悩めるエルフ
「あっ痛ったー!」
この感覚、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーが、わが家に訪問される際に私が受ける感覚。嫌っ!
私は土曜の寝坊を優雅に取っていた。いいじゃん、休みなんだし。
あー、女王様のご来訪だ!
私は飛び起き、そのまんまの格好で階段をバタバタと降り、玄関に急ぐ。
玄関ではリーザが既に片膝を着き、畏まった姿勢で女王様を迎え入れていた。
「女王、、、ユーカナーサリー、こんなナリで申し訳ございません」
「トキヒコ殿、詫びるのは我じゃ。突如の訪問すまぬ」
いえいえ女王様、こんな愚民に詫びないで下さい。あっ、私はエルフの里国の民には含まれて無いか?
エルフの里国の王の突然の訪問である。
「トキヒコ殿、少し困った事が有る」
何だなんだ、突然来られたと思ったら、女王様がお困りになる事?
そもそもエルフって、困った事を抱えない、解決すべく方向や方策を出しちゃう人達なのに。
その上、女王様はエルフの里国の民達からの絶大な信頼をお持ちで、信仰されてると思えるぐらいの存在。それにご自身も膨大な魔力をお持ちなのに、困った事?何時も知らぬ事が無いぐらい、何でも解決しちゃう女王様にお困りの事?
「トキヒコ殿、悪いが少し、顔を貸せんか」
えー!何がバレた、何が見つかった!?
「ユーカナーサリー、何があられたんでしょうか」
リーザは何時も落ち着き慌てない。そっとエルフの里国の王を促す。
「貴公も知っとるじゃろう「右に立つ者」ピラウロウ。彼奴がな、貴公に会わせろと聞かんのじゃ」
「右に立つ者」ピラウロウ。『右に立つ』とは、実際に王の右の位置に立ち、王を守護する者。
何時もはエルフの里国に出入りが可能な3つ有る門の内、東門の守護者としての任を持っている。
大戦士と呼ばれる程の技量と力を持ち、エルフを一段超えたハイエルフでもある。
私が東門からエルフの里国の外を見に行った時には、道中の途中まで案内してくれた。
質実剛健、そんなエルフが私に会わせろって、やらかした、どれがバレたかなぁ。
「ユーカナーサリー、『右に立つ者』が如何いたしました?トキヒコさんに害を及ぼす事あれば、私も立ちます!」
リーザが珍しく、少し口調を荒げた。
あー、リーザのこの『立つ』は、多分戦う意味なんだろうなぁ。
「リーザよ、案ずるな。その様な事は我が認めん。それよりもどうやら彼奴は悩んでおるようじゃ。しかし何が彼奴を悩ましておるのか、さっぱり分からん」
エルフの悩み事〜?
「いえユーカナーサリー、私はお悩み相談の解決なんてした事がございませんし、出来る気がしませんが」
エルフは困った事とか悩みは自身で解決に取り組み、また皆で共有して、解決を目指すんじゃ無かったっけ?
それでも無理なら女王様が居る。はずなんだけどなぁ。
「エルフが如何なる悩みを持とうと、己で解決するモノじゃ。故に我も困っておるのじゃ。彼奴の悩みが我の悩みじゃ。トキヒコ殿、済まぬが手を貸してもらえんじゃろうか」
悩みを持ったエルフが別のエルフを悩ます、、、何かコントみたいだ。あっ、怒られそう。
そもそも女王様の頼みを断れる訳無いじゃんか。
でも、『エルフの里国の最後の砦』となる女王ユーカナーサリーが解決出来ない事をたかが人間の私で、何とかなるの?
「ユーカナーサリー、私で出来ます事でしたら、お手伝いさせて、、、と言いたい所ですが、そもそも私ごときでピラウロウの悩みが解決出来るのでしょうか?」
ピラウロウに呼び出されるみたいだけど、何だ?見に覚えは、、、時と場合による、、有るって事のか?
「まあ、都合良く、今日は休みですので」
明日の日曜日も休みだからな。
「トキヒコ殿、当然それを見越しての頼みじゃ」
それっ、ちょっとズルい。女王様、今ニヤケなかったか?
「えーと、着替えをする時間を下さい」
寝間着兼部屋着のペラッペラなスウェットの上下なものですから。
「リーザ、悪いけど留守番してもらっていい?さくら出掛けちゃってるみたいだし」
「はい、さくらは外出しております。ですが、さくらが戻りましてトキヒコさんがお戻りとならぬ場合、私もそちら(エルフの里国)に向かってもよろしいでしょうか」
「うん、それはリーザが思ったように決めて、動いてくれて構わないよ。さくらに何も知らせずに二人して家を空けるのがちょっとね、嫌かな」
「はい、それはトキヒコさんのおっしゃる通りだと私も思います。お気お付けて行って下さい」
「うん、ありがとう」
「痛ってー!」
エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーの『繋ぐ』魔力でもって、私は渡った。




