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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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トキヒコ、両親に結婚報告に行く・トキヒコとリーザ

「今夜はせっかくだから美味しいものでも外に食べに行こうと思ったけど、なんか時間が勿体ないから買い物に行ってくるわね」

買い物に出掛ける時間の方が短いのか?


私とリーザを残して、両親は夕食の買い物に出掛けた。

「何か食べたい物は有る?」

と聞かれたので、

「肉」

と答えた。

「美味しそうな果物があったらお願い」

と付け加えた。




私達は外に出る事にした。

家の周囲に人気は無い。(確認した)


私は家の近くにある小さな山間部の麓、田舎なのでそれなりの自然は感じられるだろう。

リーザと二人、仲良く手を繋いで、土手を進み用水路を飛び越え、田んぼの畦道を抜ける。

背の低い木が集まる空間を通り過ぎると小さな池に行き着く。


「私は余り長くはここに住んではいないんだけど、この池は好きだった。だけど、」

トキヒコは池の周囲全体を見渡した。

「なんか汚れてしまった」

「土手もコンクリートで固められちゃてるし、水質も、、、多分農薬とかが流れ込んだのか、小さな川エビや水生昆虫がいなくなってる」

小さな池の周囲を回るように歩いた。


「人間の都合だけど、なんか悲しいな」

道無き道は草木に覆われている。

自然の多い所に来ると、リーザの顔艶、身体の状態が良くなるように感じる。


「リーザ、緑の中は好き?」

「はい。何故だか落ち着きます」

私の目には見えぬ、自然のパワーを吸収してるのかな?


幸福を感じているのと裏腹に、幸福感だからこそか、ふと心配事を思い出してしまう。

トキヒコが抱えてしまっている心配事、今の二人にとって大きな一番の心配事に位置付けた『生死』について、打ち明ける事にした。


今、リーザとこうして居られる事が私の話しで終るかも知れない。

エルフの王様、私の両親、それぞれに会って、声を掛けられ逃げ出せない。

いや、自分の覚悟を示さなければならない。


「リーザ聞いて欲しい、私との結婚を決めてくれて、王様にも挨拶を終わらせた。今更なんだけど」

「はい」

「私は、、、」

「私は、、、」

言葉が出ずらい、続かない。


「、、、私は」

「私は」

正面を向いて言えない。


「リーザ、私は、リーザより先に死ぬ。だから、だから、リーザを、、、幸せにすることが、、、できないかも知れない、、、。」

人間と永きに生きるエルフ。誤魔化しの効かない現実だろう。


「今すぐではないとしても、30年先か、50年先か、分からない。分からないが、確実に私が先に、死ぬだろう」

「、、、許して、、、許して、、、下さい」

涙が出た。


リーザは何も言って来ない。

「今なら、今更だけど、今ならまだエルフの里へ、帰るのは、、、間に合う、、、」

言っちゃった。


「トキヒコさん、トキヒコさんの幸せ、ヒトの幸せってなんでしょうか」

「ええーと」

金持ち?権力者?子だくさん?あれ?

「不幸は」

リーザが喋る。

「不幸は、望みが叶わない、失敗した、勝てない、理不尽に感じる、恨み、嫉妬、絶望感、、、から生まれる来る悪意」


「不幸は理由が有り、その結果ヒトが感じた事、思った事が現れます」

う、うん。

「ちょっと勉強しました」

うん。


「でも、幸せの形はコレと決めて表せる事が出来ません」


「それはどこかで共通してますが、個人個人で違うからです」

何となく、そう思う。

「私はトキヒコさんと出会い、こうして一緒にいられる事を幸せと感じています」

「だから今、私は幸せです。トキヒコさんは私に幸せをくれました」

トキヒコの背中から、リーザはそっと手を回した。


「トキヒコさん、先日『死が二人を分つまで』という言葉を見ました。今の私達にぴったり当てはまると思いました」

私はリーザが回して来た手に震えながら触れた。


「それです」

私はリーザに向き直り、抱きしめた。

そして唇を重ねた。

覚悟を示したのは、リーザのようだった。


なんでこんな、何も持ってない私に、なんでそんなに思ってくれるの?

怖くて聞けない。

でも、でも死んでも君を、リーザ、守るよ。死んでも君を離さない!

あっ、死んだら無理か。




その時、竹藪をガサゴソと音を立てながら移動しているモノが居る。

風に乗って獣臭さが漂って来た。

何かが出て来るぞ!


「トキヒコさん、動かずに」

猪だ。


この場所で猪を見るのは初めてだ。

そう言えば少し前にオヤジが田んぼや庭を猪にほじくり返されたと言っていたような。

そうか、ここに来るまでの途中で見た、休耕や休田に大きくへこんで掘り返されたのうな跡は猪の仕業だったのか。


デカイな、地面から頭の先まで1mぐらい有りそうだ。

竹藪から姿を表した後も、フハッフハッと荒々しい息をしながら全く動じず、こちらに向かって歩み寄ってくる。


その距離10mぐらいになったか、これだけ近いと全身の毛が逆立っているのも、見て取れる。

猪は立ち止まり、すると頭を下げ身構えた。

ヤツの縄張りにでも入っちゃったかな。


「トキヒコさん、下がって下さい」

リーザが一歩前に出たのを合図に、猪はもう一段頭を下げ突進して来た!


「リーザ、駄目だ!」

私はリーザを突飛ばす。

リーザと猪のラインに踏み込んだ。


1秒、2秒掛からずに、猪は目前に来た!

あーコイツ、牙があるじゃん。

とにかく、止められるのか!ちょっと痛いかもな。

「うおおおおー」

トキヒコは身構え叫んだ。


が、突如猪はガクンッと止まった。

「もう、私達の仲を邪魔するなんて、不届き者ですね」

リーザの左手が猪の牙を掴み、片腕一本で猪の突進を止めている。


右手は手の平を返した形で私の胸の前にある。

「おぉぉぉぉ、、、?」

リーザは靴が少し汚れ、スカートにも土がスッと付いていた。


猪は突進を止めようとせず、左右の後ろ脚を激しく動かしている。

土を蹴り損なう度に砂煙が猪の後方に立ち上る。


しかし、全く前には進めない。びくともしない。

リーザは子猫でも押さえ付けているぐらい、涼しい顔をしている。


「リーザ、、、大丈、、、夫?」

「ええ、ええ、問題有りません。今夜は猪鍋ですかね」

トキヒコはペタンと尻もちを付いた。


「先日テレビで観たんです、ジビエ料理。ブームですって。猪だから牡丹肉!」

なんか気が抜けた。

「あ、あはははは」

何故だか笑いが出て来た。

「うふふふふ」

リーザも合わせて笑うが、多分猪料理を想像してるな。


猪は疲れたのか観念したのか、大人しくなっていた。

「リーザそいつの事、持ち上げられる?」

「ええ、トキヒコさんのご実家までですか」

食う気まんまんだな。


「いや、そいつを土手の下、池の水際まで投げられる?そおっと」

「問題ありませんが?」

リーザは首を傾げる。


「そいつを逃す」

リーザが『ええっ』と驚きの顔をした。

「そいつも人間の犠牲者さ。人間が山を森を痛めなければさ、コイツもここに出て来る事は無かったんだろうな」

リーザはニコッとした。


「それにさ、素手で猪を仕留めるお嫁さんがいたら、両親が驚きでひっくり返る!」

と言って笑った。

「分かりました。ジビエ料理は別の機会にします。それー」


牙の左右をリーザに掴まれ、ふわっと投げられた猪は大きな水飛沫を立て、池の際あたりの浅瀬部分に落ちた。

慌てて池から這い出すと、一目散に出て来た竹薮へ駆けて行った。


「リーザ、さっきは突き飛ばしちゃって、ゴメン」

「ん?何がですか」

「靴とスカート、汚しちゃった」

リーザのスカートを掴むと、土の付いた部分をパンパンと叩いて払った。


「いや、リーザを守ろうと思ったんだけど、、、お恥ずかしい」

リーザの顔がぱあっと晴れた。

「嬉しいです、嬉しー!私の為に!?」

「うん、そのつもりだったんだけど、、、リーザ、強いね!」

リーザの顔がスッと真顔になる。


「トキヒコさん、私なんて『戦士』と呼ばれる者達からすれば、まだまだです」

戦士って。

「お恥ずかしいながら、一度だけですけど選抜訓練で脱落してしまった事もありますし」

戦士の訓練で脱落?一度だけ??

「いいやリーザ、充分に強いよ。強い女性好きだなぁ」

「では、ではもっと精進します!」


いえ、もう十分です。夫婦喧嘩になったら、、、喧嘩にならないな。

間違いなく瞬殺です。



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