ジゴクからの招待 魔王様
「ここは?」
到着した場所は、極彩色が溢れている異世界。
街も樹も道も空でさえ、ビビッドな色をしている。
どこもかしこも派手、派手、派手!
目が回りそうで、目が痛くなりそうなぐらい。
「まだ死んで無いようだけど、地獄に来ちゃった?」
トキヒコは大きな白ヘビに巻かれたまま、赤青緑紫黄色ピンク、、、無数とも思われる色が重なり合い、混ざり合う道を板の様なモノ(空飛ぶ絨毯?)に乗せられ進んで行く。
街並みには多くの人々(人間と見た目変わらない)に迎えられ、見送られ、まるでバレードの様相だ。
でも、見る姿、人々は女、女、女、、、女性しか見えない。
そして皆、必ずと言っていい程、棒を手にしている。何で?
『地獄』は、想像していた所とも違うし、想像していた鬼や悪魔と思われる姿、形の者は見られない。
でも、棒を持った女性達がわんさかと居る。棒で殴り合うのかな?
「あの~、ここ何処なんですか?」
マジックショーの続きで、催眠術でも掛けられたかな?
「ようこそスルガ トキヒコ。ここはジゴク界。私達の世界だ。ある者は『魔女達の世』と呼ぶ者も居るようだがな」
魔女~!?でも、その棒をオレに向けるなよ。
「その拘束術が苦しかろう。しかし、今暫く辛抱せよ。まあ逃れられぬから辛抱も何も無いのだかな」
ハッハッハッと高笑いされても、コレ、取れそうなんだけど。
「人間の男は女に弱いと聞くぞ。私達は女だけの世界。さぞや恐ろしかろう!」
へぇ~『魔女達の世』だけに、魔女、即ち女性だけの社会かぁ~。どうやって人口増やすんだろう?
「私達の狩りは雄を狩る。しかし、どの獲物も長生きが出来ん。スルガ トキヒコ、お前はどうなんだ?楽しみだぞ」
「まあ抵抗しても無駄だ。私達の魔術は強力だからな!」
また、ハッハッハッと笑われてもなぁ~何だかなぁ~
魔術って言っているけど、何か効きが弱いんじゃない?
私を『地獄』に連れ込んだ『魔女』たちは、魔法だか魔術を使うのか!このヘビもか、、、。
「この拘束の魔術でお前は逃れられない」
え?弱く無い?なんか取れそうだけど。
大通りをパレード(?)しつつも、程なくして、これまたド派手な建物に着いた。
「さあ、スルガ トキヒコ、ここで待つ事になる」
「私達の魔法大臣、魔法僧侶が直ぐに来る」
私は不思議な板から降ろされると、ド派手な建物の中に連れられて入った。
ゾロゾロと多くの魔女達も後に続く。
内部は大きなホール。
目がチカチカするような内装の床にテーブルと一脚の椅子がその真ん中に置かれている。
「さあ、そこへ座れ」
立っているのも何なので、魔女(?)に言われるままに白ヘビに巻かれたまま、椅子に腰かけた。
「魔法大臣!」
女性が3人、フロアー正面真ん中奥に有る階段を下って来た。
3人共、ビビッドカラーの服を重ね着して、着過ぎ!なんかモコモコだよ。
でも、やっぱりそれぞれが棒を持っている。
でも、この魔法大臣と呼ばれた3人は、ちょっとオシャレ?に見えるステッキみたいだ。何か飾りも付いている。
「私達はこの者を連れ帰りました。高ポイントですよね。戦いに優位となれる魔術をお与え下さい」
ポイント?
「良いでしょう。後程お渡しの儀式を執り行いましょう」
「ははっ、ありがたき事!」
「ありがたき事!」
「人間、スルガ トキヒコ。エルフを知る者、エルフと交わりし者よ」
「はあ」
その棒をオレに向けて振り回すなよ。
「大人しくしている事が吉ですよ」
「何でオレをこんなトコに連れて来たんですか?迷惑なんだけど」
「あらあら、この様な状況下におかれ少し強く言いますねぇ~。何時までその強さが保たれるのかは見物ですね」
「まあ、お教えしましょう」
魔法大臣3人がステレオの様にそれぞれが一つの会話の流れのまま、発言する。
「「「私達はエルフが嫌いなんです!」」」
「へぇ~、何で?」
「エルフ達は、あなたも知っているでしょう。何やら魔力を持っております。『術』などと言いますね。あの者達が持ち、使う術は悪意の魔術ですっ!」
エルフが悪意って~?
「ある時に、一人のひよっ子エルフがこの「ジゴク界」に迷い込みました」
ひよっ子エルフ?
「その者は『邪』『邪』と呪文を繰り返し、繰り返し、私達の家屋、集会場、小店、多くを破壊して回りました。だからエルフは嫌い!」
「エルフは破壊の悪魔!」
「あれは悪魔以外の何者でも無い!」
ブルブルと魔法大臣達は震え出した。
「いや、オレ関係無いし」
「いえ、何を申すか!お前はエルフと通じている。ならば私達の敵である」
「敵だ!だから仕返しだ!」
「敵だ!」
「エルフに直接言えばいいじゃんか」
ブルブルと魔法大臣達は震え続けている。怒りが増している!?
「それが出来ないからお前を連れて来たんだ!」
「エルフは悪意の塊」
「『邪』の呪文を唱え、破壊に走る悪魔だ!」
「「「そんな危険な連中に会いたく無い!」」」
魔法大臣の3人は、ゼイゼイと肩で息をしながら、エルフの悪意を熱弁している。
(あれ?エルフが怖いのか?恐怖感を思い出して震えてるの?)
「魔法大臣、魔法大臣、落ち着いて下さい」
「ハアハア、おお、、、ふんっ」
「魔法大臣、スルガ トキヒコがこのような物を」
あっ、オレの『すあま』だ。
「これはスルガ トキヒコの持ち物。連れ来る時に一緒に持ちました」
「これは、何か?」
「人間のお菓子、食料の一種です」
魔法大臣は『すあま』に手をかざした。
「危険は無い」
「ポイントアップですか!」
「考慮します。どれ」
魔法大臣は3人揃って、すあまを摘まみ上げる。そのままパクっと。
あー!
「これはなかなかに品が有りますね」
「モグモグ、美味しいです」
「コレは加算ポイントに値いします。」
「「「もうひとつ上のレベルの魔術を授けましょう」」」
「ありがたき事」
「ありがたき事」
あいつら、オレの『すあま』食っちゃいやがった!
「コラー!」
トキヒコは巻き付かれていた白ヘビを『ブチッ』っと引き千切り立ち上がった。
「オレのすあまを勝手に食いやがってー!」
リーザとさくらに食べさせようと思ったのに!
魔法大臣の3人、それとトキヒコを連れて来た2人。
ビビクン!ドキドキドキ、、、震え上がった。、
「十何年か振りに食べられると思ったのに!オレのすあまを勝手に食いやがって、いい加減にしろー!」
ビビクン!ドキドキドキ、、、
(どうも『魔女』達は、誰かに叱られたり、怒られた事が無いので、トキヒコが怒りを露わにすると、おののき怯え出した。)
ここに集まった多くの魔女達も3人の「魔法大臣」とトキヒコを連れて来た2人の魔女と同様の反応をしている。
ビビクン!ドキドキドキ、、、
ビビクン!ドキドキドキ、、、
「これこれ、騒がしい事。どうされたのだ」
「ああ!魔王様!」
「魔王様が来られた!」
「魔王様!」
「魔王様!魔法僧侶!」
またまた、派手な服を異常に重ね着した女性(魔女)が3人現れた。
『魔王様』と呼ばれた者が真ん中の魔女だろう。今までの中で一番服を着過ぎだな。見た目が着込んだ服でポンポンになってる。パイナップルかラグビーボールが潰れたみたいになっちゃてるよ。良くぞアレで身動きが出来るなぁ。
それでやっぱり、棒。でもスゴいデカイ!バットの先にボーリングのピンが付いてるみたい。何か変。
「まま、ま、魔王様!ま、魔法僧侶!に、人間の男は女に弱いと聞いていたのですが、ここここの者は歯向かいました!」
「私達にい、いか、怒りのい、いし意志を向け、ばばば罵倒されました!」
さっきも言ってたけど、男が女に弱いって、、、一理有るけど、それ、誰から聞いた?どんな情報源?
『小賢しい男か。それ、犬になれ、ワン!』
『魔王様』と呼ばれたブクブクと服を重ね着した魔女は、バットの先にボーリングのピンが付いた棒をトキヒコに向け、振りかざした。
だからその変な棒をオレに向けるなよ。
その上、犬になれだって?ふざけんなよ!
「あれ?」
鼻がムズムズする。あれ?えっ?おい?
トキヒコの鼻と口は前方に伸び出す。
「おいおい、これじゃあ昔観た映画のオオカミ男の変身シーンだよ」
トキヒコの鼻と口は、前方に伸びつつあった。
「あー」
なんだ?手が、両手が前に、地面に着こうと、床に向かってる?
「魔王様の強力な変化の魔術だー!」
この場に集まった、多くの魔女達からヤンヤ、ヤンヤの喝采が上がる!
トキヒコは前屈みになりながら、両手を前に出しつつも、それ以上屈んでしまう事を拒絶し、踏ん張った。
「このまま手まで着いたら、本当に犬になっちゃいそうだ!」
トキヒコはもがいた。もがきながら、怒った。
「オレを犬にするだと〜、ふざけんなー!」
トキヒコは叫ぶと同時に、目の前に有る机に両手を叩き付けた。
『ドンッ!バリバリベリッ、バッシーン!』
トキヒコが叩いたテーブルは真ん中から砕け、トキヒコは前のめりに転ろぶ様に床に腹這いに倒れた。
色鮮やかな破片と塵が舞い上がる。
「なんだよ、コレ?」
トキヒコは服に付いた机の破片を払いながら立ち上がった。
犬に変化されていた状態は治っていた。
トキヒコの行動を見ていたジゴクの魔女達は、トキヒコの目の前でブルブルと震え上がっていた。
「私達の、、、私達の魔術が効かないー!」
「ま、魔王様の魔術が破られたー!」
「ひゃぁー!」
そう叫けび出すと、ジゴク界の魔女達は、正に蜘蛛の子を散らす様に、我よ我よと逃げ出した。
「ひゃぁー!人間も悪魔だー!」
「ヒィ〜」
「ちょっと、ちょっと、おーい」
トキヒコは逃げ出したジゴクの魔女達を追い、建物の外に出た。
「おーい、オレをこんな所に置いて、どっか行くなー!」
魔王様、魔法大臣、魔法僧侶、その他多くの魔女達が駆け出す、逃げる。
「魔女なら箒に乗るとか、瞬間移動とか、しないの?」
魔女達はバタバタと走っている。
そしてコレまたビビッドな大きな建物に逃げ込んだ。
「ハアハア、、、あ~恐ろしい、恐ろしい。人間も破壊の悪魔だったのか~」
「魔王様!」
「魔王様だ!」
「魔王様が帰られた!」
どうやら『魔王様』の居城のようだ。
「皆で入口に頑丈の魔術をせよ!何人足りとも侵入をさせるな!」
魔王様が叫びとも取れる声を出し、この建物内に有る、塔に駆け登って行く。
「おーい、開けろー!オレを元の世界に戻せー!」
あー、もう!
トキヒコが大きな扉を蹴ると、足が扉を貫通してしまった。
「あー、何でここは、どれもこれもこんなにも脆いの?」
トキヒコはバリバリっと扉を引き千切る様にして、中に入った。
『入口頑丈』の魔術を繰り出していた魔女達は、尻もちを着き、ブルブルと怯えていた。
「おーい」
トキヒコは建物内に有る塔を見上げた。
『魔王様』は塔の最上部に立ち、トキヒコを見下ろしていた。
「ここからが、私とあなたの戦いの本番です。覚悟しなさい!」
戦いの本番?
姿は見えないが、多くの魔女達の歓声が上がる。
「魔王様!」
「魔王様!」
「私達の魔王様!」
「悪魔の人間を成敗して下さい!」
「魔王様!」
「何だよ、成敗って!」
トキヒコは腹が立っていたので、『魔王様』と呼ばれる者が立つ、塔の台座を蹴った。
『ガラガラガラ~~~ガッシャーン!!』
塔は大きな音を立て、周囲が見えなくなる程の砂埃と共に崩れ去った。
ビビッドカラーに包まれていた塔は、キラキラと色鮮やかな埃を周囲に巻き散らした。
「魔王様!」
「魔王様!」
多くの魔女達が魔王様の安否を求め、ワラワラと動き回る。
「あちゃ~、やり過ぎちゃったか。いや、脆過ぎだろコレ?」
「魔王様!ご無事ですか!」
あ、居たの?魔法で瞬間移動とかワープとかで逃れたんじゃないのか?
「ごほごほ、、、スルガ、、、トキヒコ、、、ごほごほ、、、私の負けだ。参りました、、、ゴホゴホ、ゲハァッ」
参ったって、、、何か呆気な過ぎだろ。
「魔王様が、、、魔王様が降参した、、、」
「魔王様が参ったって、、、」
何か、異変が?魔女達の様子が、態度が何か変に盛り上がってる?
「魔王様が降参したぞー!」
「新たな魔王様の誕生だー!」
ええ?
「新魔王様が誕生した!」
怯えながら、魔法僧侶と呼ばれていた者がトキヒコに近寄る。
「こ、こここ今年は、ろく、60年に一度の魔法大会の年。あ、新たな魔王様、魔法大臣、まま、魔法僧侶をき、決める年です、、、あわわわ、、、」
「はあ」
「ま、ままま魔法大会は各自おのおのが、そ、その持つ魔術、魔法、ちか、ちか、力で競うぎょぎょう行事。相手を打ち負かし、ち、地位を得る大会です、あわわわ、、、」
「はあ」
「にににに人間スルガ とととトキヒコ、あ、貴方はディフェンディングチャンピオンでもあられ、5期に渡り私達ジゴク界に君臨せれて来た、現魔王様を負かしてしまった!」
「はあ」
「あ、あなた様が新魔王様です!ほ、ほ、誉です!」
「はぁ?何それー!」
「新魔王様の誕生だー」
「新魔王様!」
「新魔王様!」
魔女達の王様~!?
こりゃぁ一種のハーレムだな。




