ジゴクからの招待 狙われたトキヒコ
『すあま』素甘
上新粉をお湯でこねて蒸して、砂糖を加えて作るお餅のお菓子の一種。
食紅で色付けして淡いピンク色、巻き簾で巻いた形は上面にポコポコとした膨らみが付いている。
抑え気味だけどしっかり甘くて柔らかく、美味しい。
和菓子の一種で関東地方のお菓子。
私は幼少の頃に関東地方に住んでいた事が有り、親から与えられて、何度か食べる機会もあり、その味を覚えている。
その後、関東地方を離れて住み、いつの日からか、ケーキやクッキー、菓子パンなどのオヤツやお菓子を食べる事に刷り変わり、和菓子はすっかり食べなくなっていた。
ある日、ふと『すあま』が食べたいと思ったが、スーパーのパック入りの和菓子コーナーや実際の和菓子屋さんでも『すあま』は置いて無く、その時に関東地方の和菓子である事を知った。
名古屋の『ういろう』ともちょっと違う。(ういろうも好きよ)
食べられ無いと思うと、無性に食べたくなるのが人間の性。
でも今日はデパートに寄った時、たまたま関東地方の物産展が行われていて、関東の料理や食材、そしてスィーツ系の出店が並ぶ催し物が開催されていた。
今時はネット通販も可能だけど、こういうの好き。やっぱ実際に自分の目で実物を見て選びたいもんなぁ。
そこに『すあま』は、あった。ラッキーだ!
リーザの最近の趣味は、さくらに食べさせる洋菓子が中心のお菓子作りだが、今度これを見本に和菓子、すあまも作ってもらおう。
リーザ、すあまを食べてどんな顔をするかなぁ~
さくらは喉につっかえるかもな。(そうなった時は、リーザの『術』で事なきを得るだろう。)
あ~楽しみ!
そいつらは、ふらっと私の前に現れた。
ニヤニヤした顔でこっちを見ている。
そして臆する事無く、私に向かい歩み寄って来た。
知り合い?いや知らない顔だ。格好も派手な色合い。ビビットカラーとか言うのかな?そんな服を多く重ねて着て、髪は長く茶色、ピンク、グレーと三色ぐらいのメッシュが入っている。
そして二人とも、棒のような杖のような物を手にしている。打撃用の武器?
不審者。
いつからこのような呼び方で見知らぬ人を示す様になったのか。
でも目の前に現れた二人の女は不審者と呼んでいいだろう。そんな雰囲気を持っている。
「おいお前」
やっぱ、オレか。
でも私は、私の事を『おい』って呼んでくる相手には、まともに返事、対応をしない事をこの二人は知らないのだろうが。あ、蹴りが先かも。
「お前、エルフと交じわい、子を産んだな」
えー!何だ!!何者だ?!
「一度そのエルフとその子に会ってみたいものだ」
私の家族に興味を持つ者は多いと思う。
それは、エルフのリーザ、その子供であるハーフエルフのさくらを知ってしまったら、、、空想的な存在、珍しいと言う範疇を越えた存在。
今までも興味本位な目で見られていた事は幾度あるのかは分からない。
差別とまでは行かないにしろ、私達は運良く善意のある方達から守られていただけなのかも知れない。
それに甘んじていたのか。
「誰だか知らないけど、私の家族に構うな、手を出すな!」
取りあえず、相手の出方もあるが、相手が女であっても、殴ろう。今はそれ以外の対処方法が思い浮かばない。でも自分が今、相当興奮していると自覚出来てる冷静さを持っている事に、少し驚いているが。
「お前は少し勘違いをしているようだ」
勘違い?
「どういう事だ。妻や娘に興味を持ち、好奇な目でつけ回していたんだろう」
どうする?こいつら。
「いや、私達はお前を待っていた」
私を?
「人間スルガ トキヒコ。お前だ、用が有るのはお前だ。スルガ トキヒコ」
「私達はジゴク界から来た。人間スルガ トキヒコ、お前を連れに来た」
ええー!地獄って!死期が来たって事!?
「我らの世界であるジゴク界では、お前の噂で持ち切りだ!今回も誰がお前を連れてくるかで、大きな争いとなった。そして私達がその権利を得た。人間スルガ トキヒコ、お前を我らの世界、ジゴク界へ招待してやる!」
いや、地獄になんてオレは行きたくは無いのだが。
はっ!コレ、テレビのドッキリの撮影か?お騒がせユーチューバーの類いか?
そもそも傲慢で高飛車な態度の奴、嫌いなんだよなぁ~。その上、初対面だし。
面倒くさい。
「他を当たってくれ。オレは用無いし、家に帰るトコだから」
何か毒気が抜けた。久し振りの『すあま』なんだ。帰って皆んなで食べるんだ。
何か付き合ってられないなぁ。目立ちたがり屋か、配信するのか知らんけど、付き合ってられないよ。
「まあそんなに連れ無くするな。私達はジゴク界を代表してやって来たのも同位だ。だから何としてもお前を連れ帰らなければなら無い」
「お前は私達の獲物でもあるからな。逃す分けには行かない」
何かの番組のセリフの真似か何か?こういうの流行ってんの?
「私が獲物と言うならば、、、獲物は素直に捕まるのか?」
走って逃げるのもいいけど、この調子だとこいつらどこまでオレの事を知ってるんだろう。名前を呼ばれたし。家がバレてる?さて、どうする。
ジゴク界から来たという二人の女は妙な自信を持っているようだ、相当に腕力に自信が有るのか、それともこの二人の他に誰か仲間がいるのか?(撮影スタッフ?)いや、そもそもオレを招待(?)したって何のメリットが有るの?
「そうだ、獲物だ。獲物は逃げ回る。だからこうだ」
そう言った女が棒(?)を振りかざして来た。
「ヘビ!」
私は女が振りかざした棒の先から、突然に現れた大きな白ヘビに全身を巻かれた。
マジックショー?
「どうだ、身動き出来まい。苦しかろう!」
現れた二人の女は高笑いしてるけど、いや、何だコレ?!でも何か取れそう。コレ、千切れちゃうかもよ。
「どうだ、どうだ、苦しかろう!」
いえ、いえ、さほど、特に何も?
「よしっ!獲物は捕らえた。ジゴク界へ向かうぞ」
「えっ、ちょっとコレ」
取れるよ、と言おうとしたら、、、飛ばされた。
オレの鞄は?
すあま~




