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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら日記 10歳 冬休み 森の探検隊

さくらは起きた。

気持ちの良い朝だった。部屋の外から混じりっ気の無い、キレイな空気が入ってくるのが感じられる、気持ちのいい朝だ。

「さくら、おはよう。良く休めたかい」

「うん、今日も元気。あ、おはようございます」

枕元には、祖母の姿があった。

さくらはスッキリした気分であった。

でも、今まで感じた、経験した事の無い程の空腹感に襲われている。


奥の部屋から居間へと向かう。

「あれ?そういえば私、いつ寝ちゃったんだっけ?」

「あっ!」

昨夜の事を思い出した。

「さくら、おはよう」

居間には、優しい笑顔(控えめがちに見える)の祖父の姿がある。

「うん、おじいちゃんおはようございます!」

食卓のテーブルに目をやると、色取り取りのフルーツが盛り沢山だ。

「何コレ!すご〜い!」

「昨夜の兄弟が持って来た。さくらにと」

カスズタンとゾタッヅだ。

さくらは二人の名前の後ろ『ビエガック』を飛ばす事にした。

「二人が見付かって良かったよ。元気に走って来てくれたのかな。私も少しは役立ったのかな」


(あ~、ヨダレ出そう)

さくらはお腹が減っていた。実は今まで感じた事の無い程の空腹感。

ちょっと恥ずかしいので、声には出せないけど。

さくらは昨夜『術』を繰り出した。未知の力も合わせて、、、。

『術』はその者が秘める力。力は自身の気力、体力が原資と成る。

さくらは昨夜、その原資を一気に大量消費した。

だから空腹なのである。


「さくら、沢山食べ、礼に応えなさい」

祖父である『ホーリョンの狩の刃』は察していた。

さくらが大きな、高位の術を繰り出した為に、見た目の体力・内に秘める魔力が枯渇してしまった事を。

(わー、願ったり叶ったりだ!)

「うん!」

(へぇ~お礼なんだ。子どもながらに捜索隊に参加したからかな?)

食卓には、エルフの兄弟から届いた山盛りのフルーツに加え、祖父母が準備してくれたモノも多く並ぶ。

いい匂いのするスープ、丸くてホクホクのパン(みたいな物)、焙られているお肉、山盛りの野菜、(何か)煮込み料理。木で作られた2つのコップには(何かの)ミルクと透き通った水。

ちょっとしたパーティーだ!大ご馳走だ!

「食べるよー、沢山食べるよー!いただきまーす!」

さくらはモリモリと食べた。

祖父母はそんなさくらを嬉しそうに見守る。

「美味しい。これも、これも、全部美味しい!」

(あれ?でも私って、こんなに食べれたっけ?)

自分が驚く程の量を食べている気がする。

(まあ食べれるんだから、うん、大丈夫)

さくらは食べる事によって、『術』の原資となる気力と体力を回復させる。


食事が終わると、顔を洗い歯磨きをした。

エルフの里国にも水道設備が有る。

エルフの里国での生活の用となる水は、その水源であるジオジエラ湖より引かれる。

大きなゴミ、小さなゴミを取り除く為の各種の浄水設備やフィルターを通して、その水路は木組や竹類を利用した『水道パイプ』が里から里へ走っている。

浄水設備と言っても、流れる水が大きな石から小さな石、砂へと変わって行く、ろ過装置の様な物。

そもそも人間社会や環境に比べ、取り除かなければ健康に影響を及ぼす物質が無い。

それとは別の石組みで造られた地下配管が有り、下水設備となっている。

石組みの下水路を通った排水や汚水は、最終処分施設となるエルフの里国の南端に近い大きな池『チェルワォンニィチャルニィスタウ』に流れ込む。

この池には強力な微生物、バクテリアが生き、排水や汚水を分解する、自然環境の中で処理が行われている。

見た目は透き通る水を持つ、輝く池であるが、エルフの皆は、監視や管理をする者以外は近付かない。


「さくらよ、今日は如何いかがいたすか」

「うん、昨日のあの穴、埋めに行こうよ。あっ、でも埋めてもいいのかなぁ?ヘビトカゲが帰る場所が無くなっちゃうかな」

「ワゥズジィスズズルカの空の巣穴。昨夜、王はあの巣穴を埋めろと申した。ワゥズジィスズズルカが帰るとすれ、新たな巣穴は作られるであろうと。さくら、行きますか?」

「うん、行こう!」


さくらは揃って祖父と家の外に出た。

「ウメー!」

すこし離れた場所で、草や木の葉を啄んでいたトゥクルトドドゥーのウメが駆け寄って来る。

「ウメー、おはよう!」

さくらはウメの胸を優しくなぜた。

「あっ、ウメにご飯あげてないや。おじいちゃん、トゥクルトドドゥーのご飯はどうしたらいいの?」

(あちゃ~、失敗した。女王様に聞いておけば良かった、、、ウメ、怒ってない?)

「さくら、トゥクルトドドゥーの食は自らが求むる物を採る。心配は不要。また、樹に付いている物、根として大地と繋がっている物を採る。さくらが草や木、木の実を集め渡しても、トゥクルトドドゥーは採らぬやも知れん」

「ふぅ~ん。じゃあウメ、怒ってない?」

トゥクルトドドゥーのウメは空に向かい「キューン」と声を上げた。

(あれ?笑ったのかな)


さくらと祖父『ホーリョンの狩りの刃』はトゥクルトドドゥーのウメを従える形で森へと向かった。

昨夜のあの森へ入って行く。


森を進むと、多くエルフとすれ違う。

別の里から来た者、行く者、帰って来た者。食料や物資をお互いの物を運ぶ者。

森へと入り、生活の糧となる物を得る為に働く者、樹々を保全し守る者。

そんな、多くのエルフ達の動きを見て、さくらは想う。

(何で昨日は、あの兄弟以外のエルフに会わなかったんだろう)

実のところ、たまたまであった。


祖父と並んで歩く、森の中の行進は、1時間近くに及んだ。

「おじいちゃん、昨日の夜って、こんなに遠くまで来てたっけ?」

思いの他、遠い気がする。

「さくらは夜の森を駆け抜けたから。誰もさくらに追い付けぬ速さであった故」

(えー!?全然そんな感覚無かったのに、覚えて無いなぁ)

さくらは昨夜行った、高位の術のである『念話』。それも不特定多数に届ける『念話』は大きな魔力を必要とし、高位の術のもう一段上の魔力を持つ者が行う事の出来る『術』であった。

エルフの里国であれば、女王ユーカナーサリーの持つ魔力に相当する。

それとは別に、さくらは自身の内に秘めた、未知数である何かの力も発揮していた。

それはエルフを超える力。

しかし本人は気付いていなかった。


「さくらよ、昨夜のワゥズジィスズズルカの空の巣穴はこことなる」

さくらは、祖父が指し示す場所に屈み込んだ。

しかし既に誰かにより、巣穴の穴は埋められた後であった。

「この跡。ここにヘビトカゲの穴があったんだね」

トゥクルトッドドゥーのウメもさくらに続いて、巣穴のあった跡にクチバシを近付けた。

「ウメ、ヘビトカゲ、、、ワゥズジィスズズルカって、ウメの首ぐらい太いヘビなんだって。だからそんなのが居たら、ちょっと怖いなぁ〜」


さくらとウメが埋められた、ワゥズジィスズズルカの跡を覗き込む様に見ていたら、二人が現れた。

ピュッチュリークの兄弟、カスズタンビエガックとゾタッヅビエガックである。

二人は佇む様にし、さくらをじっと見ている。

「わーカスズタン!ゾタッヅ!」

さくらは駆け寄った。ウメもさくらに続く。


「さくら、救われた。我らは救われた、、、」

我らって、、、

「うん!果物たくさんありがとー!ほとんど食べちゃったけどね」

さくら自身が驚く食欲を発揮し、テーブルに並べられた朝食を殆ど平らげてしまった。

「さくら、礼を言うのはこちらの方。さくらが我らに礼を申す事は、違う」

なんか堅いぞ。

「何でー?」

「我ら兄弟救われた。命を救われた。さくらは我らの王と、父なる者、母なる者と同位の者」

何か変だよ、その考え。

「変?」

カスズタンビエガックはさくらの思いの表層に有る意識を感じた。

「そうだよ、変だよ。私は子どもだよ。だからさ、お友達になって下さい。私のエルフのお友達になってよ」

「おともだち、、、」

兄であるカスズタンビエガックより弟のゾタッヅビエガックは理解した。

「さくら、おともだち、だ。」

「そう、おともだちだよ!」


「そうなのか」

「そうだよ、子どもは変に悩んじゃダメだってお父さん言ってたもん。子どもは元気に遊ぶ事が仕事だって。それで仕事はサボっちゃダメだって言ってたもん」

「そうなのか」

「そうだよ」

「でもさくら、我ら兄弟は恩が有る。それは変えられぬ事。変えてはならぬ事」

「いーよ、いーよ。いつか今度は私が助けてもらう日が来るかも知れない。その時はちゃんと助けてね」

「そうか、、、そうだ、そうしょう」

「そうしてね」

押し問答のようだったが、三人は打ち解けた。

さくらとしての、人間、(ハーフだが)とエルフの交流が始まった。


「さくら、行っておいで」

「うん、おじいちゃんありがとう。ウメも一緒だから、ワゥズジィスズズルカの巣穴に落ちても大丈夫。ねっ、ウメ!」

トゥクルトドドゥーのウメは空に顔を向け『キュイィーン』と鳴いた。


「二人はいつも、森の中にいるの?」

「そうだ」

「いいなぁ~自由で」

「さくら、自由とは?」

うーん、何だっけ?

「うーん、いつも好きな時にさ、森の中を走り回る事かな」

「それではさくら、カスズタンビエガックとゾタッヅビエガックは自由では無い」

え、何で?

学校の宿題も無いし、こんなにキレイな森の中をいつでも自由に走り回れるのに?

「さくら、森には一人で入ってはいけない」


カスズタンビエガック、ゾタッヅビエガックは語り出した。

「森の中、危険が有る。多く有る」

「森が安全とは限らない。多くの生命が有り、我らもそのひとつ」

「うん」

「多くの生命には強き者も数多い。対峙してはならぬ者もいる」

「うん」

猛獣とかかな?あーヘビ、毒ヘビとか~

「だから多くを学び多くを知らなくてはならない。カスズタンビエガックとゾタッヅビエガックはいつも学んでいる」

森の中で遊んでいるのとは、違うのか。

「学ばなければ、我らは過ごせぬ。森の中を進めぬ」

「危険を知らなければならぬ、危険に対せなくてはならぬ」

学校だけが、勉強するとこでは無いのね。

「だからさくら、我らカスズタンビエガックとゾタッヅビエガックは自由では無い、多くを学べたなら、その自由に行けるかも知れない」

「うん、私も学ぶよ。でも、この森の事は教えて下さい」


「それでも、まぁあなた達兄弟は、二人揃って穴に落ちちゃったけどね」

カスズタンビエガック、ゾタッヅビエガックは黙り込む。

「わー真に受けないでよ、冗談だよ冗談」

「ジョーダン?」

エルフは言葉遊びを殆んど行わない。よって言葉は額面通り受け取られる事が多い。

(お父さん、冗談ばっかり言ってるのに、良くエルフの皆さんと付き合えるなぁ)


「さくら、やはりまだ礼がしたい。我らの場所へ案内する。特別な、場所だ」

「特別な場所?」

「そうだ、特別な場所」


今日のピェッチュリークの兄弟、カスズタンビエガックとゾタッヅビエガックは走らなかった。

さくらを案内する為に、周囲の警戒を怠らず。二人して、さくらを守るかの様に歩を進めた。

「さくら場所だ。我らの特別な場所」

そこはまるで舞台のスポットライトで有るかのように、強い木洩れ陽が射している。

木洩れ陽のスポットライトの中心には、小さな泉がある。

「すごくキレイな所だね!」

さくらの声を聞き、ピュッチュリークの兄弟は嬉しい顔になる。

小さな泉は湧き水により、キラキラと透き通る水を湛えている。

「ここはジエジオラ湖の始まりの水のひとつ。カスズタンビエガックとゾタッヅビエガックは、ここを守る事を決めた」

「うん」

「さくらも守って欲しい」

「うん、私も協力させて」

「きょうりょく?」

「あー、えーと、一緒にやるって事」

「そうしよう」

ピュッチュリークの兄弟に倣い、湧き水を飲んだ。トゥクルトッドドゥーのウメも飲んだ。

口が痺れる程、冷たい水。

「よし、ここを守る事は皆んなの約束!」

「やくそく?」

「あー、守ってやって行くって事!」

「約束だ」

「そう、ウメもだよ」

トゥクルトッドドゥーのウメは『キュギューン』と声を上げた。




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