畑荒らしのドラゴン
ルナと共に鍛錬に明け暮れていたある日、村にある問題が起こっていた。
「ったく!またあのドラゴンだ。ここ最近多くないか?何度畑を荒せや気が済むんだ?」
俺の村、リズの村は立地や環境の良さで作物の育ちが良い。そのため畑や田んぼが数多く存在している。新鮮な作物を求め町からも人が来るほどだ。その田畑がここ最近何故か知らないが、ドラゴンに荒らされまくっているのだ。村にとってそれは大きな打撃で大事な田畑を潰されては元のこもない。
「みんな、今から村の中央に集まってくれ!今からドラゴンの対処について話し合おうと思う」
村の村長のイレンがいつものおちゃらけモードではなく、真面目モードで村の人々に呼びかけた。このイレン、普段はそこまで頼りになる印象というものはなく、村長っぽくないと言えば正解なのかもしれない。だが、こうした村の危機には真っ先に駆けつけ村のために尽力を尽くす少々切り替えの激しい男だ。
俺たちもちょうど朝の鍛錬から帰ったところだった。まぁ俺には関係ないだろうと思って家の方へ足を進めたが、何故か一歩も進まなかった。正確には進もうとしたが、何者かの手が俺の裾を掴んで離さなかったために、進まなかったのだ。まぁこんなことするのは一人しか思い当たらないのだが。
「何だルナ?帰らないのか?」
「ねえセレン?私達も行ってみない?」
「どこに?」
「決まってるでしょ!そのドラゴンのところによ!」
やっぱりこうなるのか••••••。村にドラゴンなんていう話が入ってきた時点でこのおてんば娘はじっとしてなんていられるはずがない。まだ2年弱の付き合いだが、ルナの思考や行動などは大体予想がつくようになった。まぁ、ルナがただ単に単純だということもあるが。
「まだドラゴンのところに行くと決まったわけじゃないだろ?勝手に行くとまた怒られるぞ」
「ふ〜ん?でも行かないとは言わないんだ?」
「お前は俺が行かないって言っても結局付き合わすだろうが!」
やばい。またルナのペースに飲まれるところだった。だが今回はそうはいかない。そんな問題にいちいち関与するなんて面倒だ。俺はのんびりしたいのだ。
「俺は行かないからな?」
「へ〜いいのかな?そんなこと言っちゃって。私知ってるんだよ。この前セレンが魔法で村の農具一式消しとばしちゃったこと」
「な!?お前、何でそのこと?」
「気づいてなかったの?私時々、セレンの魔法の特訓見に行ってるんだよ。それはその時知った」
「ぐ••••••」
まさか見られてるとは思わなかった。完全に一人だと思っていたからだ。あれは一月ほど前、俺は村の外れでいつも通り、魔法の特訓をしていた。だいぶ魔法の制御もできるようになり、使える魔法の数も増えてきた。それが仇となったのか、少し調子に乗ってしまった。大丈夫だろうと上級魔法の【豪火炎】を使ってしまったのだ。
一応威力を考えて無詠唱型にはしたのだが。それでも上級ということもあり、その場全域を一気に消しとばしてしまったのだ。その後バレないように修復魔法を使って元に戻したのだが。それが見られていたとは••••••。魔法というのは詠唱型と無詠唱型がある。それぞれメリットとデメリットがある。それは下記の通りだ。
メリット デメリット
詠唱型 魔法の威力が高い 詠唱に時間がかかる
魔法の不発が少ない
無詠唱型 すぐに魔法が打てる 魔法の威力が弱い
相手の不意をつける 不発する可能性がある
このように使い方によっては場の状況が一転する。
「お前、俺を脅すとはいい度胸だな••••••」
「まあ気にしない気にしない!さ!早く行こ!」
「••••••結局こうなるんだな」
俺は今後ルナに勝てる日が来るのだろうか?そんなことを思いながらルナの後を渋々ついてくのだった。
「兄さん?どこか行かれるんですか?」
俺たちが森に向かおうと、村から出ようとした時俺の後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ん?ルージュか。お前こんなとこで何やってるんだ?」
「それはこちらのセリアです。ルナさんと兄さん2人してどこに行くつもりですか?」
「いや、そのな••••••これからまた鍛錬をしようと••••••」
「先ほど行ってきたのではなかったのですか?」
「ぐ••••••」
俺はどうもこのルージュにも勝てないらしい。俺の全てを見透かされてる感じだ。ルージュは俺の1つ下の妹だ。俺と同じ銀色の髪を肩まで伸ばしており、銀色の双眼が髪とマッチしている。見た感じだとものすごく可愛い。そのままにしてればの話だが。••••••なんかルナの時もこんな感じだったような••••••。ルージュは4歳とは思えないほどしっかりしているのだ。家でも、家事でもなんでもある程度はこなせる。何か変だと思って俺は前にルージュのステータスを【神の眼】で覗いたことがある。
この【神の眼】は未来を見るだけでなく、相手の能力やスキルなども見ることができる。その時見たのはスキルだけだったがルージュは家事スキルを持っていたのだ。
それがあるなら問題なく家事をこなせてもなんらおかしくはない。将来はいいお嫁に••••••いやいや!まださすがに考えるのは早すぎるだろ!
「私達今からドラゴンに会いに行くんだ!」
「おい!何さりげなくバラしてんだよ!誰にも言わない約束じゃなかったのか?」
「だって別にルージュならいいかなと思ってさー!」
「いや、だからってな••••••」
「あのーまるで話が見えないんですが••••••」
俺たちはルージュにことの経緯を細かく説明した。そしてさりげなくルナを止めてくれとルージュに頼んだ。だが、
「別に大丈夫ではないですか?兄さんもいますし」
「何が大丈夫何だ?何が?俺としては面倒でしかないんだが?」
「兄さんならそんなドラゴン、コテンパンにやっつけられますよ!だからルナさんに何かあっても大丈夫だと言ったのです!」
「いや••••••買い被りすぎだって」
ドラゴンなんて相手にしたことない。そんないかにも危ないところに足を踏み入れるのは自殺行為に等しい。いくら鍛錬しているとは言え制御できるかもわからない状態で戦うのは正直賭けに近い。それにまだどんなドラゴンかもわからないのだ。情報もない状態で戦って勝てるほどドラゴンはあまくなーーーー
「ねえ!せっかくだしルージュも一緒にこない?ドラゴンに会あるなんて滅多にないよ!ここで会ったのも何かの縁だし一緒に行こうよー!」
そんな、俺がドラゴンに対して考えてるうちにルナがいきなり衝撃的なことを言った。
「わたしもですか?わたしはえっと••••••」
ルージュは少し迷った。そして俺の方を見ながら言った。
「兄さんはわたしを守ってくださいますか?」
じっと俺を見つめながらルージュは俺の言葉を待った。
「守るも何も別にルージュは行く必要ないだろ?俺だってルナに巻き込まれただけ••••••」
「質問に答えてください!兄さんはわたしを守ってくださいますか?」
今度は少し声を上げてルージュが言った。いやそんなこと言ったってな••••••ってこのままじゃ一向に終わらないだろう。仕方ない、自信ないが••••••。
「ああ!俺はルージュもルナも守るよ!ドラゴンなんて目じゃないんだから!」
「本当ですか?兄さんに守られているのなら安心です。それならわたしも行きます!わたしもドラゴンには興味あるので!」
「決まりね!じゃあ早速しゅっぱーつ!!」
「••••••やれやれ」
先が思いやられるが、さすがに女の子を怪我させるのは男としてない。また、これもまたいい経験だと自分で思っている。
「これはこれで、楽しいな」
もはや最初に感じた面倒くささは消えていた。その代わり、ドラゴンがどんなものなのかという探究心が芽生えていた。そして俺たちはルージュを含めて3人でドラゴンのいる森へ入った。
妹のルージュの登場です。
前回は全く触れられなくてすみません。
次はドラゴン編です。




