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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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エルフ王へのスカウト

エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーに呼び出しを食った。

ダークエルフ騒動から暫く経ってからの事であった。

誰かに呼び出されるなんて、中学校以来か?

あ、いや、会社や得意先でも呼び出されたわ。

でも、会社の同僚や課の皆んなには『取りあえずオレのせいにしとけ』って言っていたから、結果として関係無い事で呼び出される事が多く、事無きを得て来たが、今回は勝手が違う。

エルフの里国の王様に呼び出された。

何かしたっけなぁ〜?いや、何がバレた?

あ、巨大なトゥクルトッドドゥー“ブラック・ボス”と遊んでて、樹々を薙ぎ倒した事か!いや、川でオシッコしたら、ジエジオラ湖(エルフ達の水源)の上流だった事かっ!いや待て、アレか?う〜ん、身に覚えが有り過ぎる、、、。


エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーの玉座の有る部屋『花の間』の背の高い扉前に立つ。

職員室か応接室の前に立つ心境。

リーザに倣って右手を差し出す。

開かない。

「『術』何て使え無いし、魔力なんて持って無いからなぁ」

「そうか!呪文だ!ん〜、開け〜え、ゴマっ!」

開かない。

「あー、ノックしよう。あー女王様、スルガ トキヒコ参りました」

扉は内側に向け、大きく開いた。


エルフの里国の王がおあす部屋。「花の間』と呼ばれ、美しい木々や草、花に囲まれた先に、玉座が有る。

でも今日は、玉座の前に長テーブルと王と向かい合う形で椅子が一脚用意されている。

「トキヒコ殿、すまぬな呼び出してしまい」

私はスタスタと歩み進み、玉座の前(テーブルと椅子が間に有るので、しゃがむと姿が隠れてしまうが)で膝ま着き、畏る。

「えー女王におきましては、ご機嫌麗しゅう、、、です」

リーザの真似したけど、イマイチだ。

「なんじゃぁ、良い良い。この場所には我とトキヒコ殿しか居らぬ」

「はぁ」

「まあ、座れ。型苦しいのは無しじゃ」

そう言われ、私は席に着いた。目の前の長テーブルの上には、お茶のポットやお菓子、コップ等の多くの物が並んでいる。

「トキヒコ殿、たまには我とお茶でも付き合え。貴公が我が里のお茶、あちらだとハーブティー成るか、苦手な事も知っておる。よってヴォダ(水)なり何やらも準備してあるぞ。珈琲が出せぬのは許せ、我が里には無き物成るからの」

「お気遣いありがとうございます」

あーエルフの里国の水、美味いんだよなぁ。席に着くなり早速頂いた。


「早速じゃがトキヒコ殿、我らの里国に来い。そしてエルフ王として、我の上に就け」

はぁ~あ、エルフ王!オレが?女王様、開口一番に突然に何を?

「いえいえ女王、、、ユーカナーサリー、何の冗談なんです?流行りのドッキリですか?」

今はこの場に二人だけと聞いたので、女王様の名前でお呼びした。

「トキヒコ殿、貴公はな、その資格が有る。今までもそれを随所に示して来た」

ん〜?

「特にコレと要った事してませんし、そもそも私は人間ですし、エルフ語も全然覚えてませんし、話せません」

20年ぐらいはちょこちょことこちらに訪問させて頂いてるけど、リーザは日本語でペラペラだし、エルフの皆も私の意識や言葉を理解してくれて会話が成立しちゃうから、エルフの言葉を学ぶ機会が無かった、、、と、言い訳。

「エルフは発する声が必ずしも必要では無い」

「いえ、しかし」

「貴公はな、短かき時にて多くの事、多くの場へ向かい行った。我では敵わぬ経験と体験、訪問を行い全てをこなした。そして、王と呼ぶに相応しい結果を随所に示した。貴公を王と呼んでも誰も疑わぬであろう程にな」

何の王だ?ビックリドッキリ王か。

「いえ、私は人間社会ではどちらかと言うと、出来損ないです。そんな私が王と呼ばれる要素も価値も有りません」

安月給だし。

「価値とは、、、場が変われば、時代が異なれば、その持つ意味も違って来る。違うか」

「まあ、一理あると思います」

「しかしのトキヒコ殿、場も時も変われど、変わらぬ価値は有るのでは無いか」

変わらぬ価値、、、。


「しかし、私がエルフの王とは、、、何にせよ、今まで起こった事もどれも突発的でしたし、何となく、それなりに、何とかなった感じですし、買い被り過ぎですよ」

女王ユーカナーサリーの結界外のエルフの里国の王の庇護の下とならない別のエルフの里に近付いたり、西門の外の霧の向こうの隣国に不法侵入したり、、、東門の外の『迷いの森』を焼き払おうとしたり、、、

「如何にせよ、貴公はこの場に立って居る。数々の事柄を乗り越えて来た事には変わりが無い」

「結果としてですね。全てたまたま、偶然の積み重ねです」

「結果は、、、全てでは無かろうか。無論、全てで無きにしろ、貴公がこなして来た事実には変わらぬ。色褪せぬ」

(我の元に来い)


「しかしユーカナーサリー、エルフ王とは、、、どの様な存在なのでしょうか」

「そうよの、民を導き、守る者、、、と成るかの」

「え〜そんなのどっちも無理ですよ」

「じゃから、我が居る。トキヒコ殿が出来ぬ事は我が行おう」

「それじゃあ、私がエルフ王とのならずに、ユーカナーサリーが王のままで良いでは無いですか」

仮に私がエルフ王となっても、王として存在する意味が無いよ。国が傾く。

「我には貴公が必要じゃ。王成る我を導く者が居らぬ」

「そんなん増す増す無理じゃないですか。ザーララさんとロウを近くに置かれたら良いのではないのですか?」

「姉様は無理じゃ。姉様は一人で完結しておる。ロウは呼べぬ事も無かろうが、順序が異成る」

兄妹の順番か。

「ではやはり、王家でこの里国を今まで通り、盛り上げて行けばいいのではないですか」

「それじゃ、それなんじゃトキヒコ殿。そう我に語れる者がおらん。我も真に聞ける者がおらん。飾り無きモノを申す者に会うたのが、今まで居らなんだ事にようやく気付いたのじゃ」

だって飾ったり、取り繕っても、頭の中を読まれたら、エルフにはバレちゃうじゃんか。

「いえ、リーザであれば、屈託無い意見を、ユーカナーサリーにするのでは有りませんか?」

「リーザは良い。しかし否じゃ。あの者と貴公とは違う。違うんじゃ」

「トキヒコ殿も知っておるだろう。大きな事、小さな事に限らず、我はエルフには何も頼めん。貴公にしか頼めん」

(我をエルフを助けろ)


「ユーカナーサリー、、、女王様、、、私は既に人生の半分が過ぎてます。いや、もう折り返し点は越えてしまっているでしょう。エルフが1000年生きるとして、人間はその10分の1以下の期間しか生きられません。私は、、、私は、エルフに寄り添い生きる事が出来ません。私は、、、」

リーザより先に死ぬ。

リーザにとって、その生成る時間の僅かな間しか、一緒には過ごせない。

私はリーザより、先に死ぬ。

逃れられぬ事、、、。


「女王、私の命の残り時間は少ないです。その少ない時間なりに、何かお役に立てる事が有りましたら、申し付けて下さい。エルフ王はダメですよ。ですが、私の出来る事は知れてますよ。そこはご配慮下さい」

「何故にそう申す」

「恩返しですよ」

「恩返し、、、とな?」

「さくら、です。さくらは私とリーザの全て。さくらが今、命有る者として居られる事は、一重に女王のお力添えの賜物です。女王が取り行いし事柄に対して、私は何もお返しする事が出来ません。何か、お手伝いすら出来ないかも知れません。その程度でお許し下さい」

「我はトキヒコ殿にアレやコレやを頼めると思うか?エルフは自身で解決せなばならん」

「はい」

今、エルフ王にとか、私にしか頼めんとか言ってなかったか?

「我はエルフの民達の最後の砦じゃ」

「はい」

「最後の砦が窮すれば、如何也」

「崩壊ですね」

「それは避けねば成らん。何としても、何があろうと、成らん」

「はい」

「トキヒコ殿、その時は力を貸せ。貴公の持つ人間としての力を貸せ」

「知れてますよ」

(我に力をくれ)


「しかし、我らエルフは足りぬ。競い、争い、勝ち抜き勝ち上がる強き意義を持たぬ故、足らぬ」

「それ、要りますか」

「我らエルフの里国はの、それ以前の問題じゃ。経験も記憶も持たぬ」

相撲大会とかしたけどなぁ。

「トキヒコ殿が我が里に来、見聞きした事を今まで以上に感じて欲しいのじゃ。変化、空気、流れ、、、悪しきモノと繋がる兆候、、、感じて欲しいのじゃ。出来る範囲での」

「何か感じられているのですか?夢でも見られました?」

「いや、、、強いて言うならば、保険じゃな」

(我と沿え)


「我は王と呼ぶには未熟者。やはりな、トキヒコ殿を近くに置きたい。何せ我はリーザの次に貴公の伴侶と成る者」

「あ~それ、まだ続いてます?」

「決定事項成るからの」

トキヒコとエルフの女王を繋ぐ言葉遊び。

しかし、今回二人の間で交わされたこの会話は、実質エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーからのプロポーズに等しいものであった。

女王ユーカナーサリーは、トキヒコに恋心を抱いている。

自身に自覚は無い。

トキヒコへの信頼と共に恋心を持ってしまっていた。

それは、ずっと以前から。




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