エルフの里国 王様への謁見
翌朝
『王の間』へ続く扉の前にリーザと共に立つ。
その扉は赤く、両開きであり、天井に向かい少し尖ったアーチ型をしている。
それぞれの扉の幅は普通サイズなのだが、その高さは3mはあろうか。扉の高さからその向こうの部屋の天井高さが測れない。
「トキヒコさん、余り畏まらずに」
「は、はい」
やっぱ緊張するなぁ
「行きましょうか」
そう言うと、リーザは扉に向かい右手をかざした。
赤い扉は音も無く、部屋内に観音開きに開いた。
王の間に一歩踏み出す。
部屋に入った途端、なんとも言えない良い香りがする。
凄く淡く薄く、この部屋全体を包んでいる。
心地いい、いつまでもココに居たい気持ちにさせられる。
「リーザリー・エストラルク・ホーリョン・サー・フェアルン、スルガ・トキヒコ、王への謁見に参りました」
リーザの勇しく美しい声が通る。
リーザ、それしっかり畏まってるのでは?
前を見る。
正面奥の壁まで50mは有りそうだ、その壁の手前に木々や花に囲まれた玉座が有る。
玉座にはエルフの里国の王が足を組んで座っているのが分かる。
私はリーザを肘で軽く突いた。
「リーザ、王様って女王様じゃんか」
「ええ、何か問題でも?」
いやいやいや、問題は無いですけど、先に知ってても良かったのでは?まあ、エルフの王様が男であろうが女性だろうと私にとっては同じなんだろうけど。
けどね、なんかね。
「越える者よ、トキヒコ殿、よくぞ参った。さあ近くへ」
女王の声も美しく高らかに響き届く。
女王様が我々を招き入れて下さる。
リーザはサッサッと女王へ歩み寄る。
私はリーザに続くよう、、、並んで歩くにはリーザの足取りが軽く、早かった。
リーザは女王の前まで来ると、スッと片膝を着いて頭を下げた。
私も(ギクシャクとだが)リーザに倣って片膝を着いた。
これぐらいは事前に練習出来たなぁ。ちょっと後悔。
「よくぞ来て下された、越える者よトキヒコ殿よ!」
歓迎して下さってる?
「はっ、女王様におきましてはご機嫌麗しゅう。本日はお招き頂きまして、トキヒコ共々に至極光栄に存じます」
??これが普通の畏まらない会話?になるか?
「初めまして、私はスルガ トキヒコと申します」
こんな感じか?
「お主が越える者の伴侶となる人間、スルガ トキヒコ殿か。早く会いたかったぞ」
「本日はお招き頂きまして、ありがとうございます」
こんな感じ?
「我はこの日の為に日本語を習得したぞ、どうかな?我の日本語は」
驚きでしか無い!
「王様、お心遣いありがとうございます。感激してます。ほぼ完璧です」
「『ほぼ』とな」
あっ、ミスった。
「我が王よ、どうやら日本語のニュアンス、言い回しの類いです」
リーザが助け舟を出してくれた。
「王の日本語が今の段階で完璧であったとしたら、もう学ぶ必要がございません。しかし、余力を持つならば、次に日本語を使う際には新たな発見や別の気付きがあるでしょう」
「また日本語と言うものは、人間界の社会、世界において美しく繊細な表現、故に複雑で難しい言語として同族間でも高く評価される言語でも有ります」
「奥深く、面白そうでは有りませんか」
リーザの助け舟は豪華客船だな。
(少し前)
「リーザ、失敗した」
「どうなさったの?」
「今日持って来たアジサイなんだけど」
「はい」
「エルフの里国にとっては外来種だ。外から生物や植物を持ち込むのは良い事では無い」
「はい」
「私自身もエルフの里国からすれば外来種の生物と変わらないが、いまの段階でこちらに私が根付く分けではないし、私がこの国に与える影響力は皆無だろう。でも植物の類いは花粉や種、胞子を飛ばす事によって異国の地に根付く事が多々ある」
実際に現代社会でも開発、輸出入、食用の目的の為等、外来種の来訪によりその地の在来種、原種を駆逐、絶滅に追いやってしまう、世界中で多くの社会問題になっている。
「はい」
「知っている事なのに失敗したなぁ〜どこか浮かれていた、気遣いが出来て無いなぁ」
「トキヒコさん、それは我が王の決める事。でもトキヒコさんが心配であるのなら、こう」
リーザは持って来たアジサイの花束を包むように結界を張ってくれた。(私は見えません。)
今、今ここかもしれない!
「王様、王様の民を娶るなど、到底叶わぬ夢かもしれません」
女王様はじっと見ている。
「その上、私は何も持たぬ脆弱な人間です」
「ならばこの身をリーザに捧げます。私達をお許し下さい」
トキヒコは片膝を着いたまま、再び頭を垂れた。
突然のトキヒコの哀願が始まって終わった。
「嬉しー」
隣に並んで片膝を着いていたリーザの悲鳴にも似た歓喜の声が聞こえてきた。
「え?」
何かスベった?
「嬉しいわ、トキヒコさん!」
今度は抱きつかれた。
「え?」
王様の前なのに。
ため息混じりに王様が口を開いた。
「トキヒコ殿、我に越える者との仲、許可など不要じゃよ」
え?
「我らエルフはな、自己の事は己が決めて己が行う。誰の許可も得ずとも己で進むものじゃ」
「え。」
リーザは満面の笑顔でトキヒコに抱きついたままだ。
「しかしの越える者よ、玉座の前では如何かの?」
「ハッ」
リーザは我に返る。がその顔はニヤケてる。
なんか、スッゲー恥ずかしいんだが。
何とか王様への謁見も無事に終えれそうだ。
「王様、私は何も持たぬ者ですが、お花をお持ちしました。どうか受け取って下さい」
トキヒコはアジサイを渡すと再び例の、片膝で構え頭を垂れるポーズを取った。
おっ、なんだかサマになって来たかな。
頭を下げた状態で言う。
「アジサイという名の花なのですが、通常は青紫、赤紫色の物が多く、白色は私は初見で美しい思い選びました。ただ、結果として外来の物を持ち込んでしまいました、申し訳ございません。リーザが結界を張っておりますが、ご判断を、、、?」
女王様の反応が無いので、トキヒコは顔を上げた。
その目の前にはアジサイの花束を抱え玉座から降りて来た女王が直ぐ目の前に立っていた。
あ、何かまた失敗?しちゃった?
「ぉぉぉぉぉ」
女王は小声で唸っている。
「女王様?」
「トキヒコ殿よ」
声小さい。
「はい」
「この花の花言葉、お主は存じておるのか」
「いいえ?」
女王は少し震えているようだ。
「強い愛情」
「え?」
「この花の花言葉はの、白は『寛容』でな、ピンクは、、、『強い愛情』じゃ」
えーーー??




