エルフ王家の異変 初代王の世界
トキヒコは見知らぬ場所で見知らぬ森の中を歩いていた。
喉が乾かなければお腹も空いて来ない。歩いて疲れて来たのかそうで無いのかも分からない。
とにかく時間が過ぎて行く感覚さえ感じていなかった。
「何か以前『ロウの中』と言われた空間に似ている感覚かもな」
エルフ王家の血族であるロウに初めて会い、対峙した場所。ロウが創り出したロウ自身の中。
「でもオレは、何処に行けばいいんだ?何処に向かっているんだ?王宮はどっちだ?」
ただ一人、森の中で歩み続けていたが、エルフの里国の皆の事が気に掛かった。
女王ユーカナーサリーの症状は回復したのか?
ロウは大丈夫だったのか?
そしてザーララ。
彼女は、、、邪竜に、、、変わってしまうのか。
でも何故?
もしかしたら、エルフ王家の母がその力で抑え込んだと言うザーララの力とは、、、今回の様に邪竜と変化する事を抑えた事なのか、、、。
しかし、その母はもう居ないも同然だ。
あの時、あの天井から落ちた雫。あれがザーララをあのまま邪竜へと変化する事を押し留めたのだろう。
だか今後も同様に、私の知るザーララへと、あのまま戻せる確証は何故だか感じられなかった。
でも何故、邪竜へと変化をし出した?
そして、女王ユーカナーサリーとロウの体調異変。
エルフ王家の三人に何が起こっている?
私はアレコレ考えてみるが、、、私が解る事であったなら、もうとっくに解決してるよ。
「あー、ちょっと念じてみよう、、、私は今、どっかの森の中に居ます。リーザ、迎えに来て~」
まあ、念話なんて出来ないけどね。一応。
それにしても、、、
「オレがここに居る事、ここに来た事はどんな意味が有るのだろう。でも何でオレ?」
あっ、何か有る。
トキヒコは、駆け寄った。
それは光が強く集まる中心部、石で造られた台がある。
長い辺が3メートル以上は有ろうか。地面からは1メートル程の高さが有る。 これは石で作られたベットかな?
ただ、この大きなベットには地面から生えた多くの草や木、上の木からはつる植物が降りて来ている。それらはこのベットの上に向かい伸び、育ち、大変多くが集まっている。
それらはまるで、ベットの中心部からそれぞれが引っ張られているかの様に集まっていて、草木の山となっている。
草木達のベットなの?
でも、この石のベットの草木の山の中には何が有るのだろう!興味が湧いた。
トキヒコは石造りのベットを観察しながら一周した。
石造りのベットには多くの文字にも見える模様が刻み込まれている。
石造りのベットに触れる。冷たくは無い。光が集まり温められているからかな?でも、この石造りのベットに触れた時、何やら鼓動めいたモノを感じた。
「良し、何が有る?何が出てくる?」
トキヒコは石造りのベットの上で山積みになっている草木をかき分け出し、その中を探り出した。
恐怖心は薄い、好奇心が勝っていた。
「あー固い!それにガッチリと組み合ってる!」
草木の山はその中身が見られないかの様に、まるで何かを守っているかの様に重なり合い、絡み合い、トキヒコを拒んでいるかの様だ。
「おいおい、オレをここに呼んだのは、この中のモノなんだろ!」
トキヒコの苛つく声に答える様に、石造りのベットの上に集まる草、木、ツルが割れて行く。
割れた中には一人の男が寝ていた。
トキヒコはギョッとし、ゴクリと唾を飲み込んだ。
トキヒコの倍近く有りそうな大男。ガッチリとゴツい体躯、尖った耳がエルフである事を示している。
そしてこの大男エルフは片腕だった。右腕が無かった。
片腕の大男のエルフはゆっくりと目を開いた。
ギョロリ、ギョロリと目玉だけを動かし周囲を見た。そして再び目を閉じた。
「えっ?おいおい、、、?」
驚いた~!でも起きたんじゃないの?また寝たの?
オレが呼ばれたのは、こことは別の場所に理由があるのかな?
トキヒコは動けなかった。だけどそう思い直し、再び移動を始め様と思った時、
片腕の大男のエルフが草木を掛け分けるように上半身を石造りのベットの上で起こした。
そしてゆっくりと、石造りのベットから地面に立った。
その身長は2メートル以上有る。いや、3メートル近くと言い替えるべきか。トキヒコの目線の高さは彼の胸まで届かない。見上げるしかない。
左腕や脚の太さも、とにかくトキヒコと比べるまでも無い。規格が違う。
そして石造りのベットに腰掛けるとトキヒコを見た。
トキヒコと片腕の大男のエルフの目が合う。
「訪問者よ」
片腕の大男のエルフが口を開いた。
その声は優しく響いて来た。しかしその声をトキヒコは耳で聞いたのでは無かった。トキヒコの意識の中に響いて来た。
「私はあなたを知っている。あなたはエルフの里国の初代王、ファウス!」
そう片腕、右腕を失ったエルフ。調整に失敗した者、大槍を持つ者、、、そしてエルフの里国の初代王。
「訪問者よ、よくぞ来た。名を教えてはくれぬか」
「私はスルガ トキヒコと言います」
恐怖は感じなかったが、声が震えた。
デカイ!巨人?怪獣?今、私と会っているエルフが永き年月によって小さくなったの?それとも初代王が異常?
エルフの里国の王宮では、度々その大きさに違和感を感じる物は多々有ったが、でも今目の前にいる初代王だとその大きさが合う。
花の間の扉の高さ、玉座の本当の大きさ、その背の壁に掲げられている大剣は初代王であったのなら、片腕であろうが、難なく扱えるだろう。
トゥクルトッドドゥーにだって、難無く跨ぎ乗れてしまうだろう。
しかし、エルフの初代王の時代は遥か昔の事。(具体的に何年前って知りません、分かりません。私が聞いたイメージと感覚なんで、悪しからず)なのに何故今、私はエルフの里国の初代王と会う事が出来ているんだ?エルフは私なんかが想像しているよりも、メチャクチャ長生き!?永遠の命?!
今私が見ている、目の前に居る者は果たして何者なんだ?
「スルガ トキヒコ、我はお前を待っていたのかも知れない」
「へっ?」
何で?どうして?初対面、ですよね?
「さあ、その右腕を我に届けてくれ」
「え?」
トキヒコは自分の右腕を掴んだ。
「あっ!」
トキヒコの右隣には、光に包まれる様に大きな右腕が浮かんでいた。
「ええー!?」
「さあ、こちらへ」
トキヒコは驚き、迷いつつもエルフの里国の初代王、ファウスの元へ歩み寄った。
大きな右腕はトキヒコの歩みと合わせ進むと、スーと浮かんだまま、ファウスに渡った。
大きな右腕はそのまま自然と思える程、ファウスの失った右腕部分に収まった。
エルフの里国の初代王、ファウスは再び立ち上がった。
「トキヒコ、礼を申すぞ」
ぽか~ん、だ。
「いや、ちょっと、何故私があなたの右腕を持って来たんですか?どこから?」
どうして?
「うむトキヒコ、少し話そうぞ」




