トキヒコ、両親に結婚報告に行く
エルフの王への挨拶も(無事?)終り、今度は私の両親にリーザを会わす番だな。
その覚悟は出来た、、、と思う。
実家に電話をする。
実家に電話を入れるのは2年、いや3年振りか?
「はい、スルガです」
珍しく、父が出た。
「あ、オヤジ元気?トキヒコです」
「ああ、なんかあったか」
オヤジはいつも、ぶっきらぼうだ。
「今週の土、日ヒマ?嫁さんを連れて行くよ」
こちらもストレートだ。
「・・・。」
「もしもし、オヤジ?」
「・・・ああ、母さんと替わるわ。母さ~ん」
電話口の向こうから、パタパタと母が近づく音が聞こえる。
「はいはいはい、トキヒコ?元気?」
母はいつだって、私の体調を気遣ってくれる。
「今週の土曜日に嫁さん連れて行くから」
「・・・。」
「母さん?」
「・・・。あ、お父さんに替わるわね。お父さ~ん」
「はいはい」
夫婦で同じ反応とはな。
「なんだ、トキヒコ」
なんだじゃ無いだろ!
「今週の土曜日にそちらに行きます」
「ああ」
「ひとつお願いががあって」
「ああ」
「絶対に人を呼ばないで、親戚だろうが友人だろうが、絶対に誰も呼ばないでね」
「ああ」
「もし、そっちに誰か居たら直ぐに帰るから」
「ああ、母さんに替わるわ」
「はいはい、トキヒコ」
「あ、お母さん、オヤジにも言ったけど、土曜日は家に誰も呼ばないでね」
「ええ、ええ、分かったわ」
「うん、お願いします。それじゃあ」
チーン。
少し冷たいようだが、息子が家に掛ける電話って、こんなもんだ。
土曜日
リーザはスカート丈が長く大きく広がる白のワンピースに白い大きめの帽子。
避暑地に向かうお嬢様、って感じ。
すてき!素敵!ステキ!かわいい!可愛い!カワイイーーー!!
あー奮発して良かったぁ!
「リーザ、新幹線に乗ります」
リーザ、新幹線に乗る。
近所の駅からこの駅までも含めて、電車に乗るのは初体験だろう。
新幹線のホームに上がると思いの外、人が多い。
私は滅多に新幹線なんて乗らないから、何時もこんなに賑わってるのか?
停車中の車輌を見たリーザの目が輝いている。
「リーザ、私達が乗るのは10分ぐらい後。それが来るのを待つので、皆んな同じに見えるかも知れないけど、来たやつに間違って乗っちゃダメだよ」
「はい」
座席の予約は取れていたが、ホームで並んで待つ事にした。
「よし、お弁当を買おう」
「はい」
「駅で売ってるから『駅弁』って言うんだよ」
「へぇ~面白いですね」
荷物はスーツケースひとつで、中身は2人の一泊分の着替えだ。それと駅弁を持ってホームに並んだ。
新幹線は次から次からホームに入って来ては出て行く。
「大きいですね」
「速いですねー」
「また来ました!」
なんか感激してくれてる。
「本や画面で見るのとは、やはり違います。実物はスゴいです。想像していた物とは違います!」
リーザ、鉄ちゃん状態だな。
約2時間後、新幹線を降り(なんとか寝過ごしたりして、降り損なう事は無かった)在来線に乗り換え30分、その後バスに乗って小一時間程。
、、、ふうぅ~着いた。
ガラガラガラ
「ただいま~」
玄関の引き戸を開けると両親が立って待っていてくれた。
二人の目線は私では無く、リーザに向け一点、凝視している。
オヤジはポカンと口を開け、母さんは手を口にもって行き、二人共、そんなに目が開いたっけ?と思わせる顔をしている。
まあ、両親の予測通りのリアクションに満足だ。
「こちらがリーザ、僕のお嫁さん」
「リーザです。初めまして」
リーザが口を開いたので二人は我に返ったようだ。
お人形さんに見えていたかな。
「ああ、こんにちは。遠い所疲れたでしょ。さあ、上がって上がって」
母に促されて、座敷に通された。
畳の部屋でテーブルを挟み座った。
「こちらがリーザ。本名はリーザリー・エストラルク・ホーリョン・サー・フェアルンと長いので、『リーザ』でいいね」
「はい」
「トキヒコ、まさかお前が外人さんのお嫁さんを連れてくるなんて、驚いた!」
オヤジが言う。
母は言葉が出ないようだ。
「実は、リーザは外国人に見えるけど違うんだ」
リーザは帽子を取った。
特徴的なエルフの『少し尖った耳』が現れた。
二人に隠す必要は無いけど、理解してもらえるか分からない。
「リーザは人間の生物学的に言うと正確には人間では無いんだ。『エルフ族』という、我々から見るとちょっと変わった、不思議な存在の人なんだ」
両親の反応は、、、無い。
「それで?」
「え?」
「それで、それがお前や私達に何やら問題が有るのか?」
「い、いや、無い」
「だったらいいじゃないか」
「リーザさん、こんなバカ息子ですがよろしくお願いします」
私の両親はリーザに対して深々と頭を下げる。
「今後ね、この出来損ないが悪さをしたり、あなたを困らせる事があったら、それは育てた私達の責任ね」
『バカ』とか『出来損ない』とか、えらい言われようだな。
「そういう時は、しっかり怒って、そしてどうにか許してやって欲しいの」
「はい、こちらこそ、お願いします」
私の両親、強いの?
私が変に心配症?
「嬉しいわぁ〜、私達に娘が出来たのね!」
リーザが小首を傾げた。
「リーザ、これはね、自分の『息子』の相手、伴侶に対する表現のひとつなんだ」
「はい」
「それでね、私の両親はリーザの両親にもなったていうシステムなんだ」
「システムってなんだ」
ちょっとオヤジがイラっと言う。
「お二人が私のご両親ですか、嬉しいです!」
リーザの笑顔は相手をトロトロに溶かす。
「そうそう二人共、お腹は減ってない?」
「新幹線の中で駅弁を食ったよ」
「そう、それじゃあお茶を入れましょう。昨日ケーキを買って来たの」
「私もやります」
女二人して台所に向かった。
「母さん、ちょっとタバコ吸って来るわ。トキヒコ、付き合え」
父と一緒に玄関を出て、母屋と納屋との間に椅子が有り、それぞれが座った。
オヤジがタバコに火を点け、ひと吸いするのを見守った。
オヤジは『プハァ~』と掃きだし、私はオヤジに肩を掴まれた。
「やったな!」
「うん、ありがとう」
オヤジが(多分)褒めてくれた、、、気がした。
「おめでとう、とにかく頑張れ」
「はい」
素直に返事が出た。
「実はなぁ」
オヤジがゴソゴソとし出した。
「おい、コレ」
と少し分厚い封筒を取り出した。
「ん?」
「100万円入ってる」
ええー!
「母さんがな、お前に貯めて来たモノだ」
ええー!
「持って行け」
重い。
「金、持ってねえんだろ、新婚旅行なんて行く金無いだろ」
頷く。
新婚旅行、考えて無かった、、、。
「ありがとう」
「礼は母さんに言え」
「うん、そうするよ。ありがとう」
「戻るか」
居間に戻ると、リーザと母が並んで座っていた。
少しは打ち解けてもらえたかな。
「母さん、ありがとう」
「うん、こちらこそ。こんな素敵なお嫁さんを連れて来てくれて」
「リーザさんだけ、ずっとココに居て欲しいわ」
それはお断りします。




