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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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サキュバスの夜 ヘイイアンデユンズィギュオ国へ

私は“サキュバス”と呼べなくもない、向こうの魔術者、ヘイイアンデユンズィギュオ国の王、イインジュ・ブュヤ・ギュオワンに『恋人つなぎ』で手を握られたまま、雲の中を突き進んでいた。

真っ黒とも思える雲に飛び込んだ瞬間には、雲の中で稲妻が見え、冷気を感じたが、一瞬でも先が見えない、暗闇に等しい程の厚い雲の中をイインジュ・ブュヤ・ギュオワンは構わずに飛び続ける。

そして、雲を抜け出た。


厚い雲に覆われた先には、中国の仙人がいるような高い山々のある風景が広がっている。

山々は幾つ有るのだろう。無数かの様に大変多い。

この景色はまるで墨絵の様に美しい。

イインジュ・ブュヤ・ギュオワンに手を繋がれたまま飛び続け、この山々の中てもひときわ高く、雲を突き抜けている大きな山に向かっている。

振り向いたイインジュ・ブュヤ・ギュオワンが微笑み掛けて来る。美しい。

そして、この山々の中でひときわ高く、大きな山の山頂に“着陸”した。


「ようこそスルガトキヒコ、私の国ヘイイアンデユンズィギュオへ」

山の山頂は広い平野になっていて、どこかの歴史番組で観た様な屋根裾の長い瓦屋根の様な大きな建物が数多く在る。

ここの石畳に音も無く、フワリと着陸した。

そして建物の前では、多くの者達が整然と列を成し、この国の王であるイインジュ・ブュヤ・ギュオワンを迎え入れる。

うわぁ~、本物の王様だ!

イインジュ・ブュヤ・ギュオワンは私の手を離してくれない。

恋人繋ぎの様に、手を繋いだまま、引っ張られる。

「スルガトキヒコ、先へと進みます。奥へと向かいましょう」

何か口調が穏やかになった気が?


畏まる者者を見るもせず、イインジュ・ブュヤ・ギュオワンは私の手を握ったまま、恋人繋ぎのまま、歩を進める。

別段偉そうでも無く、王の態度として相応しく見える。

屋根付きの立派な門を潜り、その先の建物を抜ける。

建物の中も漆塗りの様に艶が有り、落ち着いた色調の造りになっている。

多くの色が見られるが、決して派手では無く、非常に上品だ。私とは無縁の世界。

この建物を歩き抜けた先には、一段高い場所にこれまた大きくて立派な建物に続く。

左右に幅広い階段の真ん中、赤く色付いた部分をイインジュ・ブュヤ・ギュオワンに手を引かれながら登る。

この階段からは先程までいた、王に仕える者と思われる者の姿が見えない。王へ畏まる者が居ない。

ヘイイアンデユンズィギュオ国の王、イインジュ・ブュヤ・ギュオワンと私だけとなる。

ここから先は王の私室、特別な場所になるのだと分かる。

でも手を繋がれ、強引に飛んで来たけど、何かこんな所まで来ちゃったよ。


「さ、座って座って」

王の居住区(私室?)の部屋に入った途端、イインジュ・ブュヤ・ギュオワンに勧められた。

イインジュ・ブュヤ・ギュオワンって、ツンデレか?第一印象と違い、変に穏やかに感じてしまう。何やらウラが有る?

「何か飲みましょう。スルガトキヒコ、何が飲みたい?苦手な物は有る?」

王様自ら何やらもてなして下さるのか。まあ、今のところ、攻撃的では無さそうだから。

「では、インスタントでもいいのですが、コーヒーを」

「インスタント?コーヒー?それは何?」

あー、無いわな。

「では、こちらのお国で“お茶”と言われるような、一般的な飲み物をお願いします」

「いいわよぉ〜ちょっと待ってねぇ〜」

王様、ウキウキしていて可愛らしいな。

ブンブンブン

頭を振る。

(待てトキヒコ。サキュバスの手口かも知れないぞ)


ヘイイアンデユンズィギュオ国の王、イインジュ・ブュヤ・ギュオワンはお茶の準備?で部屋を出て行った。

私は立ち上がると、少し部屋の中を物色した。

先ずは部屋の壁一面が本棚と思われる棚に進む。

布表紙のA3サイズを超える位、大きな本が壁一面にぎっしりと並んでいる。

1冊を抜き取る、、、抜き取れ無い!?

これ、重さじゃ無いな、何かのロックが掛かってるのかな?魔術?

背表紙は漢字か梵字に見えなくもないが、いずれにしても見た事の無い記号?文字?当然読めない。

あー、何か残念。本の内容がどうこうじゃなくて、ただペラペラとページをめくってどんなの?ってしたかったが。


改めてこの部屋内を見回す。

テレビもラジオも無い。照明器具も無い。家電製品の類いは無い。

ここは客間になるのかなぁ?

でも天井面が向こうの方まで続いている。

その天井を見上げると、バスケットボールのコート(縦28mX横15m)が4面ぐらい出来ちゃいそう。これで天井が高かったら体育館だな。1000畳ぐらい有りそうな広い一部屋。

ガラ〜ンとしているのでは無く、何やらパーテイション?屏風?衝立みたいなモノで向こうの方まで、多く仕切られてる(天井から、ここは間仕切りの無い一部屋と判断。柱が部屋の中央部とかに無い)。

向こうまで数多く続く、衝立の向こうには何が有る?どうなってる?

1つ目の衝立を周り込む。

勉強部屋?木製の大きな机が1つ、椅子が一脚と鏡が有るが、机の上には置いてある物が何も無い。

次行ってみましょう。

今度も、木製の机と椅子が一脚と鏡。前の仕切り部屋と一緒。

では次に。あれ?また机と椅子が一脚と鏡。

今来た方向を見返すが、確かに三番目の仕切りだよな。

1つ戻る。やっぱ木製の机と椅子と鏡。間違って無かった。

気を取り直して4番目となる仕切りへ。

あれ?また一緒だ。だけど主旨が分からん。


「スルガトキヒコ~」

イインジュ・ブュヤ・ギュオワンがお茶のセット?と思われるトレーを両手で持ち、、、でも何か色々な物が彼女の周囲で漂っている!魔法?

「慣れぬ事なので、刻を用したわぁ。手順を間違えたら大変なので」

手順って、お茶の準備で順番を間違えると、爆発するとか!?

私がうろうろとしていた事に対しては、咎められない様だ。それか、想像も付かない何かの“力”を持って要るだろうから、監視されてたかもな。

「はい、座って座って~」

そう言ったイインジュ・ブュヤ・ギュオワンを目で追うと、さっきの四番目の仕切りの部屋が様変わりしている。

スペースが倍程に広がっており、向かい合って座れるテーブルと椅子も有る。驚きを超える!


「ええっと、イーン、、、イインジュ・ぶや、、、ブヨ・ギュオワンさん」

「イインジュ、でいいわよ」

やっぱ凄くフランクな態度になってる。魔術の王様イインジュ・ブュヤ・ギュオワン、、、ツンデレってヤツだな。

「ではイインジュさん、(ここまでのプロセスと今後が見えないが、一応)お招きありがとうございます」

まあ、形はどうあれ、エルフの里国の外、隣国に来たんだ!

「あー、エルフの里国への隣国には興味と憧れを持ってました。どういう形にしろ、こうして隣国となる場所に来れた事は嬉しいです。ありがとうございます」

「憧れ?そうかそうか嬉しいか、私のアプローチも満更では無いとの事だな」

いえ、ちょっと違う。

「済みませんが、この国の事を教えて下さい」

水墨画のような世界。でも、下の地面と思われるトコが、高さとモヤで見えない。どうやって皆さんは暮らしているのだろう?


「この国、私達はモォファシュのその力を重視する」

「モォーファウシュ?」

「それは『魔術力』と言いましょう『魔術力』が重視される世界です」

『魔術力』魔法使いの国。

「スルガトキヒコ見たであろう、多くの山々を」

「はい」

無数とも言える様な、仙人達が居そうな多くの山々。

「『シャンチィ』と呼ぶが、誰もがシャンチィに行けるのでは無い。鍛練、修練、鍛練、修練、鍛練、修練、、、繰り返し行わなければ、魔術は育たぬ。シェンティヒダリィアンウォーシュは育たぬ」

「シャンシャン、ダリーなぁウォッシュ?」

「シェンティヒダリィアンウォーシュは魔術を行う力、魔力とも云う」

「強き魔術を得た者だけが、シャンチィへと昇れる。そして次に高きシャンチィを目指し修練、鍛練を繰り返す」

魔法使いは生まれながらに魔法を誰でも使える分けではないのね?

「修練、鍛練に合わせて、魔術はその順序が重要。手順を間違えたら取り返しの着かぬ事に成りかねない。よって、日常生活においても、手順を重んじるのが私達ヘイイアンデユンズィギュオ国でも在る」

だから、慣れないお茶の準備も慎重だったのかな。

「では、シャンチィの下の世界は?」

「魔力を持たぬ者、シャンチィへと昇る為の鍛練と修練を行いし者達が暮らす」

自分の行きたい場所への移動もままならない、仙人達が居るような雰囲気を持つ世界が在った。

「イインジュさんは、下には降りられないのですか?」

「何で?私は降りた事が無い」

そこは流石に王様か。

「いえ、もしも私がこの国に来たとしたら、魔法を使えなければ魔力も持ちませんので、下の世界に到着していたでしょうから」

エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは『雲に覆われた行くに行けない場所』とおっしゃったが、私の移動手段は徒歩だもんな。


「そんな事はスルガトキヒコにはさせないわぁ」

部屋が一変して、私達二人は大きなベット(?)の上に居る。

もう、驚く間が無い!だけど凄く自然に。

「シャンチィを昇る魔力を与えてあげる!」

え、“サキュバス”って、精力をとか何かを奪うんじゃ、、、女王ユーカナーサリーもヘイイアンデユンズィギュオ国の者に狩られると精力を蝕まれるって。逆?魔法が貰えるの!?

私は押し倒されて、口付けされた。

その時、、、

あっ「痛っ!」、、、この感覚は、、、。

イインジュ・ブュヤ・ギュオワンの口付けは、歯がぶつかりそうだったので、咄嗟に口を少し開いた。

イインジュ・ブュヤ・ギュオワンのファーストキスかな?

そのまま私を押し付ける力が加速して来る!

何とか体の間に手を回して、カチ上げるようにイインジュ・ブュヤ・ギュオワンの顎を押し上げ、顔を離す。

イインジュ・ブュヤ・ギュオワン、エサを求める池の鯉みたいに口をパクパクさせながら迫り続けて来る!

「ストーップ、ストップ」

「なあに?魔力を与えている途中よ。もっと続きを、もっとまぐわいましょう!」

待った、待った!変な所が積極的な、夢みる乙女よ。




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