2 死のバニーガール! 月対おそロシア!(後編)
「ルナツキ先輩! ぼ……ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼボクと!
つつつつつ付き合ってくだだだだだだだだっだだだ……!」
緊張のあまり電動マッサージ機のごとく振動するウサミミ美少年ショタ男。
月の軍団、その若き訓練兵である。
月面グラウンドで行われていた戦闘訓練が終了。
皆が宿舎へと戻る中、勇気を振り絞りルナツキ・ウサコに愛の告白。
本気度を表す最高級月面ニンジンを差し出す。
「気持ちはうれしいが……弱い男には興味がないのだ」
プリケツをプリプリさせながら答えるルナツキ。
バニースーツが実にスケベだ。
――ルナツキ・ウサコ。
ルナツキ家は月の名門。
父のカツヒコは月宇宙軍第七艦隊提督。
母オリナは一等外務官を務める。
家の名に恥じぬよう、ウサコは月の戦士としての道を選んだ。
己を律し、その肉体と精神を鍛え、程なく首席訓練兵となる。
最終試験後は突撃歩兵科大隊長クラスは固いと目される――逸材中の逸材だ!
彼女と交際するためには……まず強い男(あるいは女)であることが第一条件!
これまでに成功した者は皆無!
「そう言われると思い……鍛えて参りましたよおおおおおおお!!!」
ベリベリイイイイイイイイイ!!!
ショタ男の軍服が千切れとぶ!
現れたるは鈍いマッドな輝きを放つ筋肉マッチョ!
その隆起した筋肉により体型が倍以上に巨大化!
彼もまたエリート訓練兵!
100年に一度と言われる超戦闘系ショタ男子なのだ!
「ルナツキ先輩……手合わせ願い申す!」
「少しはできるようだが……私は甘くないぞ」
「心配無用! むしろ我が拳、手加減はできませぬゆえご注意を!」
ルナツキとウサミミ美少年ショタ男、その周囲の空気が変化!
悪魔的に殺気立ち剣山のごとく周囲の者を斬りつける!
月面グラウンドに残っていた訓練兵が退避!
ルナツキへの愛の告白……その成否を賭けた戦いが始まる!
「参りますぞおおおおおおおお!!!」
「――――!」
戦いの火ぶたが切って落とされ――そして終結。
その間わずか一秒。
ホコリを落とすためプリケツをパンパンと叩くルナツキ。
足元には月の大地にめり込むウサミミ美少年ショタ男。
カップル成立ならずである!
「遅いな。まだまだ遅い! 戦いは速さで決まる!!」
そう! ルナツキの最大の武器は速さ! アメリカ語でスピードゥ!
「速さこそスピード! スピードこそパワー!
速さがあればなんでもできる!!」
その後もルナツキは己の速度を磨き続け――士官学校を卒業。
現在では月の軍団、突撃歩兵第一師団長を務めているのだ!
誰もが認める最強の戦士として!
第13回地球ファイトへ出場したのである!
――そのルナツキ・ウサコが!
「~~~~ッッッ!!??」
ヤーレン・ソーレンの頭部にかかと落としを喰らわせた状態で硬直!
悪魔的威力のムーン月面かかと落とし!
しかし! ヤーレンの頭部は無傷!
ルナツキの蹴り足から全身にめぐる衝撃の反作用!
一般庶民諸君も経験しておられようか!?
金属バットで思い切り岩石をぶん殴って手がしびれた経験を!
その何億倍もの悪魔的振動がルナツキを硬直させる!
そして――その隙を見逃すヤーレン・ソーレンではない!
ルナツキを丸太のごとき太腕が捕らえ、背後から大蛇のごとく締め付ける!
「グハハ! 捕まえたぞい!!」
「?????????」
攻撃が弾き返されたルナツキは脳震盪により意識が働かない!
「ついに捕らえたわね! ヤーレン!」
「んああ~~女王様~~」
ウサミミギャルズの調教行為を一段落させたコロシーナ!
満足げにヤーレンを見る!
「ヤーレンの頭蓋骨は地球最強! 砕くことは不可能!」
そう! コロシーナの言う通り、ヤーレンの頭蓋骨は異常なまでに硬い!
なぜか!? その秘密は彼の食生活!
ヤーレンは生まれた直後よりベーリング海のカニを食べてきた!
一日10トン! それも殻ごと!
そして母乳代わりにウォッカという先進的子育てが行われた!
その結果どうなったか!?
一般庶民諸君もご存知の通り!
カニの殻に含まれるキチン質は強固な水素結合により固い結晶構造を持つ!
そして! そのただでさえ硬いキチンはさらに!
エタノールを溶媒としてタンパク質及びリン酸カルシウムと結合することにより!
超高分子複合体を成し鋼鉄のごとき強固な層を形成するのである!
つまり! 常に血中アルコール濃度が90%を超えるヤーレンは!
カニの栄養を超効率的に体内に摂取し、その骨を何重にも超硬質キチンコーティングされた状態!
図らずとも最強の骨格を手にしたのである!
いわんや! 面積の大きい頭蓋骨はいわばダイヤモンドの兜!
「ガハハ! 俺の頭は地球一硬いのだ!!!」
「……! 貴様が頭部を守っていたのは……まさか!?」
「そう! そのまさかよ!!」
ようやく肉体の硬直が解け、意識が働き始めたルナツキ!
「頭が弱点だと私に思わせるために……!
あえて守っていたのか!?」
「いかにも! 俺様の自慢は筋肉にあらず!
超丈夫なホネホネボーンよ!!
あのまま蹴り続けていれば俺を倒せただろうに……判断を誤ったな!!」
「くっ……おのれええええええええ!!」
ルナツキがジタバタ行為で抵抗!
しかし! ヤーレンの拘束を抜けることができない!
「この俺に捕まったが最後!
お前の負けは……確定した!」
ヤーレンがルナツキを抱きかかえ、頭の位置が並ぶように固定!
「は、離せ! このバカ! マヌケ! アホマッチョ!」
「ぐははは! 離せだと!?
むしろ自分の意識が脳みそから離れないことを祈るんだな!」
ヤーレンが勢いよくブリッジ!
自分の頭ごとルナツキの頭部を地面に叩きつける!
殺人目的のおそロシアン・ジャーマンスープレックスだ!
グシャリ!!!
「~~~~ッッッ!!!」
受け身の全く取れない体勢でのスープレックス!
ヤーレンの頭部は超硬質キチンコーティングにより守られている!
頭蓋骨が粉砕されるのはルナツキのみ!
己への衝撃を気にせずに行われるその技は殺人的な威力! 悪魔も天国行き!
しかも! コロシアム内は粒調砕石M40が固く敷き詰められている!
プロレス用リングの様にスプリングによる緩衝はない!
一般庶民諸君であれば当然即死である!
「うぐぐ……!」
だが!
さすがは決勝進出地球ファイター!
月の最強エリート戦士!
ルナツキは生存!
そう簡単には死なぬ!
しかし!
殺人目的の悪魔的一撃を耐えたのも束の間!
ブリッジ状態のヤーレンはすぐさま大地を蹴り回転!
再び殺人目的のおそロシアン・ジャーマンスープレックスを仕掛ける!
グシャリ!!!
「~~~~ッッッ!!!」
グシャリ!!!
「~~~~ッッッ!!!」
グシャリ!!!
「~~~~ッッッ!!!」
おお、これこそは!
相手が絶命するまで行われる、無限殺人おそロシアン・ジャーマンスープレックスだ!
ヤーレン・ソーレンに捕まって生存した者はいない!
何があっても……彼に近づいてはならないのだ!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
大地に頭を打ち付けられること十数回!
ルナツキの頭部は裂け、流血!
地面に赤い染みが点々と続く!
「こんな……アル中野郎に……!
私は……私は誇り高き月の戦士なるぞおおおおお!!!」
朦朧とする意識の中、正気を保たんと己の存在を叫ぶルナツキ!
これまで長年にわたり築き上げてきた肉体!
力強さと美を両立させた華麗なるその姿は見る者を魅了する芸術の域!
己に厳しさを科し続けた精神力のたまもの!
ルナツキのアイデンティティ!
ルナツキの誇りである!
しかしその叫びは! 誇りは!
無慈悲に踏み潰されるのであった!
「勝敗を決めるのはパワーでもスピードでもなく……圧倒的な防御力よおおおおおお!!!」
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
グシャリ!!!
おびただしい数の殺人的衝撃を頭部に受けるルナツキ!
カメレオンのごとく明後日の方向へ泳ぐ眼球!
顔面の穴という穴からは流血!
だらしなく開いた口からは舌がダラリと垂れ、血液と共によだれを垂れ流す!
とても乙女の顔とは思えぬ有様!
「あああ~~~~……! ううう~~~~……!」
もはや言葉を発することもできず、血涙を流しながらうめき声をあげるのみ!
思考回路はショート寸前である!
「ぐははははははははは!!
とどめじゃいいいいいいいい!!!」
ヤーレンがルナツキを抱えたまま大きく跳躍!
その高さ実に57メートル!
頭を下に向け高速キリモミ回転しながら垂直に落下する!
これぞ!
おそロシア代表ヤーレン・ソーレンの必殺技!
「おそロシアン・ツングースカ・ドライバああああああああ!!!」
バギャアアアアアアアアアアンンンンンン!!!
両者脳天から大地に激突!
ひと際大きい爆砕音がシン・巣鴨に鳴り響く!
ヤーレンは何事もなかったかの様に笑顔! おそロシアスマイル!
対して!
ルナツキ・ウサコはモザイク必至の悪魔的グロテスク顔と化した!
もはや戦闘は不可能!
戦闘というよりも……生存不可能!
ヤーレンは身体を起こし抱えていたルナツキを空中に放り投げる!
――直後!
チュドオオオオオオオンンンンン!!!
ルナツキは爆発!
黒焦げの焼き芋と化し大地に伏す!
観客がワーワー!
「ぐははは!
おそロシアは恐ろしや!
ぐははは!
ぐははは!」
ヤーレン・ソーレンが喜びのコサックダンス行為!
「オホホホホ! ハラハラショーショーハラショーショー!」
御機嫌のコロシーナ大佐! 殺人ムチを振って遊ぶ!
一回戦第三試合はおそロシアの勝利だ!
◆◆◆
「見たかトオルよ! あのおそロシア人!
奴もまた優勝候補の一人!
あの技を受ければお前とてただでは済むまい!」
観客席にて地獄的試合光景を目にし、神風トオルに注意喚起するゴウショウ!
「承知でございまする、先生!
奴への接近……避けねばなりますまい!」
おそロシアはこの後中国と戦い、その勝者が準決勝で神風トオルとぶつかる!
どちらのファイターも恐るべき戦闘力の持ち主!
対策を練らねばならない!
だが! それよりも!
今注目すべきは次の試合!
一回戦第四試合!
その勝者がトオルの次の対戦相手となるのだ!
組み合わせは宇都宮対忍者!
神風トオルと協力し共に決勝会場まで辿り着いた男!
そう! 宇都宮代表、ギョウザ男の試合である!




