オフィシャルチーム
「それでは、大阪めっちゃハッピー祭り開催の前に今回の審査員の方々を発表させていただきます。壇上の方へどうぞ」
総踊り騒動の後、何とか立ち直った椿と、一瞬お花畑が見えた俺と晃。それを生暖かい目で眺めていたカノンに圭吾そしてハタさんの計6人は今ステージ前のブルーシートの上で腰を下ろし司会進行のお姉さんの声に耳を傾けていた。
ステージ上には、スポンサーのお偉いさんや審査員を務める人たちが横一列に並んで順番に開催の祝辞と挨拶を述べている。
その中で一際目立っているのはやはり、会長のおばちゃんだ。何というかもう存在自体が他の人たちと違うね。ほっといたら、パイナップルとアップルにペンを突き刺しそうである。
「―それでは、最後に大阪メッチャハッピー祭り会長よりお言葉をいただきましょう」
そう言いながら、司会進行のお姉さんが、会長のおばちゃんにマイクを渡した。
「ミュージックスタート!!!」
と同時に指をパチンと鳴らすおばちゃん。
「I have a pen―」
ま、まさかの、流行ネタ炸裂!
自由すぎだろってか、このために金ぴかにサングラス衣装だったとか、どんだけだよ!
「ってことで、今回も大阪メッチャハッピー祭りIN大阪城盛大に盛り上がってちょうだい!」
マイクを握った片手を天へと掲げる会長のおばちゃん。周囲も盛り上がっているにはいるがちらほらと“今年はやっぱこれか”とか“ダメよ~よりは断然会長らしいね”等の声が聞こえる。つまりは、毎年流行りのネタをやっているのだろうな。
「それでは、審査演舞の前に、スペシャルゲストを紹介させて頂きます。今回この大阪メッチャハッピー祭りIN大阪城の為に、本場高知より審査委員長として参加して下さいました。田村ゆかりさんです。壇上へどうぞ」
田村ゆかり?どっかで聞いたような名前だな???
「はじめてじゃね。田村ゆかりと申しるき。今回会長さんの熱烈なオファーにより審査委員長としてこのお祭りに参加することとなったがや、よろしゅうお願いしるき。踊り子のみなさん。よい演舞を期待しておるよ」
迷子のゆかりさんじゃん!!
「おい、椿。あのゆかりさんって有名な人なのか?」
熱心にゆかりさんの挨拶に聞き入ってる椿の耳元でつぶやく俺とその横で同じく誰あれっと?マークを浮かべている圭吾。
「あんたバカ!?って、そっか。京介も圭吾くんも知らなくて当たり前よね。あの人はね、高知よさこいの上位入賞チームの振り付けを担当しているよさこい界では超が付くほど有名な人なのよ。よさこい界のカリスマ振り付け師の中の一人で、その振り付けは繊細かつ可憐な静の動きと豪快かつ荒々しい動の動きをコラボさせた幻想的なものなの。よさこい界の憧れの君なのよ!!」
そ、そんなすごい人だったのか。って全然そんな風に見えなかったけどな。どっちかというと、おっとり美人のような印象なのだが。
「田村ゆかりさんありがとうございました。いやー、生の土佐弁聞くの私初めてなんですが、何か貫禄みたいなのが伝わってきますね。さて、それでは、田村さんからの激励にやる気をみなぎらせているでしょう踊り子のみなさん。それではこれよりコンテストを初めさせていただきます。まずは大阪メッチャハッピー祭りオフィシャルチーム“大阪メッチャハッピー踊り子隊”のみなさんですどうぞ!」
司会進行の退場とともに壇上に上がる踊り子たち。そのほとんどが十代の子供たちだ。
「それじゃあ、今年も盛大に盛り上がっていきましょう!大阪メッチャハッピー隊、手拍子よろしくおねがいしまーす!」
音楽とともに、廻りの人たちが手拍子を鳴らし、軽快な音楽とともに踊り子が踊り出す。
総踊りのような振り付けに大阪にちなんだコミカルな歌詞が特徴的な演舞だ。
ただ、踊りの練度がすごい。多分俺や圭吾のようにいろんな意味で“踊り”を知らない素人でも踊ることができるであろう振り付けなのだが、この子たちが踊ると全く別物に見える。それは踊り方なのだろうかそれともテクニックなのだろうかよくわからない。
「いい京介に圭吾君。本気で踊りを極めるっていうのは、この子たちのような演舞をいうのよ。この踊りはね、この大阪メッチャハッピー祭り限定の総踊りなのよ。だけど、この子たちはそれを自分たちの演舞にまで消化しているの。もう何年も踊り込んでいる子もいるからね。見ていてわかるでしょう?正直お世辞にも振り付けに技術もテクニックもないわ。ただ、踊りの動作一つ一つをきっちりと踊り込むことで、ただの楽しい総踊りが、実力派の“演舞”に負けない踊りになるの。私たちがめざすのはそういった踊りなのよ」
椿がまっすぐと演舞を観ながら俺と圭吾に語りかけてきた。その表情は真剣そのものでありなぜか、屈辱的な表情でもある。その意味は俺や圭吾にはわからない。ただ、カノンや晃はその意味が分かるのだろう。同じような表情で演舞を見ている。ハタさんは、熱心にシャッターを押し続けている。それだけ、魅力的な表情がこのチームにはあるのだろう。
「踊り子一同感謝の意を込めて礼!」
「「「「ありがとうございました」」」」
演舞が終えると同時に拍手が巻き起こる。演舞場の子供達は肩で息をしてながらも笑顔を絶やしていない。
俺は、その子供達を見て、無意識に“すごいな”とつぶやいたのであった。




