サキュバスの夜
「ん?リーザどうしたの」
寝ていた私を起こすかの様に、リーザが隣から私の腕に触れて来た。
時計を見ていないので、今の時間が分からない。
うんうん、いいでしょう!
私はリーザに触れ返す。
リーザの身体を引き寄せ背中に手を回し、お尻まで手を伸ばし下ろす。
ん?違和感。
顔を見直す、リーザ。ムニュっと揉む、おっぱいもリーザ。長いシルバーグレーの髪もリーザ。
再びリーザを抱き寄せる。
違和感。
違和感。
違和感。
違和感、、、手触り、、、匂いが違う、、、?
私は体を起こし、リーザを振り返って見た。
リーザは微笑みを湛えて私を見ている。
「どうされました?」
私は半身をリーザに跨ぎ乗るようにし、リーザの顔に自分の顔を近付ける。
横になってるリーザから感じる、香って来る匂いが、受ける何か感覚が、何かが違う?と私の中の自分が訴えている。
「あんた、誰?」
私は目を開き、灯りの無い天井を見ていた。
「あれ?夢かぁ」
隣に目をやると、リーザがスースーと寝ている。
手を伸ばし、おもむろに私の左で横になる、リーザの左乳房に触れる。揉む。
ああ、さっきの夢と同じ感覚だけど、安心した。
だけど、最近何か似たような夢、見なかったか?
「、、、トキヒコ、さん?」
目を覚ましてしまったリーザが小さく喘ぐ。
単に私の欲求不満が夢となって訴えてただけか。
さくらを起こさない様に、深夜のキックオフだ。
最近よく睡魔に襲われる機会が多い様な気がする。
出勤時の電車内、勤務時間中のお昼前、午後の勤務時間、帰りの電車、、、あれ?でも前からオレって、何時も眠かったか。
まあ、昼食後の1時からの眠気は許して欲しい。
でも、何だか最近時間帯に限らず、うとうととしちゃいそうな事を多く感じていたので、夜更かし的にならないように、就寝時間は少し早めたつもり。
(まあ、深夜のリーザとのゲームは有りです)
でも、眠い。
うとうと来たときは、30分ぐらいの睡眠を取るとスッキリとしていいって良く聞くけど、日本社会にシエスタの習慣は無いからなぁ。
それに私って一度寝ると、30分で済む分けが無い。
目覚ましせずに昼寝なんかしたら、下手すると起きたら翌朝なんて事がザラに有る。
眠りは深い。一度寝ちゃうと、起きないからなぁ~。
昼寝のつもりで目が覚めて、見た時計が4時や5時を指す。でもそれが、夕方頃の午後の時間なのか翌日の午前なのか、すぐに理解が得れない程、寝る。(実際に、翌朝であった事は数度有る)
でも最近は、ちょっとおかしいかなぁとの自覚も有る。
やっぱオレが変?疲れている?育ち盛り?
もう直ぐ娘のさくらの誕生日が来る。
3月生まれのさくらは8才になるが、8年、この春から小学3年生となる。早いなぁ~
早く大きくなれ、と思ってたけど、これじゃ気付いた時には成人式だった、なんて事になりそうだ。
私が歳を重ねているので、時間を短く感じ出したのと比例しているのかもな。
エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、さくらが小学校に上がってからも、人間とエルフ、それぞれの差異がさくらの肉体や精神面に悪しき影響を及ぼさ無いかの観察と調整をして頂いている。
合わせて人間が持たないエルフの力(人間を凌駕してしまう程の肉体的な面と『術』を行う事)と合わせて、さくらが持つであろう『未知なる力』を抑える為の『枷』を掛けて頂いている。
エルフの力、、、人間社会で暮らして行く為には、持っていては為らないモノ。あったら逆に生活に制約が掛かってしまうモノと、私は認識したから、女王ユーカナーサリーにその力を制限させる魔力を行使した『枷』を掛ける事をお願いした。
そして、3日に一度の頻度でわが家にご訪問頂いている。
ちなみに、女王様への報酬は、来訪の度にアイスクリーム二個だ(安い)。
「トキヒコ殿、何やら付けられておるぞ。『結び』やもな」
えっ?何?
「目では見えん。魔術を用いた『糸』じゃな」
糸!?
「糸って、糸ですか?」
「ほうじゃ」
女王ユーカナーサリーが指し示す、私に付いているという糸。
当然ながら、見えない。
「此の物、リーザといえど魔力を上げねば見えぬやもな。今この場で、辿る事は難儀成る。しかし、我の出入りの在る場で何事ぞ?トキヒコ殿、自身の周囲で変化や異変は感じぬか?」
う~ん。あっ!う~ん。
「ええとですねぇ~」
すげー言い難い。
「どうした?」
「いや、あの~、、、あのですね」
「うむ」
『うむ』って受けられてもなぁ。
「ええっとですね、、、あっ、近頃凄く眠いです!」
「眠い、とな」
よし、こっちの言い分だ。
「はい。それは昼夜を問わず。私って、元々ぼぉっとしてて、何時でも寝れるぐらいでしたが、最近ちょっとヒドイです。夜に寝床に入る時間は少し早めましたが、効果が余り感じられず、勤務中に寝ていたら怒られちゃいますので、注意はしてますが。車の運転時に睡魔に襲われたら、命に関わりますし」
「良く働く者は良く寝る。良いではないか」
いえ、私は決して働き者とは呼べません。
だけど、、、
「いやそれがちょっと、変な感じがします。慢性的でも無いですし、かといって不眠症までも行かないでしょうし。どちらかと言うとここ最近、何かに襲われるかの様に、急に睡魔と言うか、変な眠気が来る様になってしまった気がします」
誤魔化した分けでは無い。最近実感している、変な眠気状態。
「うむ。まだ有るの」
あちゃ~、エルフに隠し事は出来ないか。
「え~、あ~と、それとですね、夢なのか寝ぼけていたのか、、、」
あー、言い難いなぁ。
「ここ最近立て続けで、ちょっと強烈な夢を数度見ました」
「強烈、とな?」
あー。
「ええっとですね、、、性的な夢です」
キャぁ~、リーザがこっちを見てる。
「男子たる者、正常な内では無かろうか」
欲求不満?いやいや、リーザは何時でも私を受け入れてくれるし、、、物質的な欲求不満は有るけど、それだと、最近見る夢のイメージとは違うはずだ。
“夢判断”とかは見る気もしないけどね。
あっ!
「もしかして、この(見えない)糸が原因でしょうか?」
何かに結ばれてる?
「十中八九、じゃな」
「でも何で、、、何で私に」
そもそも何で糸で結ばれてるいるの?見えないけど。
「ユーカナーサリー、トキヒコさんは何者に狙われているのですか」
狙われているって、、、やっぱ、狙われているの?!
「トキヒコ殿が行きたがる、我らの里国の隣国のひとつと成る」
おー、隣国!
「隣国じゃがの、濃い雲に囲まれた小さき場、来る者を拒み、入るに入れ無き場所。『ヘイイアンデユンズィギュオ』国。まあ、あれ成れど国と呼ぶかの」
隣国、入れないの?
「だがそこはの、他者の性を好み性を求むる、淫なる気配漂う世とも言えるじゃろう。それ成る輩の集う国」
まるで〝サキュバス”の集団?
「そこには王成る存在の者も居る、名を『イインジュ・ブュヤ・ギュオワン』と申すがの」
私達の世界観で言われる所のサキュバスは、中世からの文献や言い伝えに現れ、若く綺麗な姿をしている外観が女性だと、そして人間を襲う(性交を求める、性交される)と云われている。
(男サキュバスも存在する説も有るが)
性交を求めて来る、、、エッチな淫靡魔。
独身でフリーの身だったら、ありがたい?
「そこ為る者の、どいつかは解らぬがの、そこの誰ぞじゃ」
あれ女王様、知り合いがいらっしゃる?
「あヤツらはな、先ずは獲物に対しての繋がりを作る。その後関連と観察を続け、やがて狩りと成るが、進むは行動は慎重成り、時間を掛けよる」
「まあ、此度の繋がりは、我かリーザが原因となろう。奴らは直接我ら(エルフ)には手を出さん。『術』を持つ我らが何やら苦手なのじゃろう」
「女王様、、、ユーカナーサリー、その者に狩られると、どうなってしまうのてすか?」
食べられちゃう?
「喰われる」
「!!」
「まあ、直ぐ様に命は取られん。じゃがの、精神を喰われる。それが長期に渡るモノと成るならば、精神を蝕ばれるやもな」
精神が蝕まれたら、命に関わるよ。
「リーザよ、我らこそが、狩るか!」
「はい!トキヒコさんに害を及ぼす者を許す訳には行きません!」
うわぁ~何か物騒だな。
「トキヒコ殿、今宵は我を留まる事を許せ。此方で夜を越そうぞ」
「はい、お願いします」
あれ?女王様、わたしの家に初のお泊まりだ。
でも、エルフの里国の王宮を空けちゃっていいの?無断外泊?
「ユーカナーサリー、お泊まりセットとかは?」
「なんじゃ、其の物は?」
「いえ、歯ブラシとかパジャマとか、、、」
「要らぬ、要らぬ。暫し留まるだけじゃ」
あ、寝泊まりする訳では無いのね。
「其もはトキヒコ殿の監視と成る。まあ今宵は安じて寝むるが良い」
「ありがとうございます」
「トキヒコ殿に糸が付いており、狩る為のエサじゃ。まるで夜釣りじゃな!」
何でそんなに楽しそうにするのっ!




