1 大ピンチ! 敵は忍者32人!(後編)
(助かった……。助かったが……しかし!)
悪魔的バイオレンスな忍者危機が去り、どっと冷汗が噴き出す神風トオル。
妹の声がなければ――ゴウショウ、ヤエベニが現れなければ。
今こうして己が立っていることはなかったであろう。
だが……何も解決はしていない。
結末が先に延びただけである。
神風トオルの敗北という結末が!
「……特訓だ!!」
「先生!?」
仁王立ちの神宮司ゴウショウが口を開く。
「トオルよ! ことの顛末……たいてい予測がつく!
今我らが参らねば貴様は死んでいた!!」
「……その通りにございます」
己の不甲斐なさを指摘され視線を落とす神風トオル。
拳を固く握り、指ぬきレザーグローブがギリギリと軋む。
「だがしかし! 次の試合まではまだ時間がある!
ならば! 今からウゲンタを超える可能性、ゼロにあらず!!」
「……!」
視線を正面に戻す神風トオル。
その目には……炎が宿る!
目の前に越えるべき壁あらば――砕くのみ!
十年かかろうとも! 一万年と二千年かかろうとも!
砕けるまで拳を撃ち込むべし!
(そう! シャドウ・ウゲンタは越えるべき壁! 突破するべき壁!
俺が砕かなければならない壁!!)
滝つぼへと沈んでいた神風トオルの精神!
その精神が昇りに昇り――ドラゴンへと変化!
滝を越え、天を越え、地球を飛び出し――宇宙へと昇る!
もはや怖いものなし!
「ああそうだ、そうだとも! 俺は勝つ!
俺は奴にいいいいいいいいいいいいい! 勝つ!!!」
師、ゴウショウの前に膝をつく神風トオル!
「先生! 稽古をつけてくだされ!
奴の32人分身、破るためなら死んでも構いませぬ!!」
「よくぞ言うた! 人が死ぬるは心砕けし時!
鉄の意志あらば人は死なず!!
我が特訓、耐えて見せよ!!!」
「はいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
燃え上がるトオルとゴウショウ!
その悪魔的熱量にスプリンクラーが作動する!
「ええい! 俺と先生のやる気に水を差すとは!」
「不届きなる消防設備! 所詮は人の心を持たぬ機械か!」
散水中のスプリンクラーを睨み付ける二人!
「あなたたち、落ち着きなさい」
装甲くノ一・ヤエベニが割って入る。
「神風トオル……満身創痍のその身体では訓練どころではあるまい」
「ヤエベニ……また助けてもらったことには感謝する!
だが! 試合は二日後! 俺には時間がない!」
「それは百も承知。だがよく聞け!
お前を狙うのはあの忍者だけではない!
アメリカ大統領ピザフライ!
そしてその直轄……CIA四天王がその命を狙っているのだ!」
「なんだと!? ピザフライとは決闘の約束をしたハズ!」
「どうやら他のファイターに内通者がいるようだ。
その者を優勝させれば……ピザフライによる地球の支配は継続可能!
お前を生かしておく理由はないということだ!!」
神風トオルに告げられる悪魔的現実!
常に命を狙われる状況!
肉体よりも先に精神が疲弊してしまう!
「おのれ汚いやつらめ! ならば先にこちらから乗り込んで……!」
スパァンッ!!
ヤエベニのビームウイップが神風トオルの尻を打つ!
「痛あああああああああいいい!!??
貴様! 何をするか!!」
「いいか、今日は休め!
そして明日一日を使い……奴の分身に対抗する術を見つけるのだ。
それまでの間、暗殺者からお前を守ってやる」
「何い!? そんなことができるのか!?」
「フフン……私を誰だと思っている」
得意気に胸を張るヤエベニ!
装甲の上からでもわかる形のいいオッパイ!
「しかし……なぜそこまで俺のことを……」
スパァンッ!!
ヤエベニのビームウイップが神風トオルの尻を打つ!
「痛あああああああああいいい!!??
貴様! 何をするか!!」
「べ、別にお前のためにやってるんじゃないんだからな!
私と利害が一致するから守ってやってるだけなんだから!
もし私の邪魔になりそうな時は……お前も消してやるんだからな!」
「そ、そうか……。ではよろしく頼む!
だがくれぐれも! 自分の身を第一に考えてくれよ!」
「フン! 言われなくてもそうさせてもらうわ!
さあ、早く宿に戻りなさい!」
今後の方針が決定し地上へと戻らんとする一行。
しかし! 神風ルリがあることに気がつく!
「そう言えば……ウメコちゃんの姿が見えないわ!」
「ギクリ!」
心臓をバクつかせるヤエベニ!
あたりを見回す神風トオル!
「ウメコ……? ルリの学友という、あのメガネ女か」
「イエス! 兄上のことを心配して、ここに来るはずなんだけど……!」
「途中トイレにでも行きたくなったのだろう。
どこか食いしん坊な雰囲気があったからな」
スパァンッ!!
ヤエベニのビームウイップが神風トオルの尻を打つ!
「痛あああああああああいいい!!??
貴様! 何をするか!!」
「……フン!」
「なんなんだ一体……!」
装甲の下でほっぺたを膨らませるヤエベニ。
その顔をチラリと見やる神風ルリ。
「あなた……ウメコちゃんを見かけなかった?
来るとすればあなたと同じ方向からだと思うんだけど」
「ギクリ!」
心臓をバクつかせるヤエベニ!
ふいにルリの後ろを指さす!
「あッ!! UFO!!!」
「ええッ!?」
その場にいた全員が振り返る!
しかし……UFOの機影はどこにもない!
「なんだ、どこにもいないではないか……!」
神風トオルが顔を戻すと――すでにヤエベニの姿はない!
そして代わりに聞こえてくる女の声!
「おーい! おーい!」
ポニーテールを揺らし、手を振りながら――ウメコが走ってくるのであった。
◆◆◆
――某時刻。
某在日米軍基地。
施設内の軍病院からヨタヨタと出てくる――包帯グルグル巻き人間!
彼こそはCIA四天王の一人、『草原のクサッパ』だ!
数か月前に装甲くノ一・ヤエベニと交戦し、敗退。
なんとか一命をとりとめ、本日晴れて退院――否、新たな任務により強制退院!
CIAエージェントに連れられ黒塗りの高級車に乗り込む!
「あの女……! 今度は負けないからな……!!」
怒りに震えながら殺人的な眼光をギラつかせる草原のクサッパ!
悪魔的殺気を発しながら――CIAカーが基地を後にする……!
――同時刻。
アメリカ合衆国某所。
CIA専用高速ジェット機『ヘルシー・チキン』に乗り込む男女の姿。
男の方は燕尾服を着込んだ一見して紳士的なシルエット。
しかしよくご覧いただきたい。
彼の頭……小さめのシルクハットかと思われたその物体は――なんと煙突!
頭からニョキリと生えた煙突が煙を吹いているのだ!
明らかな異常者! 狂人以外あるまい!
そしてさらに!
女の方はピッチリウェットスーツ姿!
ペタペタと足ひれをならしながら、スケベな身体をくねらせる!
だがその頭部はやはり異様!
本来口にくわえるシュノーケルが……両目から突き出ているではないか!
なんと奇天烈な顔面か!
明らかな異常者! やはりクレイジー狂人!
「我らを一堂に集めるとは……天空の一人には荷が重すぎたか」
「情けない男……! 仕置きが必要だよ!」
彼らもまたCIA四天王!
煙突紳士は『地下鉄のトーマス』!
目からシュノーケル女は『深海のマコ』!
CIA四天王である三人――草原のクサッパ、地下鉄のトーマス、深海のマコが目指すは東京都!
地球ファイト決勝大会中のシン・巣鴨だ!
ターゲットは地球真拳継承者、神風トオル!
悪魔的な戦闘力を持つ四人がそろう時……シン・巣鴨は地獄と化す!
◆◆◆
そして――CIA四天王が動き出したさらに同時刻。
ブラインドを閉め切った薄暗い部屋で携帯電話を操作する女。
神風トオルらと別れた月宮殿ウメコである。
どうやらシャワーを浴びた直後!
おお、エッチな下着姿だ! 色はパステルピンク!
濡れた髪をタオルでなでながら何者かと通話!
『はい、もしもしでゴザル!』
「久しぶりね、私よ。早速で申し訳ないけど……人手を貸してくれないかしら?」




