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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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112/296

海に行きたいエルフの王様 女王様の水着

防波堤での海の観察を終え、私達は海の家へと向かった。

エルフの里国の王の『夏の体験』をしっかりとエスコートしなくっちゃな。

そこは少し大きな作りの建物で、中には食堂以外にも着替えとシャワー室、ちょっとした休憩用の畳の広間も有る。建物の中も清潔な印象。

私は着替えを済ませて、大きいのと小さいの、2つの浮き輪を準備したり、日除けのパラソルを頼んだりした。

砂浜は、、、人、人、人!多いよ!

まあ皆さん夏だ、考える事、楽しみたい事は一緒だ。

「お待たせしました」

水着に着替えたリーザが、黄色の水着のさくらの手を引いて出て来た。

さくら〜可愛いぞ!


「リーザ、カッコいい!さくらも可愛い!」

そして、リーザとさくらの背後に隠れる様に、控えめで伏し目がちな女王様が続く。

女王様の水着のお披露目だ!

女王様の水着!大人っぽい(ん?大人でいいんだよな)パレオ付きだ!

南国の草花と思われる大きなイラストが幾つもプリントされた派手なやつ。

「女王様、ユーカナーサリー!水着姿素敵です!」

女王様、スッゲー照れてる。のか?

「我は、我はの、、、慣れん。こんな布っきれ一枚の裸で、屋外は初めてじゃ。慣れん、、、」

何か、モジモジとしてる。

いつでも堂々とされている姿だし、王の私室なんかでは裸に近かったり、私とお風呂に一緒に入ろうとするとかの行動からは、こんな態度を取る事を想像してなかったので、驚きだ。

エルフの羞恥心か?失礼ながら、微笑ましい。


「ん?この香は何ぞ」

「ユーカナーサリー、こちらで調理されている物ですね。そして販売されてます食事の匂いです」

女王様、焼きそばとかの匂いに誘われてる。

「な、何が有るのじゃ、何を食せられるのじゃ」

あー、ちょっと動揺してるぞ。

「え〜と、焼きそば、たこ焼き、ラーメンにカレーなどです」

「トキヒコさん、イカ焼きも有ります!後程是非に!」

ああ、新婚旅行時にリーザが気に入ったイカ焼き。

「後で頂きましょう。でもリーザ、以前のお店とは違うから、味も違うかもよ」

「構いません」

そこで何故、キリッとする?可愛いから許す。

「さくら、アイスも有るぞ」

「なっ、トキヒコ殿!アイスも有るのかっ!」

いや、海の家だしその程度は、、、。

「ですが皆さん、先ずは海へと行き、後程何か頂きましょう」

あー、焼きそば作りを凝視しちゃってる。

食堂から引き剥がすように、女王様の腕を引いて外へと向かう。


今度は女王様、浜辺の人混みに躊躇する。

「人間が多い!この様な場に、この様に集団として良いのか?」

「あー、集団と言いますより、それぞれの者が『海水浴』を目的として集まっている結果ですね」

「ひとつの意思が働き、皆の者が動いた結果だと申すか」

「あー『ひとつの意思』は有りませんね。皆それぞれ知らない者同士がたまたま隣合ってるだけですから。目的が一緒だった、程度です」

なんか大袈裟。

「しかしの、しかし、、、」

あ、人間を一度に多人数で見たから!戸惑ってるな。

「ユーカナーサリー、何やら画面を観たとおっしゃられていたでは無いですか。その映像にも多くの人が海に、砂浜に多くいませんでしたか?」

「おお、そうじゃった。何、ちと珍しき光景に見えたからやも知れん」

女王様、戸惑いと躊躇が隠せない。

海の家で申し込んだナンバーの付いた日除けパラソルには、程なく到着した。

「トキヒコ殿」

「はい」

「砂が熱いんじゃが」

「はい、我慢です」

サンダルはお履きになられてるが、焼けた砂の熱さが伝わっているのだろう。


「皆さん、この『21』の番号が付いているパラソル、この大きな日除けの傘が今日の私達の基地と成ります」

「基地、、、とな」

「あー、荷物置き場や集合場所と思って下さい」

一度、パラソルの下に腰を降ろす。

「日焼け止めを塗りましょう」

私は、さくらに日焼け止めを塗る。

「リーザよ、そのクリームか、クリームを我にも塗布すると申すか」

「はいユーカナーサリー。日焼け止めを塗りませんと、後々大変な目にお会いする事と成るやも知れません」

「大変な目、とな」

「はい」

「我にその様な気遣いは不要じゃ」

ん?何を拒む理由が?

「ダメです。日焼けは侮れません。皮膚が日焼けにより炎症を起こしてしまいましたら、様々な活動機会において支障をきたす懸念が生じます。日焼けクリームを塗ります事をお許し下さい」

女王様、なんとか大人しくリーザに日焼けクリームを塗ってもらっている。

が、小刻みに震えている。

あ、パッチテストしてないや。もしかしてアレルギーが!?

「リーザ、リーザよ、少し許せ!」

どうも、くすぐったかったみたいだ。


「それでは、海に入る前に軽く準備運動をしましょう」

何かすっかり引率者になってるな。

手首、足首、首をぐるぐると回し、屈伸して、アキレス腱を伸ばしましょう。

「では、海にと入る準備は整いました。いざ行かん!」

さくらは小さい浮き輪を抱え、リーザに手を引かれ波へと向かう。

女王様は?

海へと走り出した二人に反して、日除けパラソルの下で留まった。

「あ、ユーカナーサリー言い忘れていましたが、『術』の使用は禁止です。特に『開く』事は禁止して下さい」

「何故じゃ?」

「我々人間は、相手の想いを想像しても、知る事は出来ません。ですので、相手に分からないを都合良く解釈し、あれやこれや想像します。それらの想像内容は良い物ばかりではございません。どちらかと言うと、気分を害する事が多いと思います。ここは多くの人間が、老若男女問わず集まっております。ユーカナーサリーの意識や精神を害する内容を多く感じてしまうと思われます」

うん、危険だと思う。

「それは、トキヒコ殿もそうか」

「はい、人間ですから。私も恥ずかしながら、相手の事を勝手に想像(妄想)する事は多きに行っているでしょう」

「後程ゆっくりと、トキヒコ殿の精神世界を辿って見ても良いやもな」

いや、それ絶対に禁止。

「『開く』以外の『術』も禁止です」

「何故じゃ?」

「海を海水浴を行うなら、楽しむのであれば、素の状態から体験すべきです。まあ、身の危険を感じられたり、緊急時には『術』を発動して下さい」

「何も護りの無き状態で、この大いなる力と対峙せよと申すか。リーザとて、守りの結界なり保護の術を纏っておろう」

海と対峙って、、、相当に波の動作に関心が。

「あーユーカナーサリー、リーザは素で泳ぎます」

「な、なんと!我は聞き及んでおらぬ、我を先じるとなるのか!」

あ、女王様が泳げるのか否か、聞いて無かった。


女王様は立ち上がると目を瞑った。

何か力が抜けたようだ。

「暑い!」

あー、今まで何か護りの『術』を纏っていらっしゃってたんだな。

「ユーカナーサリー、『夏の陽射し』は暑さを伴います」

「しかし、これは暑い、暑つ過ぎぬか!」

「ですから海にて海水浴です」

「然り。しかしな、暑いわ!」

女王様をパラソルから陽射しの下に出す。

「なんじゃー!眩し過ぎじゃろ!この砂は焼けておるぞ!」

いやさっき、砂が熱いっておっしゃられてましたが。

「さあさぁ、海に入りますよ」

何とか、女王様を波打ち際まで促す。

「これトキヒコ殿、そなに押すでない」

リーザと浮き輪でプカプカと浮かんでいるさくらが手を振っている。

波に戸惑い、海に中々入れない。

「トキヒコ殿、折角に用意した水着が、これでは濡れてしまう」

「水に入る為の衣服ですから水着なんですよ」

「いやの、『術』でひと膜くくれば、水着を濡らさぬとも済むでは無いか?」

「それでは海水浴の体験には為りません」

あー、海に入る事を躊躇している言い訳だな。

私は先に波を越え、海側から女王様の手を引いた。

「これトキヒコ殿、そなに引くでない」

バシャバシャバシャ、、、

「冷たい!」

あー、暑いだ冷たいだ、大変だ。

股下辺りまで海に浸かった女王様が、波を体で受ける。

体にぶつかった波が立ち上がり、女王様の顔にかかる。

「うふぇっ、しょっぱいぞ!」

「これが海の水、海水です」

「うーむ、何とも不思議な水じゃ。文献を読みとせ、実地での体験には勝らぬな」

私は女王様の頭の上から、浮き輪を通した。

「さあ女王様、リーザとさくらの所まで参りましょう」

女王様を乗せた浮き輪を沖に向かって引き進む。

「おう、足が浮いとる!浮いとるぞ!」

ひとつ一つの体験に、リアクションが加わり新鮮だ。


リーザとさくらまで浮き輪を引っ張り着いた。

リーザに耳打ちする。

「リーザ、女王様も、泳げなかったんだ。聞いてなかったよ」

「ええ、エルフは皆泳げないと思って頂いて、先ず間違い無きに思います」

え~、それ先に聞いておけば良かったよ。

ちょっとリーザと交代。

「さくら~泳げるの?」

「うん!」

さくらはそう言うと、ズボッと浮き輪から下に抜け、姿が消えた!

「ええ!さくら?」

私も慌てて海に潜る。

さくらは潜水状態で足をバタつかせ、グルグルと回転しながら泳いで行っている。

慌ててさくらを追いかけ泳ぎ、両脇から抱え、水面に出た。

「さくら~びっくりさせるなぁ!」

「うん!泳げるよっ!」

「リーザ、さくらが泳いだ!」

「ええ、先程も少し一緒に泳ぎましたよ」

「ふえぇ~、いきなり潜るからびっくりしたよ」

さくらは私の腕の中で笑っている。


「さくら、スゴいなっ!泳げるんだ!」

「うん!」

「でも、余り深い所に泳いで行っちゃダメだぞ。お父さんが見える所、さくらがお父さんを見れる所までだぞ」

「うん!」

返事はいいんだけど、リーザでないとさくらの対応は無理だな。

「リーザ、さくらの目を術で海水から保護出来るかな?それと、さくらをしっかり見ておいてやって。さくらは怖いもの知らずだから」

あ、リーザはその上を行く怖いもの知らずだった。

「はい!お任せを!」

リーザとさくらは泳ぎ出した。

さくらの浮き輪は私に渡された。

「リーザ!狩りも無しだよ!」

リーザが手を振って答える。

二人の頭が波間に見えたり隠れたり。

3歳児のさくらだが、リーザが一緒なので何も心配を持たなくていい事が救われる。

二つの頭は海面を潜って、上がって、、、移動速度が速過ぎん?その上、海面から飛び上がりそうだ!イルカか?

泳ぐエルフは、、、無双かも知れない、


「では女王様、私達も少し泳いでみましょうか?」

浮き輪で浮かぶ女王様に振り返った。

「我はこのユラユラとした状態で問題無きだが」

「折角の海です。『海水浴然り』がまだ不十分です」

「頭は陽を浴び暑く、体は海にて冷えて、愉快、愉快!」

まあ、それなりにご満足頂けている様で、私は嬉しいのだが、まだまだ。

「少し浅い所へ戻ります」

「いや、トキヒコ殿」

女王様がぶら下がっている浮き輪を掴み、返事を待たずに岸へと向かう。

「トキヒコ殿、足が着いてしまったわ」

「それが目的ですから」

波の高さは、立った女王様の胸の下辺り。

「女王様、泳ぎましょう」

「我は別段泳ぎを得ず共、問題は無いのだが、、、」

消え行く声。どうやらご自身が苦手と思われる事に対する意識を持ち合わせておらず、ご自身の中で『泳げない』事への位置付けが出来て無いと、、、この戸惑いの様子から推測される。

「ユーカナーサリー、『術』を使って下さい。顔の回りに海水を遮断する事と、海水を鼻や口から吸わない、息を止める事を行って下さい」

「良いぞ」

「では、一緒に潜りますよ」

「う、うむ」

私は女王様の両手を取った。

「では行きますよ。いち、にの、さん!」

ザブーンと潜った。

あ~海の中で目を開けるのキツいなぁ。滲みる〜

しかし目の前では(歪んで見えるが)女王様の笑顔が確認出来た。

「ぷっファ~、どうです?」

「我は水の中にての景色を見たのは、初めてやも知れん!」

「どうでした?」

「なかなかにな、なかなかに良いぞ」

顔色が良い!

「では今度は潜りました後、泳いで進みましょう」

「うむ!」

もう一度、女王様の手を取り、揃って海面下に入る。

潜ったのと同時に女王様の手を離し、私は潜水状態で先へ進んだ。

振り向くと女王様が続いていたが、あっと言う間に抜かれ、ぐんぐんと沖に向かって進んで行かれた。

一瞬で魚となった!

あー、何か術も発動されたのかな?

私が海面に顔を出すと、ブイに掴まっている女王様が手を振って来る。


私は大小2つの浮き輪を回収して抱えて、波打ち際まで上がり海を見る。

夏の陽射しを受けた海面が輝いている。

その中に2人と半分のエルフが海を泳いでいるのが見える。

3人の周囲には他の海水浴客の姿が無いのは幸いだ。

エルフ達の海水浴、泳ぎには、ついて行けん。




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