幻獣の森 厄災の獣
フオコォに連れられて到着した場所は、森の中。
太く背の高い、見上げても上がどうなってるのか分からない大木が狭い間隔で多く並び、私の世界やエルフの里国、私の知る森とは幾分か様相が違うと感じられる。
ここは、何処だ?
「フオコォ、ここは何処だ?」
(『、、、ルー、トキヒコ、ルー、、、来た』)
「だから、何処に来たんだよ?」
その時!
シュッ
トントン
弓矢の様だ。それも二本。
その矢は細く短く、だけど殆んど真っ直ぐな木の枝だ。
一本は地面に落ち、もう一本は木に刺さり掛かり、木の皮にぶら下がっている。
危っぶねぇ~なぁ!
でも誰が?
矢の届いた位置や軌道を考えると、私を狙ったのでは無く、どうやら狙われたのはフオコォの様だ。
フオコォ、あの怪我は、この矢で射られたのか!
この二本の弓矢が合図の様に、雨のごとく矢が降り注いで来た!
無理、避けれない。一貫の終わり。
私は素早く大木に張り付き、身を隠す。
フオコォは逃げも隠れもせず、その場に立ち止まるままだ。
「フオコォ!隠れろ!身を隠せ!」
しかし、雨のごとく降り注ぐ多くの矢は、私にもフオコォにも達しない。
フオコォの周囲に透明な傘でも有るのかの様に、多くの矢は頭上や手前で跳ね返る様に地面へと落ちる。
私の方に流れて来た矢も、同様に地面へ落ちる。
物理的な結界か?ザーララさんと女王ユーカナーサリーが掛けて下さったモノか?
フオコォからの「怒り」が私に伝わって来る!そしてその姿が変わって行く。
大きく燃え上がる様にその体毛を激しく揺らし、手足も伸び成長して行く。
仔犬から成犬へと変わっていたが、更にその姿は大きくなり、今や大型の虎の様になった。虎よりももっとデカイ!怪獣だっ!
うわっ!大迫力!
『グググ、グワガァー!』
フオコォは叫び声とも取れる唸り声を上げると飛び上がった。
そして上空にて、大きく強い光を放つと、消えてしまった。
「フオコォ!?」
「消えた」
呆気に取られたまま、大木が立ち並ぶ森の空を見上げていたが、フオコォは再び現れる事は無かった。
「フオコォ、何処に行った?」
それよりだ、、、。
こんな右も左も分からない場所に置いてけぼりになって、オレにどうしろと?あ~もう!
仕方がないので、私は弓矢が射られた場所だろう方向に進んだ。
でも、矢を放った者が私を狙ったので無くとも、対面したらちょっと心配。
矢の山とも言える状態となったこの場を踏み越えて行くが、靴履いて無い。寝ていたから裸足のまま。
危ないなぁ。
矢の山を乗り越え、ザクザクと森を進む。
人?!なんか怪人?いや、こいつは、、、ケンタウロス!?これこそが『幻獣』!?
人の顔に体。でも脚が四本生えている。
何かの本とかゲームの世界で見たケンタウロスとは、ちょっと様相が違う。
人間の上半身に四本脚、、、なんだけど、馬みたいにその背に乗れる程に胴体は前後に長くは無い。
後ろに大きく出っ張った大きなお尻に、もう二本足が付いている感じ。
でも足の作りは人間では無く、獣の物だ。ニホンカモシカみたいにゴッツイの。
まあ、その背中に密着したなら、その背に乗れない事も無さそうだけど。
ケンタウロス?の30人ぐらいが、その場で倒れている。
誰一人、血を流したりはしていないが、死んでたら嫌だし、なんかちょっと触るの恐い。
ケンタウロス?の皆は、片方の肩を出す袈裟懸けにしたワンピースの様な服を身につけている。片方の腕と肩を出しているのは、弓矢を使い易い様にかな。
ちょっと足先で相手の足を蹴る。
反応が無い。
しかし、程なくして、気が付いた者から次々と頭を振りつつ上半身を起こす。
そして、四本の脚で立ち上がる。
ちょっと、足の動きが気持ち悪い。
あれよあれよの間に、私はケンタウロス?に取り囲まれてしまった。
あ、あ、あっ、ありゃ、どうしよう?
私は連れられて行った。
間隔の狭い大木が並ぶ森の中をケンタウロス?に囲まれながら、無言での行進が始まった。
ケンタウロス?達の足の動き、何か気持ち悪い。
前後の足がぶつからない様に、後ろ脚は鳥足に近い逆関節風で、一歩が広い。
私は大股で、比較的早足だと思うけど、一緒に歩こうとすると、ちょっと苦しい。裸足だし。
私の世界の誰かが以前、この世界に来た事があって、その時に見た彼らの姿を元の世界に戻ってから、何かに描き表したから、私の知る、空想の世界での住人で『幻獣』とでも呼べる『ケンタウロス』と思ったとしか考えられん。
誰が何時来た?どうやって?
大木の森を抜けると、ケンタウロス?達が暮らす村、いや、経済的な文化圏や産業を感じられないだけで、村と言うには収まらない規模の建物数に広がりと密度、それと人口(ケンタウロス?口)であろう。
私は綱で縛られたり、腕を取られている訳では無いが、連行されている事には変わらない。
村の奥へ進み、中心部と思われる一際大きな建物、木材、草木を材料とした、ここの木造建物では唯一の四階建ての建物の前まで来た。
ケンタウロス?達は左右に並び、私が進むべき道を作る。言葉は無い。
オレに、ここを通って進んで行けって事か。
外に張り出した、二階分を上がる階段の先に有る入り口には、真っ白な衣服を身に付けたケンタウロス?が立っている。
他の者とは違う雰囲気を持つ、白い衣服のケンタウロス?に続き、もう一段屋内の階段を上がる。三階相当に位置する場所だろう。
このフロアの奥には祭壇を思わせる物が有り、三人の老ケンタウロス?達が居る。
(「来た者よ、何者となる。“理の者”と異なる、別の異なる場の者となるのか」)」
口を開いた老ケンタウロス?の言葉が頭の中に入って来た。
フオコォの声の入りに似ている。ん?あれ?この間の夢だったか、“すいませんの人”の感じにも似ているような?
(「お主は、“理の者”の代弁者なのか?」)
“代弁者”?何でオレが見ず知らずの『すいませんの人』に代わって、謝らなくちゃいけないんだよっ!
「いえ、私はスルガ トキヒコと言う名前の人間です。確かに、この世界とは別の世界の者です」
どうやって、ココに来たのかは説明出来ないし、来た目的は何でだろう。それは、私が知りたい。
(「お主は『厄災の獣』『禍の獣』『滅ばせの者』と同時に現れたと聞く」)
フオコォのこの世界での呼び名か?でも、厄災だか禍って、、、。
(「記録と同様。全身に炎を纏いし姿である」)
(「“理の者”とは違うと申すか」)
「あ~、すみません。サッパリ分かりません。ココ、何処なんですか?」
私が“理の者”の関係者では無く、また『厄災の獣』自体でも無く、“迷い込んだ者”として、扱ってくれそうな感じ。
(「ならばスルガトキヒコ、聞かそう。我らが世界の“理”を」)
(「この世界には500の年と1000の年の一度に『厄災の獣』が現れ、この世界に火を掛ける。」)
(「『厄災の獣』のその生が、未熟な内に滅ぼすのが、我ら自身を守るが為。」)
(「災いの獣、禍の獣、厄の獣、滅ばせの者、、、厄災の獣。」)
(「我らが一番恐れるモノは何か解るか?」)
何だろう?足に怪我する?飢餓とか?
(「火だ。山火事止めれぬ万事の災害。手を打つが火、静まるを待つしか無い。山火事を起こす者は『厄災の獣』。火種は摘まねばならん。」)
(「我らの書物に記されている」)
(「元々は500と1000の周期にて『厄災の獣』は現れ、この地の一部や大部分を焼き払う為に、自らを炎と変え、炎と共に消えて行った。残されるのは万事の災禍成る山火事のみ。」)
この世界、この地にて太古から繰り返され続くこの災害には、記録を記したケンタウロス?が必ず存在し、子孫となるケンタウロス?達が書物や記録を解読し、『厄災の獣』が現れる周期を知った。
書物には、現れたばかりの『厄災の獣』は、か弱く打ち倒す事も可能だと。
(「今居るこの場は『厄災の獣』観測する場。記録を測り監視を行い、『厄災の獣』の現れを待ち、測り観察し迎え打つ。」)
(「我らが森、我らが地を災害から守る事。最優先されるべき事。」)
(「この地における“理”を守るべきは、『厄災の獣』を打ち倒す事のみが唯一の手段。」)
(「かと云って、此度、最早手遅れかも知れん。厄災なる獣は育った。我らの力では到底及ばない。)」
(「この3000と500の年を守られた世界も、この代にて終焉を迎える事となろうとは。」)
オレがフオコォを助けちゃったから、この世界が炎に包まれて、滅んでしまうって事か?!
でも、フオコォが『厄災の獣』だなんて、、、確かに異常とも取れる“力”を持っている。
空間を越え、夢世界だか精神世界に現れて、ザーララさんの“力”と向き合える。
何より『紅の瞳』を持つ。
フオコォ。この世界でお前は、何をしようとしているんだ?どうしてオレをこの世界に連れて来た?
外からの声がこの建物内に届き、階段を掛け上がって来るケンタウロス?、騒がしく、荒々しく声を上げるケンタウロス?。
二階部分に降り、外を伺う。
この建物の前方には、100人を越すか、もっと多くのケンタウロス?達が弓矢や石、何やらの武器と思われる物を手にして集まり、慌ただしくしている。
戦争の出陣式でも始まるのかなぁ?
フオコォが現れた。




