エルフ湯 女王の湯殿
「あ、お父さん!」
風呂上がりに男エルフ達に囲まれ、水を頂きくつろいでいたら、湯上がりのさくらがやって来た。
「スゴくねー大っきなお風呂だった!少し泳いだよ!」
「あーさくら、お風呂で泳ぐの禁止なんだけどなぁ」
「でもね、ママに読んでもらったお風呂でしちゃダメの中に、泳いじゃダメってなかったもん」
これ、少しどころか、泳ぎまくったな。
まあ『泳ぐの禁止』を書き足さなくてもいいけどね。
エルフは基本、泳ぐの苦手だそうだから。
さくらの描いたお風呂の絵は、男湯女湯のそれぞれの脱衣場に木製の額に入れて飾ってある。
親しくなったズレヅノォグロマジチキシェ(建具屋相当者、今回は色々と造作物を作ってもらった)のストラーカに額作りをお願いした。
私はここにいるエルフ達に、娘の絵を自慢した(親バカ)。
エルフの皆もいい顔をしてくれる。
あれから半月程が過ぎ、『エルフ湯』は早くも大盛況であると、リーザからの報告を受けた。
エルフ達はあの薬草の大浴槽に浸かる為、サウナを利用する為に、良く働くようになったそうだ。
2号店のオープンも望まれ、噂立っているとの事。
私の『お風呂が気持ち良くなって、怠慢エルフを産み出す!』とは、真逆の行動をエルフ達は取っているようだ。
残念なのか、安堵なのか。
「トキヒコ殿、如何した」
エルフの王宮に突然だがお邪魔した。
「はい、王宮の女王様のお風呂のリフォームです」
女王の許しを得て、一階の『集まりの場』へと向かう。
「女王様、ご覧下さい」
ザドエッタと親しくなったズレヅノォグロマジチキシェ(建具屋相当者)のストラーカに頼んで、木製だが、外国で見るような脚付きのオシャレな浴槽を白木で作って来た。
女王様、オシャレな湯船を見て、目を輝かしている。
「トキヒコ殿、これ成るは、、、」
「女王様専用のお風呂です。スペシャルなやつです!」
お湯を一杯にしたら200kg以上になるだろうが、木製とは言え、それに耐えられるモノを作った。
今回、王宮のお風呂のリフォームを行うにあたり、大工相当のストラシィ達も5人揃えた。これはザドエッタの功績だ。
頼れる石工であるカ二エンプラツァも3人来てくれた。
「女王様の湯殿を拝見させて頂いてから、これらの者と打ち合わしたく思います」
実際に、女王様のお風呂場を見た事が無いから。
「これは、『エルフ湯』をお作りになられた女王様に対する、民達からの感謝の意とお受け留め下さい」
リーザから、女王ユーカナーサリーが日本式のお風呂を大層気に入ったと聞かされていたけど、女王様が『エルフ湯』に通う分けにも行かないだろうからな。
「皆からか。喜ばしい限りぞ!」
女王様の浴室は、王宮の二階にあたる部分に設わっていた。
やっぱり、あの立って入るエルフのお風呂だ。
もっと早くに準備を始めていたら良かったのだけど、女王様は、ご自身のお風呂については一言もおっしゃられなかったから、、、言い訳。
女王様のお風呂場、殺風景。色気も飾りっ気も無い。
「ザドエッタ、どう?今有る浴槽は撤去して、持ち込んだ浴槽と入れ替えたい」
この、立って入る深いお風呂は、女王様には好ましく無い。
女王様、小柄なんで。
「そうなりますと、暫くの時が要り用になります」
ザドエッタは、凄く申し訳なさそうにする。
「何か気になるの?」
何だろう?
「はい、我が王を待たせる事など、畏れ多くて、、、」
あー女王様に対し畏れ多いか。外部者である、いち人間の私とは、思いも立場も違うからなぁ。
「でも、お風呂を入れ替えれば、浴室が広くなって優雅さが出そうだ。是非そうしたいし、女王様もお喜びになられると思う。私から女王様に言っておくよ。暫くの間ここのお風呂場は使えませんって」
「トキヒコ殿、我が王に対し、その様な事をあなたに言わせる訳には行きません」
ザドエッタ、何か驚いてるけど。
「いや、これは私が皆にお願いした事だから、私が女王様に申し入れるよ」
ザドエッタ、驚きと申し訳なさそうにしている。
「その代わり」
「はい」
「その代わり、女王様を驚かせる程の湯殿にここを変える!ストラーカ(ズレヅノォグロマジチキシェ)もふんだんに装飾相当の作り込んだ飾り付けのヤツを作って欲しい。ストラシィ達も壁や天井を張り替える。床はカニエンプラツァにお願いしたい。女王様の期待を越えるものを作る。どうだろう」
シャレが通じにくいエルフ達にも、今回は『女王様を驚かせる』が通じたみたいだ。
私は指示するだけだが、女王様に喜んで頂きたい想いは皆と一緒だ。
頼むぞ、ザドエッタ、ストラシィ、カニエンプラツァ、ズレヅノォグロマジチキシェ!
私は王の湯殿から、王の私室へと向かう階段を意気揚々と昇る。
何かもう、あの殺風景な風呂場から様変わりするぞ!
楽しみだなあ!女王様喜ぶぞ!
でも、ちょっとお風呂に入れないと、軽く言うつもりだったけど、オシャレな浴槽を見て頂き、今日からでも入る気だとしたら、、、入れないと聞かされたら、やっぱ女王様怒るかな?
あれ?女王ユーカナーサリーが怒ってるとこ、見た事無いぞ。
あれ?ちょっと、何かヤバイか?
一気に足取りが重くなった。
「失礼しまーす」
リーザとさくらは、女王の私室に揃っていた。
「トキヒコ殿、我が湯殿の完成の報成るか!」
あーやっぱり、直ぐにでもお風呂に入られるおつもりなのね。
言い難い。
「あー、えー、あー、、、女王様。女王様のお風呂は暫くの間、入れません」
「何と!何故じゃ!」
あー、口調が強い。
「え~、先程リフォームと申しましたが、女王様の湯殿、お風呂場を全面的に作り替えます」
「あの曲線を持つ湯殿に入れぬと申すのか!」
あー、ぬか喜びさせちゃったな。
「いえ、あれは女王様専用のスペシャルなお風呂です。ですのでそれに見合ったお風呂場が必要です。何卒お許しください」
「では今宵より、我にどうせよと申す!」
あーやっぱり、怒ってる。
「ユーカナーサリー、宜しければトキヒコさんのアパートのお風呂に入られるのは如何でしょう。また別の風呂体験ともなりますし、入浴剤を入れる事により、浴槽の湯に変化を起こす事も可能です」
「我がトキヒコ殿のアパアトの湯殿を使っても良いのか!」
「ええ、ユーカナーサリーのお許しであるなら」
リーザ、ナイスプレイ!
「我はの、ゆるりと湯船に浸かる事を何処かで求めておった。それは先日『エルフ湯』にて着いた。しかしの、我が何の場へ通う訳にも行かぬ。民達が窮しても成らぬ。焦れる想いじゃ」
そう、女王様の『鶴の一声』で作った『エルフ湯』だけど、ご自身が通う訳には行かないか。
「そも切っ掛けはの、やはり向こう(人間社会)を見聞きし、実際に我も『繋ぎ』行く事となった。しかし、向こうの湯殿には入れん。トキヒコ殿のアパアトに居ったとしても機会が無き事ぞ」
そんなの言ってくれればいいのに。私には頼み事みたいな事を色々と言う割には、変な所で謙虚だからなぁ。
「ユーカナーサリー、宜しかったら今晩からでも、是非おいで下さい」
「良いのか」
「もちろんです。温泉の素(入浴剤)も幾つかの用意しましょう」
王宮の女王専用のお風呂場が使えない間、わが家来て頂く。そんな事、思いもしなかったよ。リーザ、ナイス!
「女王様とお風呂入る~」
「そう申すか、さくらよ!我と湯殿に入りたいと申すか!」
「うん!」
さくら、ナイスアシスト!
今日から6日間、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーは、わが家のお風呂にお入りになられた。
6日間、わが家のバスルームは、キャッキャ、キャッキャとさくらの声が響いた。
(入浴剤を6種類揃えていたから、6日間通って頂いたのか?)
女王様のお風呂のリフォームが完成した。
殺風景だった風呂場全体が華やいだように感じる。
窓にも装飾的に彫刻をした窓枠を内側からはめ込んである。
浴槽への湯水の取り入れ口も、楕円の優しい形の物が付いた。
ズレヅノォグロマジチキシェのストラーカが作るレバー式の水栓にも彫刻による模様細工がされている。
壁も天井も床も、明るい色相の物に入れ替えられている。
光鉱石を使った灯り取りには、オシャレな傘に影絵を思い起こす細工が施してあり、灯りを点すと作り出される陰陽から周囲の壁と天井に何やら模様が浮かぶ。
私の目からしても、女王様の湯殿はまさしく生まれ変わった、と思う。凄く良くなった!
女王様のお風呂であるからと言って、貴金属や宝石類で飾り立てるより、こういった手の込んだ造作物のほうがカッコ良く見える。
まあ、私の価値観だけどね。
ザドエッタ、ストラシィ、カニエンプラツァ、ズレヅノォグロマジチキシェに何かお礼をしなくっちゃな。女王様に対してとしての事だとしてもだな、相当無理をさせちゃったな。
今度『エルフ湯』で、お背中をお流しさせて頂こう。あ、ザドエッタとストラシィには女性エルフも居たんだった。
しかし、エルフ達の仕事は素晴らしい。
「女王様、如何でしょう?彼らの働きっぷりは!」
「トキヒコ殿、申すぞ。言葉が出ん」
おお〜!
「トキヒコ殿、彼の者達を呼んでくれ。特別に呼称を与えねば成らぬ」
「我が王が付けまする呼称、彼の者達は誉れですね。喜びましょう」
『呼称』って女王様がお付けになるのも有るのか。
「では女王様、今夜からお使い下さい」
「何を申す!今からじゃ!」
わー、お湯も張って無いのに、服を脱ぎ出しちゃったよ。
「あーリーザ、ちょっと止めて!」
リーザが女王様を落ち着かせる。
「如何でしょう、他にご要望はございます?」
女王様、嬉しそうだ。
「さればトキヒコ殿、次成るはサウナ風呂も頼む」




