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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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駅前商店街にデビュー?

電話が鳴った。

「スルガさん、お写真が出来ましたよ」

駅前商店街の写真館からだ。

「、、、はい、では1時間後ぐらいにお伺いします」

私は両親にリーザとの写真を送る事にした。

どうせなら、きちんとした写真にしようと写真屋さんにお願いした。

写真館で写真を撮ってもらった事なんて、いつ振りだろう?

小学校の入学時?いや、成人式の時撮ったっけ?

「リーザ、この間撮ってもらった写真が出来たって。取りに行こう」

「はい、楽しみです」


私が乗り降りする駅までアパートから徒歩15分ぐらいなのだが、商店街を抜けて行く。

ただ、この『駅前商店街』は私が通り抜ける朝夜(リーザと暮らし出してから帰宅時間が少しは早くなったが)は開店前か閉店となってるか、実際にどれだけのお店が今やっているのかは分からない。

休日は郊外型のお店に車で行ってしまうので、殆ど駅前商店街を利用した事が無かった。


リーザとの生活を始めて気付いた事のひとつであるが、リーザ、めっちゃ食う!

確かに私は安月給ですが、我が家の家計、エンゲル係数が高い!

私も同年代の者に比べて食べる量は少し多い方。

でもリーザは私の倍近く食べます。

凄く良い事です。

どうやら『術』『魔術』の錬成や使用の影響みたいです。

いいんです。もっと食べて下さい。


写真館への道すがら

「リーザ、ここでの生活はどう?」

私が仕事に出ている日中、エルフの里国との行き来は往々にしてあっても、知り合いも友達も居ないこの世界で、ただ一人でポツンと、、、心細くしているのだろう。

申し訳なく、心配でならない。

「はい、皆様親切にして下さって頂いております」

皆様?

「リーザ、こっちの世界で友達出来たの?」

「ええっとですね、私から友達と申すのは失礼に当たるかも知れませんが、お知り合い?となってくださった方は数名程いらっしゃいます」

「へぇ~、どこの誰?」

「ほとんどが、商店街のお店の方たちですね」

ふぅ~ん、それはそれでいいか。


 新婚生活が始まって、1ケ月程過ぎた頃、、、

 前途のように食料品の買い物は少し離れた大型スーパーマーケットでまとめ買いをする傾向にあった。

 そこへは少し距離があるので、車で出掛ける。

 リーザは車に乗れない、運転するって意味で(運転免許書を持って無い)。ちょっと食べ物として何かが必要になった時や食べ物が不足した時の為に、この駅前商店街が利用できないかな、と思っていた。

 一度確認しとかないと、私も駅前商店街を利用した事が無かったので良い機会だ、敵情視察を行った。


 古き良き時代を保った商店街。

 しかし、日本各地どこの商店街も同様でスーパーマーケット、ドラッグストアなどに代表される郊外型大型店に押されて、シャッターを下ろしているお店もチラホラと有る。

 偵察に出た時、パン屋、肉屋、魚屋、八百屋、酒屋、薬局、、、。ひと通りのお店は並んでおり、正直細々ながら頑張っているんだなぁと驚きの印象を持った。

 後から聞いたのだが、この商店街の来客としては新参者、若い二人が来た!と目を付けられたそうだ。

 でも皆、偵察に行ったその日から、リーザを好きになってくれたみたいだ。


 あの店、この店、まだこんな店も残ってる(失礼ながら)と商店街を散策した。

 リーザは魚屋の前で立ち止まった。

 海の(切り身でない)魚を実際に見たのが初めてだった。

 それが食料品として並んでいる。

(私、肉ばかり買ってたので)

 リーザは魚屋の前で立ち止まり、並ぶ魚達をジーと見つめた。

 魚屋の大将は堪らなくなり、リーザに声を掛けた。

「どれも新鮮で安くて美味いよ!綺麗な若奥さん、今夜旦那に食わしてやんなよ」

「、、、奥さん」

「トキヒコさん、今この方が私の事を『奥さん』と、トキヒコさんの伴侶だと言って下さりました!」

 あー、リーザそういう形で人から言われるの初めてだな。

 驚いたのは私では無く、魚屋の大将の方だった。

「何故分かったのです?」

 魚屋の大将は困り顔だ。


「いやぁ〜普通、そう思うでしょっ?!」

「日本語の『普通』は特に難しいですね。単に平均的とだけ使わず、日常会話の中で随所に出てきます」

 わたしも困り顔。

「トキヒコさん、私嬉しいです。このお店のお魚、全部買って下さい」

 いやいやいや、それは無理。

「あー、リーザごめん、お魚料理作った事が無いんだ」

いつも簡単に『焼く』で済んでしまう肉料理一択だったから。

「私帰ったら直ぐに学びますわ」

「先に食べる魚を決めなくちゃ、料理も変わってくるよ」

 店の前でほのぼのと悶着していたら、周囲のお店の人達が集まって来ていた。

 お前ら暇人かよ。


 実は我々、、、いや、リーザに興味深々で目で追っていたそうだ。

 奥から魚屋の女将さんも出て来た。

「なんだい?ウチの魚が食べられないって」

 いや突然、そんな事誰も言ってませんから。

「おやぁベッピンさん。お魚好きかい」

「実は余り食べた事が無くて、お料理もした事が有りません」

「よし上がりな、教えてあげるよ」

「いや、ちょっと」

 私が拒む前にリーザは魚屋の女将さんに腕を取られ、引かれた。


 その反動で帽子が落ち、リーザの『耳』が露わになってしまった。

 周囲の野次馬の目がリーザの耳に注視された。

「あちゃー」

 一瞬時が止まった、、、と思ったが。私の気のせいになった。

「あらベッピンさん、可愛いお耳。益々気に入ったよ、さあ、早くお上がり」

 リーザの『耳』。人間に比べて少し尖って見えるエルフ特有の耳。それを見ても全く動じず、『可愛いお耳』とさえ言ってくれた。

 リーザはそのまま腕を引かれ奥の部屋へと連れられて行ってしまった。

 周囲にいた野次馬(商店街の他のお店の人達)も我よ我よと雪崩れ込むように魚屋へ上がっていった。

 私、変なパワーに押されて、成す術が無かった。

 魚屋の店先にそこの大将と二人、取り残された。

 ポツーンと。


「リーザさん、こんにちは」

「はい」

「リーザさん、こんにちは」

「はい、ごきげんよう」

 あれ?町行く人が皆、リーザに挨拶してるみたいだ。

「リーザさんお出掛け?後でウチ寄って行ってよ」

「はい」

「え?誰?」

「お肉屋さんのおかみさんです。いつもサービスしてくれます」

 え?え?何?リーザ有名人?すっかり人気者?

「リーザさん、バイバーイ」

「はーい」

 リーザは道の向こう側へ無邪気に手を振っている。

 え?子ども達まで?


 駅前商店街を抜けるような感じで、写真館に着いた。

「こんにちは」

「こんにちは、私の持つ技術を全て投入した、写真家人生最大自信作、集大成として仕上がりました」

 と、写真館のオヤジは胸を張った。

「なーんてね。モデルが良過ぎて、逆にこちらが緊張しました」

 と、笑った。

「どうぞ」

 写真を渡された。

 封筒から取り出すと、見開きの分厚いカバーが付けられている。

「サービスです」

 と、ウインクしてきた。


 リーザと二人、店内のテーブルに着き、分厚いカバー台紙を開いた。

 うっすらと微笑むリーザ可愛い。

 隣の私、普通。単に普通の顔。リーザの飾りにもなって無い。

 リーザが可愛いく写っているので大満足、これを2冊作った。

「あのぉ〜」

 写真館のオヤジが言い寄って来る。


「例の件、良ろしかったですか?」

 実はリーザとの写真を撮りにこの写真館に来た際、写真館のオヤジにお願いで済まず、哀願された。

『リーザさんの写真をお店に飾りたい』と。

 田舎町とは言え、リーザが世間に広がってしまうのは、些か問題有りと認識している私に取って、難しい問題である。

 何故だか、泣きそうな顔でお願いしてくる写真館のオヤジの哀願に折れてしまった。


 ただ、条件を付けた。

 飾る以外はプリントしない事。

 貼り出すの二枚まで。

 お店のPRに使わない事。

 リーザにも了承を取り、今二人で撮影した格好(私の両親を訪問した時と同じ格好、白のワンピースとフチの大きな白い帽子、お嬢様スタイル!)でプチ撮影会が始まった。

 写真館のオヤジの張り切り様、真剣な姿にも驚かされた。

 約1時間ぐらい。

 写真館のオヤジは忙しなく動き回り、照明の強さ、色、バックの壁紙をあれやこれや取り替え、リーザへのポーズ指示、、、。

 撮影会が終わり汗だくになった写真館のオヤジは顔を上げると満足げだった。

「何かサービスさせて下さい」

 と執拗に言われたが、お願いした写真は正規の値段で支払う事は曲げなかった。

 サービスの内容は余り大袈裟で無い範囲でお任せします、と言った。

 写真館に置く写真を見せてもらった。

 コレはイカン、かわいい!

「あのぉ〜」、、、「わたしもコレ、欲しいんですが」


 写真館の表には、余り大きく無いリーザの全身像。館内には大きい(何号?)リーザの上半身の写真が飾られた。

 私の分のリーザの写真(特別サービス)は後日との事で、写真館を後にした。

 写真館を出た途端、野次馬(駅前商店街の人達)に囲まれた。

「リーザさんの写真が飾られたぞ!」

「ここでいつも見れるんだ」

「毎日ここに来るぞ!」

「ウチの店にも飾っておくれ!」

 ちょっと騒ぎになってる。


 リーザの人気。

 なんかそれはそれで変に新たな心配事に思ってしまうトキヒコであった。



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