後日談
ファミレス強盗事件より一夜明けて、今は警察署の前に村越さんと俺は、奈美さんたちを待っている。
犯人の疑いを掛けられ任意同行させられた4人は一泊警察署に泊まり、翌日晴れて無罪放免となったのである。
決めては、椿が倒した元空手家の男の証言であり、椿と男は拳と拳を交わした者同士にしか分からない絆ができたらしく、お互いの拳を軽くぶつけ“罪を償って出てきたらまた、ファイトしましょう”“あぁ、次は負けねーからよ”等と言う脳筋なやりとりをしたらしい。
「ひどい目にあったわ。なんで良いことしたのに犯罪者扱いされないといけないのよ」
「まぁまぁ。逮捕される経験なんて中々出来ないわよ。人生崖っぷちに成らない限りわね」
「確かに。けれど、執筆活動のネタとしてはレアな体験出来て嬉しい」
「お前らはまだいいじゃねーか!俺なんて最後の最後まで信じてもらえなかったんだぞ。打ったのは山城なのにそれも俺のせいにされるしよ。人を見掛けで判断すんなってんだよったく」
「晃と椿はどちらかというと強盗と同じ部類に分別されるから仕方ない。わたしと奈美さんは同類。将来は奈美さんのような撫子タイプになるから」
「ちょっと!晃はいいとして、何であたしもあっち側に分類されるわけ!?どう見てもそっち側でしょうが!!」
「俺はいいとしてじゃねーよ山城!!」
「あらあら、私を挟んで睨み合わないでくれるかしら。暑苦しいわ他所でやってちょうだい」
「「「ひどいよ、奈美さん!」」」
各々が今回の事件についてコメントしつつ、奈美さんに撃沈されながら警察署の外に設けられた正面階段を降りてきた。
俺と村越さんはそんな四人を迎えに来たのだが、なんというかこうやって見るとまったく接点の無いメンバーだな。
一人は勝ち気で高飛車っぽい美少女。
一人は大和撫子な茶道の先生みたいな和服美人。
一人は元ヤンなアウトローなイケメン。
一人は大人しそうな感じの儚げ美少女。
ん??美男美女としての接点があるんだな。中身は外見と全員違うけど。それは付き合いが無いと分からないだろうな。
「「御勤めご苦労様でした!」」
俺と村越さんは示し会わせた通りに、膝を折って少し前傾姿勢になり、 右手を前に出して手のひらを上向け、左手を膝の上においた親分さんに対するお決まりのポーズで四人を出迎えたのだが。
「「「「…………」」」」
まったく見向きもされずにスタスタとフル無視で俺達の横を横切っていく四人。
あれ?おかしいな。いつもの四人なら
「ちょっと恥ずかしいからやめなさいよ!」
とか
「わざわざ迎えに来てくれたのね。ご苦労様」
とか
「うむ。苦しゅうない」
とか
「ちょっ、馬鹿!俺に対してそれは見た目的にシャレになんねーだろが!」
みたいな反応をするはずなんだけどな。誰も反応してくれないよ。
「「も、もしかして怒ってらっしゃいます??」」
恐る恐る後ろを振り返り、村越さんとハモッてみた。これも示し会わせた想定の範囲内だ。
四人は歩みを止めて、こっちを振り替えった。その眼差しはまるでゴミを見るような冷たい眼差しだ。
「これはこれは、強盗をやっつけたヒーロー様たちじゃないですか警察署に何しに来たんですかね~?」
椿がまったく笑っていない笑顔で語りかけてきた。
「あらあら、椿ちゃん。それはやっぱり感謝状とか所長賛辞をもらいに来たに決まってるじゃないの。何たって正義の元自衛官無双タッグなんですから。ねぇカノンちゃん?」
ニコニコ笑顔で額に青筋を浮かべた奈美さんがゆっくりと歩いてきた。
「そうですね。私たちみたいな強盗とは相しれない存在の方々です」
無表情でノートに何かを書きながら呟くカノン。
「今回ばかりは俺も知らん」
晃の奴は、我関せずと煙草を吸いだした。
巷では、今回の強盗事件を解決したのは、偶然店内に居合わせた元自衛官の二人組ということになっている。自衛官の肩書きの方が盛り上がると踏んだマスコミたちはよさこいのよの字、一颯のいの字も取り上げずに“日本の自衛官は伊達じゃない”“税金の無駄遣いとは言わせない自衛官のあるべき姿がここに”等と自衛官ばかりを取り上げたのだ。
「すまねぇ奈美さん。ついつい京介の名乗りにつられて乗っちまってよ。だか、昔のツレにマスコミやってる奴がいてな、奈美さんたちの活躍も取り上げてくれるようにに頼んでおいたから、俺達の事が落ち着けばちゃんと、記事にしてくれるはずだ。それに警察の方にも話通しておいたから、後日改めて4人にも感謝状の授与式がされるぞ」
「ちょっ、村越さん話が違うじゃないですか!二人で詫び入れようって言ってたじゃないッスカ!何一人だけ全力フォローしてくれちゃってるッスカ!!裏切りにッスカ!ここは関ヶ原の戦い状態なんッスカ!?」
まさかの裏切りに焦る俺。
「京介。スカスカうるさい」
椿の見下し視線に黙らされる俺と、許されると踏んだ村越さんのドヤ顔にさらされる俺。
くそー。村越さんを信じた俺がバカだった。
あの人は昔からこういう人だと分かっていたのに。
「村越くん。私たち4人とてもお腹が空いたの。誠意は認めるから後は御飯を御馳走してくれれば、みんなの機嫌も直るはずよ」
「え?けどよ奈美さん今回に限っては俺何も悪いことしてないですよね?雰囲気に流されちまったってだけで」
「村越くん。わたしは穏便に事を進めようとしてるのよ。お分かりかしら?」
「は、はい。おっしゃる通りでございます」
奈美さんの背中に現れた般若さんに撃沈された村越さんは、特に今回何も錯和をしたわけでも無いむしろ最近稀な好プレーだったにも関わらずゴチる事になった。
某お笑い番組のゴチバトルのような店で涙流しながら支払いをする姿が目に見えて浮かぶな。
裏切り者には罰を!っだ。同情なんてしないぜ。
どうでもいいだろうが、錯和とは、麻雀に於ける反則行為の罰則のことであり、そこから転じて、何かを失敗することを「チョンボする」などと表現するのだ。
「京介くん。私達の御飯終わったら、昨日の続きをしましょうか。ファミレスでは短時間で終わらせる為にまとめて話したけど、今日はたっぷりと京介くんみたいな、初心者でも分かるようにゆっくりとはっきりと懇切丁寧親切に、手取り足取りスパルタに教えてあげるわね。2時間後に旅館にいらっしゃい。あっ、栄養ドリンクと着替えも持っていらっしゃい。心配しなくても翌朝までには帰してあげるわ」
うふふ。と笑いながら黒い笑顔で悪夢のような事を言い放った奈美さん。
俺と村越さんはその場で崩れ落ちるしかなかったのだった。
「村越くん。そんなところで灰に成らないで、運転してくれないかしら。店はもう予約しているのよ。時間に送れたら先方に失礼でしょ。あっ、それと手持ちに諭吉さんが少ないのなら近くの銀行に寄ってくれても構わないからね。万が一金欠病に陥っているなら、私も鬼じゃないし、借金してまでお金作りなさいとは言わないわ。給料から天引きするだけだから安心して頂戴。さぁ、みんな行きましょうか」
「はーい!」
「うん」
「よっしゃ食いまくるぜ!」
ニコやかな笑顔で車に乗り込む4人と悲壮感漂う1人であった。
此処まで読んで下さりありがとうございます。
ファミレス事件はこれで終わりです。
ロマンシングサガ2が配信されましたね!
さっそくプレイしてるんですが、懐かしい~☆




