

私が悶絶してしまう程の悩みである。

しかし、花の王はいつも優しく、私を諭すように語り掛けて下さる。

「トキヒコ殿、貴公が悩み考えても、この世には結果が出なければ解明とならぬ物事は多いぞ。またそれは全ての物事にも当てはまる事ぞ」


女王様はさくらに対して人一倍目を(エルフ倍?)掛けて下さっている。

従者であり、友人とも言えるリーザの娘だから。世にも稀な人間とエルフの混血児だから。いやそんな事を超越して接して下さっている事がひしひしと伝わって来る。


実際に、リーザの妊娠が発覚し、さくらがお腹の中に確認出来た時から、その育成~そしてさくらが誕生する際にも、は多くの力を貸して頂き、その後の成育に対しても多大な力を発揮して頂いた。


今のさくらが健康に産まれ、育った事は、全て女王様のお力添えだと思う。間違いの無い事実であり、本当に感謝しかない。


が、同時に何でそこまで?とも思ってしまう自分が嫌い。


さくらの行く末、 女王様は知っている。解っているのかも知れない。


私はモヤモヤは続いている。何時も持ち続けてもいる。


そんな私の気を知るのか知らずか、女王ユーカナーサリーは言葉を続けてくれた。


「ヒトは何故誕生しヒトはどこへ行くのか。宇宙の起源と拡張して行くその先は。一般相対性理論?量子重力理論?因果集合理論?神の存在。知ってどうする。よしんばそれらを解明したとせよ、我にはそれが新たな人間同士の争いの火種となる懸念しか思い浮かばん。ヒト、人間は知らなくてもいい事が存在するのを好まんな」


人間が知らなくてもいいこと、、、確かにそんな存在は有るだろう。


しかし、私が持つさくらの将来については誰に何と言われよう、聞かされたとしても、呪縛のように疑問として抱え、いつまでも私を縛るだろう。

でも少し、少しだけ気が楽になったかも。

「女王様、ありがとう」


花の王は自身より劣る生命体に対し、いつも優しく導いて下さる。




「うむ。しかしだな」

何か?

「リーザとさくら、この地球上で最強であろう者たちをだな、二人を従えさせているお主には『猛獣遣い』の呼称を与えてやっても良いのかも知れぬな」


猛獣遣いって~

「止めて下さいよ。私は脆弱なただの人間なんですから」

カッカッカッカ、、、と花の王が笑う。


「『強欲』を付け忘れておるぞ。だがの、いくら猛獣遣いであれど我を抑え込む事は出来るかの!」

そう言うなり花の王はじゃれるように飛び掛かって来た。

「ガオー」


隣で見ていたさくらも花の王に続いて飛び掛かって来た。

「がおぉ~ん」

あれ、さくら?女王様がいるけど幼女モードになるの?

リーザに見られたら大目玉だな。


「そろそろお暇だ。余り玉座を空けておくと、小うるさい者も要るでな」

女王様は立ち上がった。


玄関まで女王様をお送りする。

(日本の生活形態に合わせ、玄関で履き物をお脱ぎ頂いているので)

「また来るぞ」

あっ、痛っ


女王様が繋ぐと、私は小さく瞬間的な痛みを憶える。


女王様が来る合図にはなるのだが、この痛みを感じた時にはもう目の前に来ていらっしゃるのが常だ。

とんと目安にもならん。私の受け方、感じ方の問題なんだろうが、もっと別に何かないのかぁ。


程なくしてゾクッと来た。リーザが帰ってきたようだ。

「ただいま戻りました~」


いつもの明るい声。この部屋の空気感が変わった気もする。


「本当に今の今、女王様と入れ違ったよ」

「うん、ユーカナーサリーを感じるわ、何か言ってらした?」

ブンブンと頭を振った。

「さくらが女王様にアイスを奢ったそうだ」


隣にいたさくらが

「お父さんねえ、猛獣遣いなんだって」

「猛獣遣い?何故です?」

「ママと私、猛獣なんだって」


「なんで私が猛獣よっ!ガオー!」

リーザが飛び掛かって来た。


両腕を脇から背中に回し抱えられるように2m程ぶっ飛んだ。

そしてそのままベットにフワリと着地した。

「ガオ」


リーザの顔が目の前にあり、つぶやくように囁くとそのまま口を塞がれた。

温かく柔らかい。リーザの体温も伝わって来る。ずっとこうしていたいのだが、視線を感じる。


私はリーザの肩をポンポンとたたき、お互いに少し離れてベットのへりに並んで腰かけた。


「ガォ~ン」

間髪入れずにさくらのアタックだ。


幼女モードのさくらは(余り)手加減を知らない。

私はさくらの頭と壁に挟まれ、胃の中の物が出そうになった。

どうやら肋骨にヒビでも入ったように痛む。

「あたたたた、、、」


それを察したリーザが黙って痛みの箇所に手の平を当ててくれた。

柔らかな温かさで、痛みが柔いで行く。


『癒す者』の呼称も持つ、リーザならではの対処法、助かる。

目線を下げると、さくらがニッコリとして私の胸の中から見上げてきた。


あ~幸せで死にそうだよ。


でもな、痛た、たたた、、、。


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