幻獣の森 ドゥブリーザチョッドレウンの里の森
ヒィ〜、オレだけが苦戦。
ドゥブリーザチョッドレウンの里の森に入り、昨日赤くマーキングした木を伝って森の傾斜を登る。
この森は、小さな生物が飛び交い、鳥や動物達の声が聞こえ、変な表現方法になっちゃうけど、活気の有る森。
凄くいい所、“善い森”と表現出来る場所。
リーザとさくらは脚が強い!
女王様は何やら『術』か『魔力』をお使いなんだろう。
女王ユーカナーサリーは何時もの、立つと裾当たりが後方に跳ね上がる紅いロングコートとも取れる衣服なので、山や森の中では相応しく無い格好。
相応しく無い格好なのに、傾斜の有る森の中でも関係無い。何か、ぴょんぴょんと跳ねる様に登って行かれてる。
昨日、赤いマーキングを付けた張本人が、案内役となるはずの私が、最後尾を行く。
そして昨日体に来た、モモと腰がキツかったイメージに支配されてる。いや、実際に今日も来てる。
フオコォは、私から離れずに付いて来る。忠実な愛犬みたいで可愛い。
「トキヒコさん、マーキングはここまででしょうか?」
リーザから声を掛けられるも、大分先、上に位置する所から、呼び掛けられる。
ここにいる女性陣、肉体的にも精神(プラス魔力)的にも、強過ぎんか?!
草木を掻き分け、ツルや小枝を掴み引っ張り、傾斜を登る。
やっとリーザとさくら、女王ユーカナーサリーが待つ場所まで辿り着く。
ハアハァ、登って来た傾斜を見下ろすと、昨日一人で良くこんな所まで登ったなぁ。案外傾斜キツイぞ。それに道無き道だ。
何か、後先考えずに行動しちゃう私の姿が図示されたいるみたいで、我ながら、ちょっと恥ずかしい。
リーザに声を掛けられたマーキング場所は、昨日最後にスタンプした所で間違い無い。
そう、ここから左を少し見下ろすと、小枝が折れ、草が潰れている、私が進んだ跡が残っている場所。
そして、胸から腹部に掛けて、木の枝が貫き、フオコォが傷付き倒れていた場所。
でも、フオコォが流していたであろう血の跡が無い。
「フオコォ、ここでお別れだ。私達はお前とは違う世界の住人だ。特にオレはエルフの里国とも違う場所に住んでいる。だから私達は、このまま一緒には過ごせないし、それぞれ別の道を歩まなければならない。縁が有れば、また会えるだろう」
あー、悲しい。ペットでは無いけど、昨日知り合った新たな友達との別れ。
『(トキヒコ、ルー、行こう、トキヒコ、ルー、ルー、ルラー、、、』)
「ダメだ。オレ達は一緒にいてはいけない」
そう、そんな気がしてならない。
「もう、怪我すんなよ」
(『、、、ルー』)
「じゃあ、元気でな!」
私は踵を返し、颯爽と、、、あー、ヤバイ!傾斜を駆け降りる事になっちゃった!いやいや落ちてる~!
あっ、あっ、あっ、お、お、おぉ、おおぉ~!
私を先回りした、リーザにガッチリと受け止めてもらった。
「ふぇ~、リーザありがとう」
「問題無きにです」
リーザがニッコリとしてくれる。
そのまま上を見上げ、リーザの肩越しにフオコォの姿を追ったが、フオコォは居なかった。
「アヤツも自身の世界へと戻ったのやも知れん」
女王ユーカナーサリー、傾斜の下り坂も難無しに。
「はい、そうであって欲しいです」
見えない触れれ無い世界の住人。幻世界の者。
もう会うことは、無いだろう。
だけど、愛情が湧いちゃってて、つらい。
「お父さん、このまま上まで登る?」
うん、せっかく来たのだけと、今は一歩でも、一秒でも早くこの場所から離れたい。
「うん、さくらゴメン。帰ろう」
私の気持ちは沈んでいた。
一緒にいる三人の女性陣も、私の気持ちを察してくれている。
王宮への帰り道となった“ボゼックシェチックコボベ”の中でも、私の気持ちは落ち込んでいた。この場の空気を沈ませてしまっている事も分かる。
「今度、もう少し時間が経ったら、ドゥブリーザチョッドレウンの里の森の頂上に有るという、池だか泉に行ってみたい。その時は皆で行こう」
その時、、、しばらくは、行けそうにたいけど。
「お父さん、戻ったら何かする?」
「そうだなぁ~、ボールでも蹴るか」
「付き合うわ」
さくら、気を使ってくれてありがとう。
お酒を飲まない私の気晴らしは、取りあえず体を動かす事かな。
「さくら、何か新しい技、教えて」




