エルフの塩 隣国のおっさんエルフ
ジェジーロソロ湖で出会った隣国の長。
「私は向こう岸、ジェジーロソロ湖に沿い集落を形成している『ズェバニスキの里』の長である。名をダダージュダと言う」
ダダージュダと名乗った、おっさんエルフ。
塩湖である、ジェジーロソロ湖を単独で、意図も簡単に渡って来たハイエルフ。
で、私に何か用が?
「我らエルフとは全く別の世界からの訪問者が居ると聞き及んでいる。興味を持たぬ方がおかしかろうぞ」
いや何か、噂話しでも届いてます?
「まあ色々と諸事情にて、こちらに訪問させて貰ってますが」
迷惑を掛けて無いと思うけどなぁ。
「ふむ、中々の言語体系の様だな。複雑さ奥行きも感ずる、高度な文明の存在を感じられるぞ」
そりゃあどうも。私がエルフ達の言語体系を理解出来てないのがいけないのですけど。
だけど、、、
「速攻での日本語対応、ありがとうございます」
エルフの言語能力って、すげぇなぁ!
「スルガ トキヒコよ、高度な文明を持つ人間成るか。人間とエルフ、どちらが優れた生命体と成る?」
まあ単純に、エルフの方が頭脳明晰だし平和だし。人間が優れているのは文明文化だけだし。何と比べて高度なのか、、、。生命体の優劣は何で決まる?
「えー私は、それぞれを比べ評価出来る程、人間の事もエルフの事も分かってません」
自分の事すらろくすっぽ、理解しているといえるのか?
「仮に、どちらかに優劣を付けるとしたら、、、そうですね、私にとっては下らない、意味の無い事です」
「スルガ トキヒコは達観しておるのか」
達観って、、、何?
「スルガ トキヒコ、実に、実に面白い。最も貴公と語りたいが。異世界からの訪問者よ」
“異世界”って言い方を知ってるだけで、もうそちらの勝利でいいです。
「スルガ トキヒコよ、我らの里にも来ぬか」
行ってみたいのは重々ですが、
「あー、今日はこの後、約束しちゃってますので」
「約束か」
「はい。お誘いは嬉しいのですが、エルフの里国の王、女王様との先約が有ります。用事としては大した事では無いかもしれませんが、約束は約束ですので」
「うむ、大した用事では無き。しかしながら、その気概、良いな」
いや、遊ぶ約束なんですけどね。
「エルフの里国の王、あの女エルフ成るか」
「あー、ご存知ですか」
リーザがいい顔してない。そりゃあ自分の仕える王様を見下した様な言い分に聞こえたもんな。
ただここは、女王ユーカナーサリーの結界が届いていない場所。
無闇な行動や言動は慎まないとな。なんせ相手はハイエルフだ。それも何やら強烈な力を持ってそうだし。
「エルフの里国の王との約束とは、差し障りが無ければ知りたいものだ」
「あー、今日はけん玉をします」
「けん玉、とな?」
私は背負うリーザが作ってくれた、布製のキンチャクのザックから、けん玉を取り出した。ヨーヨーと竹トンボも持って来ている。
「ちょっとエルフの里国の王に、私の世界の遊びを教えます。けん玉、知ってます?」
おっさんエルフの長、ダダージュダが困惑顔だ。
「此にて、如何とする」
「こうします」
私はけん玉で大きい皿、小さい皿へと順に玉を乗せた。
「容易いな。この行為、如何となる」
「いや、遊びですから、行う者、見る者の見方次第です」
遊びなんだから、それをどうこう言われてもなぁ。
「やってみます?」
おっさんエルフの長、ダダージュダにけん玉を渡す。
「どれ」
ダダージュダは見よう見真似で大きい皿に玉を乗せた。
でも、小さい皿は失敗した。容易いとか言ってたのに、笑える。
ダダージュダ、リトライだ。
「トキヒコ、次成るは!」
「では次は真ん中のお皿へ、そう」
「トキヒコ、次成るは!」
何か楽しんでないか?
ダダージュダから一度けん玉を受けとると、
「よっと」
けん先に玉に刺した。あ~一発で上手く成功させれて、良かったよ。
「な、なんと!」
ダダージュダ、驚き過ぎだろ。エルフだったら観察と計算で楽勝だと思うのだが。
「そこに刺し止めるとな。そこは収納すべき為なる造作のみでは無かったのか。初見とは言え、なかなかに読めぬ事。貴公は我らの想像を越える存在と成るか!」
それ、大袈裟だよ。
ダダージュダが妙に神妙な顔をしている。
「トキヒコ殿、そのけん玉を譲ってもらう事は出来まいか。それが無二の物であると百も承知だ。何とか成らぬ事か」
ダダージュダが頭を下げる。
リーザが妙に驚いている。
「ああ、いいですよ。今日お会い出来た記念にしましょう。せっかくあなたの里にお誘い頂いたのに、断るこちらこそ詫びなければなりません。お納め下さい」
またしてもリーザ、驚き顔。
「おおおぉぉぉ~、何と言う、何と申せばいいのやら分からん」
何だ、その表現?大袈裟だろ。
おっさんエルフの長、ダダージュダ大袈裟屋さんか?
「これは何と申したら良い。見れば見る程に機能的で良い形状をしておる。此なる物は貴公の宝では無かろうか。それを我に、、、あ~何と、何としようぞ!」
いやいや、普通の市販品なんですけど。
「スルガ トキヒコ、早我が里に持ち帰る事を許して欲しい」
「ええ、どうぞ。皆さんで楽しんで頂けたら幸いです」
「何と!人間とは可ように慈悲深き存在成るのか!」
いやだから大袈裟だって。
「済まぬスルガ トキヒコよ、有りがたき限り。また会おうぞ」
「ああ、さいなら~」
って、ジェジーロソロ湖を『越えて』行っちゃたよ。
何だったんだよ。
「リーザ、何か凄い驚いていたけど?」
「いえ、里が変われどエルフは与える者。ましてや長とも有ろう者が求むるとは、、、」
リーザが言葉を切った。
「大丈夫、けん玉は二個持って来てるから」
「いえトキヒコさん。此度の事は大変な事です。意味する事も大きかろうと思います。それと」
「はい?」
「相手はエルフといえ、初見の者。あの者がどう振る舞うかも未知の段階の程でお取りになった判断、態度、行為。想像が追い付きませんでした!」
そうかなぁ、日常会話のレベルだったし。向こうがこちらの言葉を理解し、対応してくれた事に感激だよ。
「もう一つあります」
「はい」
「我が王は我らエルフの民に対して詫びません。それは我ら民が王に対してそうさせません。王の威厳は民が創るモノです。ですがトキヒコさんに対して、もしくはトキヒコさんが居る場では『すまぬ』と言います」
「それ、悪い傾向?」
「いえ、我が王の申す事。異はございません」
ちょっと、言い回しを気にしなくちゃな。
「先程のズェバニスキの里の長、ダダージュダもトキヒコさんに詫びを入れました。あの者、長と宣ずるだけあり、相当の力量でしょうし、それ相当の威厳の持ち主。何故なのでしょう?何故、トキヒコさんに詫びなる行為が出るのでしょうか。不思議です」
「う~ん、日本人って直ぐ謝るから。それが相手に伝染したのか、移っちゃったのかな」
別に普通にしてるつもりなんだけどなぁ。
「ごめんリーザ、心配掛けた?」
ほら、詫びた。
「いえ、トキヒコさんと一緒に居られますと驚きの連続で嬉しいです。でもですね、やはり心配も少し有ります。」
「リーザ、いつか向こう岸に行けるかな」
何時か、ここでは無いエルフ達の住むズェバニスキの里、このジェジーロソロ湖を越えて行ってみたいな。
「トキヒコ殿、スマン。もう一度じゃ」
エルフけん玉苦手か?




