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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら もうひとつの成人式 『覚醒』

さくらの意識は宇宙に飛んだ。



地球が見える。瑞々しく青く美しい星。


その影、地球と月の向こう側から惑星が顔を出した。まるで月を挟むかの様に地球の反対側に位置している。


月よりも大きく、でも地球の半分にも満たない大きさ。

地球の様に美しいけど、その色は緑色に輝き、青く美しく輝く地球に匹敵している。


「あれはエルフ達が暮らす星?」


漠然と思ったが、そうに違い無いと言う確信めいたモノも感じる。


地球からでは見えない、存在すら確認出来ない惑星がある。


「どうしてこの星が見えるの?どうしてこの星は誰にも見つからないの?でも、、、」

さくらは感じていた。誰にも見えない、誰も行けない星がここに存在している事を。



「お父さんが、ママが呼んでいる。帰らなくっちゃっ。でもどこに?どっちに?」


さくらは迷った。地球に戻るべきか、それとも‟エルフのいる惑星”と思った緑の星にするのかが決めれなかった。


「私はどちらに帰るべき、、、でも決められない、、、私はどっちに、、、あ~、ああああああああ!」

さくらは混乱した。


「気が狂いそう!私はヒトであってエルフでもある。それぞれが違う世界を持っていて、、、でも、私はヒトなの?エルフなの?それとも、、、それとも私はどっちでもないのー!」


「壊れそう、、、私と言う存在が壊れそう、、、ああああああぁぁぁぁ、あ〜壊しちゃえば、全てを一緒に壊しちゃえば、、、違う、、、違う、、、違う!違う!違う!」


「私は、、、何?、、、私は何?私は何?私は何?、、、私は何?」

さくらは、戦っている。それは自分自身と。


今在る自分と、20年間抑えつけられていた自分。


さくらの内で20年間抑えつけられていた魔力は、熟成され成熟していた。

それはまるで別の人格が囁いて来るかの様に、さくらが自分自身に問いかける様に、頭の中を行き来する。


「私は何者?!私は何処へ行けばいいの?!」

さくらの混乱は増すばかりだった。


さくらは自分が回転する渦となり、回転したまま破裂しそうな想いを得る。


「あぁー!ああーあぁぁー!流される、広がる、、、回る、、、ああぁぁぁ」


その時、父が自分を呼ぶ声が聞こえた様な気がした。


「私は、、、私は、、、私は、、、私は何処にいても、私だ!」

強い意志が戻って来る。


「でも苦しい、、、ママ、、、お父さん、、、助けて!」




「さくらっ!」


ザーララによって、天井近くで光を放ち浮いていたさくらに向かい投げつけられたトキヒコはさくらの手をしっかりと掴んだ!

「届いた!」


さくらはトキヒコに腕を掴まれると、放っていた光をその体内に収束させ、天井近くから落ちた。


さくらが落ちる下では、ロウ、ユーカナーサリー、ザーララ、そしてリーザがそれぞれが、両腕を広げ待ち構えている。

しかしさくらは、腕を広げる彼らの直前で落下を止めた。


「わっ!」


トキヒコだけが、ロウに抱き抱えられる格好となった。


「うふっ~、ロウありがとう。何時もロウに抱っこされてるなぁ」

さくらはゆっくりとホールの床面に降り立った。


リーザはさくらに駆け寄り、そっと自分の娘を抱きしめた。




この後さくらは、一言も声を発する事無く、自宅に戻ると、自室に引きこもった。

トキヒコとリーザは見守っていた。

さくらが自室から出て来た時に、何かを口に出来る物を準備して、待っていた。


そしてトキヒコは、さくらが何を言い出そうと、どういった行動をしたとしても、全てを受け止める覚悟をしていた。



さくらは、灯りも点けず自室に引きこもり膝を抱え震えていた。


「私は、、、何なのだろう。私は、、、人間、女、女子大生、娘、長女、第一子、お父さんとママの子供、、、エルフ、、、半分人間半分エルフ族、、、」

さくらは、ガタガタと震えている。


「私は、、、何者なの?、、、何処へ行けばいいの、、、いいえ、何処にも行ける場所なんて、、、無い」


何かが内から込み上げて来る。


何かがどんどん、どんどん、溢れ出しそうだ。

理解の及ばない力、意識を支配されそうな程の不安。


さくらは訳が解からなくなった自分自身を抱えながらガタガタと震えた。それでも必死に何かを抑え続けた。


「私は、、、何処に行けばいい?、、、どうしたらいいの?」



一晩が過ぎ、朝となった。

そして昼の時間。


ザーララの山岳城のホールで行われた、さくらに付けられいぇいた『枷』を外したあの場面から、まるっと1日が過ぎた時、トキヒコはさくらの部屋のドアをノックした。


「さくら、出掛けるぞ」

トキヒコはドアを開けるとオートバイ用のヘルメットをさくらに投げ渡した。そして先に階段を降りた。


「トキヒコさん、、、」

リーザが心配した顔を見せる。


「リーザ、ちょっと出掛けてくるよ。さくらも時期に降りてくる」

「はい」


トキヒコは250ccの中古で買った4ストバイクに跨り、エンジンを掛けた。

セルスイッチを押すとセルモーターが回る音と共に、スムーズにエンジンは始動し、一定のリズムを刻みながら二本の左右のマフラーからの排気音が伝わって来る。


程なくして、先ほどトキヒコから渡されたヘルメットを被ったさくらが現れた。


二人は無言のまま、さくらはバイクのタンデムシートに収まった。

トキヒコは振り向くと、二人を見送る為に庭先に出ていたリーザを見て頷いた。


トキヒコは前に向き直ると、ギヤをロウに入れ、アクセルを慎重に開き、クラッチを繋いだ。


二人を乗せたバイクはゆっくりと発進した。




トキヒコは走行中にさくらに声を掛けるでも無く、黙々と走り続けた。


そのスピードは速くも無く、遅くも無く自分のペースで流れる様に走り続けた。




1時間近く走り続けただろうか、トキヒコが決めた目的地である、あの『柿の木』のある丘に着いた。


トキヒコがこの場所を選んだ理由は『さくらが逃げ込める場所』と思ったからである。


実際にこの土地、山の所有者はさくら自身である。

オートバイを降りてもトキヒコとさくらは言葉を交わす事なく、黙々と歩き登り『柿の木』のある丘の頂上へ向かった。

あの『柿の木』はそこにあった。


トキヒコは地べたにゴロンと大の字に寝転がった。

さくらもトキヒコの隣に来てしゃがみ座った。



「さくら、、、お前に謝らなくてはならないな、、、」

トキヒコは家を出てから初めて口を開いた


「この時が来ることは分かってた。リーザがさくらを身籠った時から分かっていた事なんだ」


「オレはどうしていいのか分からなかった。怖かったんだと思う。だから確かに先送りしていた。でも何時かこの日が来ることは決まっていた。オレは誰にも相談もせず、ましてさくらに一言も話もせず聞きもせず、勝手に一人で悩んでいるだけだった。すまない」


さくらは口を開かない。

「女王様がさくらの『枷』を外したら、、、何が起こるのかは分からなかった」


「でも、確実に何かが起こると予感めいたモノは有った。さくらは、決めれなかった。人間社会に留まるのか、エルフの世界に行くべきなのか」


さくらはトキヒコを見た。


「悪いのはオレだ。オレの責任だ」


さくらは口を開かない。


「なあさくら、エルフってどうして『自分で決め、自分で進む』と思う?」

さくらは俯いた。


「でも彼らは突発的に決めたり、自分の都合、自分勝手にその道を決め進んだりしない。

自分が選んだことによって、誰かの迷惑にはならないか熟考する。誰かの為になることなのかを。かと言ってそれが自身の進む道の足枷にはしない。責任なんて考えない、自身が決めた事に覚悟を持つ」


「さくらは半分人間だ」

「さくら、エルフに無くて人間が持っている事は何だか解るか?」


「、、、さぼる事や怠慢?」

やっと口を開いた。


「さすが秀才!まぁほぼ正解だな」



「さくら『ズル賢さ』だよ」

さくらはハッとし、少し驚きの顔を見せる。


「エルフ達は真面目で正直者だ。そして成果を余り競ったりしない。助け合って最善を見付け、共同生活を送っている。

だから悪く言うと、進化や進歩、競争に勝ち抜く事が出来ないのかも知れない。

だけど彼らはそれを望んでいない。かといって現状に100%満足している分けでもない。物事に対して工夫し発展させている。それはニュアンスというか彼らから受ける感覚なんだけど、さくらもそう思ってると思う」


「エルフ達がズル賢さや悪知恵を持ったら、彼らの世界はあっという間に人間社会の科学や技術を凌駕する世界を短期間で構築するだろう。だけど彼らは求めていない。オレは、それでいいと思ってる。そんな世界があっていいと思ってる。でもいつかは次世代のエルフ達が現れ、変わって行くのかも知れないけどな」


「さくらは半分人間だから、少なからずズル賢さを持っている。まぁオレの血が流れてるからな。だからそれを使っていい。

必ずしも、さくらが人間社会に留まる。もしくはエルフの世界に向かうと、決める必要は無い。

どっちに行くか決めない、それか両方とも行くって言う選択肢を持っていい。オレが許す」


「お父さんはどうするの?」


「オレは、、、決め兼ねている。分からない。でもリーザが居る限り、エルフの里国には連れて行ってもらえるし、これからはさくらにも頼めるのか?」


「それ、なんかズルいよ」

「そう、ズルいさ。だってオレ人間だもん」



「さくらは自由だ。自由で居て欲しい。やりたい事をやって、行きたい時に行きたい場所に行けばいい。そんな自由をさくらには持っていて欲しい。持っているなら、その特権を使わなきゃ損だよ。誰に迷惑を掛ける?」


「自分が行動する時の判断基準にすればいい。『誰に迷惑を掛ける』って。でも自分は誤魔化せないけどな」


「オレはな、リーザがさくらを妊娠した時、女王様にエルフにして欲しいって頼んだ事が有るんだ」


リーザがさくらを身籠った時、人間とエルフの間で正しいと言うか、一般的で普通の赤ちゃんが生まれる事が可能なのか?不安で不安で。


「それで、どうだったの?」

「ダメだった。女王様の力をもってしても無理だって。ただ、こうも言われた。もしもオレがエルフとなったら、それはもうスルガ トキヒコでは無くなると」


「だからこのまま変わらず人間としてエルフと付き合って行こうと。人間としてエルフのリーザを愛し、生まれてくる子を迎えようと。さくら、無事に生まれて、ここまで大きくなってくれてありがとう」

「うん」


「だからオレは人間であるけど、リーザとさくらを使ってエルフの里国に出入りする」

「お父さん、ズルい考えだなぁ~」

「そりゃオレは生粋な人間だからな」


「それでさくら、女王様に力や魔力の『枷』である、結びを解いてもらって、何か力が解放されたのか?何が出来るの?」


さくらがザーララの山岳城内で出した力は、エルフの『術』とは何か根本的に違っていた様に感じた。何か別の力。それこそ魔力を帯びた膨大な力。


エルフ王家の『邪竜』を力のルーツとする、魔術的な物なのだろうか?でもエルフの王家の血は入って無いんだけど。


「まだ何が出来るのか、どうなるのかは全然分からないわ。以前、先ずは身内から『術』は習うものだと女王様はおっしゃってたわ。今までは断片的に突発的に何かが起こっていたけど、これからなのかなぁ」


エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーはさくらに強烈な魔術を教えるって、以前言っていた気が、、、。


「これから何か修行めいた事をしなくちゃいけないのかなぁ」

「何だ、不安か?」

「その逆よ、楽しみ!でも学校も有るし、就活もしなくちゃね。卒論もまだ手付かず。忙しくなりそうだなぁ~って事」


「まあ困った時はオレに言え。でもな、オレが生きている間だけだぞ」

「あ、それお金以外の事な」

「それは変わらないのね」

「ああ」

私はさくらと二人で笑った。



「お父さんありがとう。何か少し落ち着いた」


実際にさくらは、自分の内から湧き上がっていた“何か”を抑え込んだ実感が有った。


「そっか」

「でもね、爆発しそうなの。何か私の中に溜まっていて、爆発しそうなの」

「溜まってるって、便秘か?」

「もう、デリカシー無いなあ」


「爆発しちゃえば?ここにはオレしかいないし。あ、でもオレとこの『柿の木』は巻き込むなよ」


さくらは立ち上った。そして、『う~』と唸りながら体を縮こませた。

「わあああぁぁぁーーーーー」


まるで何かを開放するかの様に両手両足を広げ、吠えた!


さくらの体から、2本の光が走り出た。ザーララの山岳城のホールで出したあの赤い光だ。


一本はさくらの頭の上から上空に消えた。

もう一本はさくらの正面から放たれ、風を起こし、風を巻き込み、ここにあった日よけ小屋の屋根を砕き、吹っ飛ばしてしまった。


「あー。スッキリした」


さくらはケロっとした顔で振り返ると笑顔を見せた。

私は多分、顔が半分引きつってるな。

「さ、さくらビーム、、、」


でもあの光、、、誰かに見られちゃったかも?


「ちょっと待て」

トキヒコはノロノロと立ち上がった。


すると、さくらが今取ったように体を屈め、う~と唸った。


「うわあぁぁぁ~~~」

さくらのように、両手両足を広げて叫んでみた。


「お父さん、何やってんの?」

「トキヒコビーム、出なかった。さくら、お前の方がズルい」



ただ申し訳無いが、さくらが抱えた問題を解決し、進んで行けるのはさくら自身でしか無い事をさくらは理解しているのだろう。


私の声はさくらのへの気休めやアドバイスになんてなりもしない。

もう、娘を見守る事も出来ないのかも知れない。

さくらのもうひとつの成人式、、、独立の時だ。


父親は、、、もう、見送るしか、、、ないのだ。




「さくらは大きな力を持ったとか、半分エルフだとか何だかんだ言っても、その根っこの何本かはオレだから、さくらの考えてる事なんて手を取るように分かるぞ」


「え~、じゃあ今私何を考えているか当ててみてよ」


「あ~お腹減った。ママ怒ってないかなぁ。あー今日はゆっくりお風呂に浸かろう、でもお父さんにお風呂を洗わせよう、、、だろ」

「何で分かるの」


「お前はオレの半分分身みたいなものだからな」


まあ実際、さくらの考えと合っていたのかわ判らない。ただ、さくらがこちらの世界、私達の娘としての位置に戻って来た事は感じた。


「さくら、ログハウス(エルフハウス)に寄って行く?」

この柿の木の丘を下り、10分程山道を奥へ進めば、エルフ達によって建てられたログハウスが有る。


「ううん、家に帰るわ。ママが待っているし」

そう、今現在のさくらの居る場所、行く場所、帰る家は、私とリーザそしてさくらが暮らしている小さな家だ。

リーザが待っている、帰ろう。



バイクを停めた場所まで、丘を降りて来た。

「さくら、お前鏡で自分の顔見て無いだろ」

「えっ、何で?」


さくらは慌てて、バイクのバックミラーに自分の顔を映し、覗き込んだ。

「えー!あー!ええぇ~?!」


「昨日な、一晩泣いて過ごしたから、うさぎさん見たいに目が赤くなっちゃったんだよ」


さくらは少し、唖然とした顔をしている。


「『紅の瞳の者、幻想をも超える力を持つ』」

「何それ?」


「うん、さくらは自分の瞳が赤っぽいとは思ってたかも知れないけど、さくらの赤い瞳は生まれつきなんだ」

「そうだったんだ」


「元々は、エルフが持つ独特の『術』を抑える為に、女王様に掛けてもらっていた『枷』だけど、他にも未知の力に対しても『枷』は反応していた。さくらが持つと感じてた、未知数の何かの力」


「『枷』に反応する様に、さくらの瞳の赤い色も何故か抑えられていたんだ」

「うん」


「さっきのは、生まれて直ぐのさくらの赤い瞳を見た、女王ユーカナーサリーが発した呟きだ。エルフに伝承されてる伝説なんだってさ」


「『紅の瞳の者、幻想をも超える力を持つ』かぁ、ザーララさん紅の瞳をお持ちだわ」

そう、膨大な力を持つ、ザーララの片方の瞳は、赤い瞳だ。


さくらは「うんっ」とすると、瞳の色が黒く、髪の色も黒色に、『枷』を外す前の姿に一瞬で変わった。

「何その技!」

ちょっと驚いた。


「うん、私が急に変わった姿を友達とかが見たらビックリしちゃうでしょ。ちょっとやってみた」

いやちょっとって、、、何か簡単に凄い事をした様な、、、、。


「それに『紅の瞳』は今は隠しておくべきだと、感じるし、私の中が訴えている」

「そっか。でも何か便利だな」


さくらは“力”を持った。いや、持っていた。

それを使う事によって、さくらの人間の脳や肉体の部分に何か悪い影響が出ないといいんだが。


トキヒコはやはり、新たな心配事を抱える。


「あーお腹空いたー!お父さん、帰りは私に運転させて!」





翌朝

「さくらー!いい加減起きなさーい!」

さくらの生活は別段まだまだ、、、唐突には変わらないか。


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