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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら もうひとつの成人式『枷』

次の3月が来ると、さくらは21歳となる。

さくらが20歳である1年が終わる。

でもその前に、私には1つ、やっておきたい事が有る。


毎年さくらの誕生日が来ると、よくぞここまで無事に大きくなった、育ってくれたと思う。

この事は、さくらが幾つになっても、私は毎年死ぬまで思い続けるであろう。


市が主催する成人式では、振袖を着た。

娘の晴れ着姿、、、それはそれは感動の波に襲われる。


生まれた時〜乳幼児期〜幼女〜少女〜そして一気に今現在。


そしてまた、、、乳幼児期と幼女時代の記憶が行ったり来たり、、、小学校、中学校の制服姿、、、元気な女子高生、、、何度も何度も、、、誰もこの場に居なかったら、私は確実に涙を流すだろう。嬉し涙を。


さくらは一般的な20ハタチの女の子とは少し違う。


我が娘さくらは、人間を父にエルフを母に持つ、ハーフエルフである。


人間とエルフとの間でその子供は誕生するのか?違う生き物、生命体としての差異が有る中で可能な事なのか?人やエルフのような形を持った生命体となれるのか?

私が持ったそんな疑問を、、、いや、悩みだ。狂おしい程の大いなる悩みを抱えていた中で、さくらは誕生した。


しかしそこは人間とエルフ。二つの異なる生命体の結合が不明確で不明点を持ち、不明瞭で不透明、不明不明不明不明不明、、、、、それは、恐怖となる不安しかなかった。


しかし、私達にはエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーがいらっしゃった。

膨大な魔力を持つと言われるエルフの里国の王。


女王の持つお力でもって、さくらが持つ、人間とエルフとの差異について観察と調整を行って来て頂いていた。


さくらが無事に育った事は、一重に女王様のお力によるものであり、感謝し切れない。


そして本日、さくらに掛けられている『枷』を解く。




さくらに掛けられている、エルフの女王による『枷』とは、人間社会で生活をする為に、我ら人類を凌駕するエルフの力を抑えるモノ。


さくらが人間社会の中で、普通に暮らせる為のお守り。(ちょっと、人間離れしたような運動能力は出て来ているが)

その『枷』が全て外された時、何が起こるのか誰にも分からない。


『枷』を掛けた当の本人である、エルフの女王ですら分からないとおっしゃった。

何故解らないのか。それはさくら自身が内に秘めるとされる、何かしらの“力”。


その“何かしら“がなんだか分からないとの事。


しかし確実にさくらは“力“を秘めており、今までも何度かその片鱗を見せて来た。

(無意識のうちに行使された高位の『術』。暴走とも思える魔力の発生。)


それが、さくら自身の意識とは別の所であったとしても。



さくらが生まれた時に、女王ユーカナーサリーが呟いたエルフの伝説、、、『紅の瞳の者、幻想をも超える力を持つ』、、、伝説通りかどうかは別にして、さくらは何かを持っている。


それと、それが何で今なのか?今行う事なのか?


私は、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーがさくらに対して『枷』を掛けて頂いた時から思っていた。

さくらが20歳になるまでは、『枷』を掛けて頂こうと。



日本の人間社会(私自身の時代)、20歳は肉体的や精神面の成長度合いとは関係無く、『大人』として社会に認められる年齢。認めさせられる年齢。大人のルールに良し悪し関係無く巻き込まれる年齢。責任を持たされ、取らされる年齢。


とにかく『大人』と『子供』の分岐点となる年齢である。

だから今、さくらがハタチになったから。


理由何てそんなもんだ。魔力がどうこう、エルフだからこう、、、関係無い。私が決めていた事。




リーザとさくら、それにエルフの里国の王、女王ユーカナーサリーも賛成してくれた。

そして、今である事の、理由も詮索もされずに。


ただ、『枷』を外されたさくらがどうなるのか、何かが起こるのか、皆目見当が着かない。

期待と不安。いや、不安しかない。


この不安を少しでも解消したいが為に、私は『北の山の悪いエルフ』、エルフ王家の長子、神かと惑う力と美しさを持つエルフ、ザーララの力を借りる事にした。


ザーララの力。


神の仕業とも思える、不可能な事など無いかのような力。

ザーララをザーララの持つ力を知った事が、さくらに掛かる『枷』を外す切っ掛けのひとつになった事は否めない。


私達は今、ザーララの山岳城の何時ものホールに居る。




「ザーララさん、本当にすみません。ご迷惑をお掛けしてしまいますが、よろしくお願いします」


「トキヒコ、トキヒコが私に詫びを入れたり、遠慮はするな。私はリーザリーの次の次にお前の伴侶となる者よ。だから私のモノは、全てお前のモノだ」


「ザーララさん、それ、解除して下さいよ」

エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーとその姉となるザーララは、リーザの次に私の伴侶に成るとの戯言を言い、私を困惑させる。


「別にいいじゃない。何かお前に不利となる事はある?」

いや、無いですけど。


ザーララに力を借りるのは、もうひとつの理由が有る。


ザーララとは、リーザとさくらが命に関わる危険が迫った時、彼女の持つ神の行いとも取れる力で以て、二人を救う契約(?)をしている。

私は今日、さくらの『枷』を外す事によって、何かが起こったら、その力が必要なのでは?との保険である。



準備は整った(と思う)。

「女王様、では始めて頂きたいのですが。何か特別な事はご入り用でしょうか?」

何か祭壇とか魔法陣とか、魔術的な雰囲気とか、要るのかなぁ?


「うむ、特に無い。ただの、さくらの気持ちじゃ」

さくらの気持ち、、、さくらは自身に掛かる『枷』を外す事に対する何らかの意義を感じるのだろうか。何を想うのだろう。


これは、誰に聞いても、誰に聞かされても、さくら自身が想い考え、感じる事だ。

だからさくらの、「もう一つの成人式」だ。


「さくら、突然に酷な事を言うが、『枷』を外して頂き、そこから何かを思ったり感じる事はさくら自身にしか分からない。まあ困ったら、オレに言え」


「お父さん、、、緊張感が」

うんうん、何時も通り。


何か凄い事を今からやるんじゃ無いしな。

え、あれ?何か凄い事をするのか?



「さくらよ、今からそなたに掛けておる『枷』を外す。全て取る」

「はい」

「この『枷』はの、さくらが人間社会で安全に暮らせる様に、トキヒコ殿とリーザとで、掛けたモノじゃ。その意味は解るの」


「はい。私の中でバランスを取るモノ。私が安全に暮らす為の御守りです」


「そうじゃ。ではのさくら、それを取ったらどうなるのじゃ」

(何かの均衡が狂う?ううん、悪い前兆は感じ無いわ)


「・・・女王様、分かりません」


「うむ。さくら、我も分からん。許せ」


エルフが、エルフの里国の王が分からない事。

エルフは予測や予想が着かない事に対しては戸惑う。しかし、思考を巡らし、状況判断を行い、場合によっては外的要因を取り込み、答えなり処方を瞬時に導き出してしまう。


そんなエルフが、それも膨大な力を持つとされるエルフの里国の王が、答えを出せないまま、予測される結果が分からないままに、未知成る事象に取り組む。通常では有り得ない事だ。


「さくらよ、人間社会で暮らすべき『枷』が外れる。その時お主は何を考え、何を思うのか」

「はい女王様。しかし何時かは、いつの日にかは迎えなければならない事です。それは私自身の為です。ですから私は、、、」


さくらは思った。


人間社会で暮らす為の『枷』が外れるその意味を。


(私はこの後、エルフとしての道を進む事になるのだろうか?でも私は人間社会で育って来た。)

(今までの生活を捨てる事になるの?だとしても、今更私がエルフに成ってもいいモノなのだろうか。)


答えは出ない。


「私は、、、女王様、お願いします」




「さくらはの、その体内に大きな力を持っちょる。それは生まれた時からの。しかしその力、その魔力は未知数じゃ。さくらよ、我は楽しみなんじゃ」


エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーはそう言ってさくらに笑顔を向けた。


さくらをリラックスさせる為なのか、、、それとも自身の不安をかき消す為なのか、、、。


姉様あねさま、もしもじゃ、もしもの為に力を貸してくれぃ」


「お前に言われる迄も無い。さくらは私にとっても大事な存在だ。本来ならば私が行って(『枷』を外しても)良くてよ。、、、でも違う。これはユーカナーサリー、お前が行うべき事。その任を果たせ。私はここにいるぞ、案ずるな」


「うむ、すまぬ」


エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、さくらに向き直る。

「さくらよ、良いか」

「はい」


「トキヒコ殿、リーザよ、始めるぞ」

トキヒコは黙って頷いた。リーザは何か不安を感じていて、トキヒコの腕を強く握った。



さくらと女王ユーカナーサリーは、お互いが正面から向き合う形を取った。

女王ユーカナーサリーは、さくらに掛かる『枷』を外す為の魔術的な呪文を発する。

(ブツブツと何か言ってるみたいなんだけど、声が小さいし、呪文?何語なのかさっぱり分からん)


さくらとユーカナーサリー、二人は何かに包まれているようだ。


さくらには生まれて暫くの後に(イメージとして)30段階の『枷』が掛けられた。

その3分の1が時間の経過や成長の度合いを見つつ、女王ユーカナーサリーによって、少しづつ外されて来た。


今、女王ユーカナーサリーの前に立つさくらの『枷』は、当初の状態より3分の2が残っているとの事だ。


女王ユーカナーサリーの魔術的な呪文(小声でブツブツ)は続いている。

(あ、どれぐらい時間が掛かるのか、聞いて無かったよ)



さくらはゆっくりと、そして順番に何かが身体から抜け落ちる感覚が続いていた。

痛みも、特段嫌な感覚も無い。


ただ、自分の身体から何かが抜け落ちるのと入れ違う様に、自分の中から何か言い表せられない、何かが湧き起こって来ていた。


エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーが、まるで儀式か何かの様に行っている、さくらの『枷』を取り外す作業は1時間に及んだ。




「これで最後じゃ」

エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーの顔に、少し疲労の色が見える。

「さくら、どうじゃ?」


「はい」


両目を開けた、さくらの瞳は赤色に染まっていた。

しかしそれは、本来さくらが持っていた瞳の色。

女王ユーカナーサリーにより掛けられた『枷』によりさくらが持つ“力”を抑える事と比例する様に、その色も抑えられていた。


そしてさくらの黒髪は、母であるエルフのリーザの髪色である、濃いシルバーグレイの髪色に変化していた。



さくらは左右両方の手のひらを上向きに掲げ、腕をゆっくりと上げだした。

その手の位置が顔の辺りに差し掛かった時、さくらは全身から光を発した。



その光は、まるで炎の様に赤く、オレンジ色の揺らめきを纏っている。


さくらの右手が一瞬、強い光を放つと、ザーララの指環が砕け散った!


揺らめく光は強さと範囲を広げる。そして、さくらの身体が浮き出した。



さくらの身体から出される揺らめく光は、光の強さを増し、揺らめきのスピードを上げ、さくらの身体は仰向け状態で上昇を続ける。

さくらの放つ眩しく赤い光に、ザーララの山岳城のホールは染まった。


トキヒコは、この山岳城のホールに集まっている者は、天井近くまで上昇しながら、身体から揺らめく光を発し続けるさくらを見上げていた。


その場にいた誰もが声を発っせれなかった。


さくらの光が増す、揺らめきが増す。余りにも強く輝いたさくらをトキヒコは眩しくて、目視出来なくなった。


「これは、、、何か不味いかも、、、ザーララ!」


振り向いて見たザーララは、右手をさくらに向けて上げている。


「トキヒコ!、、、届かん。さくらに届かん!」

「え?」


トキヒコが周囲を見回すと、女王ユーカナーサリーとロウは、何物かに押さえ付けられでもするように両手両膝を床に付け、歯を食いしばる様に何かに耐え、さくらの居るべき天井を見上げている。


先程まで、トキヒコの腕を掴んでいたリーザも、いつの間にか片膝を着き何かの『圧』から耐えている。ザーララは!?


ザーララへ再び振り向くと、先程伸ばした右手が何者かによってを降されそうだ。ブルブルと耐えてるようだ。


「オレ以外の皆が動け無い?!さくらっ!」

何だ、何が起こったんだ。


ザーララすら、まともに動け無いなんて、何がどうなっているんだ!?


「トキヒコ!さくらが、さくらが越えそうだ!」

『越える』!何処にだ?日本にか、家に越えるのか!?


さくらが『越え』ようが越えまいが、とにかく何かがマズイ。直感だ。


しかし、、、ザーララの山岳城のホールの天井高は5メートル近く有る。その天井ギリギリまで上昇しているだろう(眩しくて見えない)さくらにジャンプしておいそれと届く筈が無い。

どうする?


「ザーララ、動けるか!?」

「何とか、だな」


「ザーララ、オレをさくらに向かって投げ飛ばしてくれ!出来るか?」

「ああ、何とかだがな」

よし!


「、、、トキヒコ、、、さん」

「リーザ、耐えてくれ。さくらを連れ戻す!」


「ザーララ、頼む!」

「相変わらず、、、お前は無茶をする」

ザーララは目で笑っていても、その美しい顔を少し歪めている。


ザーララがトキヒコの体を軽々と抱き上げる。

「良いか、行くぞ!」

「頼む!」


トキヒコはザーララに、さくらが居る場所、天井近くで輝く光に向かって投げ付けられた。


「さくらー!」



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