イベント後③
「ねぇねぇ、お母さん、変な動きの人がいるよ」
「そうねぇ。いい静香、変な人だと思ったら、指差さないで知らんぷりしましょね」
「なぁなぁ、あれ何やってんだろう?」
「わかんねぇけど、何か気味悪ぃからあっちいって遊ぼうぜ」
「ばぁさんや、ほれあそこで腰振っとる若者がいるぞぃ。若いっていいのう」
「おやまぁ、こんな真昼間から元気のいいことですね。若いころを思い出すわ」
とある公園の敷地内。俺たちは今、奇異な目で見られている。
それはもうかなりやばいくらいだ。
ここに女性陣がいなければ、確実に通報されているだろう。
不名誉な変質者と言うレッテルとともにだ。
なぜこうなっているかと言うと、遡ること数十分前………
「「ありがとうございましたポンポコポーン!!」」
時間制限ぎりぎりまでお好み焼きを食べたひかりさんは、満足顔で店の扉を出た。その後を俺たちも続いて出てきたのだが、後ろでは店の店長らしき人が泣き崩れているのを女性店員が必死に慰めている。心なしか狸の獣耳としっぽもシュンとなっているように見える。
「あ~。おいしかった。さてっと、京介くんたちはこれからどうするの?」
背伸びをしながら、座りっぱなしだった体をほぐすひかりさんは、俺たちに振り返り唐突に質問してきた。
「特に予定はないので帰ろうかと思ってます。ひかりさんはもう高知に帰るんですか?」
俺たちは、よさこいを見に行こうとしか決めていなかったので、特に決めた予定もなく、順当にいけば、今から帰る予定だ。椿も同じ考えだったので、その旨を伝えると、ひかりさんは、にっこりとこちらに笑顔を見せながら、唐突に言葉を放った。
「それじゃぁ、わたしのワークショップ受けてみないかしら?」
「「え??」」
ひかりさんの提案に椿とカノンが固まってしまった。
「なぁ、晃。ワークショップってなに?」
「俺もわかんねぇな。あれじゃねぇか、よくテレビとかで、路上で声かけたカモに如何わしい商品を高額で売りつけるあれだよ。圭吾は知ってるか?」
「僕もあまり知らないけど、確か、不特定多数を集めて、みんなで学んだりトレーニングしたりすることだったと思うよ」
「不特定多数を集めてって何かあやしくないか?」
「あぁ。何かやばそうな感じがプンプンするような響きだ」
「いやでも、田村さんに限ってそれは無いと思うけどな」
三人で悩んでいると椿とカノンがひかりさんに“よろしくお願いします”と頭を下げていた。
やばい!あいつら、すでにフィッシングされちまってるじゃねーか。
ここは俺が、何としても食い止めないと。
俺は、喜びのあまりしっぽをパタパタと振っているぐらい喜んでいる椿とカノンにと、ニコニコ顔のひかりさんの間に割って入った。
「ひかりさん。あんたをそんな人だとは思いたくなかったよ。有名な人だからってやって良いことと悪いことがあります。それに俺たち、お金なんて持って無いですよ」
俺はまっすぐひかりさんの目を見つめながら弾劾するように言葉を出した。
「え?あー。大丈夫よ。お金なんてとらないから安心して。普段はレッスン料をもらってやってるけど、今はプライベートだし今日は付き合ってくれたお礼とあなたたちに出会えた記念ってことタダでいいのよ」
タダでいい?あれ、それじゃぁ、詐欺として成り立たないのでは?いやいや待てよ。最初はタダとか言いながら、途中でこれ以上はお金がいりますってことか?それとも、聞くだけはタダで最後に商品を出してローンを組ませるという高等テクニックがあるのか?くそっ、相手の方が一枚上手のようだ。
「ちょっと京介。何難しい顔してんのよ。あの田村さんがタダで教えてくれるって言ってんのよ。早く行くわよ!!」
「時間が勿体ない。このイベントは何としてもコンプリートしないと!」
ちくしょう。椿もカノンも今の危うい現状を全く理解してやがらねぇ。ここは俺が何としても阻止しないと。二人の幻想を打ち砕くことになっても仕方ない。
「椿、カノンお前たちワークショップってどんなものなのか分かったるのか?今、付いて行ったら、言葉巧みに騙されて、高額が壺を買わされることになるんだぞ。いいか。お前たちは騙されてるんだ詐欺られようとしてるんだぞ!」
「「は??」」
二人の方に振り返り、真剣な眼差しで語った内容に混乱しているのであろう二人は頭上で?マークを浮かべている。それも仕方ないのだろう。しかし、なんとしても俺は邪悪な魔の手からこいつらを守らないと。
俺は、振り返り再度ひかりさんの目を睨みつけるように見つめた。
後ろでは、椿が俯き震えカノンが、無表情でこちらを見ている。そうとうショックだったのだろうな。憧れの人が実は詐欺師でしたなんて現実辛すぎる。
「京介くん、よくわからないのだけど、あなたすごく誤解してるわよ?」
「ひかりさん。俺は何も誤解なんてしてないっすよ」
「け、けどね、あ~もう!どこから訂正したらいいのかわからないわ」
「訂正?初めから俺たちを騙すつもりだったんでしょう!あなたが、詐欺師だったなんて、ちょっと美人でスタイルも抜群だからって、俺はだまされま――」
な、なんだこの殺気は!!?
俺の後ろに何かいるぞ。とてつもなく恐ろしい禍々しい殺気が背中に突き刺さってくる。もしかして、ひかりさん単独の犯行じゃなくて、その道のプロな人たちもグルだったのか。それならこの殺気にも説明がつく。ちくしょう。俺だけなら何とかなるだろうが、椿とカノン二人を守りながらは流石に無理だ。なんせこの殺気の持ち主となると一人や二人は確実に殺ってるはずだ。
仕方ない一か八かだ。この人ゴミならなんとか騒ぎに乗じて逃げ切れるかもしれない。すばやく振り向くと同時に二人の手を引っ張り直進する。よし。それだ。
しかし、現実はそうは甘くなかった。振り向くと同時に鳩尾に叩き込まれた拳に俺は意識を飛ばされたのだ。最後に見た光景は地獄のコキュートスよりも冷めた目で俺を見つめるカノンの姿と、俺にワンパン叩き込んでいる椿の姿だった。
な、なんで??




