1 神の力! 乱入!ギリシア代表ファイター!
――深夜、シン・江東区第二埠頭。
巨大なコンテナ船が死神的に並び、海水の音が小さく響く。
この時間帯に人気はなく、しばしばヤクザやチンピラ、悪代官たちによる違法取引その他悪事が行われる場所だ。
だが、この日はいつもと違い――謎の集団に囲まれ、埠頭の端に追いやられた男の姿があった!
「ハァ……ハァ……!」
その男は出血する脇腹を押さえ、息を切らす。
片方の手には西洋的な剣。
身体の動きを阻害しない程度にまとわれた装甲には多数の損傷が見られる。
そう、彼は騎士である。
顔立ちはまだ若く精悍であるが――出血によるものだろうか。
顔面蒼白。
死相が見える。
騎士を囲む集団は皆魔法使い的なローブをまとっており、実際魔法使いだ。
それぞれに握る杖の先端が攻撃的に光り、その全てが彼に向けられている。
「……不覚!」
コイン落としゲーム機のごとく、魔法使い集団が近づき、騎士が下がる。
しかし……もはや後はない!
「ふっふっふ! 貴様の命運もこれまでよのう……!」
魔法使い集団の中から進み出る恰幅の良い頭巾姿の人物。
顔は隠されているが、声からして初老の男。
着ている魔法使い的ローブは他のそれより豪奢であり、身分の高さが伺える。
「大人しく小娘の愛犬でいればよいものを……!
こそこそと我らを嗅ぎまわったのが運の尽きよ!」
「黙れ! 国に仇なす外道め!!」
若き騎士は覚悟を決め――剣を両手で握り直し突撃をかける!
「貴様の首! 刺し違えてでも――」
チュドン! チュドン! チュドン!
チュドン! チュドン! チュドン!
魔法使い集団から一斉に放たれる殺人光弾!
その全てが騎士に直撃!
砕け飛ぶ装甲!
撒き散る血液!
「姫さ――」
チュドオオオオオオオオオオオオンンンン!!!
光弾の爆発に吹き飛ばされ、騎士は海へと投げ出される!
海中に沈みゆく騎士へ執拗に撃ち込まれる光弾!
水柱が悪魔的に噴き上がる!
たっぷり五分以上の時間をかけてようやく頭巾男が攻撃を制する。
再び静けさを取り戻す海面!
「あれだけの傷だ……生きてはおれまい!
ぬふふ! ぬはは! ぬはああああああっはっはっは!!」
哀れ! 若き騎士は死んでしまったのであろうか!?
海の藻屑と化した彼の名は――魔法騎士・風海光太郎!
魔女っ娘王国代表ファイター、プルプル・プルリンの護衛隊長であった!
◆◆◆
「馬鹿な……! 魔法耐性を持つこのワシが!?」
「破ァッ!!!」
チュドオオオオオオオオオオオオンンンン!!!
木っ端みじんに砕け散る埴輪生物!
『勝負あり! 行田市代表敗れる!
勝者は魔女っ娘王国代表、プルプル・プルリンだああああああああ!!!』
観客がワーワー!
◆
忍者代表ファイターを倒し二回戦を突破した神風トオル。
シン・巣鴨を離れて特訓中であったため、見られなかった試合を記録映像にて確認中である。
使用しているのはコロシアム内の地球代表専用会議室。
実行委員会職員のオカとホシが神風トオル一行にお茶を注いで回る。
「今の決め技……ただの正拳突きではあるまい。おそらくは触れた箇所を爆破する魔法の一種!」
「なかなかいい読みね。ナイト埴輪・ヴァニワーは実際炎や水属性の魔法には耐えていた。
けれど物理的な爆発を伴う攻撃には耐え切れなかったようね」
解説を加えるのは謎のメガネ女子高生、月宮殿ウメコである。
「それぞれ勝ち上がったのは――日本、ジュラ紀、今見た魔女っ娘王国よ!」
(日本代表サムライ丸……あの鬼気迫る戦いののちに俺のところへ来たのか!)
シン・青梅奥地、ブループラム霊山での特訓を思い起こす神風トオル。
あの時サムライ丸が現れなければ――新奥義の開眼は成らなかったであろう。
「そして……問題の試合はこの次よ!」
リモコンを操作し、チャプターを進めるウメコ。
映し出されたのは――
◆
『地球ファイト決勝トーナメント一回戦、いよいよ最後の試合となりました!
東門から入場するのは優勝候補の一人!
本大会最高齢のこの男だァー!!』
ふよんふよんふよん!
アグラをかいたまま空中浮遊する男が入場!
インド代表ファイター、インド・カレーまんである!
頭部はターバンを巻いた巨大なカレーまん!
半裸でターメリックカラーのボディを晒す!
スィーっと空中を等速直線運動!
鍛え上げられた反重力ヨーガ細胞による物理現象である!
観客がワーワー!
『続けて西門から入場するファイターは――!』
ピカアアアアアアアアアアアアアア!!!
西門が開かれた瞬間!
まばゆい殺人的な閃光が闘技グラウンドに差し込む!
一般庶民の眼球能力では直視するのも困難な明度!
そのUFO内部的光源を背にヒタヒタと入場する人型生物!
まるで宇宙人の登場的な光景を思わせる生命体!
その名も宇宙人代表ファイター、グレイ!
ゆっくりとおぞましき歩行行為!
どこからどう見ても地球人ではない!
観客がワーワー!
『さあ、注目の一戦であります!
両者とも軽量級のファイター!
インドの神秘的パワーと宇宙の高度文明パワー!
果たしてどのような戦いになるのか!?
我々一般庶民には全く想像がつきません!!』
観客がワーワー!
「ナマステテテテ! さすがのワシも宇宙人と戦うのは初めてじゃ!
長生きはするもんじゃのう……!」
「……! ……!」
睨み合う両者!
悪魔的殺人オーラがぶつかり合う!
「見合って、見合って!」
マスター行司・タチカワが軍配を構える!
高僧、ゼンメツ和尚が釣鐘を鳴らすため、巨大な丸太をスイング!
――その時!
「待てええええええええいいいいいいいいいいい!!!」
ピタリ!
何者かのバカでかい声によりゼンメツ和尚がスイング中止!
釣鐘までの距離、実に0.01ミリ!
釣鐘の荘厳的音色は響かない!
マスター行司・タチカワが軍配を下ろす!
見よ! 上空からコロシアム内に落下する物体あり!
鳥か!? 飛行機か!?
否! それはなんと米国の垂直離着陸機、オスプレイである!
チュドオオオオオオオオオオオオンンンン!!!
闘技グラウンドの中央に墜落、爆発炎上!
インド・カレーまんとグレイの間で黒煙を吐く!
炎上する機体からヌウっと現れるバカでかい声の主!
「ホワッツ!? 奴は……まさか!?」
コロシアムを見渡せるように高いところに設置されたVIPルーム内。
そこでくつろいでいたプレジデント・ピザフライが驚愕!
思わず食べていたハンバーガーを床に落とす!
「グワッハッハ! そのまさかよ、ピザフライ!!」
「ギリシア代表ファイター、キングゼウスゴッドカイザー!?」
「いかにも! この地球ファイト、優勝するのは俺様よ!!」




