4 魅惑の殺人お遊戯! 幼稚園対日本!
シン・巣鴨コロシアム闘技グラウンド。
対峙するのは幼稚園代表、魔野ゆかりと――日本代表、フジヤマ・サムライ丸。
決勝トーナメントBブロック一回戦第二試合である。
「「キャーキャー! ワーワー!」」
幼稚園セコンドテント内ではしゃぐ幼稚園児!
魔野ゆかりが所属する土星幼稚園よもぎ組の学友たちだ!
「さあ、みんなで応援しましょうね!」
「「ハーイ!!」」
土星幼稚園教諭、柚上マリコ28歳人妻が音頭をとる!
「ゆ・か・るぃ! ゆ・か・るぃ!」
「「ゆ・か・るぃ! ゆ・か・るぃ!」」
隣には日本セコンドテント!
護衛の武士に守られた内閣総理大将軍が鎮座する!
「ええいクソガキめら! 上様のお側でバカ騒ぎしおって!
切腹を申し付けてくれるわ!!」
「まあまあ、よいではないか。子供は国の宝! 元気が一番!」
御側役の後期高齢者、船倉タコベエをいさめる将軍!
日の丸の扇を広げ身を乗り出す!
「サムライ丸! 見事勝利してみせい!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!
釣鐘の荘厳的音色が試合開始を告げる!
水色のスモック、黄色の園児帽姿の魔野ゆかり!
軟体動物のごとくダラリと脱力! 身体を揺らす!
対する全身白練色の甲冑武者サムライ丸!
腰を沈め居合の構えを取る!
ゆらゆらと左右に揺れながらサムライ丸に接近する魔野ゆかり!
「小娘……貴様、人ではないな」
「ほう……わかるか」
ぷにぷにほっぺのゆかりがニヤリと笑う!
――直後!
「――ムウ!?」
「後ろじゃ」
一瞬にして姿を消した魔野ゆかり。
次の瞬間にはサムライ丸の背後にいた!
「怪しげな術を……妖怪変化の類か!」
「いかにも。我はただのロリッ子ではないぞよ。
かわいらしい五歳児ではなく……実は1005歳児じゃ!」
サムライ丸は動けない――否!
今二人は超スローモーション状態!
魔野ゆかりの貫手がサムライ丸の心臓を背後から貫く、その間に交わされるテレパシー的な会話!
死の直前に見ると言われる走馬燈のごとき時間の圧縮!
意識だけがせめぎ合う超人同士の時間が流れているのだ!
「催眠効果のある舞を見せ相手の脳を支配。
知覚させぬ間に急所を突き、気づいた時には死……!」
「そう、これこそが必殺の舞! 殺人お遊戯じゃ!」
ゆっくりと、そして確実に近づくゆかりの貫手!
サムライ丸は未だ居合の構え!
超スローモーション時空においてこの差は埋められぬ!
もはや回避は間に合わない!
「ただの幼女ではないと思うていたが……なるほど、恐ろしい術だ」
「フフフ! 我は幼女であり妖女!
強すぎるゆえこの世に飽いておったところじゃ!
戯れにこの大会に出てみたが……所詮はこの程度、がっかりじゃ。
とはいえ……貴様も人間ではないようじゃの?」
「……!」
ゆかりの貫手がサムライ丸の背に到達!
超合金『ビャクヤノカネ』で作られた甲冑を容易に通過していく!
数秒後――現実世界では数瞬後――には心臓を貫く!
「しかし驚いたぞ。これほど長く我と時を過ごせるとはな……!」
「そうだな……俺も初めてだ」
「いかな達人といえど一言二言交わすのが限界!
すぐにあの世に送ったものじゃが……ッ!?」
魔野ゆかりが異変に気付く。
サムライ丸を貫かんとする己の貫手が――重い!
身体の動き全体が……鈍化していく!
「な……これは!?」
目を見開くゆかり!
その身体は完全に停止!
背中越しにサムライ丸が告げる!
「妖の者よ……よく見るがいい! 己が何を見ているのかを!」
「何を言って――」
そして理解する。
目の前のサムライ丸の背中、さらにその先に――サムライ丸に斬りつけられんとする魔野ゆかりの姿!
「ま……まさか!?」
「そう! そのまさかよ!!」
「先手を取られていたのは――我の方だった!?」
ゆかりに背中を貫かれるサムライ丸、サムライ丸の背中を貫くゆかり、その両者が霧散。
真に残された光景は――ゆかりを斬るサムライ丸、そしてサムライ丸に斬られるゆかり!
そう! ゆかりの殺人お遊戯でサムライ丸が知覚を支配される直前!
サムライ丸が瞬時に間合いを詰め、先に居合斬りを仕掛けたのだ!
「さすがは千年を生きる者だ。実際刹那の差であった。
貴様が先手を取ったと――貴様の意識が錯覚するほどに!」
「バカな……! この我の上を行くなど……!!」
必死に回避行動を取らんとするゆかりだが――身体は動かない。
そして凝縮された時は終わりを迎える!
メキャアアアアアアアアアアアアア!!!
「……ゴブウ!?」
魔野ゆかりは吐血1リットル!
そのまま刀身に弾かれ吹っ飛び、闘技グラウンドの壁に激突!
さらに吐血1リットル!
「俺のことを人間ではないと言ったな。
そう……俺は鬼!
地獄から舞い戻り……鬼となった男よ!!」
愛刀『オイナリ』を鞘に納めるサムライ丸。
その様子を忌々し気に見る魔野ゆかり。
己がまだ生きていることに驚く。
彼女は斬られていなかった。
つまりミネウチ!
いかなる悪魔的威力の攻撃もミネウチであれば死なぬのだ!
「ぐ……なぜ殺さぬ!?」
「勘違いするな! 別に情けをかけたわけではない!
千年を生きる妖女……下手に殺して呪われては敵わんからな。
これからは無暗に人を殺めず、幼女らしくロリって生きるがよい」
「言ってくれるのう……」
魔野ゆかりが白目をむき意識喪失!
血だまりの中に崩れ落ちる!
マスター行司・タチカワが軍配をサムライ丸に向ける!
日本代表の勝利である!
観客がワーワー! ワーワーのワーワー!
「見事であったぞサムライ丸!」
「ありがたきお言葉……!」
「祝いじゃ! 寿司を用意させよう!」
いや、と将軍の誘いを辞するサムライ丸。
御側役のタコベエが立腹!
「これ! 上様からのお誘いを断るとは何事か!!
この場にて切腹いたせ!!」
「急ぎの用がありますれば、御免!」
言うや否やサムライ丸はその場で跳躍!
パカラン! パカラン! パカラン!
どこからともなく現れたる白馬!
サムライ丸はその背に着地し、いずこかへと走り去る!
果たして彼はどこへ行こうというのか!?
「俺が行くまで生きていろよ……トオル!」
そう! 彼が向かうはシン・青梅、ブループラム霊山!
地獄の猛特訓に身を置く神風トオルの元である!
◆◆◆
「パアアアアアアアオオオオオオオオンンン!!!」
――シン・青梅奥地のブループラム霊山!
神風トオルら探検隊はオウメ・デスインド象の群れに追われていた!
無造作に生い茂る巨木の間を縫い、時速60キロで走る探検隊!
地形の悪いジャングルではこの速度が限界である!
片やオウメ・デスインド象は木々をなぎ倒し一直線に迫る!
このままでは殺人象に追いつかれるのは時間の問題!
――そして、我々の前にさらなる窮地!
「……川!?」
ジャングルが開け、神風トオル一行の前に現れたのは陸地を分断する巨大な河川!
向こう岸を繋ぐのは今にも壊れそうなオンボロつり橋!
明らかに危険であるが、この橋を進むしかない!
「いいか! 揺らすんじゃないぞ!」
神宮司ゴウショウ、ルリ、トオルの順でつり橋を渡っていく!
川にはピラニアやワニ、サメなど人喰い生物が生息!
早く落ちて来いと言わんばかりに殺人的な顔を見せる!
地獄よりも危険な一級河川、それがオウメ・デスリバーだ!
「揺らすなよ! 絶対だぞ、おい!!」
神宮司隊長が後続に注意喚起!
しかし!
「キャーコワーイ!」
ふらつく神風ルリ!
貧弱なつり橋の上では少しの揺れが瞬く間に巨大化する!
上下に激しく揺れるつり橋!
「おい!? 揺らすんじゃない! おい!!」
おお、見よ! つり橋を張る縄ロープを!
激しいモーメントにより縄がほつれブチ切れる寸前!
このままでは崩落必定!
「ええい、ルリ! 少しの間我慢しろよ!!」
神風トオルがルリを抱え上げ――
「地球真拳! 地球スロウ!!」
そのまま向こう岸へと投げ飛ばす!
宙を舞う美少女JK神風ルリ!
「隊長!」
「おう!」
神風トオルと神宮司隊長が跳躍!
飛行中のルリに捕まる!
一塊となった三人はそのまま川を越え向こう岸に着地!
「痛ーい!」
尻もちをつき泣き出すルリ!
――と、次の瞬間!
つり橋が崩落、地獄の川の中へと沈んでいく!
そこへ突進してくるオウメ・デスインド象の群れ!
川岸で止まれず水中に落ちる!
そこへ群がる人喰い水生生物!
最初に落ちた一頭が無残に食い殺される!
オウメ・デスインド象の群れが反撃!
丸太のごとき鼻でワニを絞め殺し、捕食!
川の水ごと飲みこまれるピラニア!
象の鼻から発射されるダイヤモンドカッターのごとき超高圧放水!
水中を泳ぐサメが両断される!
「パアアアアアアアオオオオオオオオンンン!!??」
魔界に突如として響く悪魔的絶叫!
ピラニアがオウメ・デスインド象を体内から食い破ったのだ!
瞬く間に赤く染まるオウメ・デスリバー!
なんというおぞましき弱肉強食世界!
食うか食われるか、原始の地球を我々は見た!
そして――探検隊はブループラム霊山最後の難関にたどり着く!




