幻獣の森 ドゥブリーザチョッドレウンの里へ
ドゥブリーザチョッドレウンの里へ向かう。
私とリーザ、さくらの三人に加え、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーもご一緒に。それと『幻獣』フオコォは、さくらに抱えられて。
ドゥブリーザチョッドレウンの里に向かうにあたり、女王様にて“ボゼックシェチックコボベ”をお出し頂いた。
ボゼックシェチックコボベとは、まあ馬車の事。
滅多にお目にかかれない乗り物。
ただ、馬車といっても引くべき者はトゥクルトッドドゥーの四頭立て。
トゥクルトッドドゥーが引くから、馬車では無く、トゥクルトッドドゥー車か?
ただ、人を乗せたり荷物を載せる車体部分、居住空間は広い。デカイ、デカ過ぎ!
それは、王成る者の乗り物所以か。
まるで大型バスか電車の車輌1両分ぐらいの大きさである。
しかし、トゥクルトッドドゥーの四頭立ては、物ともせずに動き出す。
トゥクルトッドドゥーは基本、狭い場所と同じく、体を縛られる事を嫌う。
でも、女王様直属の彼らからは微塵も嫌がる素振りが無い。
私は繋がれている四頭のトゥクルトッドドゥーを順に撫ぜて回る。
逞しく、かっこ良く美しい。
大きな木製の車輪を3対六輪が前後の部分に有る12の車輪には、弾力を持つ木の皮で囲まれている。
車軸と車体の間には、竹の様な弾力に富んだ材料から作られた、小さな板バネが非常多く組み込まれており、移動時に発生する揺れに対して、快適な居住空間を作り出す。
そして私達は乗り込んだ。
馬車、トゥクルトッドドゥー車である“ボゼックシェチックコボベ”に操縦を行う行者は居ない。
女王ユーカナーサリーの指示にて、目的地まで私達を運んでくれる。正に自動運転!
四頭のトゥクルトッドドゥーに引かれる“ボゼックシェチックコボベ”は緩やかに、軽やかに走り続ける。
「トキヒコ殿、こやつが昨夜に現れたとの事じゃが」
女王ユーカナーサリー、『幻獣』フオコォを指さす。
「はい。でも、私の夢の中なのか、それこそ多分、精神世界でしょうか」
私の隣で眠るリーザは、気付いていなかった。
「こやつは『見えざる触れざる者』為れ。故にその態が幻成る状態であっても、不思議は無かろうぞ。それ故に、こやつが力を発揮しても、姉様の結界との反発が起きぬやったのじゃろう」
そう、昨夜の『幻獣』フオコォは、その体を大きく変化させた。何か“力”を使ったのだろう。でも、ザーララさんが私に掛けて下さった、結界の残りと言われるモノとの反発は起きなかった。
だから『幻獣』フオコォは現出では無く、私の夢世界にでも現れたのだろう。でもそうすると、、、
「そうなりますと、さくらは私の夢の世界にでも入って来た事になります」
さくらは“力”を持っている。
ただ、それがどんな力なのかは分からない。
これまでも、幾度かその片鱗が現れた事は有る。でも、実態は不明だし、さくら自身が意識して“何やらの力”を使ったり出す事は無い。それは女王ユーカナーサリーに掛けて頂いている『枷』によって、抑えているから。
「さくら、昨夜はどうやって私達の眠る寝室まで来た?」
「う~ん、覚えて無い」
寝ぼけたまま、歩いて来たんか?
「さくらは、夢うつつ、そも寝ぼけておった。其が幸いしたかのぉ~」
それじゃあ、寝ぼけているさくらは、危ないって事なのぉ!?
女王様、それ呑気過ぎません?
ドゥブリーザチョッドレウンの里には程なく到着した。
外の景色を楽しむ間も無く、“ボゼックシェチックコボベ”は、相当速かった?!
ドゥブリーザチョッドレウンの里では、その長を始め、多くのエルフの民達が女王様を迎え入れる為に集まっている。
“ボゼックシェチックコボベ”目立つもんなぁ~。それに女王様専用の乗り物だから、女王様の到着は直ぐに分かるか。
あ、昨日森の中を進むに当たって、目印用に準備してもらった木製ケースと赤い液体、忘れて来ちゃった。
リーザを先頭に、ドゥブリーザチョッドレウンの民達の歓迎を受ける。
リーザはドゥブリーザチョッドレウンの里の長、その民達と言葉を交わしているが、何の話しをしているのか、さっぱりだ。
「さくら、皆さんどんなお話ししてるの?通訳よろしく」
さくらは完璧でなくとも、エルフ達が使う言葉を理解している。
「ん〜、女王様がこの里に来られたのは、お父さんに付き合って。フオコォをこの里の森で出会ったから、傷の手当てをしたから、還しに来たって。大体そんなとこ」
あー、ドゥブリーザチョッドレウンの里の皆さんには、何も言わずに、女王様とザーララさんの山岳城に直接向かった(女王ユーカナーサリーの魔力で飛んだ)から、突然私が居なくなって、不審がられて無いか?
それもあってか、フオコォ、注目されてる。そりゃあエルフ達でも、見たこと無い生き物だろう。その上、炎で燃えている様な身体だしな。
昨日、目印を作ってくれた『見つける森道』ズナイドゥバクもいる。ゴメン持って来るの忘れて来た。
ドゥブリーザチョッドレウンの里の名称は、“何かが善い森”だそうなんだが、“何か”が何だか分からない。後でリーザに聞こう。
私達はドゥブリーザチョッドレウンの里を抜け、里の森へ進んだ。
フオコォはまだ、さくらに抱えられたまま、頭を左右に振り、森の香りを感じている様だ。
濃い木々の匂い。明るく強く差し込む日の陽光。確かに“善い”場所だ。
今日はドゥブリーザチョッドレウンの里の森の者、ズナイドゥバクが入口まで案内してくれる。
昨日私が森に入った時に赤くマーキングした木を探す。
それは直ぐに見付かり、昨日来た時に付けた、赤い目印はそのまま残っている。
「この赤いマーキングを辿れば、昨日フオコォが居た場所まで続くと思います」
下から見上げる森の中の傾斜は、思っていたよりも急だった。
よくもこんな所をオレは登ったなぁ。




