1 大ピンチ! 敵は忍者32人!(前編)
前回までのあらすじ
宇都宮代表ギョウザ男を暗殺したのは忍者代表シャドウ・ウゲンタだった!
そのウゲンタが今度は神風トオルを暗殺せんと現れる!
地球真拳で対抗する神風トオルであったが、ウゲンタの32人分身を前に苦戦!
その命は……業務用扇風機前の線香花火である!
(こちらの一手に対し敵は32手! 差し引き31手!
スピードで補える数ではない……!)
神風トオルが地球パワーを両眼に集中!
青いスパーク光がほとばしる!
地球真拳奥義、地球光線を放つつもりだ!
地球パンチ、キックなど手足を打ち込む技に比べその攻撃範囲は格段に広い!
――だが!
「ふはははは! これは笑止!
必殺の地球光線とて一度に全員を狙うことは不可能!
運よく我が本体に当たることを願うか!!」
「座して死を待つは男の恥!
神風家は瓦にあらず! 玉となりて砕けるが本望!!」
「敵わぬと知っての蛮勇! その意気やよし!
ならば望み通り! 華々しく散らしてくれようぞ!!」
32人のウゲンタが抜刀!
一斉に跳びかからんと腰を沈める!
神風トオルの勝率、実に32分の一!
実際には地球光線の一撃で三、四人は巻き込めるだろう!
それでもなお! 勝率十分の一!
ウゲンタ本体を撃てねば死!
命を懸けるには……あまりにも分が悪い!
両目に集中した地球パワー粒子が臨界を迎え、両者が激突する――その時!
◆◆◆
――一方その頃。
(……なんとか逃げ切ったわね)
シン・巣鴨コロシアム一般フロア内。
人ごみの中に溶け込む謎のメガネ女子高生の姿。
CIAエージェントの追跡から逃れた月宮殿ウメコである。
幸いにして顔を見られてはいない。
移動中は監視カメラに映らぬよう細心の注意を払った。
さらに彼女の服装はJKセーラー服!
ありふれたこの衣装であれば怪しさは皆無!
発見される可能性は低い!
ウメコが警戒レベルを下げた――その刹那!
背後から肩を叩く者あり!
「――――ッ!?」
胸の谷間に隠した手裏剣を握りながら、ウメコが高速で振り返る!
追手か!?
――答えは否!
「ウメコちゃん! こんなところにいたのね!」
神風トオルの妹、神風ルリであった!
「ルリ!? ……さん! 驚かせないで頂戴!
危うく殺すところだったわ」
「あはは! ナイスなジョークだね、ウメコちゃん!」
「それよりちょうどよかった。
あなたのお兄さん……神風トオルはどこかしら?」
神風ルリの背後にいた神宮司ゴウショウが答える。
「実は……カクカクシカジカなのだ!」
「なんですって!?
宇都宮代表が暗殺されたために忍者代表の不戦勝!?
そして神風トオルは殺人現場に直行!?
――まずい! それはまずいわ!!
暗殺犯は間違いなくその忍者!
そして次のターゲットはトオルよ!!」
「そう! 我らも危険だと思い地下控室を探していたのだが……」
「……!」
周囲を見渡す月宮殿ウメコ。
彼女たちがいるのは地上一階フロア。
地下へは中央階段の他、一定間隔でセキュリティ付き連絡階段が設けられている。
一般庶民が入り込まぬよう、地下への通路前には警備員も配置。
すぐ目につくはずであるが……!
「なぜか……階段が見つからぬ!」
「そんな……! まさか!?」
記憶を頼りに地下階段の位置へと走るウメコ。
階段を守る警備員を発見。
しかし……肝心の階段は見当たらぬ!
「ちょっとあなた! 地下への階段はどこ!?」
「地下への階段? 小娘、気でも狂ったか!
この建物に地下などないわ!」
「なんですって!? じゃああなたは何を警備しているのよ!!」
「何ってそりゃあ……なんだっけ……けけけけけ??」
警備員の目は虚ろ!
明らかに正気ではない!
「これは……幻術! それもかなり強力な!」
月宮殿ウメコは確信する。
忍者の仕業だ!
「あれ……私たち何をしに来たんだっけ……?」
「んんー? わからん! わからん! わかわからんらん!!」
「おっしゃる通り、せからしか! あはははははははははは!!!」
「「あはははははははははははは」」
ルリとゴウショウの記憶が混濁! 狂人と化す!
任意の対象を認識させず、記憶からも消し去る高度な幻術!
しかもその有効範囲は悪魔的に広大!
術者のレベルは恐ろしく高い!
(まずい……このままでは私も!)
ウメコが胸の谷間から札を取り出し、空中に放り投げる!
そして手のひらをクナイで斬り裂き血液を噴出!
その血液が札に術式を描いていく!
さらにクナイを投げつけ、術式札を壁面に突き刺し固定!
忍者的に指を二本ピンと立てる!
「キエエエエエエエエイイイ!!!」
ドロン! ドロン! ドロロン!!!
幻術解除!
壁が消え去り、中央階段が現れる!
「「……!?」」
正気を取り戻すルリ、ゴウショウ、警備員、その他一般庶民!
「む! この先は立ち入り禁――」
ウメコに睡眠薬を注入され崩れ落ちる階段警備員!
「あなたたちはこのまま地下控室へ向かいなさい!」
「ウメコちゃんは!?」
「別ルートから向かうわ! さあ早く!」
駆け出す三人!
地下にいるであろう神風トオルを目指す!
――そして!
◆◆◆
「兄上えええええええええええ!!」
殺気立つ地下通路内に響く女の声!
「――この声は!?」
「ムウ!?」
元気なセーラー服女子高生、神風ルリである!
その後ろには地球真拳師範代の姿!
鬼の形相でトオルとウゲンタに向かってくる!
――さらに!
「シャドウ・ウゲンタ……そこまでだ!!」
「ッ!? 貴様は……!」
ルリたちと逆側から現れたのは……パールピンクの装甲人間!
装甲くノ一・ヤエベニである!
発光する手のひらを構えウゲンタを威嚇!
互いに攻撃の先を外された神風トオル、シャドウ・ウゲンタ!
戦闘態勢のまま膠着!
(人払いをしておいたはずだが……!
装甲くノ一……こ奴が幻術を解いたか!)
殺人忍者ウゲンタは考える!
(このまま神風トオルに仕掛ければ十中八九始末は可能。
しかし! 今現れた三人!
奴の妹を戦力に数えずとも……地球真拳師範代と装甲くノ一!
この二人を同時に相手にするのは下策!
一人ずつならまだしも……恐らく無傷で倒すことは困難!
場合によっては神風トオルを始末しきれず……最悪この俺が死ぬ!)
神風トオルの暗殺。
ウゲンタにとってこれ自体は命を懸けるべきものではない。
目的は決勝トーナメントでの優勝!
暗殺はあくまでも手段の一つ!
対戦相手を無傷で消せぬのであれば意味はない!
(決勝戦まではまだ長い……!)
不確定要素によるリスクは避けるがプロの忍者!
不測の事態! 思考回路切り替え完了!
32人のウゲンタがフトコロから煙玉を取り出し、一斉に床に叩き付ける!
ドロン! ドロン! ドロン! ドロン!
白煙が発生! 地下通路内に充満!
視界が開けるころには忍者の姿は無し!
警戒を解かぬ神風一味に向けどこからともなくエコーがかったウゲンタの声!
『命拾いしたな神風トオル!
だが! 試合が始まるまでは背中に気をつけるがよい!
ふはは! ふはは! ふははのは!!』




