エルフ王家の異変 ザーララの山岳城
さくらの『術』だか『魔力』でザーララの山岳城に『翔び』その門前に立った。
山岳城を見上げると、あちらこちらの壁には穴が開いており、城の部屋の中まで見える程だ。
東の塔は崩れ落ちて無い。
何が、どうなった?どうなってる!?
「さくら、行こう!」
私達は門を潜り走った。正面の扉は開けっ放しになってる。
石階段は一部崩れている所が有るが、上階に昇るのには問題無かった。
何も考えずに階段を駆け上がると、いつもの山岳城のホールだ。
ホールの東西南北の壁はそれぞれ半分程が無く、外の景色が四方から見えた。
大きく白と赤のチェッカー状に組み合わされたホールの床も、あちらこちらが隆起しているが、ザーララは、居た。
両手を床に着き、膝も床に着いている。肩から背中が大きく上下し、荒い呼吸をしている事が見て分かる。
私は改めてホールを見渡すと、人が仰向けに倒れていたので駆け寄った。
「ロウ!」
倒れているロウに顔を近付け体に触れる。全身に血が滲んでいる様に見える!だが、体温を感じるし呼吸はしてる、死んでは無いな。
「、、、トキヒコ、殿、、、」
ロウが弱々しく口を開く。いつもの屈強さが消え薄れている。
「さくら!」
ホールにうつ伏せるザーララを少し遠目に見ていたさくらが駆け寄って来た。
「ロウを見てやって」
「ええ」
今度はザーララへ駆け寄った。
「ザーララ!!」
ザーララが苦しんでいる。
完全無欠、無敵で最強なザーララのこんな姿を見るなんて、、、
私は絶句していた。
「トキヒコ、か、、、」
弱々しくザーララが顔を上げる。
私は床に両手を付いて屈むザーララに合わせて、彼女の間近に膝を付き屈んだ。
「ギャッ」
とザーララが声を上げると5本の禍々しい角が頭から生えた。
どの角も捻れ曲がり一定の方向を向いていない。
「うわあぁー、ガー!」
ザーララは叫び声を上げると、空中に浮き上がった。
ザーララの背中が大きく膨らむと羽根が、真っ黒な翼が生え出した。
真っ黒な翼がホールの両壁を目指すかのように、左右に大きく広がる!ザーララの肉体も広がる黒い翼に連動するかの様に、上下左右に広がり出したように見える。
ザーララの肉体が大きくなって行くみたいだ。
腕も脚も背も膨らむ様にその形を変え出した。
唖然として空中に居るザーララを見上げていた私は、いつの間にか生えていた、彼女の3本の尻尾の1本に絡み付かれていた。
「ザーララ!!」
ザーララ、邪竜と変わるのか!私の声は届いているのか?
「トキヒコ、、、」
ザーララは歯を食い縛り、これ以上の変化を耐えているようだ。
ザーララは血の涙を流しながら体の変化に耐えている。
「ザーララ、、、」
その時、天井から一滴の青い雫が落ち、空中に居るザーララに垂れ落ちた。
「あああぁぁぁー」
青い雫はその数を増やし、まるでスコールの様に天井からホール全体に降り注いだ。
青く水浸しとなった床は、その色を青と紫に変えて行く。
青いスコールが止むと同時に、変化の止まったザーララの体は、空中から落ちて来た。
あの青い雫。私が聞いた事の有る、石となってしまったというエルフ王家の母の力だったのだろう。
水浸しとなったホールの床に倒れ転がるザーララは、元の姿を取り戻していた。
だが、身に着けていた衣服はズタズタに裂け、ほぼ裸の状態だ。私がプレゼントしたシューズもボロボロに裂け、原形を留めておらず、ザーララから少し離れた場所に転がっている。
「トキヒコ、、、」
私が何も出来無い事は分かっている、分かっているが、私は床に倒れるザーララを抱き抱えた。
その時、私は何かに引っぱられる、もしくは導かれる様に、露になったザーララの乳房の間、苦しむザーララの胸の真ん中に手を当てた。
その瞬間、ザーララとトキヒコは光に包まれ、トキヒコの姿はその場から消えた。
「お父さん!」
「ここは、何処だろう」
トキヒコは尻もちを着いた状態であった。
ザーララの胸の真ん中に触れた途端、光に包まれ、何処かに飛ばされた自覚は有る。
勝手に人のおっぱい触ったから、罰が当たったの?
でも何で?何が起こったのだろう。
とりあえず、自分の状態を確認した。
体に怪我や異常は無さそうだ。意識もはっきりしている。自分が飛んで来たココの環境も今の所、呼吸も出来て生命が危険に晒されるようでも無い。
周囲を見渡す。
ここは森の中だ。エルフの森の中だ。
私はエルフの里国の中にある、どこかの森へと飛ばされたのか?
空が見えない程の高い木々が立ち並んでいるが、強い木漏れ日が地面にまで届いており、暗さを感じさせない。その強い光や緩やかに感じる光が交互に降り注いでいる。
逆に暖かな環境で、この場所にゆっくりと留まっていたく思った。
でも、鳥のさえずりや風の流れが感じられない。何より森の中で草木が生い茂っているのに、それらの匂いが感じられない。
『生命の活動』が感じられない。
不安は感じないのだが、何かが“異常”であると頭の内側が訴えている。
「取りあえず、進もう」
トキヒコは立ち上がった。
ただ、どちらへ向かえば良いのかはさっぱりだ。
「こんな状況になるのも初めてでは無いしなぁ」
トキヒコは妙に落ち着いていた。
「まあまあ、気が向くまま、疲れない程度でね」
トキヒコは見知らぬ地を歩み進んだ。




