初代王ファウスの世界 ズゥイラー
「お父さんダメ、帰るのよ!」
さくらが現れた。
「スルガトキヒコよ、そう急くな。時は刻むが、我が仮説成るもう一つ、聞いてくれても良かろう」
「はぁ」
あ~聞くしか無いか。まぁいいや。
「ダメよお父さん、この場所は良く無い。今直ぐにでもここから出なくちゃ!」
さくらが妙に慌ててる。珍しいな。
そうしている内に、樹木の影から人影が現れた。
女エルフ。
「ザーララ!?」
いや、ザーララとは少し違う。いや、一緒だ!
「トキヒコ、我が妻ズゥイラーである」
我が妻って、、、邪竜から生まれ変わった、エルフ王家のおばあちゃん!
しかし、こうして見るとエルフとは少し違った印象受ける。
エルフの前者とも言える『ヒトの術者』の一人。エルフの外的な特徴でもある、少し尖った耳をしていない。
そして何より、エルフの里国の王家の血族が流れ持つ力、魔力の元となる邪竜の力の大元。
それにしても、ザーララは祖母となるズゥイラーの生まれ変わりの様にそっくりだ!
「トキヒコよ、我が妻の事も存じておるな。そう、邪竜から生まれし者、若しくは邪竜の生まれ変わりと位置付けようか」
邪竜の、、、解る。先程樹木の影から登場した途端、空気は変わっている。
「さくら、ザーララさんは、おばあちゃんそっくりだな」
さくらは口を真一文字にし、真顔のままだ。何時もの余裕をかます顔をしていない。
初代王ファウスに対してか、緊張してんのかな?
「ズゥイラーよ、この者スルガ トキヒコ成るが、我らの子孫を知る者と成ろうぞ」
ズゥイラーが微笑みを向けて来る。魅力的で吸い寄せられる。
その美しき顔、惹き付けられる瞳。その姿は見る者を惹き付け、その姿から目が離せられなくなる。自然とその姿を目で追ってしまう。
だが同時に、ここはこの二人だけの世界であり、この二人以外の命の鼓動が無い事を唐突に感じた。
確証は無いが、、、何となくだ。
だけど、これだけ瑞々しく緑が育ち、花が咲き誇るのに、どうして?
そもそも、ここは何処だ?
「ファウス、ズゥイラー、一つ宜しいですか?」
「何なりと」
初代王ファウスの対応は穏やかその物である。
「ここは、何処なんです?」
エルフの里国内のどこら辺の森なんだろう?
トキヒコは物怖じせず、何時でも相手に聞く内容は単純明確だ。遠慮と配慮に欠けていたり、言葉足らずとも。
「此処はそう、『行き着く場』とでも呼ぼうか」
行き着く場、、、魂の行き場、、、死後の世界?だとして、、、景色が鮮明過ぎるし、意識も有る。相手と問答出来る。
まあ、オレは死後の世界なんて知らないから、こんなもんか。
トキヒコは、ここが死後の世界だとしても、自分は何かを思い考えられる、自分の思考が働いている事を理解していたので慌てる事は無く、妙に落ち着き払っていた。
ただ、その思考の根本的な所は抜け落ちていた。
「あーすいません、もう一つ。何故私はここに居るのでしょう?」
何で私はここに来た?
「トキヒコよ、我らは次成る場へ行こうと思う。その為に少なからず力が必要となった」
「移動のエネルギーとか?」
「左様。成れば我が子孫より、力を借りる事とした」
ふぅ~ん。
「スルガ トキヒコは、我が子孫の力の代わりにここに来てしまった。異成る出来事。しかし、我が右腕を届け申した。何かの因果成るか」
あ、そうだった。確かファウスの仮説がもう1つ有るって言ってたな。
「お父さん!」
ああ、そうだ、さくらも来てたんだった。
「ファウス、ズゥイラー、紹介します。私の娘のさくらです」
トキヒコは呑気だ。いや、思考回路が働いていない。
「さくら、そんな顔すんな、エルフの初代王だ、挨拶して」
さくらが一歩、歩を進めトキヒコの隣に並び立つ。
あれ、ファウスとズゥイラーの反応が無い。
ファウスとズゥイラーにさくらが見えていないかの様だ?!
ファウスとズゥイラーが動いていない。いや、止まっている。
いや、この二人だけでない。ここの景色も光の揺らめきも、写真か絵でもあるかのように、全く動いている気配が感じられなくなっている。止まってる、、、止まった?
『ドグゥゥゥンッ』
さくらを中心に、この空間全体が脈打つ。
さくらが燃え上がる。
シルバーグレーの長い髪が流れ、赤い瞳に戻る。
全身から赤く炎の如く、光を発する。
トキヒコの目に映るファウスとズゥイラー、そして景色も霞んで行くようだ。
「お父さん、帰るよ!」
さくらに肩を掴まれると、トキヒコは『翔んだ』。
「はれぇぇぇ~」




