3 悲惨な結末! 宇都宮対忍者!(前編)
シン・巣鴨コロシアム地下。
一階からのメイン階段を下りると東西に長く伸びた通路が現れる。
このフロアには地球ファイターの専用控室が備わっているのだ。
試合前に無用な争いが起きぬよう、対戦するファイター達は両端の部屋に配置される。
控室のさらに先には東西入場門へ続く階段が設置されており、ファイター同士が途中で接触することはない。
通路は緊急車両が直接進入できるように広めの構造。
一定間隔で連絡階段が設けられているものの、電子制御された扉が関係者以外の立ち入りを阻む。
空調設備の音が不気味に響くうら寂しいコンクリート空間。
ここで地球ファイターたちは己の出番を待つのである。
西側第一控室。
パイプ椅子に座りながら試合開始を待つ男の姿。
宇都宮代表地球ファイター、ギョウザ男である!
身にまとう厨房服は洗濯して真っ白!
戦に赴く男の礼儀だ!
彼の頭は巨大な宇都宮餃子。
脳みそがこぼれぬよう、餃子のヒダヒダをしっかりと圧着させる!
備え付けのモニターでは月対おそロシアの試合が映し出されている。
その映像は悪魔的な残酷世界! 地獄絵図!
目の前に迫る戦いに向け、ギョウザ男は精神を研ぎ澄ませる!
――そこへ!
控室のドアを叩く者あり!
「はーいだべ!」
「ギョウザ男様! お客様です!」
控室の前に待機していた地球ファイト実行委員会宇都宮担当職員がドアを開ける!
その来訪者とは!?
「……ギョウザ男さん!」
「お前は!? シュウマイ女!?」
――シュウマイ女!
その姿は……頭がホカホカのシュウマイ!
目、鼻、口などの器官は見当たらない!
頭にちょこんとのったグリーンピースがオシャンティでオシャレ!
着ているのはオレンジ色のチャイナ服!
デカパイ指数は対象外!
ギョウザ男と同じ宇都宮人である!
「おお……はるばるシン・巣鴨まで……!
ケガはないだべか!?」
「だいじだいじ! 電車は怖かったけんども!
無事着いたわべ!」
地方民にとって東京まで上るのは一大事!
鉄道に慣れている都会者には理解できぬかも知れぬが!
鉄道の乗り継ぎ行為に巻き込まれ命を落とす者が後を絶たないのである!
ましてや今は地球ファイト決勝大会の開催期!
道を歩いているだけでも死傷する確率は跳ね上がる!
地方民が東京で出会えることは奇跡に近いのだ!
おお、見よ!
無事に出会えた二人!
両者の目には思わず涙がにじみ出る!
「無茶しやがって……! 実家のシュウマイ屋さんの方はだいじけ!?」
「だいじだいじ! オトッツァンとオッカサンが!
ギョウザ男さんのところへ行ってあげなさいって!」
「そうけ! 恐縮だべ……!」
シュウマイ女は――その名前からは想像できぬかもしれないが――シュウマイ屋さんの看板娘!
両親と三人で店を切り盛りし、よく働く孝行者である。
ギョウザ男とシュウマイ女の出会いは宇都宮の楽市楽座。
食材の仕入れでたびたび顔を合わせながら――二人はいつしか将来を約束した間柄となったのである。
「ギョウザ男さん! いよいよ忍者代表との戦い!
どうか! どうかお気をつけて……!」
「安心しろシュウマイ女! 俺は必ず勝つ! 必ず優勝してみせるだべ!
この決勝大会が終わったら……祝言を挙げて! 一緒に暮らすべな!!」
「ギョウザ男さん……!」
シュウマイ女がギョウザ男に駆け寄り、その胸で涙を流す!
シュウマイ女の肩を抱くギョウザ男!
「泣くなシュウマイ女!
優勝したら賞金として金塊100トンが手に入るだべ!
そうしたら俺の餃子屋さんとお前のシュウマイ屋さん!
変形合体させて! 大きいお店を開くべ!
お前のオトッツァンとオッカサンもこれまで大変な苦労をしてきたべ!
俺たちで店を持って……楽させてやるべな!!」
「はい……! はいだべ……!」
シュウマイ女から流れる涙! それはシュウマイの肉汁にあらず!
ギョウザ男の優しさに……うれし涙が止まらぬのである!
「ギョウザ男さんのご両親にも……一度お会いしとうございましただべ……!」
「だいじだいじ! きっと天国から俺たちのことを祝ってくれるべ!
……そうだ! シュウマイ女、渡したいものがあるだべ!」
ギョウザ男がフトコロからブツを取り出す!
「安物なんだけんど! おふくろの形見なんだべ!
シン・巣鴨で失くしたら大変だべ……!」
ギョウザ男が差し出したのは使い込まれた金属ヘラ!
餃子を鉄板からはがすヤツである!
そのヘラをシュウマイ女の手に握らせる!
「他にも渡したいものがあったんだけんど!
それはこの戦いが終わってからにするべ!」
「ギョウザ男さん……! ええ、オラ……楽しみにしてるだべ!
がんばってね! 応援してるわだべ!!」
「おう! 任せろだべ!!」
二人はしばし見つめあったのち……シュウマイ女が控室を出る。
もはや二人の顔に涙はあらず!
希望に満ち溢れた……未来を見つめる顔つきである!
「シュウマイ女……! ありがとうだべ……!」
地球ファイトの試合を前に万が一の恐怖にとらわれていたギョウザ男。
だが! シュウマイ女の顔を見た今!
己の成すべきことを再認識!
ギョウザ男は――一人で戦っているのではない!
「そう! 俺は一人じゃないだべ!
身体が軽いだべ!
もう何も! 恐くないだべええええええええ!!!」
燃え上がるギョウザ男!
覚醒したる彼に――もはや敵なし!
「……ん? ドアが開いてるだべ!?」
ギョウザ男の視線の先……わずかに隙間の空いた控室のドア。
シュウマイ女が出て行った際、きちんと閉めなかったのであろうか……?
ドアを閉めなおすギョウザ男。
――直後!
背後に感じる悪魔的殺人悪寒!
「――――ッッ!?」
瞬時に振り返り戦闘態勢に入らんとするギョウザ男!
しかし! だがしかし!!
おお……なんということであろうか……!




