エルフの里国の初代王 ファウスの世界
エルフの里国の初代王、ファウスは私の目の前に居る。
私はあなたを知っている。でもそれは、あなたの子孫から聞き及んでいる程度だ。肖像画とか無かったしな。
どんなエルフ?と少し想像をした事はあったが、まさかこうして対面する機会が来るなんて。
今、私の目の前に座る初代王ファウスは、現在のエルフの里国の王、ユーカナーサリーの二代前のエルフ王だ。
たったの二代前だとしても、その年月は測り知れない。エルフの王家の三姉弟妹ザーララ、ロウ、ユーカナーサリーは会った事も見た事も無いと聞いている。と言うかエルフ世界の時間の流れが把握出来てないのだが。
真の意味でエルフを殺したエルフと聞く。
また、この体躯であれば、エルフの王宮の玉座の後ろに掲げられている、刃渡り2m程有る大剣を扱う事は可能であろう。
いずれにせよ、私が会っている初代王ファウスは目の前で座っているが、生きているのか?本物か?そもそも此処は何処なんだ?
「トキヒコよ、そなたは我の事を知っているようだが」
「はい、エルフの王家の者達に聞いた事が有ります」
声の震えは止まっていた。
エルフの初代王ファウスから届く言葉を感じると、自分の知らない自然体の自分になってる気がした。
「ほう、エルフの王家か」
ファウスの言葉ひとつ一つが、心地よく響く。
「では、我はそなたが聞かされているように邪竜と戦った。そして右腕を失った」
「はい」
「千切れたのか、砕けたのかは解らぬが、わたしの右腕は消えてしまった」
「我はある仮説を2つ立てた。聞いてくれるか?」
私は黙って頷いた。
「1つ目の仮説だが、我は邪竜とも呼ばれる存在と対峙し、戦ったエルフ達のただ一騎である。 そして直接に邪竜と衝突した。その衝突の際、膨大な力を感じた。我自身でも理解出来る、我の肉体、存在すらが消し飛ぶ程度では有り余る膨大な力だ」
「だが、我の意識、肉体、存在は残った。消えたのは右腕だけだ」
「我の右腕は邪竜との衝突の際に起こった膨大な力を一点に集め、我の命と引き換えに何処かに飛んだ」
「何故かは分からん。邪竜の槍が力の避雷針のごとくとでも成り申した為なるか?ただその後、邪竜の槍も消えた」
邪竜の槍、、、消えたのか、それともどこに行ったのだろうか。
「スルガ トキヒコ、そなたは我の右腕を携え現れた。我の右腕はそなたの世界へと飛び、その情報をいつしかの時を重ね伝わり、そなたへ渡ったのではなかろうか」
伝わり?情報?遺伝情報になるのか。
確かに人間とエルフ、見た目はすごく似ている。でも住んでる世界も場所も、過ごして来た時間も歴史も違う。
だって今の人間は、地球上の生物達の進化の果てで誕生した者。
どこかでエルフと枝分かれしているなんて、聞いた事が無い。
ただ、ユーカナーサリーは言っていた『エルフと人間、根本が同じではないか』と。
「まさか、私の遺伝子の中にあなたの、エルフの情報が入っていると言っているのか?」
そんな事は有り得ない!
『人は神が創り申した』なんて私はこれっぽっちも思っていない。どちらかと言うとダーウィンの進化論の信仰派だ。でもどこかで『宇宙人に創り出された生物』と言うオカルト的な考えにも少し賛同しちゃってる。
いずれにしても、どうして人類が誕生し現在の人間となったのかは解らないが、ここにエルフが入り込む?混ざる?余地なんて無いだろう。
エルフの初代王、ファウスの右腕が過去の地球に飛んで来て、その細胞が人類の素になったのか、溶けて混ぜ込まれたのか、、、私達人類の遺伝情報の一部になったからエルフと人間は似ている、、、。
「うむ分かるぞ。そなたの世界で解明されている遺伝子、塩基列、遺伝情報か。生命体の命を司る仕組みか」
「いや、しかし、信じられない!そんな事であったのなら人類の根底が覆っちゃうよ。おかしいよ!」
やっぱりおかしい。エルフが人間の素になってるなんて。
考え過ぎか?
違う。違う、違う、違う、、、
、、、もしもそうだとしたら、地球上の生物が、アメーバとか微生物の段階でエルフの組織なり遺伝子なりが組み込まれてないと、、、時間軸がおかしいし、それならもっとエルフ的な生物が居ても良いはずだ。
いや、もっと後の進化の段階だとしたら、、、
いやいや、太古には、エルフの前身である、“ヒト”の時代があって、、、
人類は、、、ヒトとチンパンジーの祖先が分化したのが1000万~700万年前とされていて、旧石器時代が200万年ぐらい前で、、、
邪竜を多く結界で抑え込み、ファウスが留まっていたエルフの王宮に有る最下層『邪竜の間』は、時間が止まっているそうだし、、、
、、、ファウスの右腕が飛んで来たって、、、エルフの里国は何処にあるんだ?何処から地球に来る?他の惑星?
トキヒコは戸惑いと混乱、自己嫌悪になっている。
「トキヒコよ、ここでそう悩むで無い。我の仮説はもう一つ有る。こちらは至極単純であるが。聞いてもらえるか」
今は何も聞きたく無い。でも聞くしかないと、頭の中で小さな渦がトグロを巻いている。
それにしても、この場所は居心地がいい。
ファウスが言う事は、どうでもいい。ぽわぁ~んとして、この空間に体を預けたくなる。
実際に、身も心も預けると言うか、この場所に全てを投げ出したくなっている。
その時、突然、強い風が吹いた。
「お父さん!」
さくはが現れた。
「ああ、さくらも来たのか。ここは、何かいい所だぞ」
「ダメよお父さん!帰るのよ!」
帰る?
「何処に?」
さくらが現れた時に起きた風は、ファウスが身に着ける薄手の布の様な服を捲り上げた。
一瞬見えたファウスの体は、木の枝の様に見えぬでもなかったが。
「トキヒコよ、話しを続けようぞ」




