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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら日記 10歳 冬休み 森での出会い

「『愛馬ウメに跨る勇者さくら』ウメ〜、今から私達の冒険譚が始まりだよー!」

エルフの祖父母の家に向かい、トゥクルトッドドゥーのウメの背に乗るさくらは意気揚々だ。

ウメに跨る視線は高く、エルフの里国の風景と合わせ、今まで見た事の無い景色をさくらの瞳に映し出している。


そんなさくらだが、実は花の王ユーカナーサリーにエルフの祖父母の家への道が分かると言ったが、細かな道順までは分かっておらず、実の所その位置は大体分かる程度で、正確に把握している分けでは無かった。

見知った風景があれば、雰囲気で行き着けるだろうと。まあ何とかなるでしょう、と。

父親の変な、根拠の無い行動判断基準を受け継いでしまってるようだ。


見覚えた風景や山を目安に方角の感覚は完璧だったが、道中の距離感に関しては曖昧であった。

元々心配は薄かったが、ウメと一緒に行ける事となり、それは心強かった。

ウメの背に揺られながら

「あっち」

と時々方向の指示を出す。

しかし、森林部に入ると目安や目印となる山が目に入らなくなり、進む方角に対して少し不安になって来た。

「あれ?もうそろそろ森を抜けれると思うけど、着いてもいいのに?」

空はまだ十分日中の時間帯で明るいが、森の中での木漏れ日をさくらは募って来た小さな不安から薄暗く感じ始めていた。

「道、あってるよねぇ」

誰に言うでも無く、さくらは自分に問い掛けた。


「ガサッ!」

それはさくらとウメの前に飛び出して来た。

ウメは瞬時に四つ脚を広げ体勢を低くすると頭を下げ、敵対する者に対する迎撃体勢を取った。

トゥクルトッドドゥーは大人しく賢く従順でエルフを傷付ける事は皆無である。

大きな体で草原を時速100キロ近くで疾走する姿は『草原の疾風』と呼ばれる。

しかし同族同士での縄張り争いや自身に向かう外敵に対しては『草原の嵐』となる。

その戦闘能力も高く、10頭程の集団に襲われでもしたら、小さな里は僅かな時間で跡形も無く消し飛んでしまうだろう。

ウメは咄嗟に戦闘態勢を取った。

自身が背中を預けた者を一番に守るのがトゥクルトッドドゥーの本能で有るが、友であるさくらを守る事はトゥクルトッドドゥーの本能を上回る程の位置付けとなっていた。加えてエルフの王から背中の者を守る勅命を受けている意識が有った。

「ウメ!ダメ!」

さくらは、トゥクルトッドドゥーのウメが突然の物影に反応するよりも早く、相手の事に気付き、相手の存在も理解した。

身構えるウメの前に現れたのはエルフであった。

見た目はさくらと近い二人の子どものエルフ。

一人は身構えたトゥクルトッドドゥーに驚き恐れ、両手を前に突き出し、尻もちを着いていた。

もう一人は尻もちを着いた者とトゥクルトッドドゥーのウメとの間に立ち、その目線はさくらを見ていた。

決して攻撃的では無く、あくまでも挨拶に訪れた感じだ。

(子どもだ、子どものエルフ!初めて見た!わぁ〜居たんだ、子どものエルフ!)

さくらはウメの首元にそっと触れ、ウメが興奮しないようになだめた。

「ウメ、降ろして」

落ち着きを取り戻したウメは、ゆっくりと四つ脚を折り、さくらが降りられるであろう体勢を取った。

「ありがとうウメ」

さくらはドキドキと胸が高鳴る。

さくらはウメが立ち上がるのを待ってから、目の前に突如として現れた二人の子どもエルフに近寄った。

「こんにちは」

(あー。緊張する〜)

さくらは自分の言葉が通じているのか否かのお構い無しにぺこりお辞儀をし挨拶した。

頭を上げると照れ臭そうにした顔が二つ並んでいた。

「わたしは『さくら』。あなた達は?」

何となくだが、名乗ったニュアンスは通じてるようだ。


「カスズタンビエガック」

「ゾタッヅビエガック」

まだ子供である。『呼称』なんて持っていない。


(何かお話ししなきゃ。そうだっ)

「ちょうど良かった。お願いがあるのだけど」

二人の子どもエルフは一瞬お互いを見合った後、さくらに向き直った。

「ホーリョンの狩りの刃とホーリョンの紡ぐ者のお家が有るトコ分かる?」

さくらは、自分が道に迷っている事を自身に対して認めた。


「ホーリョン、、、あなた『越える者』子ども?」

兄であるカスズタンビエガックは、日本語で返事をして来た。

さくらは驚いた。

(言葉が通じたし、この子しゃべった)

「越える者って?」

弟のゾタッヅビエガックは兄であるカスズタンビエガックに聞いた。

「おまえ知らないのか?何時も王の側に立つ者だよ」

弟ゾタッヅビエガックはピンとは来なかった。

「おまえはいつもどこ見てるか分かんないからなぁ」

兄カスズタンビエガックはそんな弟に呆れていた。

この兄弟の会話はエルフ語だ。

(でも何か、分かるわ。大体だけど二人が言っている事が分かる)

(お話しが出来る!言葉が通じた!)

実際、子どもエルフの二人はさくらの思考を感じていた。言葉も早々に理解・解析し使用した。

実はさくらも同様の反応をしていた。本人は気付かぬままに。

(でも、ママって有名人?)


「行こう。いいよ、大丈夫」

カスズタンビエガックは突然に走り出した。

「あっ、待ってよー」

ゾタッヅビエガックも慌てて兄を追って走り出した。

「あーもう!それじゃぁ案内になんないよー」

と、さくらも走り出した。

先を行く二人の足はすごく早く、さくらが追い付けそうにない。

人間社会でのさくらは、かけっこ、徒競走で男女に関係無く負けた事が無かった。そんなさくらが追い付くどころか、離されてしまう。

「あー、待ってよー」

口を開くと、走る力が弱まってしまう。

「速いよぉ~」

『ガシッ』とさくらは咥えられた。

体が浮いたと思ったら、ウメの背の上に乗っていた。

「ウメッ!」

さくらはウメの首に掴まった。

「ウメありがとう!ちょっと~待ってよ~」


子どもエルフの二人は、走る速度を落とす事無く、豊かな森の中を駆けた。

時には跳び、そしてまた駆けた。

さくらはトゥクルトッドドゥーのウメに乗り、走る二人の後ろ姿を追った。

自分と同じ様な背丈のエルフの子どもが目の前を走っている。自分と同じ様な子どもエルフが居る事に嬉しくて嬉しくて、たまらなかった。


程なくして森を抜け出た。

二人の子どもエルフは速度を落とした。さくらもウメから降り、先を歩く二人に並んだ。

カスズタンビエガックは歩みを止めると、前方を指差した。

見覚えのある大木が並んでいる。

「あれ3本、入り口。ホーリョン」

(大分近くまで来てたんだ!)

「ありがとう。嬉しいわ、あなた達に会えて」

二人の子どもエルフは笑っている訳では無いが、照れて嬉しそうにしている事は感じるし、分かる。

「あなた達の里はどこなの?」

「カスズタンビエガック、ゾタッヅビエガック、里はあっちだ。向こう」

カスズタンビエガックはそう言うと森を指差し、続けて森の上を指した。

「遠くまで来させちゃったの?」

わざわざ走って道案内してもらって、何か悪かったな。

「この森カスズタンビエガック、ゾタッヅビエガックいつもここ。庭、だよ」

「また会える?」

「カスズタンビエガック、ゾタッヅビエガック、ここ、森。会える」

カスズタンビエガックは弟の肩に手を掛けると森へ振り返り、森の中へ戻り出した。

「ありがとう、バイバーイ」

手を振るさくらの仕草が珍しいのか、斜め後ろ向き(さくらを見ながら)歩いていた弟のゾタッヅビエガックは、少し戸惑いながら手を振り返した。

そして、ブンブンと手を振る力が増して行った。

でも、兄のカスズタンビエガックが小走りに成ると、ブンブンと手を振りつつも慌てて兄を追い掛け森の中に消えて行った。


「カスズタンビエガック、ゾタッヅビエガックありがとう」

でも、、、呼び難い名前!ちょっと長いし。

さくらは3本の大木へ向かい、トゥクルトッドドゥーのウメと並んで歩いた。

「ねえウメ。ここまでの道覚えた?」

トゥクルトッドドゥーのウメは低い声を出しながら、大きく首を頷く様に下げた。

「よし、よし」

さくらはウメの胸あたりを優しく触れた。

3本の大木を回り込むと、ホーリョンの里だ。




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