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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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悩めるエルフ ピラウロウ

ピラウロウはエルフの里国の玉座のある部屋、花の間に居た。

正座してるよ!


「やあ、ピラウロウ『右に立つ者』こんにちは」

ピラウロウは顔を上げ、立ち上がるとトキヒコに歩み寄った。

(エルフは元々、無表情に近く、感情を表さない(苦手)だから、ピラウロウが今何を思ってるのか分からん。悩んでいるのか、怒ってるのかも分からん)

「トキヒコ殿、お呼び立てをし、誠に申し訳ない。しかし、私は貴公に聞かねば成らぬ、訊ねる許しを得たい。是非にとも教えを乞いたい次第である故、お許し願いたい」

うわぁ〜、何がバレたんだろう?どのやらかしだ?

「トキヒコ殿、貴公は何故あの時あの場で動けたのですか?何故我が王をお守り出来たのですか!」

「え?あの場って?」

「ダークエルフ成る者が出づる時」


「『北の山の悪いエルフ』成る女エルフが現れました。噂は知っておりましたが、私は初見の相手。しかし、しかしあの者が現れた途端、私も『左に立つ者』も身動きがまま成りません上、意識さえも薄れました。しかし貴公は、トキヒコ殿は動いた。動けていた。何故なんでしょう。私に無くトキヒコ殿が持ち得るモノは何なのでしょうか。私は、私も含め『左に立つ者』も此度は我が王をお守りする事が出来ませんでした。私は私達は王の守護者などと呼ぶに相応しくない、弱き者でした。しかし私達は改めて王の守護者と呼ばれべき存在となる故に、今のままでは技量不足で有る事も理解した所存。何卒お教え願いたい。私に無くトキヒコ殿がお持ちになるモノを!」

あー、ピラウロウに一気に巻くし立てられた。ピラウロウが持つ悩みって、ザーララさんじゃんか。

私はエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーをチラ見した。

玉座に座る女王ユーカナーサリーは、私から目を逸らし、顔を横に向けた。

うわぁ、ズッル〜い!

(『トキヒコ殿、何とかせい。我は姉様の説明するの苦手じゃ』)

女王様の声が頭の中に飛び込んで来た。増す増すズルい。


「ピラウロウ、ここから出掛けよう。女王様、トゥクルトッドドゥーをお借りしたいのですが」

「良いぞ、好きにせい」

「ありがとうございます。さあピラウロウ、行こう」

ピラウロウは深々と王に対して敬意を込め、片膝を着き、頭を下げると、花の間を出た。


「ヅリュース!」

トキヒコは遠くで佇むトゥクルトッドドゥーの群れに向かって声を掛けた。

黒い大きな雪崩の様な一団が、砂ぼこりを上げ、突進して来る。

「あわわわわ、やっぱコレ、恐いわ!」

トゥクルトッドドゥーの一団は、トキヒコの居る柵の前で砂埃を巻き上げつつも、整然と止まった。

「やっぱコレ、心臓に悪いわ。迫力有り過ぎ!あれ?ヅリュースは?」

集まったトゥクルトッドドゥー達は柵の向こう側からトキヒコに向かって首を伸ばし、クチバシを向けて来た。

トキヒコは順番にクチバシをなぜながら、ヅリュースを探す。

ヅリュースは赤と青の大きな斑点が大きな鱗の様に重なり合う目立つ体毛をしているが、目立つはずなのにこの一団には居ない。


「あれ?わっ!」

ヅリュースはトキヒコの背後に来ていて、背後からトキヒコの肩を咥えた。

「何だよヅリュース、おどかすなよ~」

ヅリュースはトキヒコに向かってその長い首を投げ出した。

「よーし、よし。今日、お前に乗せてくれ。いいかい?」

トキヒコはヅリュースの首をワシャワシャしてから、再び撫ぜながら毛並みを直し整えた。

「あ、ピラウロウはトゥクルトッドドゥーが決まっているの?」

「いえトキヒコ殿。私に決まったトゥクルトッドドゥーはおりません」

「えー、じゃあどうやって決めるの?」

「『術』を用います。術でトゥクルトッドドゥーを従わせます」

そっかー、それが普通なのかな。

「じゃあさ、今日オレといっしょの時は『術』の使用禁止だ。どう?」

「それは構いませんが」

「トゥクルトッドドゥー、どうする?」

「トゥクルトッドドゥーに対し、語る他有りません」

まあ、エルフは純粋だ。問題無いでしょ。

「ヅリュースに鞍を着けてもらいに厩舎に先に行ってるよ」

トキヒコはトゥクルトッドドゥーを選んでいるピラウロウを置いて厩舎に向かった。

「よせよっ、もー」

トゥクルトッドドゥーのヅリュースはトキヒコとの再会が嬉しいのか、ジャレ付いている。


ヅリュースに鞍を着けてもらったトキヒコが戻ると、あの柵の場所にはピラウロウが一人で立っていた。

トキヒコは少し慌てた。

「ピラウロウ、どうした」

ピラウロウは無表情であった。エルフは表情を表てに出さない。でも、、、。

「ピラウロウ、上手くトゥクルトッドドゥーと話せなかったのか?」

「ええ、そのようです。私の力不足の他有りません」

あー何か落ち込んでるな。

「何故です。何故トキヒコ殿はトゥクルトッドドゥーと気持ちを通じ合えたのですか?」

いや、気持ちを通じ合えたって、大袈裟だなぁ。

「う~ん、オレの場合、トゥクルトッドドゥー、、、ヅリュースの方がな、こちらに来てくれたのかなぁ。なっ」

トキヒコはヅリュースをポンポンと優しく叩き、身体をなぜた。


「私は、私は何が足りぬのでしょう。トキヒコ殿に有り、私に無いモノとは」

「あー、オレは何も持って無いよ。そこで悩まない。深く考えちゃダメだよ」

「は、はい。しかし」

「ピラウロウさあ、ヅリュースを見てどう思う?」

「トゥクルトッドドゥーですね」

「いや、それ以外に、何か客観的でもいいから感じる事は?」

「そうですね、この色相は目立ちます」

「それから」

「それからですか、うーん、少し速いかも知れませんね」

「それから」

「まだですか。それから、、、雌です」

「ヅリュース、ピラウロウはお前をこう言ってるけど、どうだ?」

ヅリュースはそっぽを向いた。

「なっ、何とした事ですか」

「う~ん、エルフは感情表情が苦手と言うか余りしないかも知れないけど、エルフの民達や女王様に対する気持ちや思いと同じ気持ちを持って、トゥクルトッドドゥーと接すれば、もうちょっと何か変化が有るかもよ」


「ピラウロウ、ヅリュースを見てみろよ。この色、綺麗でかっこいい。この毛並み凄くキレイだ、触るとツルツルして気持ちがいい。そして実際速い。賢くて可愛い。なっ」

ヅリュースは相槌を打つように声を上げた。

トゥクルトッドドゥーの顔は、長い首の上に有り、クチバシを持ち、、、見た目は可愛いって感じでは、無い。

「ピラウロウだって、そう思ってただろ。単に表現慣れしてないだけだよ。それが相手に上手く伝わらなかっただけ」

「いえトキヒコ殿、やはり貴殿との差がございます」

「まあ、いいか。それよりもヅリュース、私達2人を乗せてもらう事は出来る?お願いしてもいい?」

ヅリュースの返事が無い。

「だいぶ前だけど、サーシャイン(リーザの愛馬的な位置となるトゥクルトッドドゥー)は私と『越える者』(リーザ)を乗せてホーリョンの里まで走った事があったなぁ」

ヅリュースはその場でジタバタとし、ウロウロし出した。

そして諦めたように四つ脚を折り、相手を背に乗せる体勢を取った。

「ありがとう、ヅリュース」

ちょっと、ズルしちゃったな。

トゥクルトッドドゥーのヅリュースが四つ脚を折りしゃがむ事により、その顔が近くになっていた。

トキヒコはヅリュースを首ごと抱えると、ヅリュースの頬に当たる部分に自分の顔を擦り付けて、愛情表現と感謝の意を込めた。

実際にトキヒコは、トゥクルトッドドゥーが大変にお気に入りだった。

自分の意識が伝わり、自分が分かる反応を示すトゥクルトッドドゥー、ヅリュースが愛おしかった。




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