幻獣の森 フオコォの行く先
トキヒコは一度眠ると、その眠りは深い。
多少の事では起きないし、起きても直ぐに寝直す。
(『、、、ルー、ルールー、トキヒコ、ルー、、、』)
トキヒコは起きた。
フオコォが寝ている私の上に乗り、その鼻先を私の鼻に近付つつ、私の顔を覗き込んでいる。
「フオコォ!どうした?」
リーザが私の横で体を起こす。だからフオコォは、私の夢の中や精神世界では無く、実体を伴って現出している。
でも、私の世界、人間社会にやって来ちゃったって事だ。
だけどフオコォの身体、大型の成犬ぐらいの大きさになってる。
体が大きくなっても、燃える炎の様な体毛、ここからでも見える胸の傷痕、フオコォに間違い無い。ドゥブリーザチョッドレウンの里の森で別れてから、二日しか経って無いのに。
「どうした、フオコォ。自分の世界に帰れなかったのか?」
(『ルー、トキヒコ、ルー、行こう、ルールー』)
フオコォはこの間から、オレを何処に行かそうとしてんだ?
「フオコォ、トキヒコさんは何処にも行きません。あなたと共には進め無いのです」
リーザがフオコォを優しく諭す。
(『ルー、トキヒコ、行こう、ルー、行こう、ルー、ルラー』)
フオコォ、全然聞いて無い。
(『行こう、トキヒコ、行こう、行こう、ルー、ルラー』)
フオコォは、トキヒコの上で跳ね出した。
「おいおい、オレの上で暴れるなよ」
フオコォから“力”が膨らみ出したのが分かる。
止せ、オレが吹っ飛ぶ!
「フオコォ止めなさい!」
リーザが叫んだ!
トキヒコとフオコォは消えた。
「リーザよ、相分かった。しかし、あやつの“力”我では些か抑え切れるであろうか。尚も見えざる触れざる幻世界の者。姉様の所へ出張ろうぞ」
リーザはトキヒコが消えてしまい、エルフの里国の王、女性ユーカナーサリーの元へ駆け込んだ。
「我が王、お頼み申し上げまする」
トキヒコが何処かへ飛んだり消えたりする事は、初めてでは無い。
しかし今回は勝手が違う。女王ユーカナーサリーが申した通り『見えざる触れざる幻世界の者』が相手。
予想も予測も測れない事象が目の前に現れ、エルフとしての不安と戸惑いに押し潰されそうだ。
事実リーザは全身を震わしている。
「リーザよ案ずるな。その想い、我も同等成るぞ」
女王ユーカナーサリーの気遣いを受けても、リーザの抱えた不安感は拭えなかった。
「トキヒコさん、、、」
「なんだ、あのネズミがやらかしたのか!」
ザーララの山岳城である。
「あのネズミ、ヤツの世界から直接トキヒコの元へ向かったな」
ザーララとフオコォの魔力の性質は反するモノ。
ザーララが観測せず共、エルフの里国内でフオコォが“力”を発生させれば、僅かながらでも反応なり干渉が働く。
しかし、ザーララは何も感じる事は無かった。
「姉様、如何とする」
女王ユーカナーサリーもリーザと同様に、不安に駆られている。
「ユーカナーサリー、リーザリーよ、ヤツが向かった先は幻世界と同意となろう異となる世界。流石のわたしでも、おいそれとは行けぬ」
リーザの顔が蒼白となる。
「しかしな、トキヒコにはわたしの印が付けて有る。それを辿り観測する事は可能。トキヒコに何か有れば、わたしが翔ぼうぞ!」
ザーララであっても、見えざる触れざる幻世界に行く事は不可能。
しかし、その命を懸けたなら、可能性は広がる。
ザーララは命を懸けると宣言した。
「姉様、頼む、、、」
「わたしは準備をする。ユーカナーサリー、リーザリーよ、引き上げてくれ。何かあらば、伝えよう」
さてあのネズミ、トキヒコを連れ行き、何がしたい?




