3 科学と原始! ドイツ帝国対ジュラ紀!
地球ファイト決勝トーナメント二日目。
シン・巣鴨コロシアムではBブロックの一回戦が開始されていた。
第一試合はドイツ帝国対ジュラ紀!
「アンギャアアアアアアアアアアアア!!」
ジュラ紀代表ティラノサウルスの悪魔的咆哮!
巨大な口には無数の鋭い牙!
「フン! 隙だらけだぞ野蛮人!!」
対するはドイツ帝国軍のエリート将校、バウム・クーヘンツェン!
開いた口を狙いパンツァー・ファウストを発射!
体内からティラノサウルスを爆殺せんとする!
――と、次の瞬間!
ゴアアアアアアアアアアアアアア!!!
ティラノサウルスの口から火炎が放射される!
対戦車グレネード、パンツァー・ファウストは炎に飲まれ消滅!
「何いいいいいいいいい!?」
恐竜博士である諸君ならティラノサウルスが火炎を吐くことはご存知であろう!
古代生物に興味のないクーヘンツェンは油断していた!
「ぎゃああああああああああああ!!」
哀れ! クーヘンツェンは地獄の業火に飲み込まれる!
一瞬にして肉体が炭化!
勝負あったか!?
――答えは否!
ゴロゴロと転がり火炎放射から脱出する黒焦げクーヘンツェン!
「おのれ! 火を吐くとは野蛮人の極み!
だが所詮は爬虫類の極小脳みそ!
見よ! ドイツ帝国の圧倒的科学力をおおおおおお!!」
黒焦げクーヘンツェンがフトコロから謎の注射器を取り出し、頸動脈に突き刺す!
蛍光レッドの怪しい薬品が体内へと送り込まれる!
すると――炭化した細胞が甦り、黒焦げから通常カラーへと変化!
おお、なんという回復力か!
「これぞドイツ帝国の科学力! 人類の英知!
恐竜ごとき古代生物がああああああ!
最新の科学を操る私に勝とうなど笑止いいいいい!!」
クーヘンツェンがさらに注射器を取り出す!
「この私にかかれば――ヤーレン・ソーレンの筋肉も!」
クーヘンツェンが注射器を腕に打ち込み、蛍光ブラウンの薬品を注入!
おそロシア代表ファイター、ヤーレン・ソーレンのごとく筋肉が悪魔的に肥大・高密度化!
「ルナツキ・ウサコのスピードもおおおおおおお!!」
クーヘンツェンが注射器を足に打ち込み、蛍光ブルーの薬品を注入!
月代表ファイター、ルナツキ・ウサコのごとく脚力が悪魔的に強化され、超高速移動を開始!
「簡単に手に入るのだああああああああああ!!!」
バウム・クーヘンツェンは軍人であると同時に優秀な科学者!
開発した様々な肉体強化薬品を使用し、自在に戦闘スタイルを変えるのだ!
「アンギャア!?」
ティラノサウルスの周りを超高速で回るクーヘンツェン!
「この動き、捉えきれまい!!
最強の筋肉と最速のスピードを併せ持つ私が!
貴様を一撃で葬ってくれるわああああああ!!」
クーヘンツェンがティラノサウルスに突っ込む! レールガンのごとし!
人間では反応できぬ速度!
人間では耐え切れぬ破壊力!
――しかし!
ベシャアアアアアアアアアアアア!!!
「……!!??」
ティラノサウルスの巨大な尻尾がレールガンを叩き落とす!
尻尾の下敷きとなり地面にめり込むクーヘンツェン!
周囲に飛び散るモザイク必至なグロテスク物体!
「ゴボッ! ば、バカな……!?」
血反吐を4リットル吐き出すクーヘンツェン!
ジュラ紀セコンドテント内で笑みをこぼすバイオ三葉虫!
「キキキキキ! なんと愚かな!
いくら肉体を強化しようと……所詮はヒトの範疇!
恐竜の身体能力は人類の比ではないわ!」
ズシン! ズシン!
尻尾を戻しクーヘンツェンに近づくティラノサウルス!
とどめを刺すつもりだ!
「ぐ……な、なんの! この程度の傷などすぐに回復……」
肉体の八割が潰されたクーヘンツェン!
フトコロの注射器に手を伸ばすが――
「アンギャアアアアアアアアアアアア!!」
「――!?」
ガブリ!!!
バウム・クーヘンツェンは食べられてしまった!
これぞティラノサウルスの必殺技、スーパー捕食だ!
モグ! モグ! モグ!
「ぎゃああああああああああああ!!!」
ゴクリ!!!
哀れ! 常軌を逸したドイツ帝国の科学技術も――圧倒的な原始パワーの前では無力!
ジュラ紀代表ファイター、ティラノサウルスの勝利である!
観客がワーワー!
◆◆◆
モグ! モグ! モグ!
ゴクリ!!!
「んーおいスィー!」
満面の笑みでおにぎりを頬張る元気な美少女JK、神風ルリ!
シン・青梅奥地、ブループラム霊山のジャングルにて探検隊は休憩を取っていた!
「隊長! できましたよ!」
カップラーメンを神宮司ゴウショウに差し出す神風トオル!
麺をかき混ぜ、スープを口にするゴウショウ!
「おおい!! ……うまいなあ!!!」
化学的チキンエキスが五臓六腑に染み渡る!
「んん~ジャングルで食べるカップ麺はうまいなあ!!!」
「今日の朝は早かったですからね! お腹も空きましょう!」
道中でオウメ・デスタランチュラ、オウメ・デスベアーに遭遇した探検隊!
この後も危険生物に襲われる可能性は極めて高い!
しかし! 長時間気を張り続けていては心身が著しく摩耗する!
その結果危機センサーが鈍り、かえって危険な状況に陥ることになる!
探検には適度な休憩が必要不可欠なのだ!
モグモグとほっぺたを膨らませる神風兄妹を見つめる神宮司隊長!
その目は、子を想う親のようであった!
(若者よ……たくさん食べろ!
腹ペコのままでは何事も成せぬ!
間違ったっていい! 失敗したっていい!
お腹いっぱい食べて! 何度でも立ち向かえ!
それが成長なのだ……!)
神宮司隊長のモノローグが終わった――その時!
「んぐう!?」
五つ目のおにぎりを食べ始めたところでルリが青ざめる!
具のタラコがのどに詰まったのだ!
このままでは命にかかわる!
「ルリ!? いかん!! はああああああああああ!!」
神風トオルがルリの胃袋目がけ連続正拳突き!
内臓を圧迫し、のどの異物を吐き出させる!
スポーン!
ルリの口から遥か彼方へ飛んでいくタラコ!
「ぷはあ! ありがとうございまする、兄上!」
間一髪! 神風ルリの命は薄皮一枚でつながった!
「おい! ゆっくり食べないか、おい! よく噛め!!」
「すいません隊長!」
寿命が縮まる思いをした神宮司隊長!
しゅんとしておにぎりを噛む回数を増やすルリ!
ジャングルの中で警戒しなければならないのは野生動物だけではない!
我々の首を刈らんとする死神はどこに潜んでいるのかわからないのだ!
「まったく……! いいか!
休憩中とはいえ、己の危機センサーを完全にオフにしてはならぬ!
緊張感を忘れるな! 緊張感を!!」
「「はいッ!!」」
ルリの危機に思わず立ち上がったゴウショウ。
隊員の緩んだ気を引き締める、実に隊長らしい言葉である。
危機センサーを働かせていれば、いかなる危険も未然に防ぐことができるのだ。
再び腰を下ろすと――尻に伝わる違和感。
先ほどまで座っていた座布団ではない!
巨大な丸太のような――それでいて生き物のような感触!
「――――!?」
一瞬にして血の気が引く隊長!
ゆっくり背後を振り返ると――!
「パアアアアアアアオオオオオオオオンンン!!!」
そこにいたのは超狂暴悪魔的野生動物!
体長15メートル! 体重13トンのオウメ・デスインド象!
神宮司隊長が腰かけたのはその長い鼻であったのだ!
「いかん、逃げるぞ! さっさとおにぎりを食べろ!!」
「でもゆっくりよく噛んで食べないと……!」
「馬鹿者! 噛まずに飲みこめ!!!」
隊長がルリの口に無理やりおにぎりを突っ込み、探検隊は走る!
「モガモガ~~!!(苦しい~~!!)」
「なんて恐ろしい生物だ……!」
走りながら背後を振り返る神風トオル!
猛スピードで追ってくるオウメ・デスインド象!
そそり立つ鋭い牙!
大木のごとき太く長い鼻!
動くものは全て捕食する化け物である!
果たして! 我々は無事逃げ切ることができるのであろうか!?




