幻獣の森 フオコォの使命
フオコォが姿を現した。
その姿は、先程空中で消え去った時よりも大きくなっており、象みたいなサイズだ!
ケンタウロス?達はフオコォに向かい、一斉に攻撃を仕掛ける。
だが、大きく成長したフオコォには、ケンタウロス?達が何をしようが何も届かなかった。
届かない、、、近づく事もままならず、それこそ、弓矢を射ろうが、石を投げようが、長い槍で突こうが、どれもフオコォの身体には届かない。身体の周囲にバリアーでも有る様に。正に無敵。
フオコォは、弓矢や投石の雨の中を悠々と歩み、私の前に立った。
(『トキヒコ、私はあなたに救われた。この生はあなたのモノであるのと同じ。だからあなたに立ち合って欲しい。』)
「何に対して立ち合うんだ?」
(『トキヒコ、ルー、行こう、、、ルールラー』)
しかし、何故『滅ばせの者』『禍の獣』なんだ?
フオコォはケンタウロス?達の誰も傷つけていない。
意思を持ち、考え判断出来る。相手の事を思う事も出来る。何故だ、何がだ?
『厄災の獣』『禍の獣』が起こした災害である山火事。フオコォはそれを今から行うと言うのか?何が有るんだ?
畏れと偏見、、、なのか?
人間は、未知の者、理解の出来ない事象に対して、恐れるか、敬う。畏敬の念を持ち、相手や事象に対して崇高の思いを持てば、それを神として扱い、敬う。
しかし、畏怖の念が変形すれば、それは恐れとなり、悪としての扱いとなる。
例え同じ相手や事象、現象であっても、見た者が受ける感じの度合いで、どうにでも捉えられてしまう。言い換えれば、対峙した者の都合だ。
自分が理解出来ない事を意味嫌う。古代の人間が取った態度であり行動だ。
ここで出会った老ケンタウロスの彼らからも、それを強く感じたが。
『厄災の獣』『禍の獣』『滅ばせの者』、、、だからフオコォには、、、行き場が無い。
、、、『滅ばせの者』だけが、何か引っかかる。何故『獣』では無く『者』と表現される?
まあ、ケンタウロス?達の言葉だし、古文書か何かからの引用だろうから、どれも災いに変わりは無いから、余り意味は無いか。
フオコォ、、、今この場で、エルフの里国へ連れて帰るか。
いや、そんな勝手な事は許されないだろうし、私が面倒をみてあげれない。
では、私の家なら、、、ダメだ。元々幻の世界とも思われる存在。仮に人間社会に来たらどうなる?
多分狙われる。興味本意に止まらない、悪意に囲まれてしまう事が目に見える。
(『トキヒコ、いいんだ、、、ルー、ルー、ルー、、、』)
「何がいいんだ?」
(『私の行くべき所、進むべき場は有る。』)
「え?それはどこ?」
(『それは、ココ。この世界に留まる。』)
「それだと、ずっと彼ら(ケンタウロス?)に追われるだけだぞ!」
オレが決断しなかったから、フオコォを守ろうと決めなかったからか?!
(『、、、いいんだ、、、トキヒコ、、、』)
(『わたしはトキヒコに救われ、喜びと温かさを知ってしまった。』)
(『だが、私は使命を果たさねばならない。だからトキヒコ、行こう。』)
使命、、、。
「フオコォ、使命って何だ、お前は何をしなくちゃならないんだ!」
(『ルー、トキヒコ、、、行こう、、、』)
私は象とも思える大きさとなった、フオコォの背に乗っていた。
フオコォは地面をひと蹴りすると、空に舞い上がった。
「フオコォ、何処に行くんだ?」
使命って、何だ?
フオコォは私をその背に乗せたまま、地上からは恐らく見えない、凄く高い空間をゆっくりと進んでいる。
そして、この世界で一番高いと思われる山頂に降り立った。
(『ルー、トキヒコ、立ち合いだ、ルラー、ルー』)
「何の?」
フオコォは私から20メートル程離れ向き合うと、全身の炎の体毛を逆立てた。その姿は燃え上がる炎のようだ。
いや、実際に燃え出した!
「フオコォ!何故、フオコォ!何でお前が燃えているんだ!」
フオコォに近付け無い!結界か何かだ。でも、私に掛けられているザーララの結界はフオコォの力と相反するはずなのに、弾かれ無い!
フオコォは燃えている。自分自身で炎となっている。
(『ルー、トキヒコ、立ち合いだ、ルー、、、これが、わたしの、、、使命。』)
「いやフオコォ!意味分かんないよ!止めろっ!早くその火を消してくれ!」
(『、、、ルー、ルー、ルー、、、』)
「フオコォおっ!」
(『スルガトキヒコよ、理の境に立つ者よ』)
え?すいませんの人、何か?何で今ここに?!
(『スルガトキヒコよ、理における運命の一環である』)
「すいませんの何か!断りでも何でもいいから、フオコォの火を消してくれっ!」
(『スルガトキヒコよ、主は立ち合い者となった。立ち合い者は見届けねばならない』)
「立ち合い者って、何に対してだよっ!何を見るんだよっ!それよりも早く、フオコォの火を消してくれっ!」
(『スルガトキヒコよ、立ち合いの意味を知らせよう』)
意味、、、?
(『それは、この世界の理』)
この地は、500の年に一度小さき炎、1000の年に一度大いなる炎が現れる。
現れたる炎はこの地の部分を焼き払い、焼き尽くす。
その炎は任を持つ者、レーニャフィアンマサルトーが起こす炎。
立ち合い者の眼前にて、炎を起こす。
炎の後に、焼け跡より新たな芽生えが行われ、新たな生命が誕生する。
立ち合い者は学び、残された者達へ伝え説き、新たな生命を育て上げる。
それは、繰り返し行われて来た、この地における定められた営みであり理となる。
しかししてある時、焼き払われる事を拒んだ立ち合い者は、炎の任を持つ者を迎え入れずに断じてしまった。
その後、炎の任を持つ者は断じ続けられ、今に至る。
(『スルガトキヒコ、目を凝らし、遠を見よ』)
振り返って見た先の景色には、遠目でも判る、白く枯れ果てた木々の山、植物達が自生を失ってしまったハゲ山。今いるこの山頂に迫るかの様に、周囲には多くの死んだ山々が見て取れる。
(『今、この世界は炎に包まれず3000の年以上の時が流れている。』)
これは異常事態であり、この地に住む木々達は、後10の年を経ぎれば、全て枯れ果てるであろう。
さすれば、この地に残された、営む者達は如何となろう。
滅びだ。
しかし、彼らはその運命を自ら選んだ。炎の任を持つ者、レーニャフィアンマサルトーを断ずる事を選んだのだ。
ケンタウロス達が一番に危惧しているのは、火だ。山火事だ。
彼らにしてみれば、山火事は生活を脅かされる何物でも無い。
当然の事ながら、その原因となる『厄災の獣』『幻獣〜フオコォ』は断じられ、弓矢で射ぬかれた。
任を持つ者、、、『滅ばせの者』だ。
以前は対等の立場の『者』として、語ったんだ。そして『立ち合い者』となった者は、学んだんだ。この地が炎によって焼き払われ、その後に向かえる再生と誕生の循環の物語を。
でも同時に、目の前に現れた者が、炎を、山火事を起こす事を知ったのなら、、、
それは、豊かに育っている森を焼き、今の生活が追いやられる。一度始まった山火事は、どこまで燃え広がり、いつ鎮火となるのかは分からない。
この地で暮らす皆を守る為、今の生活を守る為に、眼前に迫る危険を排除する事として、優先される行いとなった、、、『滅ばせの者』を断じた。循環の物語は、自身の行いを正当化させる為に都合良く消されたのだろう。
そしていつからか、任を持つ者である『滅ばせの者』は『厄災の獣』と呼ばれ、『獣』扱いされるようになり、語り合う事も無く、断じ続けられるようになったのか。
しかし、その行為が自分達のいる世界の存続を失ってしまう事になるなんて、誰が解る、誰が想像出来る?
(『彼らは選んだ。それも運命』)
「運命って、何だ!運命の為に犠牲を承知で生まれても良い道理は有るのか!」
フオコォは自らが燃えてしまう運命を背負って誕生したのか!
そんなの有りか!それでいいのか!
(『スルガトキヒコよ、否定も肯定もせず、ただ受け入れるのみ。ならば、主が生を営む為に糧と成り、失われる命は何とする』)
オレに食われる為に生まれてくる命なんて有るのか、、、いや、結果としてそうなってる。
人に食われる為に飼われる命、栽培される命、、、
だけどっ!、、、でも、、、
(『スルガトキヒコよ、主はこの場の立ち合い者。見届けよ。』)
但し、主はこの世界と異なる世界の存在。この世界に営む者達への説は不要。
この地の者達は、此度の炎が気付きとなるのか、はたまた断じを繰り返すのか。委ねればなるまい。
それもまた、運命。
しかし、10の年の先に迎えるべく滅びへの道は、一先ず延ばされよう。スルガトキヒコは、この世界の運命を変えた。
オレには関係無い!
「フオコォ、止めろ!戻って来い!」
フオコォに近付け無い。オレは、オレは、、、何も出来ない、、、無力だ!
ただただ燃える友を見ている事しか出来ないなんて、あんまりだ!止めてくれ!
(『スルガトキヒコ、レーニャフィアンマサルトーはこの地に営む者からすれば悪。しかし、この世界からすれば、善。』)
「関係無い!早く、早くこの火を消せっ!」
(『ルー、トキヒコ、、、ありがとう、、、ルー、ルラー、、、』)
(『ルー、次に生まれる事になったら、、、一番にトキヒコに会いに、、、いくよ、、、ルー、、、』)
「バカヤロー!次にお前が生まれたとしても、1000年後だろっ!オレは死んでるよ、会えないよ!バカヤロー!」
(『トキヒコ、ありがとう、、、ルー、、、。』)
「この世界の、フオコォのバカヤロー!」




