スルガ家エルフの引っ越し
家を買った。
中古で改修費用も掛かる。
だけど、念願のマイホームだ!庭も小さいながら有る!
場所は一応同一の町内、今さくらの通う中学校の学区内だが、最寄りの駅からと、駅前商店街からは遠くなった。
まあ、同じ町内、同じ学区内で物件を探していたので、上手く出物に出会えた。予算的にも。
それでも60歳定年まで、住宅ローンはしっかりと、有る。
住宅ローンは今までのアパートの家賃に上乗せの考えでいいが(苦しいー!)、光熱費が上がる事は忘れがちになる。
部屋数も増えるので、電気代も自ずと増える。お風呂も大きくなるので、ガス代と水道料金も増える。節約しなくっちゃな。
改修は水回り。お風呂には、少し多く予算を割き、大きめのユニットバス、浴槽にした。
リーザとエルフの女王ユーカナーサリーはお風呂好きだからな。
リフォームも一通り終わり、今日は晴れて引っ越しの日を迎えた。天気はいい。
引っ越し代を浮かす為にも、出来る限り自分達で荷物を運ぶ事とした。
でも、全てを運べる分けでは無い。引っ越し用に軽トラをレンタカー屋に申し込んだが、生憎空きが無かった。
救いの手を出してくれたのは『スズサイクル』の鈴木さん、リーザとさくらの自転車を購入した自転車屋さんだ。
『スズサイクル』の看板車の軽トラに荷物を積み込む。
鈴木さんは軽トラを出して頂くだけで無く、実際に引っ越し作業も手伝って下さる。ありがたい。
冷蔵庫と洗濯機等の家電製品から始まり、さくらの学習机。
タンスに食器棚、ダイニングテーブル、、、一回では無理だ。アパート暮らしを続けていたが、3人家族でも家電や家具、生活用品とか、意外と物って溜めてるんだなぁ〜。
各人にて段ボール積めした荷物は、できる限りの私のファミリーカーに積んで、取り敢えず一回目の運搬とした。
リーザには私達のセミダブルベットをバラして貰いつつ(何か他人に見られると、恥ずかしい)、留守番がてら、残りのこまごまとした物のまとめや掃除をお願いした。
スズサイクルの看板車と2台で出発した。
程なく車を走らせ、新居に着く。でも、実は家具類や家電の荷物を降ろすのも大変。
でも、こちらにも助っ人が集まってくれていた。
駅前商店街のパン屋さんと魚屋さんのご主人、それと友人の竹田だ。
パン屋と魚屋のご主人は、スズサイクルの鈴木さんからの情報を得て。それぞれの女将さんにハッパを掛けられたのかな?いずれにせよ、ありがたい限り。
友人の竹田は半強制参加だ。
こんな時には、屈強な男エルフが三人もいれば頼もしいんだけど、そうは行かない。
新居に到着すると、さくらが出迎えてくれる。
自分の『子供部屋』を得る事になるので、凄く協力的にお手伝いしてくれるし、機嫌もいい。
一応受験生なので、こんな時期に環境の変化とかどうかな?と思ったが、リーザ的には良い方向の変化が推測されるとの事もあり、、、まあ、何かのタイミングなんて、そんなもんだ。
「お父さん、お帰り~」
さくら、気が早いな。
「皆さんありがとうございます。お休み、、、じゃなかったか、すみません、助かります」
「竹田は、しっかり働け」
「何か食わせろよ」
とにかく、どんどん荷物を下ろす。男手、助かる。
さくらの学習机を二階に運ぶ。狭い階段を四人で担いで上がる。
スズサイクルの鈴木さんと、もう一往復、車を走らせる。
リーザがバラしたセミダブルベットとそのマット、布団、洋服の段ボール箱、その他の細々とした物。
どうにか車2台、2往復で片付きそうだ。
あ、自転車が。
「鈴木さん、申し訳ない、もう一回お願い出来ます?」
私は自転車を指差した。
「構わないよ。さあ、先に済まそう」
リーザを隣に乗せて、2往復目を出発した。
アパートの引き上げに関し、不動屋さんの立ち会いは後日と伺っており、リーザが立ち会ってくれる予定だ。
まあ、遠方への引っ越しでは無いので、そこら辺は不動屋さんと上手く話しが着いた。
2往復目の到着はお昼近くになった。
何だ何だ?停まってる車が増えてる。
「よっ、皆して手伝いに来たよ」
魚屋さん、パン屋さん、お肉屋さんに八百屋さん。それぞれの女将さんが大集合だ!
金物屋雑貨店のご主人と写真館のご主人まで!
「皆さん、有難いのですが、何このオールスター的な集まりは?」
「リーザさんとさくらちゃんにはさ、私達も手伝って貰う事が多いしね」
確かに、駅前商店街のイベントやお祭りの時は、景品場とか何やらの手伝いには呼ばれて行く。
でも何時もお土産を抱えるぐらい、いっぱい頂き、逆に申し訳ない思いが有る。
「それにさ、さくらちゃんは、私達商店街のマスコットであり宝だ。あんたがダメだと言っても、このお引っ越し、手伝うよ」
いえいえダメだなんて一言も、、、有難い限りです。
「それでさ、お昼持って来た。ちょっと休憩しましょう」
わー、嬉しい。けど、まだ二回荷物運んだだけなんですけど。
家の中は、荷物が散乱気味なので、小さな庭にお昼を広げた。
大人が10人以上集まったが、食べ切れるか?ぐらいの昼食相当のモノを準備して頂いた様だ。
「あ~お花見か、ピクニックでもしている気分だねぇ」
「リーザさんの引っ越しのお陰で、こうして集まって楽しめてるよ、ありがとね」
「いえ皆さん、たくさんのご助力を頂き、その上お食事までご準備頂き、お礼はこちらが申すべき事、ありがとうございます」
「リーザさん堅いなー、そんなのダンナに言わせておけばいいのよ、さっ食べて食べて」
どうして私は、何時も皆さんにぞんざいな扱いを受ける?でも、ありがとうございます。
「さくらちゃんも食べなさい」
「うん、凄いご馳走!いただきまーす」
「スルガさん、引っ越し祝持って来た」
金物屋雑貨店のご主人。
「ポスト持って来た。後で付けよう」
「いいんですか?売り物でしょ」
「いいのいいの、これぐらいさせてよ」
「ありがとうございます。ポストは気にしてませんでした」
「丁度良かった?」
「はい」
金属製で赤く塗装されたブロック一個分の大きさの市販品。こういうのは、シンプルでこう言った普通のが好きだ。有難い。
昼食も終え、引っ越し作業に戻る。
車に残っている分を降ろす。
「自転車取ってくるわ」
スズサイクルの鈴木さん。
「ああ、私も行きます」
「スルガさんは残って、荷物の整理をしなよ。プロに任せて」
確かに自転車のプロではある。
写真館のご主人と自転車を引き上げに行って頂いた。
私は友人の竹田とバラしてあるセミダブルベットを二階に運び、組み立てを手伝って貰う。
一階では、女性陣が荷解きと台所の整理が始まり、賑やかだ。
「スルガ、家買っちゃったんだ。凄いなぁ」
「いや、田舎だし中古物件だし、あちこち傷みもあるからな」
「でも庭付きのマイホームだ。おめでとう」
「ありがとう。こんなボロ家でも、しっかりと住宅ローンが有る」
修繕は追々、やれる範囲でと、考えているが。
「しかし、嫁さん美人でキレイだな~、それで若い!」
「いや、リーザは美人で無く、可愛いんだ」
“美人”って苦手だ。
“美人”に美人って声を掛けても、いい顔された試しが無い。
別段下心も持たず、素直な感想を言っただけなんだけど、美人は褒められ慣れているのか、反応や態度でいい印象を受けた事が無い。まあ、私があなた達には不釣り合いですけどね。
“若さ”は、エルフ特有のモノだな。
「ノロケるなぁ~」
「竹田、お前も結婚しろ。お祝いは多少出す」
「では今くれ。予約金か先行投資だ」
「そんなの無いよ」
友人を半強制的に呼びつけたが、久し振りにゆっくりとバカ話しが出来る。
歳を取ると、こうやって昔の仲間と会う機会や話をする事って、減るし、皆無に近くなっちゃうモノなのかなぁ。
二階の別室、さくらの子供部屋を覗く。
余り片付けが進んでいるようには見えないが、壁の横に少し積み上がっている段ボール箱は、私達の本の類いが入っているので、取り敢えずそのままだ。
「さくら、片付け進んでる?」
「うん、直ぐに使う学校の物は並べました。後は直ぐに出さなくてもいい物だから、大体終わり」
『直ぐに出さなくてもいい物』小学生時代までの思い出や記録だ。
何処かに収納場所は当て込まなくちゃな。
竹田と揃って下階に降りる。
「スルガさん、郵便ポスト、何処に付けます?」
金物屋雑貨店さん。
「そうですね、玄関の横にビス留めしちゃいましょう」
電動工具もボードアンカーも持ってきてもらっている。準備いいなぁ。
キッチンを覗くと、もう完全に整っている。有るべき物が有るべき場所に収まっているようだ。
流石に主婦が集まった力か!助かる。
「ダンナ降りて来て丁度いいね、お茶の時間にしよう」
まだ3時にはなってないが、多くの手を借り、もう殆んど引っ越し作業は終わったみたい。ありがたい。
その上、おやつタイムまで。
「リーザさんのダンナ、今年も秋祭、来週だから二人を借りるよ」
さくらは受験生だけど、まあいいでしょう。
「さくら、来週お祭りのお手伝いに行けるか?何か都合入ってる?」
「ううん、大丈夫よ」
「リーザは?」
「はい、問題ございません」
「です」
「よし!リーザさん、さくらちゃん、今年もお願いね。二人が揃わないとお祭りにならないから」
いやいや、リーザがお手伝いをする前から、駅前商店街のお祭りはあったでしょうに。
駅前商店街のお祭りは、東町と西町に分かれて、それぞれの山車を引き回す。
車は通行止めとなり、多くの露店が出て、町の外からも人も集まり、田舎町の商店街の行事だが、そこそこの賑わいとなる。
私も出店回り好きなんだよな。
お茶の時間が終わると、皆さんが帰り仕度を始める。
荷物が解かれ、空いた段ボール箱も引き上げて下さる。
「後はさ、家族でやんなさいな。私達が居たら邪魔しちゃいそうだから」
「今日は本当にありがとうございました」
お手伝いにお気遣い、嬉しくてジーンと来た。
「あんたに感動されてもねぇ」
「来週は二人を借りるよ」
引っ越し祝とか言って、また色々と頂いてしまった。駅前商店街への貢献度(買い物量)高く無いのに。
そして全員揃って、記念撮影が行われた。(竹田が撮影者)
「さ、スルガさん」
写真館のご主人に私達三人揃っての写真も撮って頂いた。
「よし、俺も帰るわ」
「え?夕飯を一緒にしようよ」
「いや、それより今度ゆっくり会おう。他の奴らも呼ぼう。俺には奢れよ」
「ああ、そうしよう。今日はありがとう」
「ああ」
竹田には、引っ越し祝に頂いたお酒をそのまま横流しした。
女将さん達には申し訳ないが、お酒、そんなに飲まないし。
私達は三人揃って回り近所、それこそ向こう三軒に手土産を持って、引っ越しの挨拶を済ませ、ひと息着く事にした。
まだまだ片付けはこれからだけど、皆さんにご協力を頂いたので、荷物は全て家の中に収まっている。
今まで住んでいたアパートより面積は広いはずなのに、それなりに荷物が収まると今までと広さの差が余り感じられない。
なんだかんだで、埋まっている。
まあ、大きな家では無いけど、何か不思議。
リーザの私物、、、台所用品や書籍類は別として、洋服、衣装類以外が無いぞ。
これは、何と言い表す傾向なんだろう?
もっと何かで、こちらの世界を楽しんでもらわなくっちゃな。
だけど、、、リーザもさくらも嬉しそうだ。
でも、一番に喜んでいるのは私だろう。ローンは有るけど。
「これからここで、新しい生活が始まります。もう、上や左右に住んでいる人に気兼ね無く暮らせます。学校や駅は遠くなっちゃったけど、次にどこかへ引っ越しする事を考え無くていい。小さいけれど庭も有る。私の力だと、これが限界だ」
リーザのエルフの親元、ホーリョンの里にある実家の方が大きい。女王ユーカナーサリーに与えられているリーザの住居と変わらない大きさだ。
「何と言っても、私のお部屋が有るもんね!」
「キッチンが広くなったので、楽しみです」
あ~この子達は本当、いい子達!
「リーザ、庭は自由に使って。さくら、受験生なのにバタ着かせたが、勉強頑張ってな」
「はい!」「うん!」
私達の新しい生活が始まる。
あれ?だけど、、、『トキヒコ』って書いてある段ボール箱が、幾つか外に置きっ放しなんだけど!
あ、それと、、、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、前のアパートに行ってたりして?
「リーザ、女王様に引っ越しの日って、お伝えしてたっけ?」
「トキヒコ殿、リーザよ、さくら、、、居らぬぞ、、、」




