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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら日記 中学1年生春 部活動

さくらはこの春から、無事に中学生となった。

地元の公立の中学校だ。

さくらの見た目はどちらかと言うと、まだ父親似とも言えそうだが、リーザの顔立ちの面影も持ち、日本人と西洋人との混血児の様に見えなくも無い。

でも黒目、黒髪が、それを目立たなくさせている。


意外だったのが、さくらが中学校で選んだ部活が運動部では無かった事だ。

さくらの選んだ部活は『自然科学部』だった。

ん、何それ?的な。

「さくらの入った『自然科学部』って、何すんの?」

単純に私の持った疑問である。

「お父さん、学校で飼っている鶏やウサギの世話と思った?」

ずっと運動部だった私は知らない世界。

「いや、想像もつかない。さっぱりだ。金魚でも飼うのか?」

「それじゃあ飼育係と一緒よ。ちょっとねー自由に課題を持って自然を科学的に検証してもいいんだって。だから私は生き物について自由に研究をしようと思う。先ずはこの学区の生態系をまとめて、その後は生命の起源に迫っても面白いかな、と思ったの!」

『生命の起源』!?って、中学成り立て1年生女子のセリフには聞こえ無いのだが。

「何時か『命の起源』を探求する機会に向けての下準備よ」

「さくら、面白そうですね。私も協力出来る事がありましたら、言って下さい」

「ママが参加したら、生命の起源に辿り着いちゃいそう。だからダメ」

いやいやこの人達、DNAの解析とかしようとしてるんか?


「でも、『生命の起源』の探求には、諸説が沢山あって、実験をするにも大掛かりな設備が必要だったり、手に入れるのが難しいサンプルも有るから、先ずはどんな説を検証や研究の対象にするのかで終わっちゃうかも知れないけどね」

色々と考えて選んだ部活って事は分かった。分かったけど、やっぱ中学成り立て1年生女子の発言としては、、、それに『生命の起源』の説が多く有るって、知らないけど、、、解明されて無いからか。

さくらの探求心か。


「分からない事、知りたい事は、いっぱい!」

さくらが乗って来た。

「ダーウィンの進化論を正とするなら、生き物たちは環境や地域によって、進化なり変化なりが起こった事は納得出来るわ」

うん、それ知ってる。ガラパゴス諸島な。

「それと、食物連鎖。でも、捕食し易く成るための進化はあっても、捕食され易くなった進化は無いわ」

「果たして、人間は人類は本当に食物連鎖の頂点にいるのかしら」

人類は地球上の他の動物達を蹂躙し、地球上を制覇した。と思っているから、自然と食物連鎖のピラミッドの頂点に君臨してると思ってるけど。違うのか?

人間が道具や武器を使う事も進化の果ての事柄だろう。

素手で戦ったら、そりゃ猛獣とかには勝てないだろうけど、道具や武器を使って食物連鎖の頂点に立っちゃダメでもなかろう。


「どうして無脊椎動物と脊椎動物は分かれているの?脊椎動物といえど、魚以外のモノ達はどうして手足の合計が4本なの?」

「鳥は足が二本だよ」

「ううん、翼を腕としたら4本になるわ。じゃあどうして同じ環境下に生息する昆虫は手足が6本なの?蜘蛛は8本、海老は10本。ムカデやヤスデ、フナムシとか」

うっ、答えられない。

「微生物、菌類、アメーバとか。同じ地球上に暮らす仲間なのに、極端に違う形。でも、同じ生命体よ」

ミドリムシやミジンコと仲間って言われてもなぁ~。さくら、囲みが大き過ぎない?

確かに、地球上の生態系は、太陽のエネルギーに依存した物質的な流れを基本としていて、植物が「一次生産者」となり、動物が「消費者」、細菌や菌を「分解者」である。

さくらの探求は何処から始まり、どこに行き着くのだろう。


「私が今、『生命の起源』の中で一番興味を持っているのが『地球の生命は宇宙からやって来た』を唱えている『パンスペルミア説』なの」

パンス、パン、、、何だって?

「へぇ~宇宙から、地球外からか!オレもその説に乗るよ。実は人間は地球外の来訪者によって創られた実験的な生物で、人間の形になるまでには、いくつもの生命体を経て来た結果ってやつ」

「う~ん、お父さん、それはSFか空想的な何かの範疇だよ」

そうかなぁ~

「まあでも、『生命の起源』は解明されていないから、ゼロでは無い可能性は有るかもね」

その言い方だと、私の唱える説は、ほぼ無いって事なのね。

「もっと原始的なの。宇宙空間には生命の種と呼ばれるモノが広がっていて、初期の地球の隕石衝突にその『生命の種』が乗っていた。それが地球での生命の始まりの素では無いか、と言う説。まあ仮説ね」


地球上の『生命』は、宇宙からやって来た(地球で生命が生まれたのではない)とする仮説である。この説の原型となる考え自体は1787年にスパランツァーニによって唱えられていた。


「でもさお父さん、人間って、人類は地球上の生命体の進化のゴールなのかしら?本当に地球の生命体の頂点なのかしら?」

はぁ?

「う〜ん、想像した事が無かった。一応食物連鎖の頂点に立つと思ってるから、人間が地球上の最高地点とは感覚としてあるけれど」

地上は人間が制覇していると思ってるし。でも海洋の奥深くは未知の世界が広がる。

でも、深海には普通行かないしな。

だけど人類がもっと進化をする?

まあダーウィンの『進化論』に乗っかる事が前提だけど。

進化した人類、、、空を飛ぶ?水中で呼吸が出来る?分裂する?意思疎通が出来る?、、、今より進化する事って、何か特技が加わる事なのかなぁ。

いやもっと、全く別の生命体が誕生する事なのか?

「さくらの探求心は果て無さそうだな」

「うん!でも私だけじゃない、皆そうだよ!」

でもやっぱ、中学生が持つテーマとしては大き過ぎだよ。



中学校生活が始まり、1ヶ月もした日。ゴールデンウィーク直前だ。

さくらが少し、悔しい顔をしている。

「どうした?」

『自然科学部』の顧問の先生の元にクレームが入ったらしい。

さくらのフィールドワークに男子生徒はついて行けないそうだ。

川に潜り、草木を掘り返し、木に登る。

活動範囲も広く、時間も長い。

さくらと屋外活動をしていたら、勉強の時間が取れないそうだ。

「私の研究なんだから、着いて来ないでいいのにっ!」

まあそこは、集団生活を行う学校教育の舞台だからな。

「他の部員の研究課題は?」

「知らない~」

ちょっと投げやりだな。

「さくら、中学校の部活動と言え、『自然科学部』という組織だ。組織に属する者は組織のルールに従わなくてはならない。他の部員の研究課題を知っておく事は、まあマナーだな」

「部活のルールは知ってるか?何か有るのか?」

「知らない」

「まあ、顧問の先生に聞くなり確認しておけ。さくらは悪い事をしているんじゃ無いんだろ」

「うん。確認しておく」

リーザがさくらを見る。

「はい、確認しておきます」

言い直した!。


別の日。

さくらは自然科学部の顧問の先生に、部活のルールを聞いて来たそうだ。

「なんかねー、屋外活動は皆でやるんだって。一人で外へ行っちゃダメなんだって」

まあ、部活時間といえど、就学時間帯は学校外に基本出てはいけない。何かあった時の保険だな。

「で、他の部員の研究課題は?」

「今は特に無いそうよ。考え中って言っていた」

やること無いから無理無理さくらに付き合って、その上、文句垂れか。

「この間言っていた、勉強の時間が取れないって、それは悪いけど言い訳だな。文句を言う人は二種類いる。そこそこやってる人とだいたいやってる人。本気でやってる人は大変さを知っているから文句は言わない」

そんなもんだ。

「それと、人はそれぞれ価値観や方向性が違う事は知っておかないとな。それを自分と比較して、批判したり否定してはいけない。肯定はしなくていい。さくらは今回それを知るいい機会になった。でもな、文句を言った人は、それに気付けていない。その点はさくら、得したな」

女子中学生をなだめるのは難しい。

「さくら、自分が思った様に活動を続ければいい。でもさ、勉強の時間が取れないと言ったヤツを見返せ、テストで一番になっちゃえ」

何か少しムカついたので、さくらにハッパを掛けた。

私は顧問の先生に電話して『女子・自然科学部』にしてくれ、バスケットやバレー部と一緒だよ、と言っておいた。モンスターペアレントだな。


「さくら、あれから部活はどう?」

部活動のルールは確認したし、他の部員の動向も見えて来ただろう。さくらは学区の生態系の調査を続けると言っていたが。

「なんか上手く進まない」

「なんで?」

「生き物たちが見つからないの」

単に準備不足だし、動物や生物の事を知らな過ぎる。それと急ぎ過ぎたな。

「さくら、オレのアドバイス聞く気ある?」

「うん、、、はい」

リーザが一緒の場所に居るので、さくらの態度はおとなしい。

「さくら、昆虫は変態するだろ。それに生物は移動する。日本には四季が有る。さくらも知ってると思うけど、季節によって生き物たちの活動は全く違う。何がこの地区に生息しているのかを知りたいのは分かるけど、もっと生き物たちの生態を把握しなくっちゃ」

「うん」

「それは植物でも一緒。先ずは移動の少ない草木、植物の分布調査からでもいいんじゃない?だけど季節による草木の移り変わりは思っているより早いぞ。でも、植物を観察研究したら生き物たちの生態系も見えて来るよ」

「うん!」

「やり始めて分かったと思うが、急ぎ過ぎたかな。もう少し絞って、それから広げて行けばいいんじゃない。校庭の草木、集まる生物を調べるだけでも1年以上掛かると思う。別に研究の方向性を大きく変える事でも無いしな。でも実は逆に対象が多く、広くなって大変かもな」

「はいお父さん!校庭、学校内からかぁ~面白そう」

「さくら、足元から始めます事も大切ですよ」

「はい!」

なんとか機嫌が直ったか。リーザも微笑んでくれている。



「だけどな、ここから少し大事な話しだ」


「相手が、誰かが気に入らないとかで無暗に悪口なんて言ってはいけない」

「あーだこうだと、人に言った言葉はいつか自分に返って来る。何処かで誰かに言われている」


「だからな、褒め言葉を選ぶんだ。相手のいい所を見付けるんだ」


「悪口なんかが返って来ても、つまらないだろ」


「それでもダメだったら、オレに言え。オレが代わりに言ってやるよ」

「それでは、トキヒコさんに返って来てしまいます。」

 トキヒコさんは娘の、さくらの罪を全てご自身が受けると申されるのですか?


「いや、別に悪口が返って来てもいいよ。『あっコイツ、つまらない事を言う、つまらないヤツだな』って思うだけだから、別に気にしないよ」

 トキヒコさんの強さは何処から?


「さくら、オレも自分の親にそう言われて育った。だからさくらも嫌な事はオレに言え、オレは何でも受けて立つよ」

 さくら、リーザの事は特別だ。二人を守る事に繋がるなら、オレなんてどうでもいい。


「うわぁ~、お父さーん!

 さくらはどこかで悔しかったんだ。それは分かっていた、親だもん。

 そう、悔しかったら泣けばいい。そうすれが次の一歩に続くから。


 リーザはさくらが泣いた事に対して戸惑った。

 エルフは滅多な事では涙をみせない。

 しかし、さくらの涙から伝わる事がある。


リーザはそっと、トキヒコに抱き着いた。

家族の輪をそっと創った。





6月も中半となり梅雨入りになりそう頃、『(仮)女子・自然科学部』の噂を聞きつけた帰宅部だった女子生徒の入部が増え、さくら一人だった女子部員の数が15人となったそうだ。

さくらが声を掛けたのでは無い。原因は不明だそうだ。


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