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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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エルフの麺 女王様スペシャル

「リーザよ、我も厨房に降りようぞ」

「ユーカナーサリー、それは成りません」

「何故に?」

「トキヒコさんの世界、過去の中国におられました儒学者である孟子の言に『君子は庖厨を遠ざかる』という言葉が御座います。厨房にて食となる禽獣の死、その時の声を聞いたならば堪えられず、その肉を食せ無く成る、その憐れみを君主が得ずとも良い、故に厨房に近寄る必要無き事。ですので、我が王にも通じます」

ちょっと日本語版とのニュアンスが違うなぁ。

「トキヒコさんの住まわれる日本国には『男子厨房に入るべからず』との言葉が有ります。ニュアンスは変わりますが、我が王に置かれましてはこれと同意。相応しくございません」

そう、それ。でもリーザ、古風な事言うなぁ~。

「トキヒコ殿は厨房に入られるではなかろうぞ」

「トキヒコさんは、宜しいのです。今回の麺作りのご協力も頂いております。しかし王成る立場の者、この場ではお控え頂く事が限ります」


少し、ぶ~垂れる女王ユーカナーサリーを王の私室に残し(さくらの面倒見を引き続きして頂いて)、リーザと揃って厨房まで降りた。

厨房に下りると、多くのエルフ達がそこにいた。

うわぁ、いつの間に!?

さっきパスタの生地作りをした時は、貸し切り状態だったのに。

活気の溢れる厨房で、料理が作られている。

「わわ、リーザ、ここで私達が分け行ったら、皆の邪魔しちゃう」

私達がパスタソースを作る為に、入る隙間が無い程の活気と混雑振り。


大きな鍋が幾つもカマドの火に掛かり、多くの湯気、蒸気、そして良い香りが立ち昇っている。

「トキヒコさん、私達はこのパスタのソース作りは行いません」

「え、何で?」

「我が王の食事は、今この場に居る者達が作ります。一回限り私が料理をしても、その後はこの者達が行う事に変わりはありません。ですので例え一回限りであっても、この場での私の料理は、その後に続く皆の邪魔をする事に繋がります」

え~そんなもの?

「こちらの厨房長とは打ち合わせ済です。そして何より、我が王の嗜好を一番に知る者は、ここに居る者達です。私などでは敵いません」


私達は寝かしていたパスタの生地(モオーカを水と練り上げたモノ)を取り出し、作業台に置いた。

3人の厨房エルフ(?)が立合う。

リーザが持参した、リーザ作の麺棒にて、生地を伸ばして行く。

パスタであれば、パスタマシンで生地から麺を絞り出せばいいのだが、ここ、エルフの里国にはパスタマシンは無い。

行く行くは、誰かが作っても良いだろう。その時はヒント程度の仕組みを教えられる様にしとかなくっちゃな。

ここでリーザは、ソバ打ち体験で得た知識と技術を披露した。

麺棒を使って、ソバの時よりかは固さの有るパスタ生地をソバの生地を伸ばした要領で均等に伸ばす。


ソバ打ち体験の時にあった『駒板』に相当する物も準備済みで、切り出す刃物と当たる部分がL形になっており(怪我防止用かな?)、持ち手も付いている。少し工夫が付け加えられた駒板である。

大振りの包丁(?)を取り出すと、パスタ麺を1mm間隔で切り出す!

見ているこちらも楽しくなる程に、リズミカルで均等で早い。お見事!

こりゃぁ、パスタマシン要らんな。

「では、茹でましょう」

粉を落とし、あらかじめ寸胴鍋に沸かされていた湯にパスタ麺を投入。

コレ、生パスタだ。

直ぐにパスタは茹で上がる。


「でリーザ、味付けというか、パスタソースとなるものは?」

「こちらです」

リーザが指し示す鍋には、大きな具材が多く煮詰まった、具沢山スープだかシチュー。

私が見ても分かる。お肉、野菜類、、、果物?木の実?分かって無い。

「これは我らの郷土料理とも言いましょうか、グラゥスグルチャッカと言う煮込み料理の一種です。それを今回パスタソースとすべく、少し調整して頂きましたが」

郷土料理!カレーでは無いけど、黄金色をしていて、トロミもある。いい臭い、美味しそう。

我々の世界で置き換えると、鶏肉と野菜をふんだんに入れた、具沢山スープ!

でも、リーザの実家、ホーリョンの里のご両親宅を訪問した時に頂いたモノとは違うなぁ。

「郷土料理って事だけど、初めて見た。美味そうだ」

「はい、こちらは我が王スベシャルです」

「王様スペシャル?」

「はい、我が王のお好み、嗜好傾向が反映されてます。それはやはりこの厨房の者だけが知る事となるでしょう」

「やっぱ女王様はグルメなの?」

「グルメと言う概念は我らエルフは持ちませんので、そこは何とも言えませんね。我が王は好き嫌いも申しませんし」

これは私も食べてみたいなぁ。

スープパスタの完成だ!『エルフパスタ、王様スペシャル』だ!


でも、ここはやっぱり、ミートソース風も欲しいな。

「リーザ、私もパスタソースを提供したい。皆さんの邪魔をする事になっちゃうかも知れないけど、やっぱパスタにはミートソースかトマトソースも無くちゃね」

ミートソースだと、“パスタ”って言うよりも“スパゲッティ”と呼びたい。喫茶店で良く有るメニューのアレだ。

リーザが厨房の者と言葉を交わす。

「快諾頂けましたよ。皆も新たな知識に成ろうと、トキヒコさんの料理に興味を示しております」

ええ~、それプレッシャーだな。

「でもリーザ、私の世界とこちらの食材の相当する物が、分からない。そこはリーザに取り持って欲しいんだけど」

「はい、もちろんです」


そして、私が手を出すも無く、さっきの3人、厨房の者に指示するだけで作業がどんどん進む。

魔法で料理を作ってるみたいに。

挽き肉〜肉が細かく刻まれて行く。肉多め!

トマト(相当の瑞々しい赤い野菜)〜刻まれて行く。

肉炒めて、玉ねぎ(みたいな、根物の野菜を数種類のみじん切り)炒めて〜炒めて、トマト(みたいな)入れて、(香り付けの)葉っぱ!煮込む!

おお~、野菜類から出た水分が丁度いいなぁ~さあ、どうだ!?

、、、トマトケチャップだかトマトソース、でも結局の所、リーザ頼りだったが。

味付けは、私ががちょっとだけ。

ソース(元々有る、エルフの里国製)!塩!

見た目はミートソースのトマトケチャップ仕立て、完璧!

味見!

「少し、濃い目でしょうか」

「うん、ちょっとね」

オレ的にはOK。麺は味付いて無いから。

『トキヒコスペシャル(殆んどリーザ作)』出来た!

「リーザ、味見をしてもらっている皆さんには、今後作る機会があるなら、ソースを控え目にと言っておいて」

ありゃ、私が何時もリーザに言われている事だわ。





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