エルフのお風呂作り 敵状視察
エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーはエルフの里国でお風呂を作る為のイメージを伝えろって。
お風呂をプロデュース?と言っても、先ず作った事が無い。
基本は私の知る『日本に有る風呂』でいいと思う。特別に何か趣向を凝らしたりしたら、失敗が目に見えてる。
それと問題は、そもそも私が別段お風呂好きでは無い事。
だから今まで、温泉巡りをしたとか、銭湯に好んで行くとか、無い。
温泉宿の浴場(温泉)には複数回は行った事、入った事は有るが、浴室の作りだとか、構造とか機能とか、そこのこだわりとか、気にした事が無い。温泉の効能すら気にした事が無い。
お風呂をプロデュース、全くの不適任だ。
だが、エルフの里国の王の勅命だ。
いや、女王様の個人的な要望だな。
これは何処かに、参考として訪問見学でもしないとなぁ。
「リーザ、さくら、お風呂屋さんに行こう」
「お風呂屋さんですか」
「うん、銭湯というより、健康センターってやつかな」
私の住む所から車で一時間圏内に5ヵ所程、入浴施設がある。
一時期の用なブームでは無いが、生き残った店、新たな価値観というか楽しみを提供する店。色々と独自の『色』を出していて、多種多様のようだ。
新規の施設も出来てたりと、やっぱブーム再来?その情勢を私は分かっていない。
だって、利用してないもん。
私は『健康センター』って呼ぶけど、健康ランドとか、まあ大規模な公衆浴場だな。
大きな湯船とか、ジャグジーバス、薬湯なんかも有ったり、多種多様なお風呂が準備されている所も多い。サウナも有るなぁ。泡風呂、いいかも。
その他の設備としては、食堂だったり、休憩室でマンガ読んだり、マッサージコーナー、カラオケやゲームコーナーなんかも有ったりする。
お風呂好きなら、一日中居られるレジャーランドであり、ワンダーランドだな。
それらは、訪れたお客さんが身も心も『いい気持ち』にさせる事が大事かもな。
それがエルフだったとしても、どうせ入ったなら、入った者には、そうした気持ちを持ってもらえた方がいいに決まってる。
マンガやカラオケ、ゲームコーナーは無理だけど。
入館料を払って。
「男女別々だけど、さくらどうする?」
リーザはさくらと何時もお風呂一緒だからな。
「さくら、お父さんと一緒に入ろう。リーザ、たまにはゆっくりと一人で入っておいでよ。それにここは薬草風呂に泡風呂、サウナも体験してきたら?」
「サウナですか!初体験になりますね」
「流石に幼児であるさくらを連れて、サウナは無理だから、リーザ、さくらは私に任せて、行っておいでよ」
5歳以下の子供は体温調節機能が未熟であるから、サウナや水風呂への入浴はリスクがあるとされるから。
「はい、ありがとうございます。サウナ、行ってみます!」
「うん、一時間ぐらい掛かってもいいから、エルフのお風呂作りに向けて、色々と研究や体感して来て。休憩場で待ち合わせよう」
「はい!」
「よし、さくら行こう」
「うん!」
こうして私はさくらと、リーザは別々にお風呂へと向かった。
入館者は、多いなぁ。
みんなお風呂好きなんだ。それとここは、色々と趣向が凝らしてあって、1日居られそうな施設が備わってる感じ。
男湯の、のれんをくぐる。
「わぁ、そこそこに入浴者も、多い」
脱衣場は賑わってる。
ちょうど壁際のロッカーの空きがあった。
さくらを先に裸にして、タオルで包む。
「さくら、ちょっと待ってね」
二人とも服を脱いで風呂場へ向かう。
あっ、
「さくら、オシッコはトイレは大丈夫?」
「うん、さっき行ったよ」
そうだった。
「わぁ、お風呂大っきい!」
そうか、銭湯とか温泉の風呂は初めてだな。
先ずは体を軽く洗い、湯船へ。
ちょっと熱いか?
もう少し温度の低い湯船を探し移る。
「さあさくら、入ろう」
40℃ぐらいかな?ちょっと、ぬる目だけど、丁度いいかな?
「お父さん、泳げるよ!」
「あーさくら、お風呂で泳いじゃダメだ。ここは皆で入るお風呂だからね。誰かに迷惑を掛けちゃいけない」
「うん。じゃあ、いつか大っきいお風呂を作る!」
う~ん、どうせ作るなら、温水プールの方がいいかも。
「さくら、ここは色々なお風呂が有るから、次に行ってみよう」
続いて、『薬湯』に入った。
湯船は緑色のお湯を湛え、さっきよりも緩く感じる。
「お湯がミドリ色!」
さくら、喜んでいる。
今度ウチでも入浴剤を入れよう。
次は初めにパスした普通のお風呂。でも、さっきよりも大きな湯船だ。
「さくら、ちょっと熱いか?」
「ううん。ここも、泳げないね」
「そう、ここも大きいけど、泳ぐのはダメです」
一度上がって、さくらの髪を洗う。
さくらの髪は黒髪だ。リーザの濃いシルバーグレーの髪色にはならなかった。
「さくら、髪の毛伸びたなぁ」
「うん」
毎日さくらの事を見ていたつもりだったが、実は良く見ていない事に気付いた。
情けない。
子供の成長は早い。
エルフの血が半分入っていたとしても、周囲の子供や私の持つ幼児のイメージと変わらず、さくらは成長している。
人間としての発育が順調に進んでいると思う。
これも、エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーのご助力の賜物なのだが、この状態が続けば、同年代の子と同じように幼稚園へと入園し、小学校、中学校へと進めそうだ。
私はさくらを人間社会で育てたい、育てる事を決めた。リーザも女王ユーカナーサリーも同意してくれた。
私がそう思ったそもそもは、さくらの寿命だ。
さくらが人としての寿命を生きるのか、エルフとしての生の流れに乗るのか。
今は誰にも判らない。エルフの里国の王でさえ判らない。
私が今、一番に抱えている悩みであり、心配事だ。
だから、さくらが成長した時、どちらの世界にでも行けるようになっていて欲しい。
もう一度、熱目の大きな湯船に浸かって、浴室を出た。
さくらの体を拭き、下着姿で鏡の前のイスに座らせ、ドライヤーを掛ける。
「お嬢ちゃん、パパと一緒でいいねぇ~」
見知らぬおじさま達が次々とさくらに声を掛けて来て下さる。
「うん!」
さくらも笑顔で答える。
ああ、お風呂って、いいかもなぁ。
休憩場で冷たいフルーツ牛乳とコーヒー牛乳を買った。
銭湯の定番だろう。
さくらは甘い飲み物が大層気に入ったみたいだ。
一気飲みに近い丁で飲み干してしまった。
リーザも出て来た。手を振って合図する。
「リーザもフルーツ牛乳買っておいでよ。銭湯とかのお風呂上がりの定番なんだ」
「定番、ですか?」
「まあまあ」
リーザ、フルーツ牛乳を買って来た。
「さくらも飲んだんだけと、一気飲みしちゃった」
リーザも蓋を開け、牛乳ビンをぐいっと。
「わぁ、甘くて美味しいですね」
「ねっ」
さくらと相づちする。
リーザは半分ぐらいをさくらに渡した。
「リーザ、何か発見はあった?サウナはどうだった?」
「はい、薬草の湯はいいですね。何か体に染み込む様でした。そしてサウナ!他のご入浴の方に指導頂きましたが、なかなかに興味深く、熱かったです!そのまま水風呂!3回続けてしまいました」
「サウナかぁ〜。エルフの里国でも再現出来るかなぁ?」
サウナは、蒸し風呂とか言ったりもする。
熱した石やストーブで石を沢山熱して、熱した石に水をかけて蒸気を作り出す。石の熱と蒸気とで室内の温度・湿度を調整する。
室内の温度は約50 ℃以上にする事が多く、好き好んで熱い中で我慢する(サウナ好きにしてみれば、誤った表現かな)。
サウナに入る目的は?全身の血行促進と気分転換の作用。かな?
「そうですね、熱鉱石の熱を強くし、、、行けそうです。トキヒコさん、再現は可能と思われますよ!」
そうか、サウナ!やっちゃうか。
「リーザ、サウナを作っちゃおうか。でも“熱鉱石”って入手は困難な石?」
「いえ、希少な“冷鉱石”に比べましたら、比較的入手が可能でしょう」
よし、サウナやっちゃおう。
女王様、サウナを体験されたら、どんな風に思われるだろう。これは楽しみだ!




