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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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幻獣の森 幻獣とさくら

未知成る生物『幻獣』は、消えてしまった。

何かちょっと残念だけど、何やらの“力”を持っていた様なので、大事が発生しなくて良かったと思うべきだろう。

でも、幻が現実していたら、それはもう幻と呼べるのかなぁ?

取りあえずエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーが王宮に戻るタイミングで、私も王宮まで運んでもらった。

「女王様、ありがとうございます。しかし、未知成る生物(幻獣?)は、どうしてこちらに居たのでしょう?また、何処へ行ったのでしょう?」

まあ、行けぬ場所、幻の世界に帰ったのかな。

「トキヒコ殿、貴公の動にて珍しきモノを測る機会を得、我の糧と成った。じゃが、あの者、未知成る者とは変わらぬ」

燃える様な体毛に覆われた小鹿ちゃん。でも実の所、凄く恐ろしい存在なのかも知れない。そうなると、次に出会ったら逃げるが勝ちか。

「トキヒコ殿、幻世界の存在じゃ。おいそれとは現れぬであろう」


「ただいまあ~」

私は、送り届けて頂いたエルフの里国の王宮より、徒歩にてリーザの住居に着いた(徒歩3分)。

扉を開けると、いい匂いが充満している。

「お父さん、お帰りなさい」

さくらが出迎えてくれた。

リーザがエルフの里国の王より与えられている住居は、当初は生活感の無い物であったが、今や石竈に加え、台所と呼べるスペースは充実している。料理やお菓子作りを行うのに支障は無い。

洗面所で手を洗う。

手に付いた『幻獣』を抱えた時に付いた血は、洗い流せたが、上着(リーザのお母さん『ホーリョンの紡ぐ者』から頂いた)は袖口から腕の内側に掛けて赤く染まってしまった。

既に乾いてはいるが、人間の血の様に乾くと黒ずむ事は無く、鮮やかとも取れる赤色を保っている。

「気持ち悪い」よりも、色柄みたい。まあ、いいか。


居間に向かうと、二人が作ったお菓子が三種類、テーブルのお皿に盛られていた。

「凄いのが出来てる。リーザ新作?それとさくらはどれ作ったの?」

「はい、トキヒコさん。今回はお饅頭ですね。蒸し器にて作りました。試食をお願いします」

わぁ、何か疲れたから甘い物、嬉しい。

「お父さん、私は全面的に手を出してお手伝いしました」

「はい、さくらも良くしてくれました」

そう言えば、さくらって料理とか出来るのかなぁ?

「母から娘にお菓子作りが伝承されたって事?」

「どうでしょうね、さくら?」

「まだまだ、もっともっと出来るわ。ママと新しいのも挑戦して行きたいし」

「さくらは、こっち(エルフの里国)でお菓子やさんでも始めるか?」

「それもいいかも知れないわぁ」

さくらは実際どうするのだろう。人間社会に留まるのか、エルフの里国で暮らすようにするのか。でも、エルフとして歩めて行けるのだろうか。

「トキヒコさん、お袖ですが、どうされました?」

「うん、今日は珍しい生き物に出会った。『幻獣』だ!」


カクカクシカジカ。

『ドゥブリーザチョッドレウン』の里へと出向き、傾斜の森を頂上目指し登っていた所、まるで炎の様な体毛を持つ生物を見付けた。

でも、そいつには何かの枝が胸から腹まで突き抜けている怪我をしており、死にそうだった。

助けを求めて叫んだら、女王様が来て下さって、そのままザーララさんの山岳城へ。

山岳城に着いたら着いたで、怪我をしていたのは、異なる空間でエルフの届かない世界であり、見えもしない場所に居る者、幻世界の生き物だって、、、だから幻獣かな?と。

女王様のお力で命は留められたのだけど、その幻獣とした者は消えちゃた。

「でも、幻の世界が在って、そこに住んでる生き物が居て、、、幻が幻で無くなっちゃった瞬間?とも思った」

「幻獣、ですか?」

「う~ん、そう呼んでいいのかどうか。でも『幻獣』って呼び方、カッコいいじゃん!」

断然、カッコいい!

「ですがトキヒコさん、幻獣は何処から来て、消えて何処へ行ったのでしょう?」

「まあ、今度女王様かザーララさんにでも聞いてみよう」

本当、『幻獣』 は何処から来たのだろう。幻の世界は何処に在って、そんで行く事が出来るのか?

あ、幻の世界からだとして、あの幻獣は何でエルフの里国に来たのだろう?

う~ん。


「お父さん、それは?」

「ん?」

私の腰に、木々をマーキングして歩いた、木製のケースがぶら下がっている。

「あー!」

「どうされました?」

池だか泉、行けなかったよ!


この後、王宮へ、女王ユーカナーサリーの元にリーザとさくらが作ったお菓子を持参し、夕飯もご一緒し、晩ご飯を奢って貰った(エルフの里国には、貨幣文化が有りませんが)。

『エルフ湯』にも出向き、私達家族三人、今日はエルフの里国を満喫した。

そのまま今夜は、エルフの里国に泊まる事にした。

エルフの里国に夜が来る。

エルフの里国の夜は、大きな月が上がり、その月明かりにて明るい夜となる。

リーザの住居は広いし、何よりリーザのベットは大きい。

以前は、私達三人が川の字になって寝た事もあったが、さくらが大きく育った今は、さくらは別室だ。(実際に、三人揃ってベットに横になると狭く感じる。)


私は日中の森の中での斜面登りと、その後の幻獣(?)騒動で、疲労感があった。

だから今夜は早々と床に着いた。

だが、夜の来訪者が現れた。


私は早々に寝ていた。

すぐに眠りの世界に入る。寝付きがいいのは、何時もの事。

そして私は、一度寝出すと起きない。

深い眠りの世界へと旅立ち、、、起きない。

(「、、、ルー、ルー、ルー、、、」)

今夜は、そんな私の眠りから覚ます者が現れた。

(「、、、ルールールー、ルー、、、」)


(「、、、トキ、ヒコ、ルー、ルー、、、アリガ、ト。ルー、ルールールー、、、)」

私は、起きた。

ザーララさんの山岳城で聞こえた、幻獣の声。

目を開けると、眠る私の上に幻獣が乗ってる。差し込まれる月明りに照らされ、燃える炎の様にその体毛を揺らしている。

でも、昼間見た時よりも、身体付きが大きくなってる。倍以上大きくなってる?

「リーザ、幻獣が来た!」

あれ?リーザの反応が無い。

『見えざる者』私自身も体が起き上がってるのでは無かった。

幻獣は私の夢の世界、精神世界にでも入って来たのか?


私の精神世界だとしても、今私が見ている景色は、月明りが入り込んでいるリーザの寝室には違い無かった。

(「ルールールー、、、トキ、ヒコ、、、行こう、ルー、行こう、、、ルールー)」

「え〜!行こうって、何処にだよ。オレは寝てるの。今日はちょっと疲れた気がしたんで寝てんだよ!」

明日も朝からここ、エルフの里国で遊ぶんだよ。それに今日はお前のせいで、『ドゥブリーザチョッドレウン』の里の上に有る、池だか泉に行けなかったじゃんか。

(「ルー、行こうトキ、ヒコ。ルールー)」

幻獣は私の体の上で踊る様に跳ね出した。

そして幻獣はその姿が膨れ上がり、この部屋いっぱいの大きさになってしまうのかと思う程の変化をして行く様だ。

おいおいおい!オレを潰す気か!何で大きく膨らむ必要が有るんだ!?

、、、でも、現実世界では無い?


「あ~、うるさいな~、もぉ~」

幻獣は私の体の上から飛び退くと、部屋の隅の方、ベットと反対側に退くように距離を置いた。

寝ぼけながら、さくらが部屋の前まで来たようだ。

「さくらが起きた?!」

さくらは私と同じで、一度眠るとその睡眠は深い。凄く深い。滅多な事では起きない、はず。

私達親子が似ている、少ないコトのひとつ。


さくらが、炎と身間違う程の幻獣の体毛を掻き分けて、部屋の中まで入って来た。

ただ、 薄っらと開いたさくらの目は、赤くなっていた。

さくらは寝室の中央まで来ると、私とリーザが眠るベットと幻獣との間に立った。


「待て!」

さくらが幻獣に手の平を向け、言葉を発した。そして、一歩を踏み出す。

幻獣は後退りし出した。

手を伸ばし向けるさくらに迫られる様に、幻獣の後退りが続く。

そのまま手を伸ばしたさくらに掴まれると、幻獣の体が縮んで行く様だ。いや、確実に縮んだ。


幻獣が持つ“力”は、さくらの持つ“力”によって抑え込まれて行く。抑え込まれる“力”と同時に、その姿も抑え込まれ、縮んだ。

挙げ句幻獣は、さくらに抱っこされてしまい、まるで仔犬か仔猫の様になってしまった。

「お父さん、可愛い仔だね」

幻獣は、さくらに抱っこされたまま、さくらが眠る部屋へと連れられて行った。

「さくら、ペットを飼うなら自分で面倒見ろよ」

私は多くのペット達との死別の悲しみが有るので、金魚だろうが、クワガタだろうが、ペットを飼う事には躊躇してしまう。

ああ、もうひと眠りしよう。



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